http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/664.html
Tweet |
マイナス金利の是非、英国と欧州で新たな対立勃発か
By SIMON NIXON
2016 年 8 月 8 日 15:30 JST
英国と欧州の間で新たな対立の芽が生まれつつあるが、今回はブレグジット、つまり英国の欧州連合(EU)離脱とは関係がない。「金利はどこまで低くすることができるのか」という金融政策に関するものだ。これは単に理論上の議論にはとどまらない。欧州の経済と政治の安定がそれにかかっているかもしれないのだ。
英国では、イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁が先週、政策金利を0.50%から0.25%(322年間の英中銀史上、最低の水準)に引き下げ、さらに年内の追加利下げを示唆することで、ブレグジット決定後に鮮明になっていた景気減速に対応した。ただ、政策金利をゼロ未満まで引き下げる可能性は否定した。銀行はマイナス金利を顧客に転嫁するのは難しいとみられ、融資金利の引き上げで利ざやを確保したいという衝動に駆られる可能性があるため、マイナス金利は自滅的な結果につながりかねない、という長年の持論を総裁は繰り返した。「(政策金利の)事実上の下限はゼロ強だ」と述べた。
この考えは欧州中央銀行(ECB)と食い違う。ECBはすでに預金金利をマイナス0.4%まで引き下げている上、さらなる引き下げも示唆している。ECBのクーレ専務理事は先月の講演で、マイナス金利導入後も銀行の預金は伸びていると指摘した。このため金利の水準は、現金を銀行にとどめておくコストが別の現金保管コストを上回る「物理的な下限」水準を上回っていると考えられる。同時に、ユーロ圏の銀行融資が増える一方、借り入れコストは低下しているため、利ざやに圧力がかかる中でも純金利収入は増えている。つまり、マイナス金利の代償が恩恵を上回る「経済的な下限」にはまだ達していないようだ。
しかし英中銀は、マイナス金利が銀行の利ざやを圧迫し、一部で融資金利の引き上げが起きている国の一例として、スイスを挙げる。それどころか、英中銀は自国の0.25%というプラスの政策金利でも悪影響を十分に警戒し、融資を維持・拡大する銀行を対象にした低利融資制度を導入した。これはまさに寛大な補助金と言える。
アナリストの多くも英中銀と同じ懸念を抱いている。バンクオブアメリカ・メリルリンチのアラスター・ライアン氏はStoxx600欧州銀行株指数の年初来騰落率がマイナス30%となっていることについて、純金利収入がすでに圧力にさらされる中、銀行が新たな「破滅の連鎖」に直面していることを知らせる警告だと述べた。同社がカバーする欧州銀のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上の銀行は25%にとどまり、他の25%は0.5倍未満となっている。一方、投資家が長期的に要求するリターン水準を満たすだけの収益力(ROE)が市場予想の10%に届かない銀行は全体の約66%を占める。同社は「銀行が利益低迷で事業からの資本引き揚げを検討する恐れがあることで、ECBの金融緩和に対する決意はますます揺らぎそうだ」と述べた。
ECBがこうしたリスクの高い戦略に固執している理由は何だろうか。その一つは、恩恵が代償に勝るとの考えだ。とりわけ、無策でいることの代償に比べれば恩恵があるとみているようだ。借り入れコストの引き下げには景気刺激効果があり、デフォルト(債務不履行)リスクの低下や債券ポートフォリオの価値向上につながり、結果的に銀行の資本基盤に対する圧力は和らぐ。同時に、銀行は借り入れコストの引き上げ以外の方法(コスト削減など)で利益を高めることができる。さらにECBは、社債買い入れといった他の政策がノンバンクによる市場を通じた融資を後押しし、信用供給を一段と拡大させることに期待している。
もっとも、ECBがマイナス金利に熱を入れているのは、そうするしかないという事情もあるかもしれない。国債買い入れの拡大という代替案は政治的な障害を伴うためだ。ユーロ圏諸国の国債市場の大半で利回りがマイナスで推移しているため、ECBが定めた厳しい基準に適合する債券は間もなく底を突くとみられる。ECBは国債買い入れで損失が生じるのを防ぐため、購入対象国債の利回りの下限を預金金利と同水準と定めている。また、「財政ファイナンス」と批判されるのを避けるため、各国のECBへの出資比率に応じて各国債を買い入れている。こうした条件をなくせば政治的な反発を招くのは必至だ。事実、ドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁は先週、国債買い入れは出資比率に応じるという条件の廃止に反対の姿勢を改めて繰り返した。
ただ、マイナス金利の推進も、政治的な問題に直面しかねない。ECBのドラギ総裁は先月、資本コストの上昇が融資判断にどう影響し得るかを指摘し、銀行株の急落が金融政策の波及において潜在的なリスクであることを認めた。解決策の一つとしては、日本銀行の例にならって株式ETF(上場投資信託)を買うことが考えられる。欧州の銀行部門は規模が大きいため、株式ETFに占める割合も高い。これが実現すれば、銀行の株価は上昇し、資本コストは低下する。また、銀行に対してバランスシート圧縮を求める圧力も弱まるだろう。だが、ECBが監督対象機関の株式を間接的であっても購入するためには、政治的な口実が必要になる。
いずれにせよ、英中銀が正しいことが明らかになれば、金融政策を巡る政治的な対立が新たに勃発してもおかしくなさそうだ。
関連記事
英中銀緩和も、投資家の期待は財政出動に
英中銀MPC、一部の緩和策で意見対立
英中銀の二者択一、さらにリスクを高めるか
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjP-P2Kn7HOAhUEtJQKHR6rDuEQFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11483107759614144642904582238563014145238&usg=AFQjCNF4eM4fhXVYRftYHAQjyx08p-rxEw原油相場の下落、その他資産に波及する懸念再燃
ENLARGE
原油安が株式やジャンク債の悪材料になる懸念が再浮上している。米原油相場は6月初めから18%下落している PHOTO: ALEX MILAN TRACY/SIPA PRESS/ASSOCIATED PRESS
By
BEN EISEN AND TIMOTHY PUKO
2016 年 8 月 8 日 15:47 JST
S&P500種指数とナスダック総合指数が5日に最高値を更新したにもかかわらず、原油相場が株式相場やハイイールド(ジャンク=投資不適格級)債にとって悪材料となる可能性への懸念が再浮上している。
米原油先物9月限は2日の取引で1バレル=40ドルを割り込み、終値として4月以来の安値をつけ、12営業日中10営業日目の下げを記録した。その後持ち直し41.80ドルで1週間の取引を終えたが、6月初め以降18%も下落している。
相場下落の理由は大半が供給過剰にあるが、一部の運用担当者は原油相場の落ち込みで投資家心理が悪化し、米国株からリスクの高い債券に至るまで他の市場にも下げが拡大することを心配している。ダウ工業株30種平均が10%余り下がるなど、年初に幅広く相場が混乱した一因は、原油安にあるとする投資家が多い。
米原油相場とS&P500種指数との相関度は、1月21日に数年ぶりの高水準にあたる0.97に上昇した。原油相場が崩れリセッション(景気後退)懸念が高まったためだ。相関度が1の場合、二つの資産は足並みをそろえて動く。マイナス1の場合は反対方向に動く。ゼロの場合は動きが無関係ということになる。
S&P500種が最高値を更新した7月に、相関度はマイナス0.77まで低下したが、その後縮小し、5日にはマイナス0.36となっている。相関度は予想が難しく、すぐに振れる可能性があることで知られている。
https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CQ965_CORREL_16U_20160807150905.jpg
原油相場と株式相場の推移(左)と相関度(右)
それでも、今年初めの相場全体の急落でも明らかなように、ある資産が不安定になると速やかに他の資産に波及する可能性がある。経験に基づき多くの投資家は相関度に注目し続けている。特に株式や安全性の高い債券の相場水準が高くなっているので、投資家の多くは突然の心理の変化に相場は一段と敏感に反応すると考えている。
多くの運用担当者は現金持ち高を高めており、足元の投資環境が依然として緊張状態にあることがうかがえる。バンクオブアメリカ・メリルリンチの調べによると、7月は世界のファンドマネジャーの保有資産に占める現金の比率が平均5.8%となった。
原油安は一般的に、他のモノやサービスに対する消費者や企業の消費余力を与えるので好材料だ。だが、アナリストらは、原油安が今年この後の企業収益を圧迫する可能性があるとみている。ファクトセットによると、S&P500種構成企業の4-6月期決算は、5期連続での前年同期比減収になる見通しだ。
原油安は、過去2年間にわたり業界を圧迫してきた過剰供給への懸念を浮き彫りにしている。今年春に相場が反発し、米国の石油生産者は多くがリグ(掘削設備)の再稼働に動いた。その結果、在庫がまだ過去最多水準に近い中で供給が増える可能性が懸念されている。1年前にも同じような動きがあった。
投資顧問会社エドワード・ジョーンズのジョゼフ・オルティズ氏は先ごろ、顧客との昼食会で、このように企業業績に不安があることを勘案し、株式への投資持ち高を減らしたいか考えるよう語った。同氏によると、昼食会後に顧客の8割が株式の持ち高を削った。「少し手を引くのはとても賢明なことだ」とオルティズ氏は語った。
関連記事
• 原油相場、じきに再上昇か−設備投資削減の影響で
• OPEC増産凍結協議、9月に再開へ=関係者
• 原油安特集
#米国も賃金加速でも消費は伸びず
米国の有権者、不満の種は賃金以外に
米国の有権者はかなり不満を感じているが、4年前の大統領選挙以降、賃金と所得は大幅に改善している。有権者が不満を抱く背景は賃金にはないことがうかがわれる PHOTO: GERRY BROOME/ASSOCIATED PRESS
By
JOSH ZUMBRUN
2016 年 8 月 8 日 15:15 JST
有権者の財布の中身に不満の種を見つけるのは次第に難しくなりつつある。
米国では、前回の大統領選挙以降、賃金と所得の伸びが大幅に改善したが、それでも有権者はかなり不満に感じている。実態と実感のこの違いは、2007年〜09年の深刻なリセッション(景気後退)は昔のこととなったが、家計にとって過去の傷と将来への不安がまだ大きいことを浮き彫りにしている。
米経済は家計の純資産や株式相場が今年、過去最高水準に達しただけでなく、5日に発表されたばかりの7月の雇用統計では、賃金の伸びが上向いていることが示された。
これらの数字は大半が平均をとったものだ。アトランタ地区連銀の分析担当者らも、個人の賃金が時間とともにどのように変化するかを追跡している。その分析によると、賃金の中心的な伸びは12年の2%足らずから15年にかけて3.6%に上昇した。これは労働者の半数がこの水準以上の賃上げを受け、半数はそれよりも賃金の伸びが低かったということを示している。ここ数年にガソリンが値下がりした影響が大きく、賃金の伸びはインフレ率を十分上回っている。
https://si.wsj.net/public/resources/images/BT-AK319A_OUTLO_16U_20160805172107.jpg
改善する経済指標:家計所得中心値(上)・実質賃金上昇率(下)
国勢調査局がまとめる毎年の中心的家計所得は、景気低迷を特に根強く示す統計の一つだ。最新の数字は、物価調整済みで07年の水準よりも4000ドル近く低い。
ただ、入手できる数字は14年までしかない。元国勢調査局関係者が設立した経済調査会社、センティア・リサーチでは、家計所得の推計をより速やかに出すために、細かい公式統計を分析している。その推計によると、過去1年間にみられた賃金の伸びの加速で、実質家計所得はリセッション前の水準を回復している。
この景気回復の初期において、賃金の伸びの大半はすでに高い収入を得ている労働者のものとなったようだった。だが、ゴールドマン・サックスのエコノミスト、デービッド・メリクル氏の最近の分析によると、多くの州や地方政府が最低賃金を引き上げたことが大きく影響し、賃金の伸びは時給12.50ドル未満の労働者が最も高くなっている。
賃金の伸びが加速している証拠は、公的統計に基づく指標に限ったものではない。従業員らが雇用者の評価を投稿する就職支援サイト、グラスドアによると、報告される給与水準は上向いている。
グラスドアのチーフエコノミスト、アンドリュー・チェンバレン氏は「現在の労働市場は信じられないほど引き締まっており、企業にとって最大の課題は役割につける人材を見つけることだ。08年や12年とは全く違う世界だ」と語った。
ほぼあらゆる尺度でみて米国の所得情勢は改善しているが、民主・共和両党の大統領候補がいずれも経済はもはや中間層のためのものだとしていないため、大統領選挙に向けて悪い予感が引き続きある。
ウォール・ストリート・ジャーナルとNBC放送が先ごろ行った世論調査では、米国が道を誤っているとの見方が62%あった。これは最近数カ月の数字よりも低いが、12年のどの時点よりも高い。
外食大手マクドナルドの年次株主総会の外で時給15ドルを求めて抗議する人々 PHOTO: ANTONIO PEREZ/ASSOCIATED PRESS
賃金が伸びている中で、一般大衆の見方はどうしてこうも暗いのだろう。米国の全ての業種や全ての地域が等しく栄えているわけではないとも言える。
もう一つの可能性としては、賃金の伸びが過去15年間の困難な時代を相殺し始めたばかりとも言える。
センティア・リサーチのパートナーで元国勢調査局関係者のゴードン・グリーン氏は、賃金は昨年大きく伸びたが、「家計所得は依然として2000年1月の水準を下回っている」と指摘した。家計にとってこれまで良い年はほとんどなかったので、良い1年に熱を上げる気にはなれないのかもしれない。グリーン氏は、多くの家計にとって「とても長く、極めてつらい」年月だったのだと述べた。
多くの家計が自分は良くなっていると感じているが、他の人達はうまく行っていないと考えている。例えばミシガン大学の家計心理に関する調査では、個々人の感覚と経済全体に対する見方に大きな違いがみられる。個人的な状況について楽観している割合は、経済の見通しに対する楽観を25%上回っている。
今後1年間の個人的状況について、自分の世帯状況は良くなると予想している人の割合が、悪化するとの見方との差し引きで25%上回った。対照的に、米経済全体については、楽観視する割合はわずか2%にとどまった。
リセッションが最も深刻だった08年と09年には、調査会社ギャラップの調べに対し8割以上の米国民が経済を同国が抱える最大の問題として指摘した。現在、この割合は約27%に低下している。人種問題や政府に対する不満、犯罪、暴力などへの懸念が高まっている。国防やテロ、イスラム国を一番の懸念材料にする有権者が13%いる一方、賃金や資金不足を挙げたのはわずか3%だった。
おそらく、有権者の多くは今回の選挙に極めて深刻で暗い印象を抱いているものの、本当の懸念材料はもはや懐具合ではないということだろう。
関連記事
• 7月の米雇用統計、労働市場の真の姿示すか
• 米経済、生産性低下の背景に高齢化
• 米経済の現状、大統領選にどう影響するか
原油相場の下落、その他資産に波及する懸念再燃
ENLARGE
原油安が株式やジャンク債の悪材料になる懸念が再浮上している。米原油相場は6月初めから18%下落している PHOTO: ALEX MILAN TRACY/SIPA PRESS/ASSOCIATED PRESS
By
BEN EISEN AND TIMOTHY PUKO
2016 年 8 月 8 日 15:47 JST
S&P500種指数とナスダック総合指数が5日に最高値を更新したにもかかわらず、原油相場が株式相場やハイイールド(ジャンク=投資不適格級)債にとって悪材料となる可能性への懸念が再浮上している。
米原油先物9月限は2日の取引で1バレル=40ドルを割り込み、終値として4月以来の安値をつけ、12営業日中10営業日目の下げを記録した。その後持ち直し41.80ドルで1週間の取引を終えたが、6月初め以降18%も下落している。
相場下落の理由は大半が供給過剰にあるが、一部の運用担当者は原油相場の落ち込みで投資家心理が悪化し、米国株からリスクの高い債券に至るまで他の市場にも下げが拡大することを心配している。ダウ工業株30種平均が10%余り下がるなど、年初に幅広く相場が混乱した一因は、原油安にあるとする投資家が多い。
米原油相場とS&P500種指数との相関度は、1月21日に数年ぶりの高水準にあたる0.97に上昇した。原油相場が崩れリセッション(景気後退)懸念が高まったためだ。相関度が1の場合、二つの資産は足並みをそろえて動く。マイナス1の場合は反対方向に動く。ゼロの場合は動きが無関係ということになる。
S&P500種が最高値を更新した7月に、相関度はマイナス0.77まで低下したが、その後縮小し、5日にはマイナス0.36となっている。相関度は予想が難しく、すぐに振れる可能性があることで知られている。
https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CQ965_CORREL_16U_20160807150905.jpg
原油相場と株式相場の推移(左)と相関度(右)
それでも、今年初めの相場全体の急落でも明らかなように、ある資産が不安定になると速やかに他の資産に波及する可能性がある。経験に基づき多くの投資家は相関度に注目し続けている。特に株式や安全性の高い債券の相場水準が高くなっているので、投資家の多くは突然の心理の変化に相場は一段と敏感に反応すると考えている。
多くの運用担当者は現金持ち高を高めており、足元の投資環境が依然として緊張状態にあることがうかがえる。バンクオブアメリカ・メリルリンチの調べによると、7月は世界のファンドマネジャーの保有資産に占める現金の比率が平均5.8%となった。
原油安は一般的に、他のモノやサービスに対する消費者や企業の消費余力を与えるので好材料だ。だが、アナリストらは、原油安が今年この後の企業収益を圧迫する可能性があるとみている。ファクトセットによると、S&P500種構成企業の4-6月期決算は、5期連続での前年同期比減収になる見通しだ。
原油安は、過去2年間にわたり業界を圧迫してきた過剰供給への懸念を浮き彫りにしている。今年春に相場が反発し、米国の石油生産者は多くがリグ(掘削設備)の再稼働に動いた。その結果、在庫がまだ過去最多水準に近い中で供給が増える可能性が懸念されている。1年前にも同じような動きがあった。
投資顧問会社エドワード・ジョーンズのジョゼフ・オルティズ氏は先ごろ、顧客との昼食会で、このように企業業績に不安があることを勘案し、株式への投資持ち高を減らしたいか考えるよう語った。同氏によると、昼食会後に顧客の8割が株式の持ち高を削った。「少し手を引くのはとても賢明なことだ」とオルティズ氏は語った。
関連記事
• 原油相場、じきに再上昇か−設備投資削減の影響で
• OPEC増産凍結協議、9月に再開へ=関係者
• 原油安特集
原油相場、じきに再上昇か−設備投資削減の影響で
石油パイプラインと貯蔵タンク(米オクラホマ州) PHOTO: REUTERS
By
SPENCER JAKAB
2016 年 8 月 8 日 14:47 JST
ロケットの打ち上げが失敗したかのように、原油相場は上昇軌道に乗れなかった。今回は「燃料」に問題が生じたようだ。
ベアマーケット(弱気市場)入りから2年が経過する原油市場だが、またもや大幅な相場上昇を維持できなかった。原因は、需要のさらなる減退というよりもむしろ積極的すぎる精製業者にありそうだ。米国のガソリンと留出油の在庫は1年前の水準を約10%、6%それぞれ上回っている。一方、カナダの山火事やナイジェリアの政情不安などで今春に原油供給量が一時減ったものの、足元で影響は薄れている。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物中心限月は2月初めから6月初めまででほぼ2倍に上昇し、一時は1バレル=52ドルに迫ったものの、それから2カ月足らずで10ドル余り下げた。だが「4度目の正直」を信じる理由はある。立ち直りの早いシェールオイル生産の攻勢で価格上昇が抑えられるとの懸念については、影響の度合いを考慮する必要がある。
ベアマーケット入り以降、上昇局面は3度あった。1度目は2015年春(約50%上昇)、2度目は15年8月末から10月初め(35%上昇)、そして3度目が16年6月までの4カ月間だ。1度目、2度目のときとほぼ同様、3度目の今回も一部の専門家らは原油市場がようやく均衡状態に戻ったと考えた。まだそこまでには至っていないものの、原油価格が2月につけた1バレル=26ドル台へ近々下げ戻る可能性は低く、均衡水準は近づいているようだ。
その理由を理解するためには、1000億ドルという金額を考える必要がある。これは利益や収益を表している金額ではない。上場石油大手10社の16年投資見込額が2年前の時点での計画値からいくら修正されたかを示した数字だ。ファクトセットがまとめたアナリスト予想の中間値によると、修正額は1000億ドルに達するという。これは大手10社として考えても大きな額で、2年前の見通しを40%下方修正したに等しい。経営がより順調な総合石油大手の精製・販売事業部門を除外すると、削減率はさらに大きくなる。
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-PF894_OilCha_M_20160803162141.jpg
上場石油大手10社の2016年資本支出見通し(単位:10億ドル) PHOTO: THE WALL STREET JOURNAL
一方、同じ10社が16年に見込む原油生産量は日量1590万バレルで、14年8月時点でアナリストが予想していた水準を10%しか下回っていない。投資額の大幅な下方修正とは対照的に減産量が少ない理由は、大手石油企業の供給体制強化には数年にまたがる大規模なプロジェクトへの投資が必要だという事実と大きな関係がある。原油価格が急落したときにすでに進められていた投資は完了したが、当初見込まれていた数百万バレルもの原油生産は実現しないだろう。
もう一つの要因は、石油輸出機構(OPEC)加盟国が市場シェアの確保を狙ってフル稼働で生産を続けていることだ。OPECの直近7月の市場報告書によると、OPEC産原油の供給量は14年と比べて日量160万バレル(5%)増えた。これは調査した大手石油会社10社の減産量にほぼ等しい。
だが、来年は状況が異なるだろう。投資削減が一段と生産量に響いてくるからだ。恐らくイランは別としてOPEC加盟国に増産の余裕はほとんどない。中でもベネズエラなど一部の国は痛手が大きそうだ。
シェールオイルの動向は原油相場を暴落させるほどの影響はないだろうが、上値を抑えるはずだ。原油価格が1バレル=50ドルを一時的に上回っただけで、シェールオイル生産企業は休止していたリグ(石油掘削装置)を再稼働させた。少しでも上昇相場が続けば、生産を短期間に増やせるシェールオイルの勢いは数カ月のうちに加速すると考えられる。原油価格が同70ドルを突破すれば、シェールオイルは市場に溢れ出るだろう。
従って、再度の相場上昇に備えた方が良い。早ければ16年末か17年初めにも上昇局面入りするかもしれない。ただ、近いうちに再び14年の水準に到達すると期待すべきではない。
関連記事
• OPEC増産凍結協議、9月に再開へ=関係者
• 欧州石油大手、原油40ドル台ならどうする
• 原油安特集
進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む
ENLARGE
オーストラリア証券取引所のデータセンター PHOTO: AUSTRALIAN SECURITIES EXCHANGE
By
VERA SPROTHEN
2016 年 8 月 8 日 15:01 JST
金融市場では取引速度を競うレースが依然として活発だが、世界で最も強力な証券会社や取引所に対して光速に匹敵する速度で株式取引を処理できるというスイッチを提供しているのは、フィンテック(IT技術を使った新たな金融サービス事業)を手掛ける一握りの新興企業だ。
豪シドニーに本拠を置くメタマコ(Metamako)とエクサブレイズ(Exablaze.)両社や、シカゴに本拠を置くエクセロア(xCelor)社は、取引所から電子トレーダーに送るデータなど、メッセージを一方から他方に送るのに約4ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)しかかからないスイッチを製造している。
注文を集めてそれを取引所に送るプロセスを含めると、新しいスイッチが一つの動作を完了するのに要する時間は、光が野球の本塁から一塁までの距離を進む時間とほぼ同じだ。これは取引所のサーバールームで現在使われている多くのスイッチよりも数倍も速い。超高速取引(HFT)の世界では、まばたきの間に富を獲得したり失ったりする行為が何度も繰り返されているのだ。
レーシングマシンに変える
メタマコの共同創設者デービッド・スノードン氏は「われわれは物理学の限界に挑んでいる」と述べた。同社は、シスコシステムズやアリスタネットワークスのような企業が製造している在来型のネットワークスイッチを、いわばレーシングマシンに変えつつあると言える。
こうした超高速スイッチは、1秒間で何千回もの取引を送り出すコンピューター取引プログラムを使う会社からの需要に見合うように設計されている。これらのスイッチは宅配ピザの箱とほぼ同じ大きさの黒色の装置で、通常は銀行やヘッジファンドが証券取引所のデータセンターで動かしている巨大なサーバー群の上に置かれている。
超高速スイッチは、膨大な量の株式市場データを同時に何十もの取引サーバーに送っている。その後、金融機関など企業の持つアルゴリズムによってこの情報が消化されると、買いあるいは売り注文を電光石火で執行する。
ますます進む取引の高速化は、通常の投資家を犠牲にし、HFTトレーダーらを有利にしていると批判されている。それは、取引システムを運営する新興企業IEXグループが、取引速度を意図的に遅らせる仕組みを導入したことにもつながった。
市場はより公平になるのか?
しかし超高速スイッチメーカー各社は、注文の執行が光速に近いスピードになれば、実際には市場はより公平になると主張している。なぜなら、あらゆるデータが可能な限り迅速に進むシステムでは、トレーダーが悪用できるような技術的抜け道はなくなるからだ。
もちろん、取引ネットワークを構成するのはスイッチだけではない。コンピューター専門家は、超高速スイッチのスピードは、ネットワークカードなどのハードウェアが同じように追随できた時にのみ意味を持ってくると指摘している。前出のエクサブレイズのマシュー・チャップマン最高技術責任者(CTO)は「こうした超高速スイッチはもはやボトルネックではない。つまり、レイテンシ(遅延)は今やシステム内の他のあらゆるところにある」と語った。
ENLARGE
メタマコの共同創設者スコット・ニューハム氏(左)とデービッド・スノードン氏 PHOTO:VERA SPROTHEN/THE WALL STREET JOURNAL
新しいスイッチはまた、大きな勝利も保証しない。コンピューター工学で博士号を持つメタマコのスノードン氏は「速く、かつ賢くなければならない」とし、「愚かなトレーディング戦略では結局のところ儲けることはできない」と語る。
それでも、通信会社から証券会社にいたるまで、各企業は、この新スイッチ技術に関心を寄せている。一方、多くのコンピューター取引トレーダーは優位に立つべくこのようなスイッチを購入しつつある。先月、オーストラリア証券取引所(ASX)は、メタマコのハードウェアを使用していることを認めた。メタマコは、米国のHFT会社の半分以上が既に同社の装置を使用していると推計している。
新しいスイッチはデータをほとんど解析せずにそのまま転送するため、シスコ製などのスイッチよりもスピードが速くなっている。シスコ製などのスイッチは、情報を解析した後でそれを送る場所を決定している。
世界最大級の銀行やヘッジファンドなどが会員になっている「セキュリティーズ技術分析センター(STAC)」(米イリノイ州ウォーレンビル)の試験によれば、メタマコの装置は、トラフィック量とは無関係に4ナノ秒という一定の速度を記録した。これは、データの殺到時にサーバーが遅くなるのを懸念する金融機関にとって重要な特徴だ。
https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AN357A_AUSSP_16U_20160803045107.jpg
85ナノ秒で進める距離(上から光、稲妻、ハレー彗星、スペースシャトル、銃弾)
メタマコとエクセロアは両社製のスイッチについて、注文を取引所に送り返すなどもっと複雑なタスクを含むメッセージング全体の作業を約85ナノ秒で完了していると述べた。シスコのウェブサイトによれば、シスコの最速スイッチでは同様の作業に少なくとも240ナノ秒を要するという。
シスコはコメントを差し控えた。
ブレグジットに耐えたシステム
シドニー郊外に拠点を持つメタマコは、シカゴからアムステルダムまで世界各地の顧客に超高速スイッチを月間約100台販売している。1台当たり約2万ドル(約200万円)で、米国のコンサルタント会社タブ・グループによれば、米国株式取引の半分近くを占める高速トレーダーたちにとって最も入手しやすいスイッチの一つとなっている。
ロンドンに本拠を置くネットワークサービス会社FXエコシステムは最近、メタマコ製スイッチを導入してデータセンターの一部を拡充した。同社のジェームズ・バニスターCEOによると、速度を重視するトレーダーや銀行にとって魅力的に映るようにするのが狙いだ。
英国が欧州連合(EU)離脱の是非を決める国民投票を実施した6月23日の夜、英通貨ポンドに関するさまざまな憶測が飛び交い、通常の10倍もの量のデータがFXエコシステムのネットワークに殺到した。
スイッチが不具合を起こすリスクが高まったが、その日徹夜したバニスター氏は「投票結果が飛び込んできた時、われわれは固唾をのんでいたが、(スイッチの)技術は素晴らしかった」と述べた。
関連記事
• 超高速取引企業には投資価値があるか
• クリントン氏、金融規制案を公表へ 超高速取引に課税も
• 高頻度取引業者、相場暴落の恩恵に浴する
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民111掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。