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遺伝子組み換え食品、ラベル表示上「判別不能」になる法案成立…食品業界の完勝
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16274.html
2016.08.12 文=小倉正行/フリーライター Business Journal
7月29日、オバマ米大統領が「米国遺伝子組み換え食品表示法」に署名し、米国史上初めて遺伝子組み換え食品表示が法律で義務化されることになった。
これまで、米国政府が遺伝子組み換え食品表示に一貫して反対をしてきたなかで、表示義務化を連邦議会とオバマ大統領が承認したことは、大きな驚きでもある。しかし、その経緯と同法の内容をみると、日本における遺伝子組み換え表示に対して大きな影響を与えかねないとの懸念が生じる。今回はその問題点を整理したい。
■法案成立までの経緯
米国国内で遺伝子組み換え食品表示が始まったのは、2014年5月のバーモント州での表示義務化であった。同州法で定められたそれは、乳、卵、肉、アルコール飲料以外の食品に遺伝子組み換え食品表示を義務付けるものであった。また、相前後して多くの州で同様の法案が提出され、メーン州、コネチカット州でも条件付き可決がなされた。
これに危機感を持ったのが、食品業界であった。州ごとの遺伝子組み換え食品表示では、パッチワークのように義務化されている州と義務化されていない州が生じ、全米レベルの食品流通が困難になるからである。そこで、食品業界が主導して連邦レベルの法律を制定する動きが始まったのである。
まず、16年2月に起案されたのが、パット・ロバーツ上院農業委員長(共和党)によるGMO(遺伝子組み換え作物・食品)任意表示法案であった。この法案は州ごとの法律を無効とし、表示は任意で、農務省がGMO表示の基準を設定するというものであった。この法案は、3月16日に上院本会議で審議が行われたが、義務表示を支持する民主党の賛成票を得られず、否決された。
一方、民主党は3月にジェフ・マークレイ上院議員によるGMO義務表示法案を提出した。これは、州ごとの法律を無効とする点は共和党案と同じであったが、表示を義務化し、表示方法は原材料欄内に記載する、もしくはパッケージの表にマークを付けるなどの選択ができるものであったが、提案後審議されないままになった。
結局、共和党案、民主党案共に未成立の状況になったが、6月にパット・ロバーツ(共和党)とデビー・スタベノウ上院議員(民主党)による義務表示法案が提出された。その内容は以下の通り。
(1)州ごとの法律を無効とする。
(2)表示は義務とする
(3)農務省がGMO表示の基準を設定する
(4)GMOを含む飼料で飼育された家畜由来の肉・卵・牛乳は表示対象外とする
(5)パッケージの表示方法は以下の3通り
・GMOを含む原料を使用していることを表記する
・GMOを含む原料を使用していることを表すマーク
・GMOを含む原料の使用情報が得られるウェブサイトにリンクするバーコードもしくはQRコード
この法案は、6月23日の上院農業委員会で可決され、7月7日上院本会議で可決。7月29日にオバマ大統領がサインをして成立した。
■法案の問題点と日本への影響
この法案に対して、米国内の消費者団体は反対を表明し、オバマ大統領に対して署名を拒否する請願書を提出していた。反対の最大の理由は、GMOを含む原料の使用情報が得られるウェブサイトにリンクするバーコードもしくはQRコードの表示でもいいという点であった。
実は同表示は、食品産業の業界団体である食料品製造業者協会が15年に提案していたものであった。同表示であれば、その食品が遺伝子組み換え食品かどうかは表示上まったくわからず、消費者はスマートフォンなどでいちいち確かめなければ、GMOの有無がわからないことになる。
州ごとの法律を無効とし同表示を実現すれば、食品業界の勝利であることは間違いない。
問題は、現在日本では認められていない同表示が今後、日本に押し付けられないかということである。日本のGMO表示が米国にとって非関税障壁とされているなかで、今後も動向を注視していかなければならない。
(文=小倉正行/フリーライター)
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