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自動運転の先行者利益を狙う日産。横浜本社で、新型「セレナ」を使った「同一車線・自動運転」の体験試乗を実施している。(資料写真、筆者撮影)
ごちゃごちゃの状態になっている日本の自動運転開発 政府はアメリカに振り回されず、実需を精査せよ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47925
2016.9.21 桃田 健史 JBpress
日本の「自動運転」開発がごちゃごちゃの状態になっている。政界、官庁や業界の思惑が入り乱れ、また、さまざまな団体、協議会が並び立ち、ほとんど収集がつかなくなっているのだ。
まず、日本の自動運転開発の旗振り役の1つが経済産業省である。経済産業省には経済産業大臣の諮問機関「産業構造審議会」が設置され、テーマの1つとして自動運転技術の実現までのロードマップや課題が話し合われている。
2016年9月13日、産業構造審議会の第9回新産業構造部会が開催され、自動運転を含む「新産業構造ビジョンの今後」について討議された。この討議では、完全自動運転の実用化について「当初見込みの2025年から前倒しするべきだ」との声が上がった。
この日は、「戦略分野『移動する』」について、DeNAの南場智子・取締役会長と、楽天の安藤公二・常務執行役員によるプレゼンも行われた。DeNAは自動運転技術の開発に取り組んでおり、南場会長は「人の移動(自動走行等)」をテーマにプレゼン。楽天の安藤常務は「物の移動(ドローン等)」について、楽天の取り組みを紹介した。
今年7月、千葉県幕張のイオンモールで行われた、DeNAによる完全自動運転の実証試験。
自動運転をめぐる議論は、内閣府が取りまとめる「SIP」(戦略的イノベーション戦略プログラム)でも行われている。多くのメディアは、このSIPを“産学官連携によるオールジャパン体制”と捉えている。
ところが、自動車メーカーや自動車部品メーカー、さらに行政機関で自動運転の関係者らと意見交換すると、「SIPは絵に描いた餅だ」という声を多く聞く。そもそもSIPにおける自動運転の実証試験は、2020年の東京五輪での「世界に対する、自動運転のショーケース」という意味合いが強く、自動車産業界としては「行政とのお付き合い」という感覚があるようだ。
産学官関連連携の推進組織としては、経済産業省と国土交通省が立ち上げた「自動運転ビジネス検討会」もある。2015年2月に発足し、実用化を見据えた本格的な産学官関連連携を始めている。
この他、自動車業界の学会である自動車技術会と、自動車基準認証国際化研究センターも「自動運転基準化研究所」を新設し、自動運転に関する国際基準や標準化に関する戦略を検討している。
このように、今、日本の自動運転開発は各種会合が乱立し、いったい誰がイニシアティブを取っているのか分からない状況である。
なぜ、このような混沌とした状況に陥ってしまったのか? そこには、2つの大きな問題がある。
■自動車メーカーとIT企業のスタンスの違い
1つ目の問題は、「自動運転」に対するスタンスが2つに大きく分かれていることだ。
自動車メーカーの多くは、今でも「自動運転はあくまでもドライバーの運転を支援する技術」との立場を取っている。運転者を支援する技術なので、運転者は「手動」か「自動」かを選択できる。また一気にゴールを目指すのではなく「段階的な技術革新によって自動化を目指す」としている。
一方、米アルファベット(グーグルの親会社)やDeNAが提唱しているのが「完全自動運転」だ。つまり、運転者がいない自動車を走らせるということだ。初期の実証試験では運行管理者が運転席付近に座ることがあるが、自動車メーカーよりも最終ゴールへの短期到達を念頭に置いている。
自動車メーカーの考える「段階的に実現を目指す自動運転」と、IT企業が提唱する「運転者の無人化を前提とした完全自動運転」では、商品としての性格も、製造者や運航事業にとっての「リスク」も大きく異なる。関係事業者が足並みを揃えられないのも無理はない。
では、政府のスタンスはどうか。政府としては基本的に「完全自動運転の早期実現」を後押ししたい考えのようである。
前述のSIP自動運転実証にも大きく関わる内閣の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)」は、2016年5月に「官民ITS構想・ロードマップ」の最新改訂版を公開した。
その内容は、自動車業界に衝撃を与えるものだった。1年前と比べて、各種の自動運転に関する目標年を前倒しし、さらに専用空間における完全自動運転の実用化の早期実施を突然盛り込んだのだ。
さらに、先般の経済産業省の産業構造審議会で、完全自動運転の実用化の目標年の大幅な前倒しが提言された。「自動運転ビジネス検討会」では平成29年度から3年間にわたり完全自動運転の実証試験を行うことになっているが、産業構想審議会の動きは、そうした実証試験の実施を早め、早期の実用化へと導く狙いがあると見られる。
ただし、日系自動車メーカーの側は、自動運転の早期実用化を商品戦略としている日産であっても完全自動運転については慎重な姿勢を示している。自動車メーカーと政府が今後どのように連携していくのかはまったく不透明だ。当面は、完全自動運転の主役は、IT大手や、IT大手から資金援助を受けるベンチャー企業となるだろう。
■国内の実需が見えない
日本の自動運転開発を混沌とさせているさらに大きな問題は、日本国内における完全自動運転の実需が明確になっていないことだ。
現時点で需要の可能性としてよく挙げられているのは、中山間地域での高齢者の移動や、都市周辺の団地などでの「いわゆる買い物難民」対策などである。
しかしこうした問題の対策に、本当に完全自動運転は有効だろうか。ちなみに国土交通省は過去6年間にわたって小型EV「超小型モビリティ」の実証を行ったが、成功事例はほぼゼロである。また、中山間地域等で特例として実施されている「自家用有償旅客運送」(公共の福祉のために市町村やNPO法人が自家用車を使って有償運送をできるようにする制度)でも、商業ベースに乗っている地域はほとんどない。
そうした現場を数多く見てきた筆者としては、現時点で「日本に完全自動運転の実需はほとんどない」と考えている。
今、日本の交通において最も必要なことは、まず行政が全国で需要の実態調査を行い、地域住民とも膝を詰めて「今後の地域交通のあり方」を話し合うことだ。それを基に全国一斉の「交通政策の整理」をするべきだと思う。そうした整理をして初めて、簡易自動運転、または完全自動運転が適用することが地域にとってプラスになる場面が出てくるかもしれない。
■アメリカの動きに浮き足立つ日本政府
これからの日本の地域交通を本気で考え、作り変えていくためには、そうした総括的かつ地道な活動が不可欠であるはずだ。それにもかかわらず、政府の完全自動運転の議論は、海外の動向、特にアメリカの動きに大きく左右されている。
具体的には、今年4月にアルファベット、フォ―ド、ボルボ、そしてライドシェアリング大手のウーバーとリフトの5社が完全自動運転関連のロビー団体を設立し、米連邦政府にロビー活動を働きかけている動きがある。また、今年5月のテスラ事故等を受けて、米運輸省・高速安全道路局(NHTSA)が進めようとしている、自動運転に関する法整備の動きなどだ。
さらに、8月に入ってからは、以上の5社が共同または単独で、自動運転やライドシェアリングの社会実装に関する発表を相次いで行っている。こうしたアメリカでの動きに、日本政府は明らかに「焦りの色」を濃くしている。
筆者は、公式または非公式な場で、アメリカなど海外の動きも踏まえて、自動運転に関する各種の意見を官公庁の関係者に具申している。だが、その際はいつも「日本国内での実需の精査」が先決だと主張している。
繰り返すが、日本としては、自動運転に関して、浮き足立たずに地域交通のあるべき姿を見直すことが何よりも重要である。
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