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コンテナ船シェアで世界8位の韓進海運が倒産し、輸送に遅れが生じている。影響は世界規模に広がった Photo:AP/アフロ
韓国大手海運が破綻、提携先の川崎汽船にも流れ弾
http://diamond.jp/articles/-/101553
2016年9月12日 週刊ダイヤモンド編集部
韓国最大手の海運会社、韓進海運が経営破綻したことで、日本の海運関係者は慌てふためいている。韓進の船が寄港できず海上で足止めを食っているほか、日本勢が参画する来春からの新アライアンスの勢力が後退してしまう可能性が出てきたからだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)
9月初旬、川崎汽船の営業担当者は、荷主に対して、遅延している荷物の状況を説明するため駆けずり回っていた。コンテナ船の貨物の中身は、衣類や家具から家畜の飼料まで多岐にわたるが、海の上に停泊したままだからだ。
これは、韓国海運最大手の韓進海運が経営破綻したことに起因する。8月31日、韓進は日本でいう会社更生法適用に相当する法定管理を申請し、事実上倒産した。
目下、海運市況は大不況の真っただ中。特にコンテナ船市況は厳しく、供給過剰感から運賃が採算を下回る状況が続く。こうした市況にあって、持ちこたえることができなかったのだ。
川崎汽船と韓進は、同じ海運アライアンスに所属しており、川崎汽船が輸送契約している荷物の一部は、韓進の船が輸送している。海上で停泊しているのは、この荷物を積んだ船だった。
というのも、韓進が倒産し、世界各国の港が韓進船の入港を拒否しているからだ。船舶が寄港するには、使用料や荷役作業などのポートチャージが掛かる。大型船では600万〜700万円にも及ぶが、もはや韓進にその支払い能力はないとみられているためだ。
韓進側にも簡単には寄港できない理由がある。いったん寄港すれば、債権者に船舶や燃料油などの資産が差し押さえられ、事業を継続できなくなる可能性が高い。そのため韓進は、各国の裁判所に差し押さえ禁止命令を申請している。
こうした事情から、韓進の船舶約140隻のうち半分が海上に浮いたまま。アライアンスパートナーである川崎汽船などが割を食っており、荷主に対する謝罪と状況説明に追われているというわけだ。
また、川崎汽船ほどではないが、日本郵船や商船三井も、韓進との個別の提携に伴って影響を受けている。それぞれ、荷主への説明など対応に当たっている。
さらに深刻なのが、船のオーナーである。日本の船主のうち数社が韓進に用船(リース)しており、韓進からの早期解約を見越して、すでに売船先を探しているとささやかれている。
■どうなる?
来年春からの新アライアンス
韓進の倒産が世界的なショックとなって広がっているのは、規模の大きさによる。韓進はコンテナ船シェアで世界8位の上位プレーヤーで、特にアジアと北米を結ぶ太平洋航路においてはメジャープレーヤーである。契約している貨物の総額は140億ドル(約1兆4500億円)に上るとされる。
過去にも海運会社の破綻はあったが、2000年代前半以降、コンテナ船輸送の世界で、複数の海運会社が船を出し合い共同運航するアライアンスが主流になってからは初めてのケース。その結果、今回の川崎汽船のように、グループ他社にも大きな影響が及ぶことが明らかになった。
前例がない故、関係者は今後の影響について、さまざまな臆測を巡らせている。
供給過剰にあえぐコンテナ船市場全体にとっては、追い風との見方も出ている。事実、韓進の破綻後、足元の運賃は急上昇。太平洋航路の40フィートコンテナの運賃は1週間で50%も上がった。
北米では新学期が始まり、間もなくクリスマス商戦を迎える。コンテナ船会社にとっては、ここが書き入れ時。韓進の荷動きが停滞したぶん、早くも世界のコンテナ船プレーヤーによる荷物の争奪戦に発展している。だが、日本の海運会社は荷物遅延への対応でそれどころではなく、この争奪戦の蚊帳の外。
それ以上に頭が痛いのは、来年4月から新しく始まる「ザ・アライアンス」への影響だ。この新しい枠組みには、日本郵船、商船三井、川崎汽船と日本の大手海運3社が入るが、実は韓進もそのメンバーだった。
17年春からスタートする新しいアライアンスのコンテナ輸送のシェアは、上位2グループの2Mが36%、オーシャンアライアンスが31%。これに対して、ザ・アライアンスは24%。日本の海運会社はコンテナ船の規模が小さく、韓進が脱落すれば、ザ・アライアンスの存在感はますます薄くなる。
韓進がスポンサーを得て事業を継続し、そのままザ・アライアンスに残るのか。抜けた場合には、代わりのプレーヤーを引き入れるのか、既存のアライアンスメンバーが船を増やすのか。ザ・アライアンスの事務局は、当面、頭を悩ます日々が続きそうである。
韓進の破綻は、海運不況の象徴となった。「まともに経営できるくらいまで運賃が回復して、その水準が継続してくれないと……」。コンテナ船事業で赤字を垂れ流しているのは日本の海運会社も同じ。聞こえてくるのは落胆の声ばかりである。
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