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(左)メダップス代表取締役CEO 佐藤航陽 (右)DeNA 代表取締役社長兼CEO 守安功 (photographs by Toru Hiraiwa)
日本の“インターネット業界”はなくなるのか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160814-00013208-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 8月14日(日)18時0分配信
日本の起業家シーンを牽引してきたのは明らかにインターネット業界だろう。
変革期を迎えたいま、その中心にいる経営者たちはどのような問題意識で経営に取り組んでいるのだろうか。
「インターネット業界はここ5年でなくなるのではないか」ー。
1990年代後半以降、日本の起業家たちの中心には「インターネット」があった。しかし、あらゆるものにインターネットが結びついた現在、ネットとリアルの融合が数多くの産業で加速している。インターネット業界にいる起業家たちはいま、どのような問題意識を持っているのだろうか。
DeNA社長・守安功、メタップス社長・佐藤航陽、B Dash Ventures社長の渡辺洋行が「ビジョナリーが語る次のネットビジネス」をテーマに鼎談し、注目したのは今ならではの話題だった。
シェアリングエコノミー、IoT(モノのインターネット)、VR(仮想現実)の流れが加速し、さらにフィンテック、エドテック、ヘルスケアテック、ホームテック、カーテックなど既存産業と新技術のつながりが強化されている中で、冒頭の言葉はネガティブではなく、むしろポジティブな意味を持つという。
アプリ収益化プラットフォーム「metaps」、無料の決済プラットフォーム「SPIKE」を展開するメタップスは2007年創業し、15年8月に東証マザーズに上場。ビッグデータ分析を軸に「世界の頭脳へ」というビジョンで事業を行う。今年、30歳を迎える起業家・佐藤の指摘は次の通りだ。
「そもそもインターネット業界などなかったのではないか、とさえ思います。マネタイズしたビジネスモデルを見ると、ゲームや広告が多い。それをインターネットという新技術の冠で業界のようにくくられていただけ。もはや特殊な技術ではなくなり、コモディティ化したいま、業界はなくなるのではないか。そして、自分たちがネット企業ではなくリアルな産業の普通の企業として、経営力、組織力といった企業経営の本質を強化し、いかに既存産業に深く入っていくか、が鍵を握るのではないか」(佐藤)
佐藤は既存産業の大手が、インターネット企業を買収する動きや、反対に米グーグル、米アマゾンが既存産業の企業を買収する動きを引き合いに出しながら、この転換期に企業として、どちらの位置に立ち未来をつくるのか、を重要視する。
一方、インターネット大手のDeNA(ディー・エヌ・エー)社長・守安はこの意見に真っ向から反対する。インターネットを中心に事業展開しながら、住友商事と合弁会社を設立し健康保険組合向けのデータ管理サービス「ケンコム」を開始、任天堂とのゲームアプリの共同開発、ロボット開発ベンチャーZMPと共同で自動運転タクシーの開発会社「ロボットタクシー」を設立するなど協業で新規事業を立ち上げていることから、次のように話す。
「インターネット業界があるからこそ、違う業界とどう組むのかーに非常にチャンスがある。むしろ、業界は残り続け、他産業と連携をとりながら、一緒に事業をすることがより重要になる」
インターネット企業として描く将来像は、ゲームという主力事業に変わる新しい柱をいかにつくるか。その意味で、新規事業の立ち上げは欠かせない。1. 自社で立ち上げ、2. 協業、3. M&A(合併・買収)で毎年、様々なゼロイチを生み出す。
「今まではネット完結タイプのビジネスモデルが中心でしたが、どんどんリアルにしみ出した領域に広がってきている。自動運転サービス事業への参入は、マネタイズはむしろ見えている。むしろ技術力、法整備を含めた制度という問題の方が大きく、クリアしていかなければいけない。ただ、実現できれば大きなビジネスになるという確信があるからこそリアル産業への参入も行う」(守安)
かつて村と呼ばれたインターネット業界から、どのように外に出ていくかー。すでに意識の変化は起きており、どのように実行に移していくか、が今後のキーワードとなる。
■間違いなくいまが岐路
「今後5年のスパンで考えた時に、間違いなくいまが岐路だ。そういう意味で本当にうまい舵取りが必要になるだろう」
そう話すのは、B DashVentures社長の渡辺。業界外のルールや慣習を理解しながら、インターネットの利便性をうまく活用できるか。そしていかに「適応」していくのか。
「リアルになればなるほど、収益化まで時間がかかる。時間軸について考え方を変える必要がある」(守安)
だからこそ、渡辺は「起業家としても、会社としても変わらなければいけない」ということを指摘した。
今後、インターネット業界はどのような道筋をたどるのか。業界の存在を巡る2人の意見の対立は、むしろ「業界の外側にあったはずの既存産業との距離感が縮まり、いかに良好な関係性を構築していくか」という同じ思考のように見え、今が変革期であることを強調しているようにうつる。
■起業家たちが集うことで生まれること
「ここがきっかけとなり、M&A(合併・買収)の話がはじまった」ディー・エヌ・エー社長の守安は2016年3月に開かれた、スタートアップイベント「BDash Camp」の壇上でそう話した。14年10月に発表したインテリア、リフォームのキュレーションメディア「iemo」を運営するiemo、女性向けファッションメディア「MERY」を運営するペロリを買収し、好調な同社キュレーション事業の新規立ち上げにつながったという。
国内外のインターネット業界の第一線で活躍する起業家らが年2回集結する同イベントでは、恒例のグリー社長・田中良和がモデレーターとなり、ユーザベース社長・梅田優祐、ソラコム社長・玉川憲、ウェルスナビ社長・柴山和久といった、いま勢いのある若き起業家たちを集めたセッションがある。会場には、起業家だけでなく投資家や大手事業会社の関係者たちが一同に集まるため、M&Aや事業提携など新たな動きが生まれる場として機能している。
佐藤航陽◎メタップス代表取締役CEO。1986年、福島県生まれ。早稲田大学法学部在学中の2007年に同社を設立し、現職。現在、アジアを中心に8拠点に事業を拡大している。
守安 功◎DeNA代表取締役社長兼CEO。1998年、東京大学大学院(工学系研究科航空宇宙工学)修了後、日本オラクル入社。99年、DeNAに入社し、2013年4月より現職。
Forbes JAPAN 編集部
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