http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/524.html
Tweet |
【社説】
オバマ氏の置き土産、財政赤字拡大
2016年度は35%増加の見通し
ENLARGE
オバマ米大統領は置き土産の1つは財政赤字の拡大だ。写真はホワイトハウスの定例記者会見で話すオバマ氏(6月23日) PHOTO: ASSOCIATED PRESS
2016 年 8 月 29 日 09:04 JST
2期目の任期満了が近づくなか、オバマ米大統領は多くの政治的な置き土産を残しつつある。その1つが財政赤字の拡大だ。連邦財政赤字は前年比で35%拡大し、経済規模に対する歳出と債務の割合もそれぞれ高まる見通し。景気刺激のために来年、財政出動を行うとする民主党大統領候補ヒラリー・クリントン氏の公約が、以前にも増してあやうく見えてくる。
米議会予算局(CBO)が先週明らかにした最新の財政・経済見通しを見ただけではこうした問題は分からない。CBOによると、2016会計年度(16年9月末まで)の歳入は260億ドル増加するだけだが、歳出はおよそ1780億ドル増加する見通しで、財政赤字は前年の4380億ドルから5900億ドルに拡大するという。これは13年以降で最大の赤字になる。
歳入が伸び悩んだ背景には、企業利益の減少と経済成長の鈍化がある。26日発表の4-6月期(第2四半期)の米国内総生産(GDP)改定値は前期比年率換算で1.1%増に下方修正された。一方、2016年度の歳出増は5%で、社会保障、メディケア(高齢者向け公的医療保険制度)、メディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)向けの支払いが主因だ。メディケイドは米医療保険制度改革法(オバマケア)のおかげで支払いが急増した。債務残高の増加が続いているため、金利は歴史的な低水準にあるものの、純利払いは11%増加する見通しだ。
1980〜2026年の民間が保有する政府債務(対GDP比、2016〜2026年は見通し)
https://si.wsj.net/public/resources/images/ED-AV496_chart0_16U_20160826132105.jpg
民間が保有する政府債務、つまり財務省が返済しなければならない債務は対GDP比で76.6%に上る。これは第2次世界大戦後に債務負担が緩和した1950年以降で最も高い比率だ。オバマ大統領の就任1年目は52.3%だった。経済拡大期には通常、債務の対GDP比率は横ばいにとどまるか低下する。
今のところ、債務比率が低下する見通しは立っていない。オバマケアと大統領による給付改革拒否を背景に、連邦財政は悲惨な道をたどっている。この状況はオバマ氏が世界のゴルフ場巡りに出かけたあとも続く。CBOによると、歳出は今後も増加する見通しで、債務の対GDP比率も17年は77.2%、21年には79.3%、26年には85.5%と増加傾向をたどる。以上の見通しは現在の政策が変更されず、景気後退が起きないことを前提にしたものだが、現実には景気後退が起きない確率はゼロに近い。
気になるのは、オバマ氏はこうなることを分かっていたかという点だ。国防予算を減らし、その分を所得の再分配や社会的支出に回すことはオバマ氏の目標の1つで、大統領は8年の在任期間にある程度、この目標を達成した。しかしオバマ氏が歳出に打ち込んだくさびは今後、さらに存在感を増すだろう。「エンタイトルメント(給付金)国家」は拡大する一方、国防予算の余裕は縮小するからだ。オバマ氏は国防予算の欧州化を進めている。
つまり、オバマ氏の後任にとって財政拡大の余地が狭くなるということだ。本コラムは赤字削減より経済成長の促進を重視しており、われわれは3%の経済成長率を取り戻すための成長志向の減税を支持する。しかし、米国のような基軸通貨国でも、債務の対GDP比率が80%を超えるとなれば警戒が必要だ。経済が今後もオバマ時代と同じく低成長にとどまるのであればなおさらである。
クリントン氏は今後5年間で道路や橋、空港といったインフラに2750億ドルを投じると公約している。財政赤字が拡大するなか、共和党が下院を握ればクリントン氏の公約が承認される確率は下がる。クリントン氏は増税も提案しており、これが実現すれば、成長は損なわれ、歳入はさらに減るだろう。共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏はクリントン氏以上に道路と国防に資金を投入し、同時に今後10年間で数兆ドル規模の減税を実施すると公約している。財政赤字はトランプ氏の公約にも重しとなるだろう。
レーガン元大統領の逆を行きたいと発言していたオバマ氏だが、経済成長の鈍化と財政負担拡大の両方でその望みを果たしたことになる。
関連記事
• 経済成長なくして政府債務の削減は不可能
• 米債務問題、政治の論調に変化
• 【寄稿】次の景気下振れ時におけるFRBの位置取り
• トランプ氏の経済政策、景気縮小と大量失業招く恐れ
【社説】政治的影響力振りかざすFRB、ロビー団体と会合も
連邦議会が果たすべき役割を担っているFRB
2016 年 8 月 29 日 17:46 JST
先週、米ワイオミング州ジャクソンホールで繰り広げられた光景は見物(みもの)だった。カンザスシティー地区連銀が主催した年次経済シンポジウムに先立ち、米連邦制度準備理事会(FRB)の重鎮らが左派系市民団体「フェド・アップ(Fed Up)」の活動家と会合したのだ。それはまるで連邦議会の各種委員会が開く公聴会のようだった。
無理もない。最近のFRBは連邦議会よりも力を持っている。米金融規制改革法(ドッド・フランク法)が制定されて以降、FRBは金融業界の規制を全面的に引き受けてきた。金融市場はFRBの動向に完全に目を奪われているうえ、FRBは金融政策や資本の分配にあまりに広範囲に立ち入っている。よって、FRBのイエレン議長とフィッシャー副議長、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は政府の経済政策に関する意思決定を担う最重要人物になっている。
フェド・アップの活動家らは単に権力を監視しているだけなのに、FRBの幹部がなぜ彼らと話さねばならないのだろうか。仮にFRBが政治機関になるというのなら、7年半におよぶ事実上のゼロ金利政策によって退職後の計画を狂わされてきた預金者たちを対象に、なぜ公聴会を開かないのだろうか。もしくは低金利による資金不足に歯止めがかからない年金の運用受託機関はどうだ。政治的な嘆願がいったん始まれば、それを断ち切る基準とは何だろうか。
われわれは水を差そうとしているわけではない。だが、FRBの理事たちは選挙で選ばれるわけではないという「ささやかな」事実がある。憲法は連邦議会に貨幣と「その価値」を支配する権限を与えている。1世紀前に議会がFRBを創設した際、中央銀行による金融政策の意思決定の独立性を政治的な圧力から守る一環として地域の銀行とそのトップを含めることにしたのだ。
だが、長い年月が過ぎるのに伴い、選挙で選ばれた議員たちに委ねるべき決定にFRBが介入している。特に2008年の金融危機によるパニック以降はその傾向が顕著になっている。バーナンキ前議長はオバマ政権の経済政策を説明する場面で、公の場でガイトナー前財務長官の横に並ぶ常連のようになった。FRBはまた、国債や特に住宅抵当証券の買い入れという量的緩和(QE)策を通じて資本の配分に直接関与した。
資産価格の押し上げを目指したFRBの政策は、銀行にお金を預けているか、もしくは低い利回りの投資を行っている中間所得層よりも裕福な株主に有利にはたらいた。ドッド・フランク法により規制の権力を手に入れたFRBは今、大手銀とのジョイントベンチャーのパートナーと化している。破滅させられる恐怖心を抱かずに、政策面でFRBに異を唱える勇気を持った銀行の最高経営責任者(CEO)はいない。
国債購入と低金利は政府にも恩恵をもたらしてきた。低金利は膨れ上がる財政赤字の利払いコストを覆い隠し、FRBによる国債購入は数千億ドル規模の利益を国庫にもたらした。この両方が目先の財政赤字を減らし、議会による支出を容易にさせた。
これらすべては国民や政治家から概ね無視されてきた。おそらく金融危機の余波の中にいて、FRBは疑わしきは罰せずという原則を受けるに値したのだろう。ところがFRBは今になっても以前の狭い役割に戻ろうとする兆候を見せていない。景気拡大が8年目に突入しているにもかかわらずだ。FRBが政治的な影響力を小さくしようと望んでいるならば、保有債券の償還に応じて4兆5000億ドルの保有高を縮小するはずだ。だが、イエレン議長率いるFRBは償還される債券の元金を再投資している。長期国債の利回りに対する影響力を維持するのが狙いだ。
今年のジャクソンホールで最大のニュースは――フェッド・アップとの会合を除き――イエレン議長が12月の利上げもあり得るとほのめかしたことではない。FRBの意思決定があまりに行き当たりばったり、かつ恣意的で、12月にFRBが何をするのか、イエレン議長自身を含め、誰にも分からないということだ。
失業率を低い水準に保つための「道具」の一つとして債券購入のルーティン化を検討するとしたイエレン議長の発言には、次に米国がリセッション(景気後退)に見舞われれば、FRBは国債や住宅抵当証券の購入を単にやめないばかりではなく、欧州中央銀行(ECB)に追随し、幅広く社債を購入するだろうという含みがある。そうなれば、特定の経済セクターにFRBがさらに肩入れすることになる。
金融危機後の政策は大いなる成功だったとFRBは考えている。だが今年、ポピュリスト(大衆迎合主義者)が人気を博したことは、有権者が1%や2%の成長には満足していないことを物語っている。FRBはリセッション後、毎年成長ペースの加速を予測してきた。だが毎回、その予想は外れた。遅かれ早かれ、国民と選挙で選ばれたその代表は、FRBが事実上保有している巨大な政治的影響力がもたらす経済的な恩恵を示すようFRBに要求するだろう。
連邦議会がまず着手すべきは、ケビン・ブレイディ下院議員がFRBの役割と組織を検討するために提案している金融委員会の設立案を通過させることだ。委員会というものは政治的な言い逃れになり得る。だが、今回のケースではふさわしいメンバーが揃えば、金融政策面で神通力を持ったFRBについての議論が活発になる可能性がある。政府と議会の大半はそうした神通力をFRBには持ってほしくないと考えている。健全な民主政治の下では、いかなる機関であれ、さらなる説明責任なしにFRBが持っているような力を蓄積することはできない。
関連記事
インフレ目標論議、イエレン議長は反主流派から主流派に
FRBのマイナス金利嫌い、金融政策の限界露呈
米利上げ示唆、金融市場は馬耳東風
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiDxM6vtubOAhWJi5QKHW2mD8MQFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11655255021065154097004582280933208521476&usg=AFQjCNFB4hkUAJ6XoBsQf3GHI21HcHOo_Q
来月のECB政策委控え沈黙守るドラギ総裁−統計に注目集まる
Catherine Bosley
2016年8月29日 18:36 JST
関連ニュース
日本株反発、円安進行で業績改善期待−輸出や金融など内外需広く上げ
イエレンFRB議長講演、ゴールドマンとPIMCOで異なる解釈
GPIFの日本株買い増し余力、日銀のETF買い入れ規模に匹敵
日銀次の標的は財投機関債か、経済対策支えるも「ますます困る」の声
• ユーロ圏のインフレ率や失業率の統計が今週発表される
• 総裁は今年の米ジャクソンホールでのイベントに参加しなかった
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は数字に語らせている。
5週間にわたり沈黙を守っているドラギ総裁は、9月8日のECB政策委員会を前にした政策期待の微調整を一連の経済統計に委ねている。今後数日間に発表されるインフレ率や景況感、失業率といった統計が、英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択の影響がユーロ圏に及ぶ可能性の中で、景気回復を持続させ物価上昇を取り戻すために追加の刺激策が必要かどうかのシグナルを発するかもしれない。
19カ国から成るユーロ圏経済の勢いが失われつつある兆候はこれまでのところほとんどなく、JPモルガン・チェースとダンスケ銀行のエコノミストは追加緩和見通しを後退させている。
ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)の欧州金利戦略責任者ピーター・シャフリク氏は「市場やECB、あるいはその両方を変えるような決定的な統計は出ないと考えている。インフレ率は若干上昇するだろうが、『何もしなくていい』と思わせるほどのハイペースの上昇にはならないだろう」と述べた。
ドラギ総裁は米ワイオミング州ジャクソンホールで週末にかけて開催されたシンポジウムにも参加しなかった。2年前に同総裁が最終的に量的緩和策導入につながる大きな政策変更を示唆したイベントだ。今年のシンポジウムではイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げの論拠は強まりつつあるとの認識を示した。
原題:Draghi Silence Puts Numbers in Spotlight Before ECB Meeting (1) (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCNWQ46JIJUR01
他の経済策が役割果たさなければ低金利続く=クーレECB理事
[フランクフルト 27日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事は27日、他の景気刺激策が役割を果たさない限り金利は低水準にとどまるとの見方を示した。
さらに、そうした環境下では金融政策の効果が弱まり、副作用をもたらす可能性が高まる、と指摘した。
同専務理事は米カンザスシティー地区連銀が主催した経済シンポジウムで「刺激策は一時的な措置という暗黙の想定のもと講じられた」とし、他の経済政策が役割を果たさない場合には均衡実質金利が低水準にとどまる可能性を排除できない、との見方を示した。
ECBは政策金利をマイナスに引き下げ、資産買い入れ措置を導入したが、インフレ率はゼロ近辺で推移しており、ECBが目標とする2%を少なくとも今後2年は下回ると予想されている。
ECBは、資産買い入れプログラムを来年3月以降も継続するか、もしくは規模を縮小するか慎重に決定するとみられ、最終決定は第4・四半期になる可能性が高い。
クーレ専務理事は、非伝統的措置を今以上に活用すれば、市場の価格決定を損ない均衡実質金利に一段の下押し圧力を加えるなど、副作用が予想される、と語った。
ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
世界各地のフィンテック拠点、連携に向け国際組織立ち上げへ
イラン、原油相場安定へOPECと協力へ─石油相=国営通信社
今日の株式見通し=反発、FRB幹部発言後の円安を好感
米FRB議長講演、年内利上げ観測に沿う内容=副議長
財務省、国債利払いの積算金利0.4%引き下げ=17年度概算要求で政府筋
http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-coeure-idJPKCN114022
EUは英離脱交渉の先延ばしを、共通戦略合意が先決−ハンガリー外相
Jasmina Kuzmanovic、Zoltan Simon
2016年8月27日 01:16 JST
ハンガリーのシーヤールトー外務貿易相は26日、英国の欧州連合(EU)離脱について、残留する27カ国の首脳が共通戦略で合意するまで正式な交渉を先延ばしする必要があると語った。
同相の発言は、6月の国民投票でEU離脱を選択した英国と同様、EUも交渉に向けて時間が必要なことを示唆するものだ。
シーヤールトー外相はクロアチアのドゥブロブニクでインタビューに応じ、「EUにとって英EU離脱交渉の時期は遅いほど良い」とし、「欧州全体の戦略がまだまとまっておらず、戦略を得る前に交渉を開始するのはEUの利益にならない」と発言。
フランスを含む一部諸国が英国に早急に交渉を開始するように促した後、将来的に単一貿易圏とどのように協力していくかを英国が決めるには時間が必要との姿勢をドイツなどの国々は受け入れている。9月にはスロバキアの首都ブラチスラバで英EU離脱後の道筋を協議するためのEU首脳会議が行われる。
英国のメイ首相がEU基本条約(リスボン条約)50条に基づいて、離脱の意思を正式に通告すれば、2年にわたるEU離脱交渉が正式に始まる。「英国が交渉開始を今求めたとすれば、われわれにとって大きな問題となる。巨額の損失となる事実を認識しなければならない」と、シーヤールトー外相は述べた。
原題:EU Has No Brexit Strategy, Needs Time Before Talks, Hungary Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-26/OCIVD76KLVRJ01
英首相がEU離脱で行動計画の準備指示、G20前に閣議で検討へ−英紙
Sarah Jones
2016年8月29日 13:44 JST
メイ英首相は、欧州連合(EU)離脱の恩恵を各省庁がどうすれば得られるかについて、20カ国・地域(G20)首脳会議前に詳細な行動計画を準備するよう閣僚らに指示した。英各紙が報じた。
28日付の英日曜紙サンデー・テレグラフが情報源を明らかにせずに伝えたところでは、メイ首相はロンドン郊外のチェッカーズ(英首相別荘)で8月31日に閣議を開催する予定。政策担当者らは閣議のために行動計画を準備する必要がある。一方、サンデー・タイムズ紙によれば、一部の閣僚が推すEU単一市場からの離脱計画にハモンド財務相が抵抗しているという。
メイ首相は31日の閣議で、9月4、5日に中国・杭州で開かれるG20首脳会議への出発前に英国のEU離脱の成功に寄与するプランを見いだすことが、最優先課題だと主張する見通し。メイ内閣を構成する閣僚のうち4分の3余りが、6月23日の国民投票前にEU残留支持を呼び掛けるキャンペーンに加わった。
タイムズ紙によれば、金融サービス業界のEU単一市場へのアクセス維持が政府にとって最優先事項だと財務省の当局者らが主張しているのに対し、 デービスEU離脱担当相とフォックス国際貿易相は、メイ首相が公約する移民規制の導入を実現するには、単一市場からの離脱が必要だと考えているという。
原題:U.K.’s May Orders Brexit Plans Ahead of G-20, Newspapers Report(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCNJZB6TTDS501
平穏な人民元相場に潜む中国経済への不安
投資家や企業は、一段の人民元切り下げに身構えている PHOTO: FRED DUFOUR/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By
CAROLYN CUI AND LINGLING WEI
2016 年 8 月 29 日 15:55 JST
中国の人民元相場が落ち着いていることに、一部の投資家は不安を覚えている。
過去1年間に2回、元相場は急落し、世界の市場を揺るがし、近いうちにさらに大幅な元安が進むとの懸念が広がった。中国当局高官らが、長年の借金で弾みをつけてきた経済成長の「ソフトランディング(軟着陸)」を演出しようと苦慮しているためだ。
その後、中国人民銀行(中央銀行)は対外説明を改善して事態を沈静化し、中国政府は成長を安定するために景気刺激策を拡充した。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを遅らせたため、米ドル相場が抑えられ、元安圧力が一部和らいでいる。
だがアナリストらは、中国を成長軌道に戻し元相場をいつまでも支えるには、景気刺激策だけでは不十分ではないかと懸念している。中国経済の基本的な指標は悪化し続けている。これは人民元が依然として過大評価されているのではと疑われる証拠だ。
運用会社TCWグループの執行役員、デビッド・ロービンガー氏は「中国は市場の期待を落ち着かせる上でうまくやっているし、経済を安定させるために全ての政策手段を用いているが、基本的な問題は解決していない」と指摘した。
2015年8月の通貨切り下げ以降、元はドルに対して6.9%下落した。外貨準備を約8000億ドル取り崩し、最近どうにか資本流出にブレーキをかけた。
だが、国際財政研究所(IIF)の上席執行役員、ハン・トラン氏は、この安定は「改革の先送りを代償にしている」と言う。成長を維持するために中国は、その多くが過剰設備と不良債権を抱える国有企業の改革を先送りしてきた。
民間投資の落ち込みが心配されている。(民間固定資産投資の前年比推移)
https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CR399_ABREAS_16U_20160828180033.jpg
民間固定資産投資は、6月と7月に続けて前年水準を下回った。これは少なくとも12年以来のことだ。ミレニアム・グローバル・インベストメンツのエコノミスト、クレア・ディソー氏は、これは「企業が自信を失っている証拠で、人々はさらに信用を拡大するのはもはや有効ではないと懸念しているのだ」と指摘した。
IIFによると、中国の総債務は国内総生産(GDP)比で1年前の274%から298%に増加している。債務の急増は、資本の不適切な配分とデフォルト(債務不履行)のリスクを高め、経済成長の減速を伴う傾向がある。
消費者や企業がさらなる元切り下げに身構えている兆しは豊富にある。一部中国の輸出企業は、ドル資金を抱え、海外に売り上げ資金を残している。こうした動きで中国への外貨流入が抑えられ、銀行は貸し出す資金が不足する可能性があるとアナリストらは言う。
海外投資家は、利回りがはるかに高いにもかかわらず、中国の債券やその他の元建て資産への投資をためらっている。マッコーリー証券の中国担当エコノミスト、胡偉俊(ラリー・フー)氏は「切り下げが多くの人々にとって引き続き大きな懸念材料なのだ」と指摘した。
中国国内では、景気が減速しているので、一段の元安を容認すべきとの声が多い。だが中央銀行は、資金流出を加速させない程度に段階的に弱くするよう慎重を期してきた。
それでも既に、このところの元安を受けて、今年初めに減速した資金流出がまた加速している兆しがある。ゴールドマン・サックス・グループによると、7月は中国から正味で550億ドルが流出した。6月は490億ドルの出超と推計される。
中国政府の課題は、過度な資金流出と市場の不安定化につながらずに元安誘導をいかに続けるかだ。
落ち着く人民元相場−対ドル(左)・対通貨バスケット(右)
https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CR389_Abreas_16U_20160828180006.jpg
ミレニアム・グローバルのディソー氏は、市場はドルに対する元安リスクを過小評価していると考えている。元のフォワード取引の水準でみると、市場は今後12カ月間で2%の元安を織り込んでいる。今年初めの7%から縮小している。
バンクオブアメリカ・メリルリンチのストラテジストらは先ごろのリポートで、元相場は資本流出の再開で崩れやすい状態が続いていると指摘した。
だが、元相場を危ぶむ向きも、どこで相場の流れが変わるかは予想が難しいという点で一致している。
市場がFRBの一段と積極的な利上げを織り込み始め、ドル相場が上昇し始めるときが、元相場と中国の為替政策にとっての正念場になるだろうと投資家らはみている。
UBSグループのアナリストらは「『中国の平穏』を邪魔するのは何か」と題する新たなリポートで、さらに大幅な元切り下げは、「世界の投資家によるリスク回避の高まりにつながる可能性が高い」と指摘した。
関連記事
• 人民元の大幅切り下げ、G20諸国が注目
• 米MMFの新規制で人民元安進む可能性
中国の民間投資急減は誇張の恐れ−昨年の株式への介入が影響と専門家
Bloomberg News
2016年8月29日 16:01 JST
関連ニュース
日本株反発、円安進行で業績改善期待−輸出や金融など内外需広く上げ
イエレンFRB議長講演、ゴールドマンとPIMCOで異なる解釈
GPIFの日本株買い増し余力、日銀のETF買い入れ規模に匹敵
日銀次の標的は財投機関債か、経済対策支えるも「ますます困る」の声
民間から公的部門に経営権が移った企業が含まれ、昨年と比較不可能
1年前の政府の株式市場への大規模介入が影響しているとラーディ氏
中国の民間投資急減と公的支出急増に不安を感じているだろうか。まずは冷静になる必要があると呼び掛ける専門家がいる。統計の問題でトレンドが誇張されているというのだ。
米ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディ上級研究員は、民間から公的部門に経営権が移った企業が含まれているため、今年の投資データは昨年と全く比較不可能だと指摘する。オックスフォード・エコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、ルイス・クイジス氏(香港在勤)と米調査会社ローディアム・グループも同じ点を問題視している。
クイジス氏は先週のリポートで、「誤解を招く統計によって民間投資と非民間投資の恐ろしい突然の乖離(かいり)が2016年に入り示されているが、政策担当者と市場はいたずらに心配すべきではない」と指摘した。
民間投資の伸びが記録的ペースに鈍化する状況が懸念を招く中で、国家発展改革委員会(発改委)は、民間企業に開放するセクターを増やす計画を先週発表。国務院も約3年以内に企業コストを引き下げ、収益性を押し上げる詳細な計画を公表した。
30年余りにわたり中国を研究しているラーディ氏は、民間投資は鈍化しているが「公式統計が示すほどではない」との見方を示し、今年1−6月(上期)の公的投資の急増は、1年前に政府が株式市場に大規模介入を行ったことも影響しているようだと分析。それまで公的部門に経営権がなかった企業について政府が支配力を持つか、経営権を握る株主になったが、国家統計局は今年1月まで月次統計でそうした株主の変更を反映させていなかったと主張した。
原題:China Private Investment Crash Not as Bad as You Think: Analysts(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCNQ3W6JIJV601
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民112掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。