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水族館の巨大水槽を製造する日プラ〔PHOTO〕gettyimages
知られざるニッポンの「超優良企業」50社を実名公開!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49425
2016年08月17日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
ニーズは時代が作る。ただしそれをモノにできるのは、実力のある企業だけ。ここで紹介するのは、卓越した技術を磨いてシェアを拡大してきたユニークな企業たち。新しい企業研究を始めてみよう。
■世界の水不足を救え!
「日本には約386万もの企業があります。上場企業だけでも約3600社。投資をする人も、就職活動をする人も、その膨大な数の中から企業を探さなければなりません。そうなるとみなさんは業界を絞って研究なさるわけですが、その枠組みを取り去る『おもしろい』研究本を作ろうと思いました」
東洋経済新報社記者・田宮寛之氏の著書『新しいニッポンの業界地図 みんなが知らない超優良企業』(講談社+α新書)では、有名ではないが高い技術を持ち、国内外で大きなシェアを持つ企業約250社が紹介されている。
「通」好みの会社を見つけだし、投資や就職活動に役立てたいと考えている人は必読の一冊だ。この本をもとに、特に面白い企業を紹介していこう。
まず注目したいのは、急増する世界の人口に対応するビジネスだ。
国連の統計によれば、2025年に世界の人口は80億人に達するという。そうなると水、食糧、資源といった分野で問題が出てくる。これら諸問題を解決する技術を持つ企業が日本には多数ある。
たとえば人口爆発時代では、世界中で水不足が懸念される。経済産業省が2010年にまとめた報告書によると、2007年から2025年の間に市場規模は2倍以上に拡大する見込みだ。
今後の水への需要を見込んで成長が期待できるのは、まず荏原製作所(東証1部)や酉島製作所(東証1部)などのポンプメーカーである。水が足りないならば作るしかない。淡水化プラントに海水を汲み上げる際、ポンプは不可欠な存在だ。
「日本にいると気づきにくいですが、人が利用できる淡水は地球の水の0・01%しかない『貴重な資源』で、世界中の人が欲しがっています。実際に中東の人たちは原油で稼いだカネを使って淡水化プラントを作っています。これをチャンスだと気付けている日本の企業は、すでにビジネスを仕掛けているのです」(田宮氏)
世界ではやがて、鉱物資源も足りなくなる。そうした中、実は日本は「資源大国」と見ることもできる。というのも、「都市鉱山」が海外に比べ圧倒的な埋蔵量を持っているからだ。都市鉱山とは、家電製品やIT製品のごみの山のこと。この中から、貴金属やレアメタルを取り出すのだ。
「都市鉱山は掘ってみて空振り、ということがなく、コストが安い。また、埋蔵量を予想するのが簡単。都市鉱山は捨ててあるごみの内容と量でおよその埋蔵量がわかる。そのうえ、本物の鉱山よりもごみのほうが貴金属を含有する割合が高いので、効率的に貴金属を採れるのです」(田宮氏)
松田産業(東証1部)は電子部品のスクラップから貴金属を回収し、電子材料などに作り替えて販売している。「MATSUDA」のロゴが入った地金は、東京商品取引所やロンドン金銀市場で取引されている。
フルヤ金属(東証JQS)も都市鉱山から原料を調達し、加工している。この企業はイリジウムやルテニウムといった非常に回収の難しい金属を取り出す技術を持っていて、イリジウム製品では世界シェア1位だ。
一方で国内に目を向ければ、日本の少子高齢化が止まらない。2048年には人口が1億人を下回り、労働生産人口も減少の一途をたどる。そう考えると、新たな労働力となるロボット事業や介護および医療のビジネスは非常に期待が高い。
安川電機(東証1部)はファナックと並ぶ大手電機メーカー。1915年創業の歴史ある企業だが、現在は工場や医療の現場で使われる産業用のロボット製造を手掛けている。2016年3月期の売上高は4113億円と過去最高を叩き出し、財務内容も良好だ。
■リニアで大ブレイク
近年介護の現場で注目を集めているのは、サービスロボット。介護、医療、サービス業などの分野で使用されるロボットのことだ。これを製造しているのがサイバーダイン(マザーズ)。筑波大学発のベンチャー企業である。
サイバーダインはロボットスーツ「HAL」の開発を行っている。人間が装着すると、身体機能が拡張・増幅され、ふだん持ち上げられない重量のものが持ち上げられたり、きちんと歩くことができない人が歩けるようになったりするのだ。
労働、介護、災害など様々な現場で応用が期待されるこのロボットスーツ。その技術を見込み、大和ハウス工業やオムロンといった大手企業が同社と提携している。
「実はロボットを積極的に活用するというのは国策なのです。2015年に日本政府が発表した『ロボット新戦略』ではロボット市場の規模を2015年の6000億円から、2020年には2兆4000億円へと4倍に成長させることを目標にしています。ロボットの普及拡大は間違いなく新しいビジネスチャンスです。
実はロボット産業は就職先としてもおすすめです。学生にとって馴染みは薄い業界かもしれませんが、将来性は確か。これから大きく業績を伸ばしていくところが多いでしょう」(田宮氏)
同書ではほかに、環境に貢献するビジネスとして「鉄道ビジネス」を取り上げている。
「ここ数年、世界では移動手段を自動車から鉄道に切り替える動きが高まっています。インドネシアの高速鉄道の受注競争では、日本が中国に競り負けましたが、これからもインドやアメリカに長距離鉄道が敷設される計画が出ている。そこに関わっている企業には、大きなビジネスチャンスがあります」(田宮氏)
曙ブレーキ工業(東証1部)は、新幹線のブレーキにおいて高いシェアを占める。同社の技術は旧国鉄時代からJRと共に磨いてきたものだ。
また、2045年に東京〜大阪間でリニアモーターカーが開通した時には、曙ブレーキ工業の製品が使用されている可能性が高く、次世代の産業に布石を打つ形になる。
日本が誇る高い技術のなかには、きわめてニッチなものもある。次は、業界は狭いながらも圧倒的なシェアを誇る日本企業を見てみよう。
東京・昭島市にある日本電子(東証1部)は電子顕微鏡メーカー。量産型電子顕微鏡を日本で初めて開発したといわれる。半導体や医療など最先端の研究では日本電子の顕微鏡が不可欠。近年は科学技術が発展してきた新興国からも受注がかかり、輸出比率が増えてきている。世界のシェアは7割で、「日本電子の電子顕微鏡がなければ、世界中の研究開発は滞ってしまうことになる」と言われるほど重宝されているメーカーだ。
北海道に拠点を置く東和電機製作所(非上場)は、漁船で使われる全自動イカ釣り機を製造。最大64台のイカ釣り機をコンピュータ制御し、1人での漁を可能にする革命的な製品を販売している。その世界シェアは7割。実は「イカ釣り機業界」は昭和40年代には世界で40の会社が競合していたという。それがいま製造しているのは3社。熾烈な争いを勝ち抜いた「お墨付き」の王者なのである。
香川県に本社のある日プラ(非上場)は水族館の水槽のアクリルパネルを製造している企業。中国の水族館「珠海長隆海洋王国」に納品したパネルは高さ約8mで、幅は約40m。世界最大の水槽パネルである。
「例えばインスタント麺製造機メーカーの冨士製作所(非上場)は、顧客の地域の風土や気候に合わせてオーダーメイドします。
今日活躍しているニッチなメーカーは、確かな技術力だけでなく、顧客の要望に柔軟に応えるフットワークがあるのです」(田宮氏)
■日本最古の上場企業も超優良
さらには、老舗の企業も同書では優良企業としていくつか取り上げられている。彼らがどのように歩み、今どのような事業に取り組んでいるかを見ていこう。
北陸が発祥の松井建設(東証1部)は1586年創業。上場しているなかで日本最古の企業だ。松井建設がメインの事業にしているのは、城郭や寺社の建設。過去には熊本城を修復した経験もある。今年4月の地震で再び被害を受けた城郭の修復を請け負うのではないかと株主の期待を集めている。実際に2011年から5年間で、松井建設の株価は4倍以上に値上がりしている。
そんな松井建設だが、近年はソーラー発電所の建設事業に力を入れている。すでに福岡と富山に発電所を構えており、次世代エネルギーの開発に力を入れている。
村上開明堂(東証2部)の創業は1882年。もともとは化粧の時に使う鏡台の鏡を製造していたが、1950年代の終わりに転機が訪れる。トヨタから仕事を請け負ったのだ。バックミラーは鏡台用に比べればサイズも小さく、儲けも少ない。受けたのは渋々だったという。
それがモータリゼーションの勢いに乗り、この直後からトヨタは大成長。おかげで村上開明堂も勢いに乗り、海外進出まで果たす。現在日本ではバックミラーのシェアの4割を獲得している。
こうして見ると、「モノ作りニッポン」の伝統はまだまだ健在で、それぞれの分野で世界をリードしている企業が、たくさんあることがわかる。
田宮氏は数多ある企業の中から「超優良企業」を選んだ基準を3つ挙げた。
「ひとつは経営基盤がしっかりしていること。収益の問題だけでなく、リーダーの方針がしっかりしているか、社内の風通しがいいかといったことも考慮しました。次に、高い技術を持っていること。技術があれば、『時代がニーズを作る』ようになります。
最後に、儲からないうちから投資がきちんとできている企業であること。後乗りで業界に参戦しても、すぐ大手に淘汰されてしまいます。『超優良企業』たちは、早い段階からおカネをかけて開発し、自分たちが得意とする技術を生かし、生き残っていくのです」(田宮氏)
みんなが社名を知らなくとも、みんなが必要としている企業。そんな会社が、ニッポンを元気にする。
「週刊現代」2016年8月13日号より
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