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リニア中央新幹線の全線開業の前倒しも
政府の「経済対策」は本当に効果あるのか? 28兆円規模でも「真水」は7.5兆円
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160913-00010000-nikkeisty-bus_all
NIKKEI STYLE 9月13日(火)10時30分配信
そもそも経済対策とは。
政府が「経済対策」というものを決めたそうね。いったいどういうものなのかな。何十兆円もお金を使うようだけど、効果はあるの?
政府の経済対策について、浅井みら野さん(30)と熊沢靖子さん(44)が菅野幹雄編集委員の話を聞いた。
「公共事業や産業振興策など政府の経済政策は原則として毎年度の初めに決めた予算で実施します。しかし、景気が予想外に悪くなったり、為替や株の市場が混乱したりして、年度途中で環境が大きく変わる場合があります。その時に景気をてこ入れする補正予算を組んで臨時に新しい政策を打ち出すことが多いのです。これを『経済対策』と呼んでいます」
「政府は8月2日の閣議で、事業規模28兆1000億円の『未来への投資を実現する経済対策』を決めました。新興国経済や欧州経済の先行きに不安が増しており、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で各国が財政も使って機動的に経済対策をすべきだと合意したのが背景にあります。安倍晋三首相は6月に経済対策の実施を表明しました。7月の参院選を前に、経済問題にまじめに取り組んでいることを有権者にアピールする狙いもあったはずです」
どんな中身ですか。
「事業規模は28兆円といいますが、国と地方が財政資金を直接支出する金額、いわゆる『真水』は7兆5000億円です。そのほかに、様々な事業に政府からお金を融資する6兆円の財政投融資があります。財政再建に逆行しないよう、今回は新たな赤字国債を発行しないという方針で真水の金額を抑えました。一方で経済対策全体の規模は大きく見せたい。そんな安倍政権の思惑が表れています」
「具体的な事業のメニューは内閣府が各省庁から集めますが、基本的には安倍首相が『これをやりたい』という方針に沿って整理しています。その大きな柱が『働き方改革』です。人手が足りない保育士や介護職員の賃金を上げ、子育てや介護を抱える人たちが働きやすい環境を整えるほか、長時間労働の是正など労働制度改革に取り組む方針も盛り込みました」
「もう一つの柱は産業構造改革です。あらゆるモノがインターネットにつながるIoTや、人工知能(AI)などによって生産性の向上を目指します。このほか、リニア中央新幹線の全線開業の前倒しや、訪日観光客の増加に対応する港湾・空港の増強などインフラ整備もあります」
効果はありますか。
「財政支出が増えれば一定の効果はあるでしょう。ただ、働き方改革のようなメニューは、たとえ有意義な政策ではあっても短期的な景気てこ入れにはつながらない面があります。リニアの全線開業は遠い将来の話で、前倒ししても即座に景気を刺激はできません。政府は今回の経済対策の効果として、国内総生産(GDP)を数年間で合わせて1.3%押し上げると試算していますが、民間の調査機関の予想はもっと控えめです」
「金融不安が起きた1990年代後半から2000年代にかけては頻繁に経済対策が実施され、リーマン・ショックも起きた08年度には合計4回、事業規模で75兆円もの経済対策をやりました。緊急対応としての意味はありますが、中には無駄なものが入り込む余地があります。90年代にコメ輸入自由化の対策費で『温泉ランド』の建設が相次ぐなど、使いみちに疑問がある例も少なくありません」
「大規模な経済対策が本当に必要なのか、きちんと有効に使われるのかを、これまで以上に丹念に検証する必要があります。過去の経済対策で、日本の財政は著しく悪化しました。本当に必要な時に手を打つ余地を残すためにも、無駄打ちはできません」
景気をよくするには、政府以外の努力も欠かせないのでは。
「安倍政権は日銀にもつきあってもらい、財政政策と金融政策が一体で景気のてこ入れをする必要があると考えています。今月20〜21日の金融政策決定会合で、日銀がマイナス金利の拡大など金融緩和策を決める可能性もあります。とはいえ国債の大量買い入れを続ける日銀がこれ以上の緩和をすれば、様々な副作用が起こりえます。リスクをとって将来の成長のための投資を進めるなど、民間企業の役割も大切になります」
■ちょっとウンチク 借金返済より「余れば使う」
日本経済の長期低迷に対処する必要があったとはいえ、毎年のように経済対策を組むなら、年度当初の予算でなぜできないのかという素朴な疑問がうかぶ。補正予算をあめ細工のように使いたい政治家と要求官庁、そして財務省の「利害の一致」がそこにある。
政治家は選挙に有利な公共事業を地元に引っ張りたい。要求官庁も財源がほしい。だが金庫番の財務省は当初予算で毎年の配分が大きくぶれるのを嫌う。結局は「前年度並み」から大きく動かない。
年度途中の補正予算は財務省も当初予算ほど厳しく管理せず、政治家の要求にある程度応える。経済対策が大義名分なら余計に説明はつく。税収が多め、あるいは計上した予算が余りそうなら財源の当てにされる。借金返しよりも「余れば使う」が習慣になる。
内閣府のリストを拾うと1998年からの18年で組まれた「対策」は26本。公共事業族に冷淡だった小泉政権時代が中心の2003〜07年は皆無で、そこを除くと毎年2本の計算だ。財政が悪化するわけである。
(編集委員 菅野幹雄)
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