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日銀サーベイが示した日本の国債市場の機能不全とそのための対応策
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20160904-00061827/
2016年9月4日 9時45分配信 久保田博幸 | 金融アナリスト
日銀は9月1日に「債券市場サーベイ」を公表した。これは国債売買オペ対象先のうち、調査協力を得られた先(39社)へのアンケート調査である。回答期間は2016年8月8日〜8月17日となっている。
債券市場の機能度という質問に対しては、DIとしての数字となっているが、前回調査(5月)に比べて「高い」との回答が5からゼロとなっている。「さほど高くない」が56から54、「低い」が38から46に。なぜか機能度の「高い」と答えていた向きが前回まであったものの、ここにきてついにゼロになった。
次にビッド・アスク・スプレッドについて回答があった。ビッドとアスクというのは、取引する際の買い値(ビッド)と売り値(アスク)のことである。たとえば20年債を買いたいときに業者に売値を尋ねたら0.350%という提示があり、それでは売りたいのだけれど買値はと尋ねたら0.360%という提示かせなされたとすればスプレッドは0.01%となる。通常、カレントと呼ばれるもののビッド・アスク・スプレッドは最低取引単位の0.005%(5糸とも言う)となっていておかしくはないが、流動性が低下するとこのスプレッドが拡大する。
ビッド・アスク・スプレッドについての回答は「タイトである(狭い)」との答えが前回の15ポイントから10ポイントに低下、「さほどタイトでは」ないが56から51に、「ワイドである」が28から38となっており、スプレッドが拡がり流動性がますます低下している様子がうかがえる。
市場参加者の注文量に関して、板の厚み等を念頭においての回答は、「多い」が前回も今回もゼロ、「さほど多くない」が前回の56から44に、「少ない」が44から56に増加している。板ということで、これは日本相互証券などのブローカーの画面上の板、もしくは大阪取引所の長期国債先物の板の様子が想定されていると思われる。
取引頻度の変化については「増加した」との割合がやや増加したものの(3から5)、「さほど増加していない」も増えている(54から77)。取引ロット(1回あたりの取引金額)の変化に関しても、「増加した」が5から0に、「さほど増加していない」が59から74となっている。
国債の取引量の減少傾向に関しては、たとえば8月19日の日銀が公表した「国債市場の流動性指標」のなかでの、「現物国債のディーラー間取引高」や「ディーラーの対顧客取引高」のグラフが低下傾向を示していることからも明らかである。
もちろんこの背景には、日銀の異次元緩和による大胆な国債の買い入れとマイナス金利政策が大きく影響していることも間違いない。いわゆる流動玉というか浮動玉の減少は、いずれ日銀の国債買入において、金融機関保有の国債の引きはがしに限界がくるであろうことも意味している。
この結果がはたして9月20、21日の金融政策決定会合で示される「総括的な検証」にどのように生かせられるのか。国債の流動性が低下していることは明白であり、何らかの対応策が講じられる可能性がある。そのひとつの可能性として国債のイールドカーブのスティープ化がある。短い金利を低いままとし(もしくは更に深掘りし)、長期そして超長期の国債の利回りを上昇させることである。長いところの国債買入ペースを落とすことで日銀の国債買入の限界時期を少しでも先送りすることは可能となる。さらに10年債利回りあたりがマイナスからプラスに転じることになれば、そこにあらためて投資家需要も見えてくることになり、国債市場の流動性が回復する期待も出てこよう。
久保田博幸
金融アナリスト
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。
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