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英国民投票でのEU離脱派勝利が伝わり、日経平均株価は16年ぶりの大幅な日中下落率を記録した(写真: ロイター/Thomas Peter)
日本経済の深刻さは英EU離脱どころじゃない 円高と株安はアベノミクス失墜を示している
http://toyokeizai.net/articles/-/128596
2016年07月30日 リチャード・カッツ :本誌特約記者(在ニューヨーク) 東洋経済
原文はこちらhttp://toyokeizai.net/articles/-/128334
英国の欧州連合(EU)離脱は新たなリーマンショックを引き起こしてしまうのか。離脱の決定後、金融市場では一部の人々がそうした恐怖を抱いたが、杞憂に終わりそうだ。
米国の金融市場の専門家は、英国のEU離脱の影響が当面は欧州内に限られ、米国や日本の経済成長率に響くことはほとんどないと分析している。一方で米格付け大手のスタンダード&プアーズは最新リポートで、「中期的に世界経済の成長率が低下し、輸出と投資の不振を招けば、英国のEU離脱の影響は大きなものになる」との見方を示した。
英国のEU離脱決定後、日本では円が一時1ドル=99円台にまで急騰し、つれて株価も押し下げられたが、その根底にはEU離脱問題もさることながら、ファンダメンタルズの要因があった。
■「100円割れ」は相当前から予期されていた
英国の問題が取り上げられる以前から、市場ウォッチャーの多くは2016年のいずれかのタイミングで、日本円が100円割れの水準に至ると予測していた。その背景には、一時120円台にまで到達したような、過度な円安傾向が修正されるとの見方があった。
過去30年の間、円相場は主に1986〜2016年の平均値の上下20%の範囲で、明確な長期的推移が見えないまま推移してきた。だが、日本銀行の黒田東彦総裁による「クロダノミクス」に反応して円相場は、その過去30年間の平均を35%下回る水準となった。6月の終わりになって、この幅は20%まで縮まり、7月に入って、さらに30年平均へ近づいている。
株式市場においては11年以来、円の対ドル為替レートと日経225先物との間に99%という高い相関関係が見られる。輸出関連銘柄を中心に、日本企業の多くは為替レートによって業績が左右され、それが株価に反映しやすい。
円高が日本の株価に響くのは驚きではなく、アベノミクスへの信認喪失からすればもっともなことだ。日経平均株価は参院選後に上昇したものの、米英独の株価に比べれば依然として、冴えない水準となっている。
日本では黒田日銀総裁による異次元の金融緩和の継続により、金利の低水準が続いている。しかしながら、株価や企業業績への効果は限定的だ。2%のインフレ目標も達成への道筋がなかなか見えない。こうした日本国内を覆う種々の課題に比べれば、英国のEU離脱など大海の一滴にすぎない。
■ポピュリズムの裏にロシアあり
また、重視すべきなのは、英国のEU離脱の根底にある物騒なポピュリズムの蔓延だろう。米国の不動産王ドナルド・トランプ氏、フランス国民戦線のルペン党首といったナショナリストや、イタリア北部同盟などの排外主義的な団体は、英国のEU離脱を保護貿易主義と移民抑制への信念に結び付けて歓迎した。
興味深いことに、これらの国家主義者の多くはロシアから資金の提供を受けている。EUと北大西洋条約機構(NATO)を弱体化させようとする誰もが、ロシアに支持されているのだ。
まるで世界中で「国家主義インターナショナル」が台頭しているかのようだ。こうした勢力が蔓延し続ければ、世界経済の足かせになりかねない。
(週刊東洋経済7月30日号)
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