http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/313.html
Tweet |
コラム:
日米金融政策「ダブル失望」は杞憂か
池田雄之輔野村証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 16日] - 筆者は9月前半の2週間で、ロンドン、ニューヨーク(NY)の投資家を訪問してきた。3つの重大イベント、つまり日銀政策決定会合(21日)、米連邦公開市場委員会(FOMC、同日)、米大統領選挙の民主・共和両党候補者による第1回テレビ討論会(26日)の直前というタイミングである。
このうち日銀会合への欧米投資家の関心は非常に高く、ヘッジファンドのトップが顔を出すミーティングもあった。白熱した議論の内容を振り返ってみたい。
日銀については、9月会合での「総括的な検証」と追加緩和の有無が焦点だ。筆者は、「最近の黒田(東彦)総裁、中曽(宏)副総裁の講演内容を踏まえれば、マイナス金利政策の正しさが強調される可能性が高いと思う」と説明した。NYの某ヘッジファンドでは、「中銀トップが政策の誤りを認めることはないだろう。あなたはスパイかと聞いたらノーと答えたというのと同じくらい情報価値がない」と笑われてしまった。
もちろん、説明を続ける。「日銀の議論は3段階だ。第1に、2%のインフレ目標が達成できていない理由として原油価格下落などの外部要因の影響を指摘する。円高もそこに入るかもしれない。第2に、マイナス金利政策が金融機関収益に与えている悪影響も率直に認める。対応策も同時に盛り込まれるだろう。そして第3に、それでもマイナス金利政策は継続する、となるはずだ」。
マイナス金利政策が金融機関収益を下押ししている現象は、2通りある。1つは、預金金利をマイナスにできない銀行が利ざやの縮小に直面している。もう1つは、20年以上の超長期金利が日銀の予想以上に大きく低下し、生保・年金などの運用難をもたらしている。
報道を見る限り、日銀はまず後者への対応を練っている模様だ。すなわち、下がり過ぎた超長期金利を押し上げ「イールドカーブを立たせる」方策を打ち出す可能性が高まっている。おそらく「平均7年から12年」とされている買い入れ国債の平均残存期間の目標を撤廃し、日銀がより自由にイールドカーブを調整できるようにする公算が大きい。
<日銀利下げ見送りでも1ドル100円割れ回避の公算>
一方、今回の会合では、政策金利の引き下げ(=マイナス金利の深掘り)は、見送られる可能性が高いと予想している。そう説明すると、欧米投資家は一様に驚く。だが、日銀が今回利下げを見送るべき理由は多い。
第1に、市場とのコミュニケーションの立て直しだ。黒田総裁は1月に、「抜き打ち」でマイナス金利政策を導入したことにより、市場参加者との信頼関係を損なった。7月の追加緩和策が、金利を全く触らずに上場投資信託(ETF)の買い入れを倍増させるという、中央銀行としては異例の内容になったのは、市場に歩み寄る姿勢の表れだっただろう。
そして今回の総括検証では、マイナス金利政策に対する市場の理解を求めようとしている。現在は、深掘りというアクションをとる前に、慎重な手続きを踏んでいる段階なのではないか。
第2に、黒田総裁の就任以降、日銀の政策変更はすべて「展望レポート」公表のタイミングと一致している。次の緩和策も、「インフレ見通しが悪化しているので、対応措置をとった」との説明になるとすれば、11月1日の発表が有力になる。
第3に、国内政治。12月から来年1月にかけての衆院解散・総選挙が取り沙汰されるなかで、仮に追加財政出動と連携をとるのであれば、現在は「温存」の時期になる。
第4に、国際政治も影響しているかもしれない。米大統領選が佳境に入ってくるなかで、日銀がマイナス金利の深掘りを打ち出せば、大統領候補に「通貨安政策だ」との批判を許す恐れがある。
では、21日に日銀が利下げ見送りを発表した場合、ドル円相場はどのように反応するだろうか。筆者は、1ドル=100円割れは回避できるのではないかと推測している。というのも、今回の欧米出張で見てきた限り、ヘッジファンド勢の日銀追加緩和に対する期待値は高くないのだ。
正確に言えば、関心は高く、「利下げあり」との見方も多いが、それで勝負すべくドル円をロング(円売り)する自信のあるプレーヤーがほとんど見当たらない。加えて、イールドカーブを立たせる措置は、市場センチメントを支える効果が期待できる。この点からも、急激な円高は避けられると見込めそうだ。
<「トランプ大統領」なら1ドル95円の可能性も>
もちろん、21日にはもう1つの重要イベント、FOMCが米国時間に控えている。筆者は、「日銀は利下げせず、FOMCは利上げせずで、ダブル失望になる」との想定を欧米投資家に伝えてきた。とはいえ、今回訪問した数十機関のうち、米国の9月利上げを予想していたところは、ただの1つもなかった。米国の利上げ見送りは、もはや織り込み済みと言えるかもしれない。
21日のFOMCでは、政策メンバーの金利見通し(いわゆるドットチャート)、とりわけ2017年の利上げ回数が従来の3―4回から、2―3回へと減る可能性がある。米国景気に減速の兆しが見られるからだ。
今回、筆者が訪れたロンドンのヘッジファンドでは、珍しいハプニングに見舞われた。その日、午後2時半からの会合は、リビングルーム仕様の広いソファーに座って、和やかな雰囲気でスタートした。ところが、3時になると、5人のファンドマネジャーがちらちらと手元のスマートフォンを見ながら、次々と部屋を出て行ってしまったのだ。最後の1人が「米ISM非製造業指数が非常に弱い」と説明してくれて会合は打ち切りになってしまった。
どうやら、彼らは8月末のジャクソンホール会議後からゆっくりドルを買い続けていたようだったが、それが1つのデータの発表により、一瞬にして2%近く下がってしまった。何度も繰り返す米国経済統計の「裏切り」によって、ヘッジファンド勢は体力をすり減らされている。15日発表の小売統計(8月分)も非常に弱い結果だったが、こちらに対しては市場の反応は小さかった。「いまさら驚かない」ということなのかもしれない。
21日の日米金融政策発表を経て、市場の焦点は米大統領選挙に移るだろう。特に26日の民主・共和両党の大統領候補による最初の公開討論会はきわめて重要だ。過去、第1回討論会で勝負がほぼ決したケースが多いからだ。
NYの投資家のあいだでは、ドナルド・トランプ共和党候補の勝率は30%から50%という答えが多かった。同候補が勝った場合の米景気への影響については、おおよそ三分されていて、1)政策不透明感からリセッション入り、2)大統領に就任しても議会を動かせず何も変わらない、3)内需刺激策でインフレが加速、となっている。驚くほど意見は集約されていない。
筆者は1番目の考え方であり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げシナリオも頓挫してしまうと想定した上で、「トランプ候補が勝てば1ドル=95円割れもあり得る」と説明している。逆に「ヒラリー・クリントン民主党候補が勝利すれば、FRBは12月に利上げを再開、来年も2回の追加利上げを打ち出すとの前提で、2016年末は1ドル=104―108円、17年末は112―116円」と説明してきた。
相場は大統領選の帰趨次第で、真逆に動く可能性が高いと見ている。日米金融政策、大統領候補討論会を控え、いまは嵐の前の静けさといったところだろう。
*池田雄之輔氏は、野村証券チーフ為替ストラテジスト。1995年東京大学卒、同年野村総合研究所入社。一貫して日本経済・通貨分析を担当し、2011年より現職。「野村円需給インデックス」を用いた、円相場の新しい予測手法を切り拓いている。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。著書に「円安シナリオの落とし穴」(日本経済新聞出版社)。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yunosuke-ikeda-idJPKCN11M0QT
インタビュー:
日銀マイナス金利、メリット大きい=西村自民党特別補佐
[東京 16日 ロイター] - 自民党の西村康稔・総裁特別補佐は、日銀のマイナス金利の深掘りについて、デメリットよりメリットの方が大きいとの考えを示し、金融機関にとっても長期的には資金需要が増えてプラスになるとした。
安倍晋三首相が新たに打ち出した未来投資については、政府として日本が強みを持つ医療・防災関連の個人情報をビッグデータとして活用できるよう、法改正を次期通常国会で議論することを明らかにしたほか、マイナンバーカード1枚で決済が可能となるよう規制緩和を実現する方向性を示した。
一問一答は以下の通り。
──日銀は来週、大規模緩和の総括検証を行うが、マイナス金利を深掘りしていくことは国民の預金金利や金融機関の収益などに悪影響を及ぼしかねないが、どのように考えるか。
「プラス・マイナス両方の面があるが、私はプラス面の方が大きいと思う。ひとつは社債でも超低金利で調達でき、企業の設備投資を下支えしている。もうひとつは住宅ローンの借り換えが多く、負担が減ればその分消費に回ったり、住宅購入ローンを新たに組むこともある」
「マイナス面は金融機関にとって収益減となっている点だが、短期的にはそうなっても、長い目でみれば超低金利により消費や投資で資金需要が増えれば、プラス面も出てくる」
「預金金利にマイナス金利は適用しないと日銀も言っており、適切に判断してやるだろう」
──未来投資会議が始動したが、自民党IT戦略特命委員会でもIT国家実現への提言をまとめた。企業が投資するために国として何ができるか。
「1つはIoT(モノのインターネット)のプロジェクト化に向けてネットワークを組むなど、国としてモデル事業や実証実験をしていく。AI(人工知能)関連の人材を集め、育てるための拠点の整備に向けた予算も経済産業省で組んでいる」
「(ビッグデータ分野では)グーグルのデータ量が圧倒的に多いが、日本の強みとして、健康・医療データや防災、気象データの蓄積もある。こうしたリアルな実社会で使えるデータの蓄積を活用できればいろいろなことができるため、政策の方向性を出していく」
「(ただ、個人情報をビッグデータ化する際には)1億人に個人情報の使用許可を取ることは難しく、個人データを信頼できる代理機関が匿名で使うことによって、さまざまな情報を処理できる枠組みができないか、ということについて検討を進めている。そのための法整備が必要。次の通常国会を目指し、IT特命委員会でも政府と一体となって議論を進めている」
「もう1つは、2020年の東京オリンピックに向け、キャッシュレス社会を実現できるよう、必要な規制改革を進めていきたい。特にマイナンバーの普及時には、それ1枚で決済が可能となり、クレジットカード、銀行のカードも1枚に統合されることを目指す」
──サウジ、ロシアなどの議連幹事長として、日本のエネルギー権益拡大ではどのような動きがあるか。
「サウジアラビアについては、日本とサウジの合弁会社、つまりベンチャー企業への投資などいろいろ考えられる。日本とサウジの閣僚級のフォーラムを設置することになっている」
「政府系機関がサウジのベンチャー企業に資金を投じることはありえる。国際協力銀行(JBIC)、産業革新機構、政策投資銀行などが(サウジと)一緒にファンドを作るなど、目的に応じて日本側の機関は変わってくると思う」
「ただ、国営石油企業であるサウジアラムコ自体に投資することはない。むしろ日本が協力するのは新しい産業だ」
──ロシアについては12月にプーチン大統領が来日するが、日本のエネルギー権益拡大に役立つような合意を目指しているのか。
「大きな方向性は、ロシア経済にとってプラスになることへの協力だ。そのためにエネルギーも含めて8項目の協力事項を示している。それが日本にとってもエネルギーの安定供給につながっていく」
──北方領土の交渉進展に結び付くような合意は期待できるのか。
「安倍首相とプーチン大統領の間で相当話し込んでいるため、われわれとしては平和条約が結べる方向性が出るように協力していきたい」
──12月に足掛かりができそうか。
「これは、経済協力がどの程度目に見えて進んでくるかにもよると思う。8項目を具体化していこうという安倍首相の姿勢をプーチン大統領は非常に高く評価していると聞いている。ロシア側からも50を超える項目の提案が出てきている」
──政府が検討を始める「働き方改革」で、外国の人材受け入れ拡大についてどのような具体策が盛り込まれるのか。
「高度人材はどんどん入れていこうという方向性だ。今、(技能実習生が)19万人入っているので、10万人単位で増えることを期待したい。IT分野、観光、家事などにも追加する方向だ」
*詳細な内容を追加しました。
(中川泉 宮崎亜己 スタンレー・ホワイト 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/japan-economy-nishimura-idJPKCN11M0JW
消費判断16カ月ぶり引き上げ、景気認識は維持=9月月例経済報告
[東京 16日 ロイター] - 政府は、9月の月例経済報告で、停滞していた個人消費の判断を2015年5月以来16カ月ぶりに引き上げた。今年4月の熊本地震に伴う消費者心理の悪化に歯止めがかかったと判断した。一方、企業が設備投資に慎重な姿勢を崩していない現状も踏まえ、全体の景気認識については、これまでの判断を据え置いた。
石原伸晃経済財政担当相が16日の関係閣僚会議で報告した。
政府はこれまで個人消費の動向を「消費者マインドに足踏みがみられる中、おおむね横ばいとなっている」と分析していた。今回の報告で、政府は、震災の影響が薄れてきた現状を反映し、「総じてみれば底堅い」と判断を引き上げた。
燃費不正問題で新たな自動車購入を控える動きに回復の兆しが出始めたことも、判断引き上げの背景にあるとみられる。
月例報告では、低金利下で賃貸用の住宅着工が増えていることから住宅建設の判断も4カ月ぶりに引き上げ、「持ち直している」とした。
一方、設備投資については「持ち直しの動きに足踏みがみられる」と、15年11月以来10カ月ぶりに判断を引き下げた。
設備投資の先行指標となる船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は4─6月期でみると前期比9.2%減と、企業の設備投資になお慎重な姿が拭えないためだ。
消費や住宅建設などの判断を前進させる一方、企業の設備投資に弱さがみられる現状から、全体としての景気認識については「緩やかな回復基調が続いている」との表現にとどめた。
http://jp.reuters.com/article/japan-monthly-report-idJPKCN11M0Q1
日銀の国債買い入れ減額は緩和の後退を意味せず=生保協会長
[東京 16日 ロイター] - 生命保険協会の根岸秋男会長(明治安田生命保険社長)は16日の会見で、日銀の量的緩和で市場に流通する国債が少なくなっているなかでは、買い入れ額を減らしても緩和の後退を意味しないと述べた。
また、実質賃金の伸び率や企業の収益状況など日本経済の現状を踏まえると、マイナス金利の深掘りを含む追加緩和は必要ないとの見解を示した。いずれも明治安田生命の社長としての意見として述べた。
日銀は20─21日の金融政策決定会合での総括検証を踏まえ、金融機関の収益減や生保・年金の運用難など副作用の要因になっている利回り曲線(イールドカーブ)の平たん(フラット)化の修正策を検討する。
根岸会長は、残存期間25年を超す国債の買い入れの減額を日銀が検討するとの報道について、「マイナス金利導入により行き過ぎた超長期金利の低下に対する懸念を日銀も持たれているということ」と述べ、その検討が行われることに期待を示した。
根岸会長は、日銀による年間80兆円の国債購入により、需給がひっ迫し、同じ買い入れ額でも利回りを低下させる効果は増大していると指摘。同程度の金融緩和を維持するためには、買い入れ額を引き下げていく必要があると語った。
また、日銀には、総括検証を踏まえて即時に新たなアクションを起こすことはせず、市場に検証結果を理解する時間を与えたほうが混乱を起こさないと思う、と述べた。
(浦中 大我)
http://jp.reuters.com/article/boj-government-bonds-idJPKCN11M0RN
米利上げ思惑で市場に振れ、日銀総裁「物価への影響注視」
[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は、16日の関係閣僚会議で、国際金融市場の動きについて「米国の利上げ時期をめぐる市場の思惑を背景に、やや振れの大きい動きとなっている」との認識を示した。
その上で黒田総裁は、こうした動きが「経済・物価に与える影響を注視している」と語った。
内閣府幹部が会合後、明らかにした。
総裁はこの中で、国債市場の動向にも触れ、「日銀の総括検証について市場にさまざまな見方がある中で、20、30年の超長期ゾーンを中心に(利回りが)上昇している」と指摘した。
一方、マイナス金利政策の導入で「貸し出し金利が低下し、社債市場では10年超の社債を発行する動きが広がっている。企業の資金調達環境は『空前の緩和状態』にある」と強調。「今後ともきわめて緩和的な金融環境によって、景気を支えていく」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/kuroda-us-fed-idJPKCN11M0T3
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民113掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。