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月岡隆・現社長〔PHOTO〕gettyimages
ドロ沼化する出光興産「創業家VS経営陣」和解のための唯一の切り札はコレだ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49400
2016年08月09日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
昭和シェル石油との経営統合問題をめぐる、出光興産の経営陣と、創業家で大株主である出光家との対立が泥沼の様相を呈してきた。
創業家が先週水曜日(8月3日)に記者会見、昭和シェル株40万株を創業家名義で取得して、出光経営陣が統合へ向けた事前準備としていた英蘭系石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)からの相対取引による昭和シェル株の取得計画に待ったをかけたと発表したからだ。
報道によると、月岡隆・出光社長は翌4日、亀岡剛・昭和シェル社長を訪ねて対応を協議。あくまでも現在の統合計画の実現を目指して創業家の説得にあたる方針を確認したという。しかし、肝心の創業家側は、「(出光経営陣が昭和シェル株の)取得取りやめを公表するまで協議しない」と態度を硬化させているらしい。
経営陣が進めるM&Aに対して、創業家出身の元社長が私費を投じてストップをかけるというのは異常事態としか言いようがない。いったいなぜ、これほどまで経営陣と創業家の関係がこじれたのか。その原因と打開策を探ってみよう。
■TOB回避をめぐる水面下の攻防
元代議士で創業家の代理人を務める浜田卓二郎弁護士が先週の記者会見で、出光と昭和シェルの経営統合に待ったをかけるために利用したと述べたのが、金融商品取引法の規定だ。
すべての株主に平等に株式の売却機会を与えるため、当該企業以外の者が特定の期間内に取引所外取引によって持ち株比率で3分の1を超える大量の株式取得を行う場合には、TOB(株式公開買い付け)の採用が義務付けられている。
出光の場合、昭和シェル株の取得にTOBを採用すると、多くの株主から売却希望が出て、RDS保有株だけを買い取ることが困難になり買収コストが膨らむうえ、手続きコストも嵩む。
そこで出光は、昨年秋、昭和シェルとの経営統合に大筋合意したものの、具体的な統合方法には言及せず、まずは、昭和シェルの経営から撤退する方針を表明していたRDS保有の昭和シェル株を取得する計画だけを明らかにした。この場合、RDSの昭和シェル株の持ち株比率は3分の1スレスレの33.24%のため、TOBの義務は生じないと皮算用していた経緯がある。
これに対して、創業家は4億円弱の資金を投じ、出光昭介氏(創業者の出光佐三氏の長男。出光興産第5代社長で、現在も「出光興産名誉会長」の肩書を持つ)名義で発行済み株式数の0.1%に相当する昭和シェル株を取得した。昭介氏は出光と一体とみなされるというのが、創業家側の主張だ。
この通りだとすると、経営陣の取得予定分を加えた出光の昭和シェル株の持ち株比率は33.34%となり全体の3分の1を超えるため、TOBの実施が避けられなくなる。
ちなみに、経営陣には、善後策として、
@株式の取得方法をTOBに切り替える
Aあらかじめ自社株の大規模な第3者割当増資を実施して、創業家の持ち株比率を希薄化する
B取得する昭和シェル株数を減らす
などの手が考えられる。
しかし、前述のようにTOBのコストは大きい。第3者割当増資案も、すべての株主の株主権が希薄化するので、他の多くの一般株主から経営陣に対する反発を招く恐れがある。また、取得株数を減らす案は、保有株すべての売却を希望しているRDSの期待にそえない。
つまりどの案にも問題があり、結果として、経営統合そのものが非常に難しくなった格好なのである。
■相互不信に陥った2つの理由
それにしても、なぜ、両者はこれほど相互不信を募らせてしまったのだろうか。
第一に指摘すべきは、経営陣による株主軽視、株主とのコミュニケーション不足の問題だ。
出光経営陣が昭和シェルとの経営統合に合意したと正式発表をしたのは昨年11月のことである。その後も、水面下で公正取引委員会の合併審査を受ける一方、来年4月の統合実現に向けた協議を着々と進めていたという。
合意から半年以上も経った、今年6月の株主総会で、創業家が昭和シェルとの経営統合に異を唱えたことが、月岡隆社長ら現経営陣にとって青天の霹靂だったというが、これこそ、大株主への説明を怠ってきたことの証左だろう。
特に、出光の創業家は今なお発行済み株式の3分の1以上を持つ大株主であり、今回のようなM&Aに必要な株主総会の特別決議を単独で阻止できる拒否権を持っている。社長自ら、昭和シェルとの正式合意の前に、何度か足を運び、創業家の理解を得ることは不可欠だったはずだ。
こうした株主軽視の姿勢から、現経営陣が掲げる経営統合後の経営方針は信頼できないものではないかと、創業家が疑心暗鬼に陥ったとしてもなんら不思議は無い。
第二に指摘すべきは、月岡氏の社長就任後の業績不振や減配の問題だ。
出光興産の社長は、3代目の石田正實を除き、7代目の出光昭氏まで、創業者・出光佐三氏のほか、その弟、長男、甥らで占められてきた。佐三氏が戦後のどさくさの中で発言した「資本などゼロでよい」との言葉を金科玉条とし、過少資本のもとで積極投資を行ったことが仇になって、5代目社長の出光昭介氏の頃から財務体質が悪化した。
都市銀行勤務の経験があり財務に明るかった出光昭社長(佐三氏の甥)が、後に出光家出身者以外の人物としては30年ぶりの抜擢で8代目社長になる天坊昭彦氏と2人で、昭介会長のもとへ足繁く通い、ようやく了解を得た構造改善策の柱が、2006年に果たした東証一部への株式公開だったという。
天坊氏は、社長時代の2005年3月期に1兆969億円に膨らんでいた有利子負債(長、短借入金と社債の合計)を、上場を挟んで2年後の2007年3月期には8,342億円まで削減することに成功し、出光の「中興の祖」と呼ばれた。以後、出光は同族経営から脱皮した。
天坊氏の後任の中野和久氏の社長時代も、出光家出身以外の社長が活躍した時期と言ってよいだろう。東日本大震災の直撃を受けるなど、外部環境は厳しかったが、2011年3月期から2年間、600億円を超える最終利益を稼ぎ出し、1株につき200円の配当を定着させるなどの功績を残した。
ところが、非出光家出身社長の3代目、月岡社長の3年間は、厳しいものだ。就任の初年度(2014年3月期)に当期損益が前期比27.7%減の362億円と落ち込み、その後は2期連続で最終赤字に転落。配当も75円減配の年125円、75円減配の年50円と、2期連続で減らした後、2016年3月期も年50円に据え置くのがやっとだった。
これでは、経営統合話が出てくる以前から、株主が経営者としての手腕に疑問符を付けていたとしても何ら不思議はない。
■双方にとっての良策
とはいえ、先月の本コラム「昭和シェルとの経営統合に“待った”!「海賊と呼ばれた男」の血を引く出光創業一族の思惑」でも指摘したように、人口減少や成長鈍化に伴う消費量減少、地球温暖化対策による省エネ努力などを背景にした石油需要の低迷は深刻だ。
日本エネルギー経済研究所(石油情報センター)によると、日本の石油消費は1999年度に2億4597万キロリットルと過去最高を記録した後、減少傾向に転換。2009年度以来、2億キロリットルの大台を割り込み、最新統計(2013年度)では1億9352万キロリットルに減少した。2030年度には1億3300万キロリットルに落ち込むという市場予測もある。
2度の石油危機を経て、20社近い会社が乱立していた元売り業界は再編・統合の洗礼を受けた。現在、JX日鉱日石エネルギー、出光、東燃ゼネラル石油グループ(EMGマーケティング、キグナス石油を含む)、コスモ石油、昭和シェル、太陽石油など6グループに集約されている。
各社は、石油精製の過剰設備の整理・縮小や海外での石油以外の資源開発の強化、自由化が始まった電力・ガス分野に多角化するため、同業他社との経営統合が避けて通れないだろう。
では、いったいどうすれば、出光経営陣は、創業家の信頼を回復し、昭和シェルとの経営統合に向けた大きな障害を解消できるのだろうか。
まず、考えなければならないのは、業績の低迷や減配に対する「経営責任の明確化」だ。
次に、創業家が主張するように、独自の「抜本的な構造改革」も必要だ。あらゆる努力をしても足りず、頑迷な自主独立路線だけでは生き残れないことを証明する必要がある。
そして、最後の切り札は、「創業家から社外取締役を受け入れる」ことではないだろうか。会社の先行きを考える際、経営統合後によって株主権が希薄化して特別決議に対する拒否権という切り札を失うことが、創業家にとって懸念材料でないはずがない。
ここは、失う拒否権の代償として、いくつかの社外取締役ポストを創業家に提供し、経営を監視する役割を分担することで収拾を図るのが双方にとっての良策と思われる。
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