http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/535.html
Tweet |
日本株、独歩高のカラクリ 特殊な需給要因
[東京 29日 ロイター] - 日本株が独歩高となっている。他のアジア株はジャクソンホール後の米利上げ観測の強まりを警戒し、軟調もしくは小幅上昇となっているが、日本株だけは2%近い大幅高。だが、そこには特殊な需給要因など「カラクリ」があるようだ。株高にもかかわらず、売買代金は低調で盛り上がりは乏しい。
<需給イベントの反動>
「カラクリ」の1つは、ファミリーマート(8028.T)とユニーグループ・ホールディングス8270.Tの経営統合に関するイベント。ユニーが上場廃止となり、日経平均構成銘柄にファミリーマートが新規採用されることが決まった。日経平均連動型のファンドなどは、連動性を保つために、ファミマ株を新たに買う必要がある。
市場推計で、その額は1430億円。一方、ファンド内の銘柄ごとのウエートを調整するため、それと同額の売りをファミマ株以外に幅広く出さなければならない。この需給イベントの発生は前週26日の終値で発生することがわかっており、「短期筋が株価下落を見込んでショートポジションを組んだようだ」(国内証券)という。
こうした銘柄入れ替えに伴う需給イベントは、本来はマーケット全体には中立要因だ。しかし、短期筋がそれに便乗すれば影響は大きくなる。26日の日経平均.N225は195円安。日銀のETF(上場投資信託)買いが719億円入ったにもかかわらず、大きな下げとなった。
29日の市場で、日本株が大幅高となったのは、この短期筋のショートポジションが巻き戻されたことが大きいとみられている。ジャクソンホールでのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長講演などを材料に、早期の米利上げ観測が再浮上。ドル高/円安が進んだことで、短期筋が円買い・日本株売りポジションを巻き戻したという。
日経平均は376円(2.30%)高と、さえない他のアジア株を大きく引き離したが、需給イベント前の前週木曜日(25日)の終値と比較すれば、182円(1.10%)高と比較的マイルドな上昇率となる。
<巻き戻しの円安>
もう1つの株高要因である円安にも「カラクリ」がある。
米商品先物取引委員会(CFTC)が26日発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(8月23日までの1週間)によると、対ドルの円ポジションは6万0316枚の円買い越し。前週から約4000枚増加している。足元の円安は、この短期筋の円ロングポジションの巻き戻しが主体との見方が多い。
ジャクソンホールを経て、米国の9月利上げや年2回利上げの警戒感が強まったとはいえ、イエレン講演直後の短期金利先物相場が織り込む利上げ確率は、12月が五分五分で、発言前からほぼ変わらず。9、11月の予想確率はむしろ低下した。利上げ観測が高まらないなかでのドル高・円安はポジションの動きに他ならない。
日本株が独歩高となる一方、多くのアジア株は米利上げにともなう資金流出を警戒し軟調だ。リスクオフの局面では、ドル買いとともに円買い需要も発生する。ドル高・円安がさらに進行するかは、世界的な株安などリスクオフが発生しないことが条件となる。
シティグループ証券・チーフFXストラテジストの高島修氏は「FRBのタカ派スタンスを背景とする米金利上昇とドル高を受け、米株は史上最高値圏から調整色を強め、アジア以外の新興国市場も下落に転じた。今後、こうしたリスク回避の動きがドル/円には逆風となるだろう」とみている。
<低下する売買代金>
日経平均の予想株価収益率(PER)は約14倍。世界的にみても低い水準にある。米利上げ観測が強まる一方で、リスクオフが広がらず、円安が進むという好条件がそろえば、日本株も買われる可能性もある。
しかし、今の日本株には日銀によるETF(上場投資信託)買い、もしくはそれへの期待が下支えているという「カラクリ」がある。こうした世界でも特殊な需給要因を短期筋がはやして買いを入れたとしても、あくまで一時的。短期筋は文字通り、短期間でポジションを中立に戻すために売りを出す。
持続的な株高には長期投資家の買いが不可欠だが「公的年金や日銀などの買いが大きな存在感を示すようなマーケットに、海外の長期投資家などの良質なマネーは入ってこない。ファンダメンタルズで株価が評価できなくなるからだ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。
需給要因や海外要因を材料にした短期筋の売買だけが、株価を左右するようなマーケットに魅力は乏しい。
29日の東証1部売買代金は1.8兆円。日経平均が一時400円高したにもかかわらず、盛り上がりに欠けるボリュームだった。日銀が7月29日にETF購入枠を6兆円に倍増した後、売買代金は低下傾向にあり、目安とされる2兆円を割り込む日が多くなっている。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/tokyo-stocks-up-idJPKCN1140U4
関西は高齢化が進んでも生産力は落ちない
今こそ明るい未来予測 先行き不安を吹き飛ばせ
専門家が大胆予測
2016年8月30日(火)
西 雄大
日本は世界に先駆けて高齢化社会を迎えるとみられている。2025年には約30%、2060年には約40%が高齢者となる見込み。課題先進国ともいうべき日本のなかで、さらに課題先進地域がある。それが関西だ。三大都市圏のなかで最も高齢者比率が高く、若者の転出も多い。2025年の大阪の生産年齢人口は2010年に比べ11.6%減と、人手不足が加速する可能性が高い。
そんな関西だが、課題が先に浮き彫りになるからこそ、イノベーションが生まれるとみる専門家がいる。りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「デフレ脱却が前提となるが、関西は現状のGDPを維持し、若者は高い所得を得られる街になれる」とみる。
ただGDPを維持するにも、人手が足りなければ実現できない。荒木主席研究員は不足分をロボットでカバーできると予測する。付加価値の高い領域だけ人が担うように役割分担することで、所得が増える未来を描く。IT(情報技術)やIoTを活用し、人手不足を補う。関西は2020年までに10万人ずつ人手不足が懸念されているため緊喫の課題だ。荒木主席研究員はこうした省力化に関する市場は2020年までに1兆8500億円になると試算する。
にしなかバレー参加企業の1社、デイサービス施設を運営するポラリス。参加企業と連携し新たなサービス開発を模索する
この市場を狙って、若手起業家が大阪に集まりだしている。にしなかバレーがそれだ。大阪市営地下鉄御堂筋線「西中島南方駅」周辺に若手起業家が集まる。大阪の中心地、梅田へも新幹線に乗るにも数駅と利便性が高い。その割に賃料が安く起業家が集まりやすい環境が整っている。にしなかバレーの代表でアイプラグの中野智哉社長は「様々な業種の起業家が集まっているので連携もしやすい」と話す。
アクティブシニアに狙いを定める
関西は省人化市場だけでなく、高齢者が多いことで内需拡大やイノベーションの創出も見込まれている。
まず内需拡大には、高齢者のなかでも十分な資産と若者並みの消費意欲と健康を兼ね備えた人たちが牽引役となる。これらの高齢者がしっかりとお金を使うことで内需を拡大する牽引役を担う。
こうしたアクティブシニアを狙った企業も増えてきた。ゴルフウエアを製造するグリップインターナショナル。神戸市に本社を置き、主に百貨店でゴルフウエアを販売するブランドを持つ。一般的な商品よりも2〜3割ほど高いが売れているという。
桑田隆晴社長は「高齢者のなかでもいつまでも40歳の気分を持ちたいと思っている方に売れる」と話す。同社が設定する想定年齢は40歳だが、ゴルフのための上質なウエアを探していた高齢者からも支持を集めている。「ゴルフをスポーツウエアではなく、上質な専用着でプレーしたいというニーズは大きい」(桑原社長)。
ゴルフ以外にも様々な趣味を楽しみたいアクティブシニアが増えてきた。
高齢者向けのレクレーションを開発するBCCホールディングスの伊藤一彦社長は「これまで企業は高齢者がお金を使いたいと思わせる商品を提供できていなかっただけ。しっかりとサービスを提供すれば売れる」と語る。
実際、同社ではデイケアセンターなどで化粧品メーカーと組んで、メイク教室を開く。その際に高級化粧品を案内し評判が良いという。ほかにも、有名寿司店の板前を呼んで食事を提供するなどしている。
今後バリアフリーのレストランと提携し、鉄板焼きや高級レストランのフルコースを食べられるサービスを提供する予定。「美味しい食事は生きる活力になる。食べたいと思う欲求こそが健康には不可欠」(伊藤社長)。
医療と介護でイノベーションを起こせる可能性を秘める。船井総合研究所執行役員で経営改革コンサルティング事業部副部長の岡聡氏は「大阪といえば、ドケチの文化。だからこそ本質のサービスだけが生き残れる」と話す。自然派ワインが飲めるレストラン10店を営む小松屋の藤田牧雄社長も「大阪はほんまもんを求める。でも値段に関してはどこよりも敏感。大阪で成功すればどこでもやっていける」と話す。
実際サービス付き高齢者向け住宅も同質のサービス水準でも価格が安い。介護情報を提供する笑美面の榎並将志社長によると、関西の平均月額費用は10〜13万円。だが東京で同等のサービスを受けるには15〜18万円かかるという。「大阪は介護サービスで工夫をこらすことで低価格を実現できている。将来ロボットが導入されれば、より人手不足時代でも対応できるだろう」(榎並社長)。
医療技術を世界へ輸出
医療分野ではこれまでの地の利を活かせる。関西地区は電機メーカーが多く、関西の輸出の主力業種である。2014年の輸出構成比でみると、電機機器が28.1%と全国平均(17.3%)よりも高い。だが、最近、電機メーカーは海外へ製造拠点の移転が進んでいる。下請けとなる町工場も苦境に立たされている。
大阪の中小企業と大学が連携した「ものづくり医療コンソーシアム」。医療機器が関西の輸出の柱となることを目指す
町工場も医療分野に賭ける。大阪市立大学と大阪府下の中小企業49社が集まり、ものづくり医療コンソーシアムを発足させた。参加企業の1社で航空部品を製造するアオキの青木豊彦会長は「大阪の中小企業を持ち前の技術を医療であれば活かせる。大阪を元気にして後継者も育てたい」と話す。すでに複数の企業と医療機関でプロジェクトが進んでいるという。大阪市立大学の荒川哲男学長兼理事長は「医療とものづくりが融合することで、関西の輸出産業の柱となってもらいたい」と話す。
こうして鍛えられた課題解決力は海外にも確実に輸出できる。課題が多いが山積みだからこそ解決策が生まれるのだ。
このコラムについて
今こそ明るい未来予測 先行き不安を吹き飛ばせ
人口減少、市場成熟、財政悪化、進まぬデフレ脱却に地方衰退。相次ぐテロに英EU離脱、難民危機に新興国経済の減速。国内外問わず、経営環境に明るい兆しが見えてこない。「企業がかつてのように力強く成長する時代はもう来ない」。日々流れる暗いニュースに、そのぐらい悲観的な見方を持ち始めた人もいるはずだ。だが、こんな状況でも、「明るい未来」を予測する専門家や経営者は存在する。日本と世界が抱える諸問題に様々な「一発逆転シナリオ」を描き、他社が思いも付かない大胆戦略に乗り出している企業を取材した。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082500064/082900002/
上野泰也のエコノミック・ソナー
「BRICS」の金利が示している苦難の世界経済
景気刺激の動きが鈍い新興国
2016年8月30日(火)
上野 泰也
日本を含め先進国の多くでは、各中央銀行が政策金利を過去最低レベルまで引き下げている一方、これと対照的に新興国では利下げによる景気刺激の動きが鈍い。今回は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの各中央銀行が近い将来、利下げに動く可能性があるかどうかについて、各国の状況をふまえ考えてみたい。
2015年のBRICS首脳会議で、各国の国旗(左から、ブラジル、インド、ロシア、中国、南アフリカ)の横に立つ、ロシアのプーチン大統領。(写真:代表撮影/AP/アフロ)
金融緩和の流れ続く先進国、利下げの動き鈍い新興国
グローバルな金融緩和の流れが依然続いていることは、8月上中旬にイングランド銀行(BOE)、オーストラリア準備銀行(RBA)、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)が政策金利を過去最低の水準まで相次いで引き下げたことにより、明確に確認されたと言えるだろう。
だが一方で、これらの先進国とは対照的に、新興国では利下げによる景気刺激の動きが鈍い。
ブラジルでは、2015年7月まで連続的に利上げした後、主要政策金利は14.25%で据え置き。
ロシアでは、今年6月に0.5%幅で10か月ぶりの利下げがあったが、その後は据え置き。
インドでは、今年4月に0.25%幅で利下げがあったが、その後は据え置き。
中国では、昨年10月に0.25%幅で利下げがあったが、その後は据え置き。
以上の結果、BRICs(南アフリカ共和国を含まない4か国)の主要政策金利合計値は8月25日時点で35.6%という、かなり高い水準になっている<■図1>。
■図1:BRICs(南アを含まない4か国)の中央銀行の主要政策金利合計値
注: 月末値を合計(2016年8月は25日現在)。ブラジルはSELICレート。ロシアは2013年9月に主要政策金利を公定歩合(リファイナンス金利)から1週間物レポ入札最低金利に変更した。インドはレポレート(政策金利)。中国は1年物貸出基準金利。
出所:BRICs各国の中央銀行データより筆者作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/082600057/zu01.jpg
さらに、BRICS(南アフリカ共和国を含む5か国)ベースで見ると、8月25日時点で42.6%であり、主要政策金利合計値の高止まりは一層明確である。南アフリカ準備銀行(SARB)は2014年1月から2016年3月まで断続的に利上げを実施しており(合計2%幅)、レポレート(政策金利)は現在7%である<■図2>。
■図2:BRICS(南アを含む5か国)の中央銀行の主要政策金利合計値
注:■図1の主要政策金利合計値に、南アフリカ共和国のレポレートを加えている。http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/082600057/zu02.jpg
出所:BRICS各国の中央銀行データより筆者作成
では、これら5か国の中央銀行が近い将来、利下げに動く可能性はあるのだろうか。それぞれの状況を見ておきたい。
インフレ懸念で利下げに動けないブラジル
ブラジルでは今年6月、中銀総裁がゴールドファイン氏に交代した。そして、7月の金融政策会合で主要政策金利は14.25%に据え置かれた。レアル相場上昇による輸入物価押し下げで、インフレ率は1ケタ台に低下している。だが、同総裁は8月5日付の新聞インタビューで、インフレ率を2017年に目標値(3〜6%で中心値は4.5%)に収めるにはさらに努力が必要と述べ、当面利下げに動くつもりはないことを示唆した。リオデジャネイロ五輪終了後には経験則に沿って開催国ブラジルの景気悪化が予想されるが、それもにらんだ利下げへの路線変更は、まだ起こりそうにない。
ロシアの中央銀行は7月29日、主要政策金利を10.5%に据え置いた。すでに述べたように6月に利下げに動いたものの、インフレ率の低下継続に向けて適度な金融引き締め政策を維持する必要があると判断した。この国の景気はエネルギー価格動向、物価はルーブル相場の騰落に左右されやすい。また、プーチン政権の強権的な政治姿勢が欧米諸国などの経済制裁を惹起して、ロシア経済を圧迫している。政策金利が為替防衛目的で大幅に引き上げられた水準にあるため、断続的な利下げが今後見込まれるものの、そのタイミングは不明確である。
インド準備銀行(RBI)は8月9日、主要政策金利のレポレートを6.5%に据え置いた。6月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年比+5.77%になり、4%±2%の範囲内にCPI上昇率を収めるというRBIが新たに採用した物価目標の上限近くだったことから、市場の予想通りの決定だった。その後、8月12日に発表された7月のCPIは前年比+6.07%に加速しており、追加利下げは当面困難だろう。
9月4日に任期が満了するラジャンRBI総裁は声明で、「政策金利をこの時点では据え置き、政策実行のための余地ができるのを待つのが、中銀にとって適切だ」「金融政策の緩和的スタンスを維持し、流動性の適切な供給を引き続き重視していく」と述べた。また、同総裁は金融政策委員会(MPC)の設置に取り組んでおり、「10月4日に発表される次の金融政策声明はMPCが作成することを期待している」とした。
中国では“権威ある人”が「バラマキより、改革を最優先せよ」
中国では、景気下支え重視か、経済構造改革重視かという経済政策の路線対立が見え隠れしており、後者の背後には習近平国家主席がいる模様。
5月9日付で人民日報が掲載した匿名インタビューで「権威人士(権威ある人)」が、きわめて厳しい中国経済の状況認識を示した上で、バラマキ的な財政出動を否定して改革を最優先せよというメッセージを発した。この「権威人士」は、習主席の経済ブレーンである中国共産党中央財経指導小組弁公室の劉鶴主任とその周辺とみられている。
中国国家発展改革委員会(NDRC)はウェブサイトに8月3日に掲載した声明で、中国は政策金利と預金準備率を引き下げる適切な時期を模索するという方針を示した。しかしその後、この部分は削除された。人民銀行への圧力が目的だった可能性があるという。中国人民銀行が8月5日に公表した第2四半期の金融政策報告書は、必要に応じて予防的かつタイムリーな方法で金融政策の微調整を行う方針をあらためて示しつつも、預金準備率引き下げを行うと人民元や外貨準備に下押し圧力がかかる恐れがあると警告した。
このような状況では、利下げを含む積極的な金融緩和策の発動は、中国では予想し難い。
利下げに近々動く可能性がありそうなのはロシアだけ
南アフリカでは、SARBが7月21日、レポレートを7%に据え置くことを決定。インフレ懸念が残るものの、景気動向は脆弱で、一段の引き締め策を先送りする一定の余地があるとした。景気にも配慮した利上げの停止には至っているものの、9月20〜22日に開催される次回の金融政策委員会(MPC)で利下げに転じる可能性はきわめて小さい。
このように見てくると、利下げに近々動く可能性が状況次第でありそうなのはロシアだけで、その他の4か国の場合、利下げは当面望み薄だと言わざるを得ない。
世界経済が停滞状況を続ける中、新興国の側から金融緩和をテコに上向きの強い動きが近い将来出てくる可能性は小さいと判断される。
先進国では景気刺激策の限界が露呈
米国で住宅バブルが崩壊した2006年からすでに10年が経過しているが、世界経済の復調は不十分なものにとどまっている。先進国では、金融緩和策が実験的な領域にまで踏み込まざるを得なくなるなど景気刺激策の限界が露呈しており、これからも苦難の道が続きそうである。そして新興国では、最も経済規模が大きい中国が不動産バブル崩壊の後遺症に苦しみ続けている上に、インフレ懸念から景気刺激のための利下げがなかなか進まない国が多いなど、こちらもまたやっかいな状況に陥っている。
世界経済にかかった雲は、この先しばらく消え去ってくれそうにない。
このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
Copyright © 2006-2016 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/082600057/
個人投資家の資産運用、今後はどうすべき?
引き続きインカム追求を、先進国の高配当株式も視野に
2016.8.30(火) 重見 吉徳
本コラムの締めくくりとして、今後、例えば年内までの期間における日本の個人投資家にとっての資産運用戦略を考えてみましょう。
結論から言えば、引き続きインカム追求が主要な投資戦略と考えられます。ただし、債券やREIT(不動産投資信託)への偏りを解消するために、特に先進国の高配当株式にも投資先を広げることが一案と考えています。
(まだまだ)インカム追求が必要と考える理由は極めて単純で、株式や社債、REITなどのリスク資産からはキャピタルゲインを得られそうにないためです。これを簡単に言い換えると「株(リスク資産)は上がりそうにない」となりますが、「だったら、株(リスク資産)は買えない」という結論には必ずしもならないと考えています。なぜならばリスク資産からは、利息や配当などのインカムゲインが得られるためです。ここで、様々なリスク資産の価格動向を振り返りつつ、今後の動向を検討してみましょう。
リスク資産価格はこのところ横ばい
図1では、主要なリスク資産価格の動向を、2008年から直近時点まで示しています。これを見ると、2015年から直近2016年6月までの約1年半の間、多くのリスク資産価格は上下に大きく変動しつつも、結局のところ、直近水準は2015年1月の水準とほぼ同じで、横ばいのレンジ推移に留まっていることが確認できます。
図1 主要なリスク資産価格の動き
価格指数、現地通貨ベース、2015年1月1日=100
出所:S&P Dow Jones Indices、FTSE、東京証券取引所、BofA Merrill Lynch、Bloomberg、JPモルガン・アセット・マネジメント
注:指数は次のとおり。米国REIT指数:FTSE NAREIT All Equity REITs Index、米国投資適格社債: BofA Merrill Lynch US Corp Master Index、米国ハイ・イールド債券:BofA Merrill Lynch US High Yield Index
データは2016年6月30日時点で取得可能な最新のものを掲載
拡大画像表示
2008年9月のリーマン危機を経て、2009年3月以降、リスク資産価格は概ね上昇軌道を描いてきました。いわば、『何を買っても上がる時代』であったわけです。しかし、2015年以降、その勢いは失われてしまったように見えます。
なぜ、こうしたことが起こっているのでしょうか。その理由は、株式で言えば業績が伸びず、実体経済で言えば景気拡大の勢いが弱いためです。
なぜリスク資産価格は横ばいに?
次の図2では、今回を含む過去5回の米国の利上げ局面前後で、米国株式の業績見通しがどう動いたのかを見ています。業績見通しは、上場企業の業績動向を調査する、プロのアナリストによるものです。【真ん中】に位置する【垂直の点線】は利上げが開始された月を表し、【点線の左半分】が利上げ開始前の2年間、【右半分】が利上げ開始後の2年間を、それぞれ指します。
図2 米国:利上げと企業業績見通し
S&P500予想1株利益(12カ月先)、利上げ開始月=100、利上げ前後2年
出所:(左)米連邦準備制度理事会(FRB)、S&P Dow Jones Indices、I/B/E/S、Datastream、JPモルガン・アセット・マネジメント
データは2016年6月30日時点で取得可能な最新のものを掲載
【オレンジ】が、今回の利上げ局面での業績見通しの推移です。一方、【オレンジを除く4本の線】は、今回を除く過去4回の利上げ局面での業績見通しの推移です。これら【4本の線】を見ると、過去4回の利上げ局面では、利上げ前後1年程度の期間にわたり、業績見通しが右肩上がりで推移したことが確認できます。つまり、「景気の勢いが強いので、業績見通しも上向きとなり、利上げも行われる」という自然な構図です。
一方、【オレンジ】の今回の利上げ局面を見ると、業績見通しは利上げ前2年間や利上げ後、直近までの期間も概ね横ばいです。「業績見通しが横ばいなら、株価も横ばい」なのはやはり自然です。
今後の企業業績の見通しは?
では、今後の企業業績や実体経済はどうなるのでしょうか。
結論から言えば、業績はやはり横ばい推移が続き、実体経済も景気の勢いは力強さを欠くと考えています。したがって、最初に述べたように、リスク資産価格は上がりそうにないとの結論が導かれます。
次の図3では、【オレンジ色】の線で、米国企業の利益(実績)を見ています。米国企業の利益水準は2015年以降、横ばいであったことが見て取れます。その要因は大きく2つあります。1つは【茶色】で示している原油価格の下落、もう1つは【青色】で示しているドルの上昇です。
図3 米国:企業業績と原油、ドル
2006年1月=100
出所:(左)米連邦準備制度理事会(FRB)、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)、I/B/E/S、Datastream、Intercontinental Exchange、Thomson Reuters、 Bloomberg、J.P. Morgan Asset Management
(右)米連邦準備制度理事会(FRB)、米経済分析局(BEA)、米労働統計局(BLS)、Bloomberg、JPモルガン・アセット・マネジメント
注:(左)ドル・インデックスは、米ドルの貿易加重平均為替レート(実効為替レート;名目)であり、対象通貨はユーロ、日本円、英ポンド、カナダ・ドル、スウェーデン・クローナ、スイス・フランで構成される。
データは2016年6月30日時点で取得可能な最新のものを掲載
原油安により、米国の資源企業の業績が悪化したほか、同時に資源企業の設備投資も減少し、資本財などの他のセクターにも悪影響が波及しました。また、ドル高によって、世界で事業を展開する米国企業の海外業績は低迷しました。
今後を考えると、原油価格は底打ちをしたように見えるものの、ここから持続的に上昇するようには見えません。その理由は次のとおりです。
まず、直近の米国の原油在庫は2011〜2014年半ば頃を4割以上、上回る過去最高水準です。また、1バレル=50ドル前後ではシェール企業の原油生産が再開されると共に、生産者による売値確定のための先物売りが想定されます。加えて、サウジアラビアも、米国やイランに対抗しつつ「原油市場の盟主」として復権するため、価格よりもシェアに主眼を置き、高水準の生産を維持しています。
一方のドルについては、日本や欧州、豪州やニュージーランドなどの他地域が金融緩和を実施したり検討したりしている状況を考えれば、目先は大幅なドル安は考えにくいかもしれません。
今後の米国景気の見通しは?
では、米国の経済見通しはどうでしょうか。
図4では、今後の米国の景気動向を検討しています。【灰色:右軸・逆目盛】で示す失業率は過去の最低水準まで近づき、労働力人口の伸びを上回るような労働市場の拡大は考えにくい状況です。また、【紫色】で示すのが米国の設備投資・GDP比率です。こちらも失業率と同様、景気循環に沿って動きますが、失業率よりも先に勢いが弱まっているように見えます。景気の拡大は終盤戦で、米国経済がこの先、ここから力強さを増すようには思えません。
図4 米国:景気循環
出所および注は図3と同じ
米国企業を取り巻く環境やバリュエーションを考えると、米国株式は当面、横ばいのレンジを上抜けできないと考えられます。さらに、米国経済が力強さに欠くことを考えると、その他のリスク資産価格も同様に、横ばい推移となる可能性が高いと考えられます。
それゆえ、引き続きインカムゲインを追求することが、日本の個人投資家にとっての資産運用戦略の1つと考えられます。
株式でインカムを狙う
ただし、インカム追求は日本の投資家がこれまで長く行ってきたことであり、今や世界の投資家もその後を追っている状況です。それゆえ2つの弊害が生じていると考えられます。1つは、国債や投資的適格社債などの信用力の高い債券市場に利回りが残っていないこと、もう1つは日本や米国のREIT(不動産投資信託)に資金の偏りが見られるということです。筆者はリスク分散の観点から、特に先進国の高配当株式に投資先を広げることが一案と考えています。
次の図5では、債券市場で利回り追求が進む中、株式市場ではまだまだ債券市場ほどに利回り追求が進んでいるようには見えません。例えば、米国の高配当株式の配当利回りは、直近時点で約3.6%ありますが、この水準は2010年以降、ほとんど変わっていません。対照的に、米国の投資適格社債の利回りは、2010年は4%を超えていましたが、現在は3%を下回っています。
図5 リスク資産の利回り(期待リターン)
出所:米連邦準備制度理事会(FRB)、S&P Dow Jones Indices、FTSE、BofA Merrill Lynch、Bloomberg、I/B/E/S、Datastream、JPモルガン・アセット・マネジメント
注:指数は次のとおり。米国ハイ・イールド債券:BofA Merrill Lynch US High Yield Index、米国投資適格社債: BofA Merrill Lynch US Corp Master Index、 欧州ハイ・イールド債券:BofA Merrill Lynch Euro High Yield Index、欧州投資適格社債:BofA Merrill Lynch Euro Corporate Index、 米国株式:S&P500 Index、米国高配当株式:Dow Jones US Dividend Select Index、米国REIT:Bloomberg US REIT Index(2006年4月まで)、FTSE NAREIT All Equity REITs Index(2006年5月以降)。「米国株式・益回り」は、1株予想利益/株価で、株式の期待リターンを表す。
データは2016年6月30日時点で取得可能な最新のものを掲載
拡大画像表示
なぜ株式の配当利回りは債券の利回りのように低下しないのでしょうか。最大の理由は投資家が、業績が落ち込んだり配当が減ったりするリスクを心配しているためと見られます。
しかし、そうした心配は、たとえ景気が停滞を続けるとしても、必ずしも実現するとは限りません。例えば、景気や業績については、投資家よりも、顧客の動向を日々目の当たりにしている企業の経営者のほうがよく知っているはずです。経営者が「景気は良い」と考える場合、積極的に設備投資を行い、売上や利益を最大化しようと努めます。一方、「景気は強くない」と考えている場合には、無理な設備投資を行わず(株主から預かった資本をリスクに晒さず)、伸びない利益の代わりに配当や自社株買いによって、投資家に報いようとします。
次の図6では、今回を含む過去5回の利上げ局面において、米国株式のインカムリターンがどう推移したのかを示しています。
【図の真ん中の垂直の点線】は、利上げが開始されたタイミングを示しており、その前後2年の業績見通しの動向を見ています。【オレンジ】は今回の利上げ局面です。
先ほど、今回の利上げ局面では、過去4回の利上げ局面において見られた「景気の拡大→業績見通しの上向き」という状況は見られず、景気の停滞に沿うように、業績の見通しは横ばい推移が続いていることを確認しました。
しかし、この図を見ると、業績は横ばい推移が続いても、米国株式からはこれまでと同程度のインカムリターンが得られています。企業は「業績はなかなか上向かない」との見通しの中、これまでと同程度の株主還元を続けることで、投資家を惹きつけていると見られます。
図6 米国:利上げと株式のインカムリターン
年率、3カ月移動平均値、利上げ前後2年
出所:(左)米連邦準備制度理事会(FRB)、S&P Dow Jones Indices、I/B/E/S、Datastream、JPモルガン・アセット・マネジメント
(右)MSCI、FactSet、JPモルガン・アセット・マネジメント
注:(右)実績ベース。 データは2016年6月30日時点で取得可能な最新のものを掲載
以上をまとめると、日本の個人投資家は引き続きインカム追求が主要な投資戦略であるものの、投資先の偏りを解消するという観点から、株式でインカムを狙うことも一案と考えられます。
(*)投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、必ずご自身の判断でなさるようにお願いします。本記事の情報に基づく損害について株式会社JBpressは一切の責任を負いません。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47672
金融庁、地銀対象に新検査体制導入へ 2グループ制に=関係筋
[東京 29日 ロイター] - 金融庁が、地銀を対象にした検査体制の刷新を検討していることが明らかになった。地銀を2つのグループに大別し、地域トップ行などを念頭に置いたグループと、持続可能なビジネスモデル構築を主眼に置いたグループに分け、課題をきめ細かく点検していく。複数の関係筋がロイターの取材に答えた。
関係筋によると、1)地域経済の活性化への貢献を目標に、金融仲介機能の発揮に重点を置くグループ、2)将来にわたって持続可能なビジネスモデルの構築を主眼とするグループを新設する。
前者は地域トップ行が念頭に置かれ、借り手企業の事業性評価に基づく融資の動向をチェックする。
一方、ビジネスモデルの構築が問われるグループには、ニッチな分野への進出や独自のビジネス展開などを通じ、真に顧客の利益になるようなサービスの提供を促していく。
個別の銀行がどちらのグループに属するかは、今後、調整する。金融庁は、各行の経営陣と議論し、地方の実情や将来展望への問題意識などを見極め、グループ分けする方針だ。
現時点で財務健全性に問題がない銀行でも、経営陣の危機意識が低く、自主的な努力を怠っていると判断された銀行に対しては、ガバナンスなどを重点的に議論し、変革を促す考えだ。
金融庁は、すでに各行一律にマニュアル主義的に検査・監督する方針を転換。銀行に優れた取り組みを示して自主的な改善を促す手法に切り替えている。新たな検査体制の導入は、その延長線上にある。
森信親・金融庁長官は今月24日の有識者会議で、人口減や世界的な超低金利の持続など金融業を取り巻く環境が厳しさを増している点を踏まえ、新たな検査・監督手法の確立が必要と述べた。
森長官は、顧客のニーズに合った良質なサービスの提供が金融機関自身の持続的な収益につながると指摘。
新たな検査・監督の着眼点として、1)形式的に基準を守るのではなく金融機関が実質的に良好なサービスを提供できているか、2)過去の一時点の健全性を単に確認するのではなく、ビジネスモデルが将来にわたって持続可能かどうか――といった点を挙げた。
金融庁の広報担当者からのコメントは現時点で得られていない。
(伊藤純夫、和田崇彦 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/fsa-japan-bank-local-idJPKCN1140UU
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民112掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。