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2035年の働き方、常に「学び直し」が必要に
働き方の未来
東京大学大学院教授 柳川範之氏に聞く
2016年8月5日(金)
磯山 友幸
約20年後、2035年の日本人の働き方はどう変わっているのか──。厚生労働省が設置した「働き方の未来2035 〜一人ひとりが輝くために」懇談会(座長・金丸恭文・フューチャーアーキテクト会長)が8月2日、報告書をまとめ、塩崎恭久厚労相に手交した。
1月に設置された懇談会には様々な分野から比較的若手のメンバーが集まり、12回にわたって議論。筆者もメンバーのひとりとして参加した。報告書はメンバーが分担執筆、それを金丸座長らでまとめたもので、官僚が執筆に関与していない型破りの報告書となった。
懇談会の事務局長として報告書の執筆や調整、修文に力を振った柳川範之・東京大学大学院教授に聞いた。
人工知能の発展などにより、世の中は猛烈な勢いで変わる
柳川 範之 (やながわ のりゆき)氏
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
1983年、大学入学資格検定試験合格、88年慶應義塾大学経済学部通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程終了。慶應義塾大学経済学部専任講師や東京大学大学院経済学研究科助教授を経て、2011年から現職。著書に『日本成長戦略 40歳定年制』など。
報告書がまとまりましたが、柳川先生の自己評価は。
柳川:大きな方向性を厚生労働省の中で打ち出すことができた意義は十二分にあると思っています。同一労働同一賃金など足下の個別の政策課題については、さまざまな会議体などで議論されていますが、ともすると目先の利害調整になってしまいます。長期的に政策全体がどちらの方向に進むべきか、働き方の未来について道筋を示せたと考えています。
AI(人工知能)の急速な発展など、これからの世の中は猛烈な勢いで変わっていきます。目先の政策のパッチワークではとても対応しきれない状況に直面しています。社会の変化に合わせて大胆に改革していくには、将来を見据える必要があります。
後は、厚労省がこの大きな方向性に沿って、具体的な政策を作り上げていただければと思います。報告書をまとめた同じ日にさっそく、塩崎恭久大臣が省内に「働き方改革推進本部」を立ち上げていただきました。
「同一労働同一賃金」など個別問題には多様な見方
メンバーは多彩な方々が参加されましたが、大きな方向性についてはほぼ共有されていたように思います。
柳川:今回の懇談会での議論を通じて感じたのは、将来どうしたら良いのか、といった大きな方向性については、皆さんだいたい共通な思いを持っているということです。おそらくメンバーだけでなく、報告書を読んだ多くの方々にも共感いただけるのではないでしょうか。
例えば、同一労働同一賃金といった足下の個別政策課題では、おそらくメンバーの間にも意見の違いがあったのではないかと思います。しかし、大きな方向性で一致したうえで、では今、何をやるべきか、どういう方向に改革すべきかを考えることは意味があると思います。
提言では、今後、多様な働き方がますます広がっていく中で、「今までの労働政策や労働法制のあり方を超えて、より幅広い見地からの法制度の再設計を考える必要性が出てくるだろう」という記述があります。
柳川:働き手と経営者の間できちんと働く事に関する契約を結ぶのが基本だと私は思っています。民法的な仕組みの中で発想することが大事です。もちろん労働契約は他の商取引とは違うという事は十分に理解しています。大事なのは、初めから特別だと別枠にするのではなく、どこがどう違い、どこから先を特別な法で手当てする必要があるか、それを時代の変化に合わせて考え直してみることです。
これまで抜け落ちていた対象に保護の網をかける
メンバーのひとりだった気仙沼ニッティング社長の御手洗瑞子さんが、これまで労働者の枠組みの中に捉えられて来なかった働く人々をきちんと包含する法体系、政策体系にすべきだと主張されていました。
柳川:ええ。なかなか調整の過程で表現は慎重になっていますが、その点はかなり書き込めたと思っています。今後、働く人の定義も保護の仕方も、規制のあり方も大きく変わってきます。これまで抜け落ちていた対象に保護の網を新たにかけ、あるいは、自由度を増しても大丈夫な働き手にはもっと自由度を与えることが必要でしょう。ただ、今後、どの法律をどう直していくのか、あるいは新しい法律を作っていくのかといった点については、専門家などの間でじっくり時間をかけて議論していくべきだと思います。
今の労働法や労働政策の枠組みが時代にそぐわなくなっている、と?
柳川:あえて抽象的な言い方をしますと、どんな学問領域でも、自分たちが前提にしていることが本当に「当然のこと」なのかどうかを、絶えず考えていく必要が出てきました。とくに技術革新が猛烈に進む中で、これまでの常識が大きく揺らいでいます。アカデミズムに携わるものとして、非常に面白い、チャレンジングな時代になったと思います。
仕事を提供する側と働き手が対等な関係で契約を結ぶためには、企業などがどんな働き方を求めるのか正確に開示する必要があると報告書にあります。いわゆる情報の非対称性ですが、それが無くなることはない、という批判もありますね。
柳川:労働分野に限らず、情報の非対称性を完全に無くすということは不可能です。ただし、大きな情報格差を是正していくという方向性は大事です。いつまでも企業は正しい情報は出さないという前提で、働き手を弱者として保護し続けなければならないとするのは間違いでしょう。とくに情報関連の技術革新は急ピッチなので、これまで私たちが前提にしていないような情報共有の仕組みができるかもしれません。
ひと昔前だと、営業の担当者が社外で何をやっているか把握する術はありませんでした。今ではどこまで実際にやるかは別としてGPSを付ければ、どこにいるか一目瞭然です。実際、タクシーや運送業界では通行ルートなどを記録するのが当たり前になっています。
ブラック企業を見極める眼も大切
企業と従業員が対等な関係になることなど絶対にあり得ないという批判も出ています。
柳川:実は働く人の教育というのをきちんとやっていませんでした。そもそも契約とはどういうものなのか、契約を結ぶ際の心構えはどうあるべきか。考えてみると学校教育ではほとんど教えていません。ブラック企業などを厳しく罰するのも大事ですが、そうしたブラック企業には行かないような選択眼を持つ必要があります。
一つの会社にこだわらず、違う会社で働くようになるのが自然
柳川先生には『日本成長戦略 40歳定年制』というご著書もあります。今回の報告書にはそうした先生の持論は盛り込めたのでしょうか。
柳川:報告書全体を通して、20年後には1つの会社で一生働くという働き方だけでなく、違う場所、違う会社で働くようになるという姿が自然になっているという前提になっています。これは私がかねて言ってきた「40歳定年制」と整合的です。
その場合の大きなポイントが「学び直し」です。報告書では生涯教育と書きましたが、人生の長さに比べて社会変化のスピードが速くなることで、常にスキルアップすることが重要になります。40歳ぐらいで自分の専門性が出来上がり、スキルアップのチャンスがある。これが私の一番言いたい事です。
多様な人たちが活躍できる社会になることが大事
報告書のような自立した個人が自由な働き方をする社会というのは、個人にとっても大変な社会ではないのでしょうか。
柳川:高い能力のある人にとっては良い社会だと書いたつもりはありません。この点は是非理解していただきたいですね。技術の進歩によって、多様な人たちが活躍できる社会になることが大事です。セーフティネットは最終的には国の責任かもしれませんが、新しい形の様々なコミュニティが支え合う役割を果たすようになると考えます。
解雇の場合の補償金を契約書に盛り込んでおく方法も
契約をしても会社が傾いたり、個人の能力が失われたりすれば、契約を解除するケースも想定されます。
柳川:ここはかなり議論があり、表現は相当丸くなっていますが、私個人は、労働契約をはじめに結ぶ段階で、解雇など想定される場合の条件をできるだけ決めておくことが重要だと思っています。もちろん、あなたの事は会社が潰れない限り解雇しません、という契約があっても構いません。例えば解雇する場合に支払う補償金を契約書に盛り込んでおくことは、働き手の保護に役立つのではないでしょうか。
働く側は力関係が弱いので不利な契約が結ばされるという声もあります。
柳川:そうした不利な契約を結ばないために教育と並んで、契約前に働き手の側に立ってアドバイスするサービスなどが出てくるでしょう。労働組合がこうしたサービスを提供するようになるかもしれませんし、新しい組織が生まれてくるかもしれません。
もちろん、なかなか十分に働けない絶対的な弱者も存在します。もちろんそうした部分は社会福祉で支える部分かもしれませんが、そうした絶対的弱者をできるだけ少なくしていくための教育が重要になってくると思います。最終章に教育のあり方を書いたのはこうした理由です。是非とも報告書をお読みいただきたいと思います。
【報告書】ダウンロード先(厚生労働省)
「働き方の未来 2035 〜一人ひとりが輝くために」
このコラムについて
働き方の未来
人口減少社会の中で、新しい働き方の模索が続いている。政官民の識者やジャーナリストが、2035年を見据えた「働き方改革」を提言する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/080400020
アップル、新規雇用で女性とマイノリティーが増加
「米国で同一労働同一賃金を達成」と報告
2016.8.5(金) 小久保 重信
『テレビが伝えない 中国人“爆買い”のウラ〜2016年インバウンド市場はどうなる?』(宮田将士著)
『本当は怖い!健康診断&人間ドック〜数値のウソと病院選びのワナ』(大竹真一郎著)
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カトリック教会、女性聖職者復活も 法王が検討委設立。写真はバチカン市国のサンピエトロ広場で修道女と面会したローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(2016年6月30日撮影)〔AFPBB News〕
米アップルがこのほど公表した従業員多様性リポートによると、同社で過去1年間に世界で採用した従業員のうち、女性の比率は37%となり、2年前の31%、1年前の35%から拡大したという。
過去1年の採用で多様性拡大
また過去1年間に米国で採用した従業員のうち、同社が「アンダーレプレゼンテッド・マイノリティー(URM)」と呼ぶ、黒人/ヒスパニック系/ネイティブアメリカンなどテクノロジー業界の雇用率が歴史的に低い人々の比率は27%となり、こちらも2年前の21%や1年前の24%から拡大した。
同社が過去1年に米国で採用した従業員の人種比率は、アジア系が24%、黒人が13%、ヒスパニック系が13%、マルチレイシャルが4%、その他(ネイティブアメリカン、ネイティブハワイアン、太平洋諸島系)が1%。
アップルはこれらの人々をマイノリティーに分類しているが、その比率を合計すると約54%。そして白人が残りの46%を占めている。
これに対し現在(今年6月時点)の同社米国従業員全体の人種構成は、マイノリティーが44%、白人が56%。このことから同社は「過去1年の新規採用実態は、当社従業員全体の人種構成よりも多様性に富んだ」と説明している。
全体では白人男性が圧倒的な数
ただしアップルも、ほかの米国テクノロジー企業と同様に依然白人男性が圧倒的に多い。例えば、現在の男性従業員の比率は世界全体で68%を占めている。
この比率はアップルが多様性リポートを初めて公表した2年前から2ポイント低下するにとどまっている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47549
震源地は中国とサウジ?秋に災厄が世界経済を見舞う
権力闘争の犠牲となる中国経済、サウジでは銀行が危機的状況
2016.8.5(金) 藤 和彦
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南シナ海「日本は介入するな」=中国首相
中国・北京で開かれたEUと中国のビジネスサミットに出席する李克強首相。習近平国家主席との対立が伝えられている(2016年7月13日撮影、資料写真)。(c)AFP/Ng Han Guan〔AFPBB News〕
中国人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨に加わる時期が迫っている。2016年10月以降、SDRの通貨バスケットにおける人民元の構成比は10.92%となって円の8.33%を上回り、米ドルやユーロに次ぐ重要通貨になる。
ところが人民元のSDR入りを控えた7月21日、米ダラス連邦準備銀行(FRBのメンバー行)は「人民元は投資家にとって安全資産にはなりえない」とする報告書を発表した。
ダラス連銀のスタッフは、株価変動の指数と安全通貨とされる米ドルや円、ユーロ、ポンド、スイスフランに対する人民元の相対価値を分析した。その結果、「人民元のパフォーマンスは2011年から2015年後半までは主要通貨よりも良好だったが、その後市場のボラティリティーが高まる中で主要通貨に対する相対価値が低下した」ことが判明したという(人民元は今年に入って主要通貨に対して約3%下落)。
経済成長の勢いに陰りが見られるとともに、人民元取引の自由化に逆行する動きが目立つ中国政府の姿勢から、「現時点で人民元が安全通貨だとの指摘は裏付けられず、人民元が安全通貨の地位に向けて前進しつつあるとの見方も疑問視される」と結論づけた。
国際銀行間通信協会(SWIFT)の今年6月時点の発表によると、人民元の決済シェアは昨年8月にピークに達して以降、縮小傾向にあり、2014年10月以来の低水準(1.72%)となった。シェアの順位は5月と同じくカナダドルに次いで第6位である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47527
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