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相場は予測できるのか
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20160827-00061560/
2016年8月27日 8時0分配信 久保田博幸 | 金融アナリスト
コンピューターにAIと呼ばれる人工知能技術を使うことにより、相場すらも的確に予測できる未来が来ると言うことが果たしてありうるのか。これについては絶対にありえないと言えよう。もし仮にそのようなシステムが存在し、それが公開されるとなれば、マーケットが成り立たなくなる。金融市場は売りと買いがぶつかりあって存在していることで、そこに何らかの法則性を求めることは不可能ということになる。
天気予報と相場はあたらないみたいなことが昔、言われていたが、天気予報の方はスーパーコンピューターなどの力を借りて精度が上がり、かなりあたるようになってきた。しかし、相場に関してはいくらスーパーコンピューターの手を借りようが、それを的確に予測することはできない。相場にはその参加者のそれぞれの思惑とともにポジションの偏りもあり、たとえすべての手口を把握できるシステムがあっても、売買を判断する個々人の相場観までは予測できないためである。
集合体といったかたちでの予測も困難である。相場は簡単な方程式で解けるものではなく、市場を取り巻く環境の変化とそれに対する市場参加者の心理の変化を見抜く必要がある。
たとえば英国EU離脱の際の相場についてみてみると、あまり材料視されていなかったものが世論調査の動向により相場を動かす大きな要素として膨れあがってきた。この際には原油価格の動向とか中国の動向とかよりも、市場参加者は英国のEU離脱の行方に比重を置くようになった。そもそも英国のEU離脱がいわばテールリスクであったはずであり、これほど相場を形成する要因の比重が高まることは事前に予測はできていなかったはずである。
もし相場の行方を的確に占えるシステムが出来るとすれば、可能性の問題とかではなく、英国のEU離脱は確実なため相場はそれをいずれ意識して動き、しかし現実には経済などへの影響は軽微で、市場は次第にその比重を相場の要因から低下させるであろうとの予測を事前に行う必要がある。それがいかに現実性のないものかは言うまでもない。
過去の延長線上として未来を予測しようとしても、それは決して的確な予測とはならない。たとえばここ3年間のドル円の動きから、移動平均等を使って確実に儲けられるシステム売買を構築することはたやすい。しかし、それを使って現実に儲けることはできない。これはあくまで数字のマジックに過ぎない。
天気予報の際にはテールリスクはあまり存在しないのではなかろうか。あくまで気圧配置や雲、海流などの動きをこれまでのデータから予測することになり、これはまさに科学の世界である。しかし、相場はある意味、心理学の世界であるとともに、突然出てくる出来事、社会現象による左右されるというテールリスクも存在する。これらを的確に予測することは困難である。
ただし、相場にはその値動きのクセを読み、市場心理を利用した儲け方が存在するのも確かである。これは経験とともに天性の勘に近いものとなる。もしこれをAIで可能にできたとしても、それが流通するようなことはないであろう。相場には売りと買いが必要であり、市場で儲けるというのは裏側に多数の人の損失があることになる。市場参加者が皆、儲かるシステムというは存在しえない。
久保田博幸
金融アナリスト
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。
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