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街中でポケモンを探す〔PHOTO〕gettyimages
ポケモンGO、誰がどうやっていくら儲けているのか プレイヤーは1億人、経済効果は10兆円!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49413
2016年08月10日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
若者から高齢者までが熱中。外で遊ぶゲームなので、世界各国でユーザーが街にあふれる。この世界的人気ゲームを「ビジネス視点」で深掘りしてみたら、知られざる驚愕の収益モデルが見えてきた。
■無料でも儲かる
「まず言えるのは、ポケモンGOは従来のスマホゲームのビジネスモデルとは一線を画している」
スマホ評論家の新田ヒカル氏が言う。
「従来のスマホゲームは、基本的には高額課金のビジネスモデル。ゲーム内で使う希少アイテムの入手には、『ガチャ』と呼ばれる有料のくじ引きをやる必要があり、熱心なユーザーほど当たるまで何回もくじ引きにカネをつぎ込むことになっていた。
くじ引きの当たりの確率はゲーム会社が決められ、一部のヘビーユーザーは何十万円、何百万円と莫大な額を支払うことになる。こうしたユーザーの『中毒性』を利用したビジネスモデルは、消費者庁が『射幸心をあおっている』などと問題視してきた」
一方で、ポケモンGOは、基本的にはタダで遊べる。ゲーム内で使える一部アイテムは課金制だが、すべて定額である。
「要は、多額を費やさなくても老若男女が夢中で遊べる。そのため、全世界に爆発的に広がったわけです。従来のゲームは、課金アイテムに多額を投じる一部ユーザー内のブームにしかなり得なかった」(前出・新田氏)
しかし、それでどうやって儲けるのか?ユーザーは世界で1億人とも言われるが、それでもあまり儲からないのでは?
もちろん、すぐにそんな疑問が浮かぶだろう。
先に種明かしをすれば、答えは「NO」。むしろ、ポケモンGOは従来のスマホゲーム以上に莫大な儲けを稼ぎ出すまったく新しいビジネスモデルになる可能性が高い。
経営コンサルタントの鈴木貴博氏は、「企業から巨額の『広告料』を得られるのが大きい」と言う。
「ポケモンGOの凄みはユーザーを特定の場所に誘引できる『広告機能』を持ち合わせていることで、これがおカネを生む。
具体的に説明すると、ゲーム内では『ポケストップ』と呼ばれる、ポケモンを捕まえるためのアイテムをゲットする場所があります。ユーザーはゲームを進める中で、このポケストップに立ち寄る必要がある。おのずとそこには、ユーザーが大挙して押し寄せます」
ワイドショーでは、公園、レストランなどにゲームに興じる人が大量に集まる異様な様子が映し出されているが、あれがポケストップの風景。タレントの峰竜太氏の自宅がポケストップになっていたと話題にもなった。
そのポケストップの場所をどこに指定するかは、ゲーム制作会社のさじ加減ひとつで決められる。言い方を換えれば、ポケストップになれば集客できるとして、企業から「広告費」を取るビジネスが成立するわけだ。
カドカワ取締役でファミ通グループ代表の浜村弘一氏も言う。
「スマホゲームはこれまでは『BtoC』、つまりは企業が消費者から収益を得るモデルでしたが、ポケモンGOは『BtoB』で企業が企業から収益を得られるのが画期的です。人を動かすインフラとして、ポケモンGOを利用したいと考える企業は続出するでしょう」
■予想売上高「5兆円」とも
実際、すでに日本マクドナルドHDは契約を締結。全約2900店舗がポケストップなどになり、さっそく莫大な経済効果が見込まれている。
「ポケモンGOの国内ユーザーが1000万人として、100人に1人がマクドナルドに行けば10万人。1人当たりの客単価が300円とすれば、一日に3000万円、年間約110億円という巨額の増収効果になります」(前出・新田氏)
何億円もかけてテレビCMを流しても、果たして集客効果があるのかどうか不透明だが、ポケモンGOは直接的に人を誘導できるのが強み。100億円以上の増収効果があるのなら、数十億円を払ってでも提携したほうが得だと考えるのが「経営の常識」である。
「今後は、『食べログ』などに広告を出していた外食系がポケモンGOへの移行を考えるでしょう。ネット広告の市場規模約1兆円のパイを大きく喰っていくのです。
さらに、提携企業は倍々ゲームで増えていく可能性が大きい。たとえば、イオンが『週末の特売日に来店すれば、レアなポケモンが登場する』との提携戦略を打ち出せば、イトーヨーカ堂も追随せざるを得ない。同じことはJALとANAの間で起こり得るし、そうなればJRも黙ってはいられない」(前出・鈴木氏)
ITジャーナリストの三上洋氏は、「自治体からの提携依頼が増えるでしょう」とも言う。
「たとえば自治体が観光ルートに沿って、アイテムを入手できるポケストップを大量申請する。そこがポケモンの『聖地』と認知されれば、旅行客を誘引する効果が期待できる。訪日する人が増える効果も期待できます」
ポケモンGOの「誘致合戦」が各地で行われ、全世界の企業や自治体から億円単位の広告収入がジャブジャブと入ってくる——。これがすべて「儲け」となるわけだ。
世界の広告市場は50兆円規模なので、その1割でも5兆円の売り上げが見込めるが、実はポケモンGOのビジネスモデルはそこにとどまらない。さらに多くの儲けを稼ぐ「仕掛け」も準備されている。スマホジャーナリストの石川温氏は言う。
「どういう人がどういう街を歩いてゲームをしているか。今後はそうしたビッグデータがどんどん溜まっていくので、このデータを使った新規ビジネスができる。商業施設などを運営する企業へのマーケティング支援や、販促イベントをやりたい企業へのコンサルティング事業もやるでしょう」
つまりは、ゲーム以外のビジネス領域にまで事業が広がっていくわけだ。京都大学客員准教授の瀧本哲史氏も言う。
「これからは、LINEなどの機能もポケモンGOの中で実現できる。メールやメッセージをポケモンが届けたりするわけです。ポケモンGOは人の流れを変えられるので、極端なことを言えば、どこを流行る街にして、どこを流行らない街にするかも決定できる。そうした機能を利用した新しい不動産業も可能です」
■任天堂の「大儲け」はこれから
では、こうして得られることになる莫大な利益はだれの懐に入るのか。
「今期の課金売上高を1000億~1300億円と仮定すれば、まずその3割はグーグルとアップルに決済手数料として入ります。残りをポケモンGOを開発した米ナイアンティックと株式会社ポケモンの2社で分け合う。
任天堂はポケモンの利益のうち出資分の32%を収益計上する形で、それは金額にして今期60億~80億円ほどになる」
楽天証券経済研究所の今中能夫アナリストはそう試算した上で、「任天堂は別途、関連商品でも儲けられる」と言う。
「任天堂はすでに『ポケモンGOプラス』という機器を発売予定。今後ユーザー数が2億人に膨れ上がり、そのうち2割が購入すれば、約200億円の営業利益になる」
今期の年間予想利益が450億円なので、その半分を稼ぎ出すほどの巨額だ。ITジャーナリストの本田雅一氏も言う。
「任天堂はポケモンをミッキーマウスのようにして、ディズニー型ビジネスも展開できます。ポケモンが世界中で認知されたことで、今後はポケモンのテーマパーク、ホテル運営、映画事業など、億単位のビジネスを次々に展開できるわけです」
ちなみに、ポケモンGOのユーザーは街を歩き回るので、「周辺消費」も盛り上がる。
「ゲームを長時間やるためにスマホの携帯用バッテリーを買い、外を歩き回るためスニーカーを新調し、ゲーム途中でレストランに入って外食をする。ポケモンGOのために外出する人が500万人いて、彼らが一日2000円を出費すれば、一日100億円の経済効果になる」(前出・三上氏)
もしポケモンGOが飽きられる日が来たら、すべてゼロになるかといえば、そんなこともない。
ファイブスター投信投資顧問取締役運用部長の大木昌光氏は、「ポケモンGOの類似ゲームとして、ガンダム版、キティちゃん版などが出てくれば、それがまたポケモンGOと同じような経済効果を生む」と言う。
経済アナリストの森永卓郎氏も、「長期的な経済効果は、10兆円では済まない。政府の経済対策並みの効果で、その恩恵は回り回ってわれわれの賃金に反映される」と言う。
ポケモノミクスが生む「好循環」は、日本経済を大復活させる起爆剤になるかもしれない。
「週刊現代」2016年8月13日号より
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