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IMFが日本に求める急進的賃金戦略、70年代の米所得政策とは真逆
Rich Miller、Connor Cislo
2016年8月15日 08:04 JST
IMFは日本が所得政策を駆使して賃上げを促すことを求める
ヘリコプターマネーは極めて大きなリスク伴う−エフェラールト氏
国際通貨基金(IMF)は米国のニクソン、フォード、カーター政権で用いられた急進的な戦略を、真逆の形で復活させるよう日本に求めている。これはIMFが日本経済をいかに懸念しているかの表れだ。
所得政策と呼ばれるこうした措置は、多くのエコノミストが嫌う賃金設定への政府の直接的介入の一種だ。しかし、IMFが今の日本に望むのは、1970年代に米国の指導者が行った給与や物価の上昇抑制を目指すものではなく、良心に訴え、税制優遇措置を講じ、最後の手段としてペナルティーもちらつかせて企業に大幅な賃上げを促し、物価上昇を後押しすることだ。
日本には賃金上昇策必要とIMF
日本には賃金上昇策必要とIMF Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
IMFの対日審査責任者を務めるリュック・エフェラールト氏は今月2日に記者団に、「日本には賃金上昇を支える政策が必要だ」と指摘した。IMFがこうした異例のアプローチを支持するのは、日本の「デフレマインド」がいかに根深く定着し、より伝統的な政策ミックスをはね返しているかを認めたものだ。また、一部エコノミストによるいわゆる「ヘリコプターマネー」政策の勧めに対するIMFの答えでもある。エフェラールト氏はヘリコプターマネーは「極めて大きなリスクを伴う」と指摘した。
賃上げを促すより積極的な行動を求めるIMFと同調する声が日本国内にもある。山本幸三地方創生担当相は今月4日に都内で記者団に対し、賃金上昇目標に関して全省庁挙げて議論を促す必要があるとの見解を示した。
1970年代のニクソン、フォード、カーターの歴代米大統領の経験は、所得水準の修正に向けた政府の取り組みの有効性について教訓を与えている。ニクソン政権下での賃金・物価規制やカーター政権でのより自主的なガイドラインなどの措置にもかかわらず、3人の大統領は広がるインフレ期待を抑制することができなかったからだ。
77ー79年にカーター政権の賃金・物価安定諮問委員会ディレクターを務めたバリー・ボスワース氏は政権の政策について「当時私は、もう一つの選択肢に比べ良い考えだと思った」のたが、「結果的にあまりうまくいかなかった。そのため、深刻なリセッション(景気後退)というもう一つの選択肢を取ることになった。これは機能したが代償は極めて高かった」と振り返った。同氏は日本についてのIMFの処方箋について懐疑的な見方を示し、需要が弱い経済状況で企業は追加コストの受け入れを嫌がるため「ほとんど効果がないだろう」とも述べた。
安倍晋三首相は企業への賃上げの呼び掛けをいとわず、最低賃金を昨年度平均の時給798円から2020年までに1000円に引き上げを目指している。しかし、賃金の硬直性は強い。
東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、期待成長率が下がり円高方向に動いていて新興国は減速している状況であるだけに、期待成長率が上がらないと設備投資も人件費も増やせないと分析した。
原題:IMF’s Radical Wage Plan for Japan Turns Nixon Policy on Its Head(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-14/OBSADF6TTDS801
英中銀ホールデン氏:金融政策は短期的な鎮静剤−タイムズ紙に寄稿
Scott Hamilton、Colin Keatinge
2016年8月15日 06:54 JST
金融政策ではEU離脱決定の長期的影響から英国を守り切れない
英経済は構造的問題に直面しており他の政策当局が対処する必要
イングランド銀行(英中央銀行)の チーフエコノミスト、アンドルー・ホールデン氏は英紙サンデー・タイムズに寄稿し、金融政策は「短期的な鎮静剤」にすぎず、欧州連合(EU)離脱決定の長期的影響から英国を十分には守り切れないとの認識を示した。
英中銀は今月、7年ぶりの利下げなども含む金融政策パッケージを発表した。ホールデン氏は同パッケージについて、EU離脱決定が「経済の不確実性という砂ぼこりをまき散らし、企業の計画策定を困難にし、将来の投資や雇用に悪影響を及ぼす可能性もあることから」企業や消費者の信頼感にカンフル剤を打つことを狙ったものだと説明した。
ホールデン氏は「金融政策で英国をEU離脱の長期的影響から完全に守れるという幻想を抱く人は金融政策委員会(MPC)にいない」とも述べ、「これは英経済や貿易体制の構造的変化であり、金融政策が提供できるのは経済の不確実性に対する短期的な鎮静剤にすぎない」と指摘した。
同氏はまた、英国の家計の半数余りの賃金が伸び悩む一方で、資産格差が拡大するなど英経済は構造的な問題を抱えているとし、不動産価格や賃貸料が賃金より急速に上昇しているため若年層や貧困層の可処分所得が一段と損なわれていると語った。
その上で同氏は、金融政策が経済的階級や地域ごとに異なる政策金利を設定することは不可能であるため、他の政策当局がこうした問題に対処する必要があるだろうと指摘した。
原題:BOE Policy Action Is ‘Short-Term Balm,’ Haldane Writes in Times(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-14/OBX2RF6TTDS201
トランプ氏の経済政策は最悪の事態招く−グティエレス元米商務長官
Brendan Murray
2016年8月15日 10:07 JST
輸入代替政策は貧困国が採用する戦略だとグティエレス氏は指摘
共和党員のグティエレス氏はクリントン氏支持を表明
ブッシュ前米大統領の下で商務長官を務めた共和党員のカルロス・グティエレス氏は14日、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏が示した経済プランは「非常に貧しい国」が採用するような戦略であって世界最大の米経済にそぐわないという理由などを挙げ、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官を支持すると表明した。
2005−09年に商務長官を務めたグティエレス氏(62)はCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」でのインタビューで、「私はトランプ氏が保護主義と減税以外の経済コンセプトを語るのを聞いたことがない」と発言。「この2つの方針は最悪の事態を招く組み合わせだ」と説明した。
グティエレス氏はトランプ氏の減税案は支持するとしたが、貿易に関しては「後進国の戦略のような一種の輸入代替政策をトランプ氏は唱えている」と指摘。輸入品を国内生産品に代替させなければならないというのは、「非常に貧しい国のような考え方だ」と説明した。
グティエレス氏は共和党候補としてはトランプ氏よりもジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の方が良かったとした上で、ヒラリー・クリントン氏は夫のビル・クリントン氏が大統領だった1990年代に財政赤字削減が経済成長を後押しすると学んだことから、「非常に良い大統領になるだろう」と発言。その一方で、「トランプ氏が創り出すと想像される社会には住みたくない」と語った。
原題:Ex-Bush Commerce Chief Says Trump Trade Plan Invites ‘Disaster’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-15/OBXEA86K50XS01
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