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「長期金利上昇」はこう考えよ! 投資家が気にするべき2つのこと 日米における影響の違い
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49734
2016.9.16 山崎 元 経済評論家 現代ビジネス
■長期金利は経済の体温計?
お金の運用の入門書やセミナーなどで、筆者は、「毎日一回、日経平均、為替レート、NYダウ、に加えて長期金利をチェックして下さい。毎日、10秒くらいでも、どうして動いたのか、今後どう動くのかを考えると、マーケットと経済を考える思考のスイッチが入るようになります」と言ってきた。
長期金利とは、通常10年国債の市場での流通利回りを指す。
内外の株価と為替レートに加えて、長期金利を付け加えた理由は、債券市場が大きな市場でお金の運用に大きな影響を与えることに加えて、長期金利が経済の状況をよく映す、経済の体温計のような役割を果たしているからだった。
日銀が長らく短期金融市場におけるゼロ金利政策をとる中でも、長期金利は、短期金利に影響されつつも、市場で形成されていた。十数年にわたって、2%を超えられなかった日本の長期金利は、デフレ状況の日本経済がいわば「低体温症」にあることをよく表していたが、それでも、経済状況に応じて変動していた。
ところが、黒田東彦氏の日銀総裁就任以来、いわゆる「異次元緩和」で日銀が長期国債を大量に買い入れるようになり、長期金利が自然な形で形成されなくなり、やがて、日銀の買いに「制圧」されるような形で、超低水準となった。
加えて、今年に入って導入されたマイナス金利政策の影響で、ここ数ヵ月は、長期金利はマイナスゾーンで推移するようになった。
さて、この長期金利だが、実は、ここのところ内外共に上昇気味に推移している。この状況をどう考えるべきか。
米国は、FRBの利上げに対する予想から長期金利が上昇気味に推移していて目下1.7%台だ(現地13日)。ドイツでは、英国のEU離脱依頼マイナスゾーンだった長期金利が陽転し0.07%程度(現地13日)である。ちなみに、わが国の長期金利も、9月12日には-0.015%と、プラズゾーン目前まで迫り、13日は-0.025%だった。
■予想困難な日銀の「次の一手」
目下、長期金利の形成要因として、どうしても各国の中央銀行の動向ばかりが注目されやすいが、日本を含む各国の景気が「まあまあ良好」に見える点が、いくらか影響していることは考慮の中に入れておきたい。
米国では、9月にFRBが利上げを決めるほどではないとの観測もあるが、年内には利上げがあるだろうと思われる程度には十分景気は強く、EU離脱の影響が心配された英国も景気指標は総じて良好で、イングランド銀行による年内の追加緩和実施の観測が後退している。
わが国も、例えば、財務省と内閣府が13日に発表した7〜9月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)は3期ぶりに1.9のプラスに転じた。昨年末から今年前半にかけての「ミニ景気後退」的ムードからの回復が見られる。
もっとも、各国いずれにあっても、長期金利を決める要因として最大のものが中央銀行の次の一手に対する憶測だ。それは、平時にあっても大きな要因にはちがいないのだが、現状では「特別に大きな要因」となっている。
わが国の特に投資家が気にするべきは、米国の利上げの有無とタイミング、加えて日銀の次の一手だ。
米国FRBの利上げは「9月には行われないだろうが、年内には行われる」というくらいが目下の市場関係者の平均的な予想であるように思われるが、この場合、米国の長期金利は、景況に素直に反応することと、将来の短期金利の上昇を見込んで、緩やかに上昇する公算が大きい。
より、要因が多く複雑なのは、日銀の次の一手だ。黒田総裁の発言で、マイナス金利政策が銀行の収益にマイナスの影響を与えている面もあることの認識が示されたことをどう解釈するかが問題だ。
長短の金利差がフラット化あるいは逆転して、貸し出し金利のベースとなる長期金利が下がり、銀行の利ざやが縮小ないし陰転していることが、金融機関の収益を悪化させていることは事実だ。また、利ざやの悪化には、デフレ脱却に必要な貸し出しの拡大を抑制する側面もある。
そこで、国債の買い入れ枠を現在の年間80兆円から、70兆円〜90兆円のように弾力化して(意味があるのは下限方向の拡大だ)、事実上国債の買い入れを縮小し、同時にマイナス金利の「深掘り」を止めるのではないか、といった憶測を持つ向きもある。
一方、マイナス金利の深掘りは、今後円高が進行した時に確保しておきたいカードであり、また、国債買い入れ枠の弾力化は、「量的緩和の後退」と解釈されかねないので避けるのではないかとの見方もある。
来週に行われる金融政策決定会合は特に注目度が高い。
■長期金利上昇はプラス要因なのか
近年、米国の長期金利上昇は、日本の株価にとってプラス要因だと言われることが増えてきた。
米国の長期金利が上昇する時期は、FRBが利上げの過程にあることが多く、利上げの過程では米国の景気は良いし、さらにドル高・円安になりやすい。また、利上げが続いているということは、「バブル崩壊!」の前なのであるから、米国の長期金利が上昇する時期には、日本の株価が上昇しやすかった。
例えば、金融危機に至る以前の2004年半ばから、2006年半ばにかけての、FRBの利上げ期間にあって、日本株は概ね良好なパフォーマンスを保っていた。
ただし、長期金利も含めた、金利の上昇自体が株価にとってプラスかというと、「そうは言えない」。
理論株価にとっては、金利の上昇、それも物価上昇率を上回る実質金利の上昇は、株価下落要因である。また、最終的に中央銀行の金融引き締めに勝てる株価の上げ相場は無いので、長期金利の上昇過程のどこかで、大幅な株価下落に見舞われる可能性があることを頭に入れておかなければならない。
今後、米国の長期金利の上昇過程では、米国の株価が徐々に頭を押さえられたり、あるいは暴落に向けた要注意期間に入ったりすることを想定する必要がある。また、新興国の株価は金利・景気共に米国の影響が大きいので、こちらも要注意だ。
一方、日本の株価は、米金利上昇によるドル高・円安のプラス効果と、米国を含む海外株価の下落の可能性、さらには、ドル金利の上昇に伴うグローバル運用資金の債券への回帰などのマイナス効果とがせめぎ合うことになりそうだ。
今後の米国の長短金利を「上昇」と決めることが出来れば、米国株よりは、日本株に投資する方が「ベター」であろうという推測を持つことが一応できそうだが、年内利上げは見送りだろう、といった状況になった場合、米国の株価が保つ一方で、日本株が円高で一人負けになる可能性もある。
■個人投資家は「2%」に注目すればいい
現時点では、日本の長期金利が「自然に」形成されるようになる時期を見通すことは極めて難しい。
例えば、日銀が、マイナス金利を止めるにしても、国債買い入れを縮小するにしても、相当の円高要因になる可能性がある。常識的には、今来年中は無理ではないか。
しかし、将来、「2%」のインフレ目標が達成されたあかつきには、国債市場も正常化されるはずであり、その時に、長期金利が大幅上昇する事態は想定しておく必要がある。
まず、株価は、そうした状態に達するまでに十分上昇している公算が大きい。ただし、長期金利が十分高くなると、将来の暴落リスクが出てくることと、運用上の株式と債券の補完的な関係が復活する可能性が大きいことなどを考えると、個人投資家も運用計画を見直す必要が出てくるかもしれない。
しかし、それは、当面かなり先のことだろう。
多くの個人投資家レベルでは、「長期金利が2%を超えたら、運用計画を見直そう」と考えておくくらいでいいだろう。
銀行は、長短の金利差が開くことで貸し出しや証券運用の利ざやを稼ぐことがやりやすくなるプラス効果と、その状態に至るまでに、手持ちの債券などの値下がりによるマイナス効果の大きさのバランスが問題になる。
個々の銀行の内容によって差が付くことになろうが、後者の影響が大きく出て、経営的に問題が生じる銀行が出てくることも想定しておきたい。
保険会社と年金基金は、長期金利上昇によって、手持ちの債券が大きく値下がりする可能性があるが、負債サイドの現在価値評価額が低下する効果の方が大きいので、長期金利上昇は総合的にはプラス要因だ。
彼らは、低金利政策の概ね最大の被害者なので、むしろ、長期金利が上昇するような状況がなかなか訪れない場合に、財政状態が保つかどうか、ということが問題になろう。
短期的にも、長期的にも、内外の長期金利がどう動くのか、大いに注目しておきたい。
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