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「iPhone7」は買いなのか? 携帯大手3社が陥った深刻なジレンマ 海外での評判はイマイチだが…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49706
2016.9.13 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■海外での評判はイマイチ…
米アップル社が今週金曜日(9月16日)に主要国で一斉に主力スマホ「iPhone」の新バージョン「7」を発売するのに合わせて、日本国内ではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクがそれぞれ「おトク」と称するキャンペーンを展開している。
このiPhone7は、アンドロイド系のスマホでしか使えなかったSuicaを使えるようにするほか、従来のiPhoneには無かった防水機能を付けた端末だ。イヤホンを無線化してイヤホン・ジャックを無くしたり、基本ソフト(OS)のアップグレードといった変更もある。アップル社のティム・クック経営最高責任者(CEO)は発表の席で「過去最高のiPhone」と強調した。
しかし、米全国紙がライバル機の方が依然として防水性能の強靭さや画面の高精細さ、バッテリーの容量(持ち時間)などで高性能と指摘したり、有力調査会社が「(変更は)いずれもマイナーチェンジ。(中国市場では買い手控えて)来年発売予定とされる新iPhone8を待つ人が出るのではないか」と評するなど、本国では醒めた見方が意外に目立つ。
それにもかかわらず、日本の携帯大手3社は、現行のiPhoneなどを下取りすることで実質タダでiPhone7(32GBモデルなどに限定)を入手できる目玉プランなどを打ち出して、顧客の囲い込みに躍起になっている。
いったい、なぜ、日本の携帯大手3社は、必ずしも海外で評価が高いと言えない新型iPhoneに固執するのか。今週は、その内情とそろばん勘定を読み解いてみよう。
■Suica機能でシェア拡大
今回発売される新型スマホは、iPhone7(税別価格72800円)と、それよりもディスプレイがひと回り大きく、広角・中望遠の2種類のカメラを備えたiPhone7Plus(同85800円)の2機種がある。ここでは、このうちのベーシックなモデルであるiPhone7について、注目点を紹介していこう。
今、日本の金融、クレジットカード、IT・携帯事業の関係者の間で最も評判になっているのは、iPhone7の日本向け端末に、アップルが米国で2014年に始めたモバイル決済サービス「Apple Pay」が搭載され、10月末からApple PayでJR東日本の「Suica」を利用できる点である。
利用者にとっては、アンドロイド・スマホのユーザーと同様に、スマホさえ持てば、Suicaカードを持たなくても鉄道の乗り降りや売店での買い物をできるようになる。
ちなみに、アップル社のクックCEOはサンフランシスコでiPhone7投入を発表した先週水曜日(現地時間)の記者会見の際に、「Apple Payを世界に広げる」と発言し、その具体例としてSuica対応についても触れた。
米国でとっくに始まっているサービスだけにモバイル担当記者たちはほとんど関心を示さなかったそうだが、資本市場から見ればフィンテック(金融とテクノロジーの融合)は大きな話題だ。
多くの投資家は鵜の目鷹の目で、経済社会にどういう変化がもたらされ、どういう企業が成長の糧として取り込むか関心を払っている。それゆえ、アップルもあえてApple Payの可能性を強調したとみてよいだろう。
やや話はそれるが、Suicaは日本の非接触型ICカードのパイオニアで、他の交通系カード「PASMO」(関東の私鉄)、「ICOCA」(JR西日本)、流通系カード「Edy」(楽天やANAホールディングス)、「nanaco」(セブン&アイ・ホールディングス)、「WAON」(イオン)などと同様、ソニーが開発したICチップ技術FeliCa(NFC Type-F)が技術的なコアとなっている。
が、FeliCaは、海外で普及している代表的な方式(NFC Type-A/B)と比べると、許諾コストが割高だ。業界関係者の間では「端末1機につき数百円程度は高い」と言われている。
加えて、iPhoneは日本のスマホ市場でダントツのシェアを占めているものの、日本市場の規模は米国や中国、インドなどと比べて格段に小さい。
こうしたことから、これまでアップルは、端末にSuicaを始めとした日本市場向けの特別仕様を作ることは採算上好ましくないという立場を採ってきた。ドコモやKDDI、ソフトバンクの要請にもかかわらず、Suicaや「おサイフケータイ」機能の搭載を拒んできた。
だが、日本の状況も変わりつつある。携帯用の基本ソフト(OS)でアップル社の「iOS」と競合関係にある、米グーグル社のOS「アンドロイド」を搭載しているスマホは、早くからSuicaや「おサイフケータイ」に対応し、一定のユーザーの獲得に成功。アンドロイドで使えるものが使えないことが、日本におけるiPhoneの弱点になっていた。
■ビットコインに勝てるか
最近の報道によると、グーグル社はフィンテック分野で三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と組み、Apple Payと類似のサービス「Android Pay」を近く三菱東京UFJ銀行発行のデビットカードや三菱UFJニコス発行のクレジットカードで使えるようにする方針という。こうした競争の激化がアップルの姿勢転換を促した格好になっている。
一方、JR東日本の冨田哲郎社長は9月8日付のプレスリリースで、「iPhoneでSuicaを利用できるようにすることは、長らくお客さまから求められてきました。日本全国の鉄道・バスや Suica をご利用いただける加盟店において、Apple製品をご利用のお客さまにとって理想的な体験が実現し、多くのお客さまの毎日の生活に不可欠なものになると確信しています」と自信たっぷりのコメントを公表した。
その一方で、関係者の間では、ブロックチェーン(分散型台帳システム)をデータの保存に使うビットコインのような仮想通貨システムが、遠からず、日本でデファクトスタンダードの地位を確立しているFeliCaのような決済システムを呑み込んでしまうとの見方も根強い。
かつて日本で普及していたパソコン通信をインターネットが席巻したようになるのではないか、という見方だ。どちらかといえばビジネス競争とは無縁で、中立的な立場の通信官僚やエコノミストの間にそうした見方が少なくない。
とはいえ、コストが高い半面、FeliCaには、短時間で決済処理が可能という強みがある。JR東日本はかねて、「0.2秒」という高速処理が首都圏の鉄道改札口の朝夕の混雑を予防する強みがあると主張する一方で、鉄道以外の分野への普及にも力を入れてきた。
ビジネスサイドから見れば、JR東日本が主張する強みが本当に武器になり、FeliCaのような日本標準が生き残る道を確保できるかどうかは大きなポイントだ。
これまで「ガラパゴス」と評されてきたモバイル端末と同様に、世界の進化とは一線を画して日本固有の決済サービスが生き残っていけるかどうかで、関係企業の日本での生き残り戦略が大きく違ってくるからである。
■性能は「最高」ではない
話をiPhone7の注目点に戻すと、デザインは従来の「6」とほぼ同じだが、アップル社は弱点をなくす努力を惜しまなかったようだ。
ソニーやシャープのアンドロイド端末ほど強靭なものではないが、iPhoneにも「7」からようやく防塵防水機能が加わった。これにより、水しぶきを浴びたり、ジュースをこぼすぐらいならば、機能が損なわれる心配はなくなるらしい。
このほか、iOSのバージョンアップやバッテリー駆動時間の延長対策も施した。カメラにも、光学式の手ぶれ補正機能や明るいレンズを付け加える改良を行った。さらに、イヤホン・ジャックを無くし、ボディカラーに黒色を2種類用意したという。
だが、携帯ウォッチャーたちの見方は冷ややかだ。
米全国紙USATodayは9月9日付のインターネット版に「iPhone7は競争相手にどう対抗したか」と題する検証記事を掲載、米国内でiPhone7のライバル機と目される韓国サムスン電子のGalaxyS7(今年3月発売)との性能比較を行った。
それによると、iPhone7は進歩した部分があるものの、依然として防水性能や画面の精細度、バッテリーの容量(持ち時間)など基本的なスペックが劣るという。
また、米調査会社のIDCは8日付で「iPhone7は中国で大きな成功を望めない」とするコラムを掲載、その中で「小さな改良のうえデザインも現行機とほぼ同じとあって、中国では、(不調に終わった)現行機を上回る出荷は望めない」と酷評した。
こうした評価では、世界的に伸び悩んでいるアップルの販売巻き返しにつながる可能性は低そうだ。
振り返れば、iPhoneは2007年の初代モデル発売からモデルチェンジを重ね、今年7月に世界で累積10億台の販売を達成したものの、韓国、中国メーカーの台頭や日米など成熟国の買替需要の低迷で、今年1〜3月期の世界販売台数は前年同期比16%減の5100万台と、初の減少を記録。続く4〜6月期も15%減の4000万台で、2期連続のマイナスになった。
特に、この4〜6月期は本国米市場での低迷が目立ち、前述の調査会社IDCによると、米国でのアップルの販売台数は前年同期比14.5%減の1172万台にとどまり、同24%増の1178万台を売ったサムスンにシェア首位の座を明け渡した。
中国では、アップルはファーウェイや新興企業OPPOといった現地メーカーの後塵を拝しており、4~6月期の販売シェアが5位に低迷している。
世界中で販売されるiPhoneには、日本メーカーの電子部品が多く使われていることもあり、日本のビジネス界でもiPhone7の販売が伸びて、このところのアップルの退潮傾向に歯止めをかけられるか、高い関心を集めている。
■深刻なジレンマに陥っている大手3社
そうした中で、冒頭で記したように、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内携帯大手3社は、下取りや抽選を利用、昨年9月に安倍首相が発した料金是正要請を無視したと取られかねない実質ゼロ円端末まで用意して、iPhone7の販売に躍起になっている。
しかし、ここで無理をしてユーザーに料金の2年縛りをかければ、来年発売とされる大型モデルチェンジモデルiPhone8の売り上げを伸ばすことが難しくなる。今回は明らかにアップルの旗色が悪いうえ、需要を先食いするような行為なのに、なぜ、携帯大手3社はiPhone7の販売に躍起になっているのだろうか。
このところ総務省の後押しもあって成長目覚ましいMVNOにはiPhone7の販促キャンぺーンをする体力がないため、これを機にMVNOの成長に歯止めをかける狙いがあるという解説がある。が、これはウソだろう。
なぜなら、多くのMVNOはサービスに必要な通信回線をドコモから賃借しているからだ。言い換えれば、安売りでブランドイメージを毀損したくないドコモにとって、MVNOは低料金志向の強いユーザーを取り込むための別動隊なのである。
これに対抗して、ソフトバンクはグループ会社ワイ・モバイルの価格競争力アップに躍起だ。出遅れ気味だったKDDIもグループ会社のテコ入れ策を準備中と聞く。
実は、iPhone7の販促に躍起な大手3社の念頭にあるのは、3社間の市場シェアの争奪競争だ。その背景には、万年3位の弱小携帯電話会社だったソフトバンクが2008年7月に登場したiPhone 3Gを日本で独占発売し、以後8年間にわたって上位との格差を縮める原動力にしてきたことがある。
2011年10月発売のiPhone 4SからはKDDIが、また2013年9月発売のiPhone 5s/5cからはドコモも加わって、主要3社がiPhoneを扱う体制となり、ソフトバンクが以前ほどの勢いでシェアを伸ばすことはなくなった。
それでも、あの激変を3社は忘れられず、iPhone7の販促に傾注せざるを得ないのである。
再びIDCによると、米、中の2大市場とは対照的に、今年4~6月期の日本市場でのスマホ販売台数は、前年同期比28%増の約300万台と大幅な伸びを記録。このうちアップル社の市場シェアは43%で、同10ポイント強増えている。第2位のソニーの13%、第3位シャープの12%に大きく水をあけて、アップルの強さが際立っているのだ。
いくら他社から端末を乗り換える顧客を奪っても、ほぼ同様の規模で奪われる懸念があり、キャンペーン費用ばかりが嵩んで、「最終的な勝者には成り得ないとわかっていても、(キャンペーンを)やらないという選択肢は存在しない」(大手携帯電話会社幹部)というのが本音なのである。深刻なジレンマに陥っていると言ってよいだろう。
こうした中で、目を光らせ始めたのが、長年「吠えない番犬」と揶揄されてきた公正取引委員会だ。
先月、スマホの販売に際して長期契約と引き換えに毎月の通信料金から端末代金を大幅に割り引く販売方式には独禁法上の疑義があるとする報告書をまとめたほか、水面下のMVNOヒアリングの際には、中古端末の価格下支えがないか厳しくモニターしていく方針などを告げたという。
来年、アップルは、初代iPhoneの発売開始から10周年の節目を迎える。共同創業者で、一度は会社を追われながらカムバックして会長としてアップルを率いたスティーブ・ジョブズ氏が2011年に亡くなって以来、弱体化を取り沙汰されながら盤石を誇ってきたアップルのビジネスモデルも、それに便乗してきた携帯大手3社などの日本企業も、大きな転機を迎えているのかもしれない。
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