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過去10年、私達の給与10%減の一方、企業から株主への配当金10倍増…意味する真実
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16319.html
2016.08.16 文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー Business Journal
株式市場は相変わらず乱高下が続いていることから、アベノミクスが始まって以来、もっとも売却益を得にくくなっているような気がします。ただ、株式による収益は売却益だけではありません。配当金やわが国特有の株主優待を得るということを忘れてはならないのです。今まで株式を保有していないリスクといえば、そのほとんどがインフレ(物価上昇)リスクに対処できないこと、あるいは資産を大きく増やせないことなどをあげることができるでしょう。
ちなみに現在は、株式投資信託、ETF(上場投資信託)などを含むことから、株式より「株式等」と記したほうが正確かもしれません。話を戻せば、株式を保有しないリスクを2つほどあげましたが、ここ10年ほどで新たなリスク、いや、株式を保有しないと収入減を補えないリスクが顕在してきたといえるのです。企業の内部留保を受け取れないリスクと言い換えることもできるでしょう。
収入減を補えないとは聞き捨てなりませんが、以下の図は国税庁が公表している民間企業の2000年以降の平均給与額の推移です。
平均給与は09年までほぼ右肩下がりとなり、同年に底入れしてやや反発したのが足元の状況です。反発したとはいえ、増加額は6万円にすぎず、増加率に直せば1.5%にすぎないのです。00年と比較すれば減少額は49万円、減少率は10%に及ぶのです。
もちろん、企業によって、あるいは個々人によっては給与が右肩上がりという人がいるでしょうが、マクロ数字全体のトレンドは減少傾向という流れが継続しているようです。
2年連続ベースアップが行われましたが、過去の給与水準から考えれば、下げ過ぎの反動が起こっているにすぎない気がします。やや強引な見方をすれば、日本をひとつの会社に見立てれば、給与が増えないのは致し方ないことなのかもしれません。売上にあたる国内総生産(GDP)はひいき目に見て横ばい、より精緻に見れば減少傾向にあるため、分配にあたる給与を増やすことができないというわけです。
しかしながら、個々の企業を見れば16年3月期決算で過去最高益を更新している企業はたくさんあるはずです。過去最高益を更新できなかったとしても、00年以降利益が10年以上も減少を続けている企業は少ないはずです。消費増税分を除外しても税収が増えているので、全企業が売上や利益を1割近く減らしていることはない、言い換えれば私たち勤労者の収入が1割も減らされる道理はないといえるでしょう。
■利益はどこに消えたのか?
では、企業の利益はどこに消えてしまったのでしょうか。近年では、企業が内部留保を貯めこんでいると報道がありますが、一方で株主への利益還元も積極的に行っていることを忘れてはならないのです。
さらに21世紀はじめに商法が改正されてからは、内部留保(剰余金)を取り崩してまで配当金を支払っているのです。以下の図は、TOPIX(東証株価指数)連動ETFの純資産額が多い上位3銘柄の100口当たりの分配金の平均値です。3銘柄とも01年に上場、翌02年から分配金を支払っています。
分配金を支払った初年度の平均額は259円33銭であるのにたいして、16年の平均額は2632円と過去最高を更新、約10倍に増加しているのです。その間、大幅に減少した年もありましたが、概ね右肩上がりの増加トレンドが継続しているのです。平均給与には非上場の企業も含まれているうえ、比較年に多少のずれがあるためやや強引な比較といえなくもないのですが、給与は約10%の減少、分配金は約10倍に増加とはあまりにも違いがあるといわざるを得ないのです。
株式を保有しないということは、がんばって働いたご褒美(給与の原資)は残念ながら株主への貢ぎ物になっているといい換えてもよいのかもしれません。表現が悪いですが、株式を保有しないということは、他人様の懐を温かくするために働いているようなものかもしれないのです。売却益狙いではなく、収入の伸びの鈍化をカバーするために、配当金などのインカムゲイン狙いで株式を保有する時期にきていると思われます。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)
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