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コラム:
日銀緩和の株高円安効果、9月復活へ
木野内栄治大和証券 チーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト
[東京 31日] - 筆者は、9月から日銀の政策による株高・円安効果がよみがえると考えている。まず、上場投資信託(ETF)購入増額の株高効果が、2日以降に顕在化するだろう。
周知の通り、日銀は7月末にETFの年間購入額目標を3.3兆円から6兆円に引き上げた。日銀は別途3000億円の株式売却の計画があるので、今後は年間で5.7兆円の買い越しペースの公算だ。しかし、結果的に8月の購入ペースは鈍い。増額した形でのETF購入は、8月30日時点で4回しか行えていない。
年間5.7兆円ペースの購入目標額を消化するためには、毎月7回程度の買い入れ実施が必要だ。日銀はこれまで前場に市場がそれなりに下落したことをトリガーにして、後場にETFを購入してきたように見えるが、このトリガーを変える必要に迫られている。
日銀はすでに8月中旬にもトリガーを変える方向に内規を見直しているようにも感じるが、公表されている購入金額は毎月第二営業日から変更されることが常態化している。よって、日銀がより積極的に行動し始めるのは9月2日からになる可能性が高いと考える。
<日銀ETF購入で最大約3000円の株高効果>
5.7兆円の株高効果は大きい。過去25年間を見て、この規模以上の買い越し主体が登場した年は5回しかなく、そのいずれの年も日経平均は上昇している。これらの年の大幅買い越し主体は結果的にすべて外国人投資家だったが、元来リスクテイク能力の大きい外国人は日銀のETF購入に追随すると考えるべきだ。
つまり、5回の中でも買い越し額が大きい上位の3回が参考にできると思う。2013年、2005年、1999年で、最大買い越し主体(外国人投資家)の買い越し額はそれぞれ15.1兆円、10.3兆円、9.1兆円、日経平均の上昇幅は5896円、4623円、5092円だ。5.7兆円当たりの上昇幅に換算すると、2000円から3000円程度となる。
日銀の大規模な購入に対し、まとまった売却ができるのは、結果的に国内機関投資家しか残らないと思う。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)+4共済」の保有株式は昨年度末に約38.8兆円で、この時価が14.7%上昇すると5.7兆円の時価上昇となり、その分、新たな売却余地が生じると言える。
乱暴な試算だが、やはり日銀による5.7兆円の買い入れインパクトは、年間で2000円から3000円程度、日経平均を持ち上げる要因と推計できる。
<ETF購入はリスクオフを和らげる金融緩和策>
ところで、ETF購入に関しては誤解が多い。日銀のETF購入時に市場がどう反応しているかを、統計的に分析した結果、株価が下落していることが多いとの主張を目にすることがある。これは、上述のように下落したときに買っているのだから当然だ。因果関係が逆転した分析である。
一方、下落したときだけ買うのだから下支えになりこそすれ、株高にはならないとの指摘もある。しかし、どんな投資家でも安い時に仕入れたいと行動している。下値が切り上がるなら複数日ベースでは株高に作用するだろう。
また、日銀によるETF購入(株式買い支え)が金融緩和策と言えるのかと揶揄する声もあるが、日本株が下落してしまう場面では、同時に円高が進んでしまうことも8月には多かった。ETF購入による株式市場での安心感が、円高を阻止していた面があったことが明白になったと言える。ETF購入はリスクオフを和らげる立派な金融緩和策であることが証明された。
さらに、日銀のETF購入はコーポレートガバナンスを歪めるとの批判にも事実誤認が多い。議決権行使などは日銀が行うものではなく、運用会社が自らの判断で実行している。ETFの運用会社はどこも厳しく株主としての立場を貫いていると思うので、平均的な小口の投資家よりも企業へのプレッシャーは強い株主だと言える。日銀によるETF購入はコーポレートガバナンスが強化される方向に作用していると思う。
<ドル円は今年6月に底を打った可能性大>
日銀の金融政策とは離れるが、筆者は足もと円安にもなりやすいと思う。まず、8月30日には英ARMホールディングス(ARM.L)の株主総会でソフトバンク(9984.T)による買収が了承された。9月5日には買収完了となる公算だ。
ソフトバンクからは買収資金の為替レートは固めていると発表されているが、米スプリント買収時にも2013年7月10日の買収完了に向けて円安傾向が示現した。足もと円の需給は軟弱な可能性が高い。
また、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は8月26日、カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)のスピーチで非農業部門雇用者増加数の3カ月平均に言及した。この3カ月平均で見た非農業部門雇用者数は、昨年12月に利上げに踏み切った時点では21.8万人の増加だった(当時の最新ベース)。
今回は3カ月平均から外れる5月分のデータが小さい関係から、8月分が10.7万人しか増加しなくても3カ月平均は昨年12月時点と並ぶ。利上げのハードルはかなり低くなったと思う。米利上げ予想は円安要因だ。
これには伏線がある。5月27日にイエレン議長はハーバード大学での講演と質疑で、物価と雇用は改善が続き、今後数カ月内での利上げがおそらく適切だろうと指摘し、6月、7月の利上げの地ならしを行った。しかし、その一週間後に発表された5月の非農業部門雇用者増加数が激減してしまい、イエレン議長の面目がつぶれたと同時に、利上げは先送りとなった。
この経験からか、あるいはそもそも雇用統計がブレのある統計だからか、今回は3カ月平均を持ち出した。8月の雇用統計が発表されれば、3カ月平均からこの5月のデータが外れる。おのずと平均値は上昇しやすい。イエレン議長には今度こそ利上げをしたいとの秘かな決意があるのかもしれない。
なお、歴史的なパターンとして、米国で利上げが開始されるとドル高材料がいったん出尽くしてしまい、ドルはピークを形成してしまうことが多い。しかし、利上げ開始から6カ月程度でドル反落トレンドが終了するのも、よく見られるパターンだ。
よって、今回なら利上げを開始した昨年12月から半年経過した今年6月のドルボトム/円ピークが、ドル安トレンドの終焉だった可能性が高い。特に6月のボトムは英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択に伴うショック安で形成されたので、1ドル99円を簡単には割り込まないと考えられる。
ドル円レートは、下値を更新しないならば、その25日線は応当日の関係から9月2日から6日に上向きやすい(一目均衡表で言えば遅行スパンが現在値を上回る好転が示現しやすい)。チャート面では円安加速のきっかけになる可能性がある。
余談かもしれないが、株式市場でも騰落レシオ(25日)は、すでに底入れた可能性があり、遅くても9月5日を境に上昇に転じやすい。足もと、日本の金融市場はリスクオンとなる可能性が高い時期と言えるだろう。
<総括検証は黒田日銀が神通力を取り戻す好機>
そして、日銀が9月21日に公表する総括的な検証にも期待がかかる。金融庁は日銀のマイナス金利政策による銀行への影響を調査し、収益悪化が銀行の貸し出し余力の低下につながるとの懸念を日銀に伝えたと報じられた。調査結果は総括的検証の材料になるという。
実際、マイナス金利を導入した国の株価収益倍率(PER)は、そうでない国と比べて3倍から4倍ほど低くなってしまうことが観測される。2014年以前は英国とドイツのPERはピッタリ連動していたが、欧州中銀(ECB)がマイナス金利政策を導入してからは大きく差がついてしまった。英国と日本のPERも2014年頃は連動していたが、いまでは大きな差がある。
日本の株式市場では、マイナス金利政策によって銀行株が大きく値を崩した。金融庁の指摘を市場は事前に理解していたと言える。ただ、マイナス金利政策がいったん棚上げされたり、深掘りがあってもイールドカーブが立ってくるような複合的な施策が打たれたりするならば、銀行株中心に株式市場ではリスクオンムードが広がろう。マイナス金利政策の弊害を差し引いても緩和効果が高いならば、日本のPERは上昇するはずだと思う。
9月の総括的検証で金融緩和効果が復活するとなれば、株高・円安は継続しよう。日銀に対する市場や社会からの不満が収まり、アベノミクス相場の新たなステージに進むことが期待できるだろう。
*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-eiji-kinouchi-idJPKCN116097
コラム:
アップルは格好の標的、欧州委の追徴命令
Richard Beales
[ニューヨーク 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州連合(EU)欧州委員会は30日、アイルランドが米アップル(AAPL.O)に違法な税優遇を与えたとして、同社から最大145億ドルを追徴課税で取り戻すよう指示した。米財務省はこの措置に反発、アップルとアイルランド政府も不服として控訴する構えだ。課税を巡る世界規模の争いに発展する恐れが高まった。
米財務省が反発しているのは米企業が標的にされたからという面もあるが、それだけではない。税金は往々にしてゼロサム・ゲームだ。仮にアイルランドが欧州委の指示に従って追徴課税を実施した場合、米国への納税分が減る可能性がある。米議会は同様の理由で、米企業が合併を通じて海外に本拠地を移し、節税を行う手法を批判してきた。
大企業が十分に税金を支払っていないという懸念は多くの国で共有されているため、海外子会社への売上高やコストの移転については世界中が目を光らせている。しかし今回のケースでは、アップルはアイルランド政府との間で、投資と雇用創出と引き換えに税優遇を受けるという取引を明示的に結んでいた。これが違法だというなら、責められるべきはアップルではなくアイルランド、あるいはEUだろう。
アップルは潔白ではないが、唯一無二の存在感と2320億ドルに上るキャッシュゆえに、標的になりやすいのは確かだ。少なくともここ数年、連結ベースの実効税率は26%と、他の多くのハイテク企業に比べて高い。
アイルランドは既に、アップルに対する優遇措置の一部を打ち切った。ただ、依然として税率は低く、租税回避地としての顔を持っている。これに張り合って他の国々、最終的には米国までが税率を引き下げ始めれば、非生産的な「底辺への競争」につながる恐れがある。
例えば経済協力開発機構(OECD)は、利益が実際に生み出された場所で適切に課税する方法について、共通認識を形成しようと努めている。しかし超人的な無私の精神でもない限り、各国が自国の利益を後回しにして公正性で協調するのは不可能だろう。
●背景となるニュース
*欧州委員会は30日、アイルランドのアップルに対する優遇税制が違法な政府補助にあたるとし、アイルランドに最大130億ユーロ(145億ドル)の追徴課税を実施するよう命じた。
*欧州委員会は、他の国々がアップル子会社の利益に関して追徴課税するなら、アイルランドの分を減額する可能性があるとしている。
*米当局がアップル子会社に対し、2003年から14年の調査・開発費の米本社への支払いを増やすよう命じた場合にも、減額の可能性がある。
*アイルランド財務省は、欧州委の決定にまったく同意できないと表明。ヌーナン財務相は控訴の手続きをとる方針を示した。
*アップルも控訴する方針を示した。
*欧州委が指示した追徴税は、過去の同様のケースの40倍に当たるが、アップルの手元資金の6%にしか相当しない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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情報BOX:EUがアップルに追徴税支払いを命じた理由
[ロンドン 30日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州委員会が30日、アイルランドの米アップル(AAPL.O)に対する税制優遇措置が違法な政府補助だとして、アップルに最大130億ユーロ(145億ドル)の追徴税支払いを命じた。その理由などについてQ&A形式で以下にまとめた。
─欧州委の主張は。
欧州委は、アイルランドがアップルに適用している税制優遇措置には、税法上の根拠がないと判断している。欧州委によると、アップルがアイルランドに工場を建設する見返りに納税額をほぼゼロにする取り決めは不公正で、通常の税制の下での金額を支払うべきだという。
─アイルランドが課税しないのになぜEUが懸念するのか。
EUの考えでは、企業への課税を甘くすることを見過ごせば、まともな税制を敷いている国から投資や雇用が流出してしまう。またアイルランドの優遇措置を享受しているアップルが毎年得ている多額の利益は、ほとんどがアイルランドの外で生み出されている。だからアイルランドの措置が他のEU加盟国が確保できるはずの税収を奪っているという理屈だ。
─アイルランドは予期せぬ税収を手に入れるのか。
当面はそうならない。アイルランドの財務相は、欧州委の判断を不服としてEU司法裁判所に提訴する方針を表明。アップルも何らかの法的措置を講じるかもしれず、専門家によるとアイルランド国内の裁判所で納税要求に異議を申し立てることができる。
─アップルが命令を受け入れる可能性は。
アップルには現金と市場性証券合わせて手元に2000億ドル強があるので、支払い能力は確実にある。だが130億ユーロは同社にとって大きな金額でない。このためこの問題が決着しないことによる不透明感が投資家に懸念を生むとは思われず、株主が解決を急げと圧力をかけそうにもない。同社が納税に関する慣行の堅持に意欲的なことは、クック最高経営責任者(CEO)の議会証言でも証明されている。
─米政府の考えは。
米財務省と議会は、EUが税制を巡る判断に独占禁止法を用いることに批判的。こうしたやり方は米国企業を狙う撃ちにして、受け入れられている国際的な慣行から逸脱し、米国から欧州への投資を脅かしていると主張している。
米財務省は先週、欧州委が現在の方針を続けるなら対抗策を検討する意向をにじませた。米国の法律では、米企業に差別的な課税を適用する国や人物に対しては、大統領が課税額を2倍にする権限を認めている。
─EUがこの争いに勝利すれば、多国籍企業はEU域内で課税逃れできなくなるのか。
そうはならない。今回の場合、アイルランド政府当局者がアップルとの取り決めについてで異例なほどあからさまに説明している文書を欧州委が入手することができた。
しかし今後、税制優遇を通じて企業投資を確保したいと考えるEU加盟国は、文書を残すにあたってもっと慎重になるだろう。
欧州委としても、ある取り決めが一般的な税制慣行から「極端に」逸脱しているという明確な証拠がなければ、追徴税支払い命令は出しにくいだろう。
ポンド3週間ぶり高値、英経済堅調でショート巻き戻し
アングル:政治・金融リスクは二の次、欧州債買いに走る投資家
EU、通信事業者向け帯域免許提案へ 有効期間は最低25年
EU、鋼鉄の反ダンピング措置強化へ
ポンドがEU離脱決定後安値に迫る、週内の経済指標注目
http://jp.reuters.com/article/eu-apple-taxavoidance-q-a-idJPKCN1160D7
EUの次の標的、アマゾンとマクドナルドか−税優遇問題
欧州委員会は、アマゾン・ドット・コムとマクドナルドがルクセンブルク税務当局と交わした税制の取り決めを調査している
By ERIK HOLM
2016 年 8 月 31 日 04:07 JST
欧州連合(EU)が照準を定めた米国企業はアップルだけではない。
EUの執行機関である欧州委員会は、アップルがアイルランド政府の援助によって競争上、不当に有利になったと判断した。欧州委は次に、進行中の2件の調査に矛先を向けそうだ。アマゾン・ドット・コムとマクドナルドがルクセンブルク税務当局と交わした税制の取り決めに対する調査だ。
ベステアー欧州委員(競争政策担当)は2015年に、マクドナルドの調査はルクセンブルク子会社「マクドナルド・ヨーロッパ・フランチャイジング」に適用された09年の取り決めに関わるものだとした上で、これによりマクドナルドは「ルクセンブルクでも米国でも欧州のロイヤルティーについて税金を全く支払わない」ことになったと指摘した。
欧州委によると、マクドナルドの欧州とロシアのフランチャイズ加盟店からロイヤルティー料を集める、この子会社の利益は13年だけで2億5000万ユーロを超えた。
アマゾンの場合、問題視されている税務当局との取り決めは03年にさかのぼる。この取り決めはアマゾンのルクセンブルクに拠点を置く子会社に適用された。当局は14年、アマゾンに対して設定されたルクセンブルクの税制措置が、課税所得の過小報告を可能にしている恐れがあると述べた。
ベステアー委員は30日、この2件の調査の完了時期について具体的なめどを示さなかった。
ルクセンブルクは両社への特別待遇を否定している。アマゾンとマクドナルドは、欧州で適切に納税してきたと主張した。それでも両社は年次報告書で、不利な調査結果が出れば追徴課税される可能性があると警告した。
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiBurOXhOvOAhXCn5QKHT5pBlcQFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11655255021065154097004582283874000259132&usg=AFQjCNGqj7Mll4hXOgb-kdIkACbmoPN8zg
EUのアップル追徴課税 早わかりQ&A
By WSJ STAFF
2016 年 8 月 31 日 10:47 JST
欧州連合(EU)は30日、 米アップルがアイルランドに支払うべきだった約130億ユーロに及ぶ税金を納めていなかったとの判断を示した。EUは、アップルがアイルランド政府との取り決めによって、10年以上にわたりEU域内の利益にかかる税金のほぼ全額を回避していたと指摘した。今回のEUの決定について知っておくべきことを以下にまとめた。
アップルとアイルランドの間に何があったのか
アップルは1980年、アイルランドのコークに工場を設立した。同社は現在、同国各地で6000人近くを雇用している。同社はまた、欧州本部を同国に置いている。
欧州委員会は、アップルがEU域内で上げた利益を全てアイルランドに移転したと指摘、同国で非常に低い税率で税金を納めていたと述べた。
EUの対応は
EUの「国家補助規制」は、企業が政府の支援を得て、同業他社より優位に立つことを禁じている。
EUの独禁規制当局の役割を担う欧州委員会は、アイルランドが1991年と2007年にアップルに与えた税に関する取り決めにより、アップルは03年から14年までの間にEU域内で上げた利益について、その1%未満、つまりほぼゼロの税率で税金を納めることが可能になっていたと述べた。
アップルが支払うべき金額は
欧州委員会はアップルが03年から14年の間に違法に得た税優遇利益として145億ドル(約1兆4900億円)と利子を支払うべきだと述べた。
それは過去最高額か
そうだ。アイルランドがアップルから回収すべきとされた額は、EUで長年施行されている国家補助に対する規制に基づいて要求される金額としては過去最高だ。
だが、金額はもっと多かった可能性があった。欧州委員会が最初に情報提供を要請したのは13年のことだったが、欧州委が違法な国家補助の返還を命じられるのは、それ以前の10年間のみだからだ。
低い税率での納税はどうして可能だったのか
欧州委員会は、アイルランドからアップルに下された2つの税関連の判定により、「1991年以降、アップルがアイルランドで支払う税率が大幅かつ人為的に低くなった」と指摘している。
これらの判定は、アップルがアイルランドで設立した2社(アップル・セールス・インターナショナルとアップル・オペレーションズ・ヨーロッパ)が納めるべき税額の決定方法を是認した。
2社が計上した収益のほぼ全ては、社内的に「ヘッドオフィス(本部)」に帰属するとされた。だが、ヘッドオフィスは書類上でしか存在しないため、そのような利益を上げることは不可能だったはずだと欧州委は指摘している。
こうした利益は、アイルランドの税法の特定条項(現在は無効になっている)の下、どの国の税金の対象にもならなかった。このため、アップルはアップル・セールス・インターナショナルの利益に実効法人税率をかけた分しか納めなかった。実効法人税率は03年の1%から14年には0.005%にまで引き下げられていた。
アップルは何と言っているのか
アップルは30日付の声明で、この決定に正式に異議を申し立てる意向を示した。また同社が「法律に従っており、事業を運営する全ての国で、課税された税金は全て納めている」と付け加えた。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は30日付の顧客に宛てた書簡で、「多国籍企業にかかる税金は複雑だ。だが、基本的な原則は世界中で認識されている。それは、企業の利益に対する課税は、価値が創造された国でなされるべきだという原則だ。アップルとアイルランドと米国は全てこの原則に同意している」と述べた。
アイルランドは何と言っているか
アイルランドのヌーナン財務相は、「欧州委員会の判断には全く同意できない」と述べ、「わが国の税制の整合性を守る」ため、決定に異議を申し立てる意向を示した。
米国はこの決定をどう思っているのか
米財務省は以前、不正に米国企業を標的にしているとしてEUによる税調査を批判し、国際的な税慣行から逸脱していると主張していた。
財務省の報道官は30日、同省がこの決定に落胆しているとし、「欧州委がさかのぼって適用される税評価を行なったことは不公平であり、確立された法原則に反している。個々の加盟国の税規則に疑問を投げかけるものだ」と改めて述べた。
標的になっている企業は他にあるか
ある。欧州委員会は、ルクセンブルクでの税の取り決めをめぐり、米ネット通販大手のアマゾン・ドット・コムとファストフード大手マクドナルドの調査を続けている。
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最終更新:8月31日(水)11時42分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160831-00011349-wsj-bus_all
年364日ほったらかし、ロボット活用クオンツファンドが為替で勝つ理由
Rebecca Spalding
2016年8月31日 13:53 JST
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• PGIのシステム運用モデルは毎年1月に先を読んでポジション構築
• グローバル・タイム・ディバーシファイドは年初来プラス13.8%
多くのヘッジファンド同様に、プリンシパル・グローバル・インベスターズ(PGI)のマクロ・カレンシー・グループもトレーディング戦略を編み出すのにコンピューターモデルを駆使する。他と違うのは、そうするのは年1回だけという点だ。
同社では毎年1月、コンピューターによる長期経済見通しが向こう1年の重要なトレーディングポジションを決める。その時点では方向性が正しく感じられないこともある。今年の初めは円が対スイス・フランで上昇するとの見通しだった。これに対し、当時の市場予想は年内ほぼ変わらず。
データケーブル
Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg
PGI(ロンドン)でクオンツ戦略責任者を務めるイバン・ペテイ氏は「円を大きく買い持ち(ロング)にするのは、年初はあまり一般受けする賭けではなかった」と述べたが、コンピューターモデルを信頼していたという。「心配していたのはむしろ、いつ現実のものとなるかということだった」と付け加えた。
この取引が吉と出るのに1年とかからなかった。円は今年これまでに対フランで14%上昇。避難通貨としての需要に加え、日本銀行の金融緩和はインフレ喚起に不十分とみられたからだ。運用資産8億3000万ドル(約860億円)の「グローバル・タイム・ディバーシファイド・ストラテジー」の年初来リターンはプラス13.8%と、シティグループが調査対象とする30本のファンドの中でランキング3位。ヘッジファンド・リサーチがまとめるHFRIマクロ・カレンシー指数が示す1ー7月のプラス2.9%の5倍に近い。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iORPMxRScykY/v2/-1x-1.png
1年に1回だけの戦略決定の鍵を握るのは、製造業データや他の先行指標などコンピューターが分析する経済指標の選び方にある。もう一つの鍵はPGIがコンピューターだけに頼らない点だ。1年の残りの期間は、マーク・ファリントン氏が率いる運用担当者ら人的資源に頼り、短期的な変動を引き起こすイベントを基に人間が取引し、リスクに対してポートフォリオを調整する。
ペテイ氏はコンピューターモデルによるポジション構築を年1回とする理由について、「バリュエーションや成長、ベンチマークといったそれぞれ別の要因の計画対象期間が1年だからだ。1年の中のどこかとか1週間、6カ月で起きることには、裁量的に対応する」と説明した。
オックスフォード大学で物理の博士号を取ったペテイ氏(40)は2006年にリスクアナリストとしてPGIに入社。ファリントン氏とともに、世界の経済成長の動きを取り込むファンド設立の必要性を感じたが、低金利通貨を借りて高金利国に投資する通常のキャリー取引とは別の形態を選んだ。「世界の成長に長期で賭ける為替市場でのベンチマーク戦略をつくってはどうかと考えた。当時、そのようなものが存在しなかったからだ」と話す。
こうして20年以上分に及ぶ経済統計を検証して戦略に用いる成長指標を見いだし、07年に取引試行を開始。11年から本格的に運用している。ファンドの年間リターンは設立以降、平均して5%以上。このおよそ半分がコンピューターが編み出す戦略、残る半分が人間がベースの取引によるものだという。PGIにはまた、これとはまったく別にトレーダーが完全に戦略を決める裁量ベースのファンドもある。
‘https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iwN7XOPy6jQs/v2/-1x-1.png
ヘッジファンドのコンサルティング会社エージクロフト・パートナーズ(米バージニア州リッチモンド)のマネジングパートナー、ドン・スタインブルッゲ氏は大半の「システム運用ファンドは常にコンピューターを動かし、時には1日中トレーディングを多く繰り返す」と指摘。「取引のポジションをつくって、それを1年間そのままにするというのは極めて異例だ」と述べた。
コンピューターによる年初の見通しのタイミングが悪かったケースはある。15年はスイス・フランを売り持ち(ショート)としたが、この2週間後にスイス国立銀行(中央銀行)は対ユーロでのフラン上限を撤廃、フランはドルに対して1日で21%上昇した。それでもPGIは15年末までフランのショートを維持。それまでにフランは年初の水準に戻り、同社は今年もこの戦略を続けている。
原題:Quant Fund Gives Robots 364 Days Off to Best Currency Rivals (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-31/-364-isifg3al
9月米利上げ、警戒すべき欧州銀行株と人民元の下落
田巻 一彦
[東京 31日 ロイター] - 9月米利上げ観測が、ジワリと高まってきた。東京市場では円安/株高現象となり「追い風」を好感する声が多い。しかし、油断は禁物だ。週末の8月米雇用統計を受け、9月利上げの「確信」度合いが上昇した場合、銀行経営に懸念の残る欧州や、不透明感の色濃い中国からの資金流出が表面化するリスクがある。
世界経済の成長力が弱まっている中で、米利上げの「反作用」を受け止めることができるのか、これから試される。
<フィッシャー発言でドル103円台>
米連邦準備理事会(FRB)のフィッシャー副議長は30日、ブルームバーグTVのインタビューで、米労働市場は完全雇用に「極めて近い」と発言。利上げペースは経済情勢によると述べた。次の利上げ時期は明確に指摘せず「われわれはデータに基づいてペースを選択する」と語った。
9月利上げがあるのかないのか、このコメントだけからは「両面」の解釈が可能だが、外為市場では利上げの可能性が高まったとの見方が広がり、ドル/円JPY=EBSは発言後に103円台に乗せた。
9月2日に発表される8月米雇用統計で、非農業部門の雇用者増加数が市場予測の18万人を超えれば、米短期市場の9月利上げの織り込み度合いが、現在の24%から上昇するのは間違いないだろう。
東京市場では、円安が進行すれば株高がさらに進展すると期待する声が多い。つまり9月利上げへの期待感が全体としてかなり高いという「心理的バイアス」がかかっている。
<9月米利上げの落とし穴>
しかし、ここには大きな落とし穴が待ち受けている可能性がある。予想外の「据え置き」というショックで、円高/株安の逆回転相場の可能性を指摘する声は、すでに少なからぬ市場参加者から出ている。
ただ、私が懸念するのは、そのシナリオではない。9月利上げの可能性が高まり、現実に利上げが決断された場合、世界経済に起きると予想されるマネーフローの大きな変化だ。
利上げで米市場にマネーが流入するとみられるが、問題はどこからの流出が大きいかだ。ブラジルなどの中南米やトルコ、南アフリカなどの通貨、株価が下落するのは、かなりの程度、織り込まれているだろう。
焦点は、ユーロ圏と中国からのマネー流出が表面化するというリスクシナリオ浮上のケースだ。
<不良債権問題くすぶる欧州銀>
欧州系銀行は、欧州中銀(ECB)のマイナス金利政策で利ざやが縮小しているだけでなく、一部銀行は不良債権の拡大が問題視されている。主要銀行の年初からの株価下落をみても、市場の懸念は払しょくされていない。
ここに米利上げの圧力がかかると、リスクマネーが欧州系銀行株から逃げて、ユーロ圏から米国へのマネーシフトが起きる可能性がある。
その動きが大きなうねりになれば、リスクオフのトリガーが引かれる展開もゼロではないだろう。
同じような資金流出のリスクが、中国にもある。貿易収支の動向をみても、輸入の対前年比マイナスは継続し、鉄鋼、化学などの素材型製造業のストック調整は、終息の兆しをみせていない。
国営企業の赤字垂れ流しが、いずれ中国4大銀行の不良債権増大へと発展する懸念を先進各国の当局は共通して抱いている。
今のところ、中国人民銀の強い為替管理によって、人民元は1ドル6.6元台で安定推移しているが、9月米利上げの可能性が現実味を帯び、年内2回の利上げの可能性が出てくると、人民元安が進むリスクもある。
東京市場の参加者にとって、こうしたリスクの予兆を早く察知することが、損失回避に欠かせない。その観点から見れば、注視するべきは欧州銀行株と人民元の動向だ。
2つの価格が動き始めたら、円安/株高で浮かれるのは止めて、マネーフローの変化を丹念にフォローする態勢にシフトすることをお勧めする。
http://jp.reuters.com/article/renminbi-euro-usratehike-idJPKCN1160CK
年364日ほったらかし、ロボット活用クオンツファンドが為替で勝つ理由
Rebecca Spalding
2016年8月31日 13:53 JST
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• PGIのシステム運用モデルは毎年1月に先を読んでポジション構築
• グローバル・タイム・ディバーシファイドは年初来プラス13.8%
多くのヘッジファンド同様に、プリンシパル・グローバル・インベスターズ(PGI)のマクロ・カレンシー・グループもトレーディング戦略を編み出すのにコンピューターモデルを駆使する。他と違うのは、そうするのは年1回だけという点だ。
同社では毎年1月、コンピューターによる長期経済見通しが向こう1年の重要なトレーディングポジションを決める。その時点では方向性が正しく感じられないこともある。今年の初めは円が対スイス・フランで上昇するとの見通しだった。これに対し、当時の市場予想は年内ほぼ変わらず。
データケーブル
Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg
PGI(ロンドン)でクオンツ戦略責任者を務めるイバン・ペテイ氏は「円を大きく買い持ち(ロング)にするのは、年初はあまり一般受けする賭けではなかった」と述べたが、コンピューターモデルを信頼していたという。「心配していたのはむしろ、いつ現実のものとなるかということだった」と付け加えた。
この取引が吉と出るのに1年とかからなかった。円は今年これまでに対フランで14%上昇。避難通貨としての需要に加え、日本銀行の金融緩和はインフレ喚起に不十分とみられたからだ。運用資産8億3000万ドル(約860億円)の「グローバル・タイム・ディバーシファイド・ストラテジー」の年初来リターンはプラス13.8%と、シティグループが調査対象とする30本のファンドの中でランキング3位。ヘッジファンド・リサーチがまとめるHFRIマクロ・カレンシー指数が示す1ー7月のプラス2.9%の5倍に近い。
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1年に1回だけの戦略決定の鍵を握るのは、製造業データや他の先行指標などコンピューターが分析する経済指標の選び方にある。もう一つの鍵はPGIがコンピューターだけに頼らない点だ。1年の残りの期間は、マーク・ファリントン氏が率いる運用担当者ら人的資源に頼り、短期的な変動を引き起こすイベントを基に人間が取引し、リスクに対してポートフォリオを調整する。
ペテイ氏はコンピューターモデルによるポジション構築を年1回とする理由について、「バリュエーションや成長、ベンチマークといったそれぞれ別の要因の計画対象期間が1年だからだ。1年の中のどこかとか1週間、6カ月で起きることには、裁量的に対応する」と説明した。
オックスフォード大学で物理の博士号を取ったペテイ氏(40)は2006年にリスクアナリストとしてPGIに入社。ファリントン氏とともに、世界の経済成長の動きを取り込むファンド設立の必要性を感じたが、低金利通貨を借りて高金利国に投資する通常のキャリー取引とは別の形態を選んだ。「世界の成長に長期で賭ける為替市場でのベンチマーク戦略をつくってはどうかと考えた。当時、そのようなものが存在しなかったからだ」と話す。
こうして20年以上分に及ぶ経済統計を検証して戦略に用いる成長指標を見いだし、07年に取引試行を開始。11年から本格的に運用している。ファンドの年間リターンは設立以降、平均して5%以上。このおよそ半分がコンピューターが編み出す戦略、残る半分が人間がベースの取引によるものだという。PGIにはまた、これとはまったく別にトレーダーが完全に戦略を決める裁量ベースのファンドもある。
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ヘッジファンドのコンサルティング会社エージクロフト・パートナーズ(米バージニア州リッチモンド)のマネジングパートナー、ドン・スタインブルッゲ氏は大半の「システム運用ファンドは常にコンピューターを動かし、時には1日中トレーディングを多く繰り返す」と指摘。「取引のポジションをつくって、それを1年間そのままにするというのは極めて異例だ」と述べた。
コンピューターによる年初の見通しのタイミングが悪かったケースはある。15年はスイス・フランを売り持ち(ショート)としたが、この2週間後にスイス国立銀行(中央銀行)は対ユーロでのフラン上限を撤廃、フランはドルに対して1日で21%上昇した。それでもPGIは15年末までフランのショートを維持。それまでにフランは年初の水準に戻り、同社は今年もこの戦略を続けている。
原題:Quant Fund Gives Robots 364 Days Off to Best Currency Rivals (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-31/-364-isifg3al
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