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ただでお金をもらえば必ずツケが回ってくる。ヘリコプターマネーとはまさにそれだ
「ヘリコプターマネー」リスク考 道で拾った30万円をあなたは使うか?
http://diamond.jp/articles/-/97094
2016年7月29日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト] ダイヤモンド・オンライン
思考実験をしたい。散歩していて、道で30万円のお札が入った封筒を拾ったとしよう。あなたはそのお金をどうするか。
模範回答は、きっと落とし主が困っているだろうから警察に届ける、という対応である。しかし、それでは経済問題の実験として面白くない。そこで、(1)その30万円を使って欲しいものを買う。もしくは、(2)そんなうまい話があるはずがないので無視する、という2つの選択肢から選んでほしい。
実は、合理的な行動を前提にして経済モデルを仮想すると、(1)が正解とはならない。(2)30万円を道で見つけても無視して通り過ぎるというのが正解になるらしい。これを「ノーフリーランチ原則」(ただ飯などはない)と呼ぶ。
ただで得られる30万円などは世の中に存在するはずがない。ならば自分の知らない“からくり”があって、30万円を拾った後、相応の出費を強いられると覚悟をしておく方が良い。自分は、そんな面倒なことに巻き込まれるのは嫌だから、30万円は拾わない。これが合理的な推論というわけである。
■空から紙幣を撒けばインフレに?
ヘリコプターマネーの実験
この考えを、ヘリコプターマネーの考察に応用してみよう。ヘリコプターマネーとは、空から国民に紙幣を散布すれば、人為的にインフレを起こせるだろうという説である。国民に1人当たり30万円の札束を配れば、皆がその30万円を使ってくれて、上記(1)のように欲しいものを買うという想定である。もっと実務的に言えば、満期のない永久国債というものを政府が発行し、これを日銀が直接引き受けをする。返済義務がないので、通常の政府債務の増加とは区別される。
なお、ヘリコプターマネーの容認論者が、財政規律を厳格に守れる仕組みが設けられさえすれば、中央銀行の直接引き受けを通じて、政府が歳出拡大しても支障ないとする。
これに対して、筆者などは、政府がこの便利な仕組みを何度も使わずに済ませられるであろうかと疑問を抱く。筆者は、国民に増税を求めずに、財源を日銀に求めることが可能になれば、必ずや財政の節度が失われると考える。子どもが働かないで親から小遣いを無制限にもらえるとすれば、勤労意欲は全く湧かなくなるのと同じである。
ところで、国民に対して大減税をすれば、すぐにインフレが起こせるのだろうか。たろえば、国民1人当たり30万円の減税を行うことを考えよう。日本国民全体で36兆円のコストがかかり、それが36兆円の永久国債による資金調達で賄われることとなる。この永久国債は、日銀が直接引き受けする扱いにする。これで、国民は1人30万円に相当する消費を行うであろうか。
もしも、この減税が一度だけのものならば、多くの国民は30万円を貯蓄するだろう。合理的に考えると、ただでもらった30万円はいつか相当の増税で回収されるのではないかと疑うからだ。相当の負担増を予想するならば、30万円は取っておいた方がよいことになる。だから、インフレは消費増加という経路では起こらない。
■永久国債を日銀が引き受ける意味
一度踏み込むと取り返しがつかない
日銀が永久国債を買い取るということは、通常の国債発行とどう違うのだろうか。日銀が引き受けた永久国債には、返済義務がないので、政府債務とは異なって都合がよいと考える人もいるだろう。
しかし、通常の国債発行が、将来の納税資金を担保として行われていることを忘れてはいけない。返済義務のない永久国債は、無担保も同然になる。政府債務の中で、税資金の裏付けのない永久国債を増やすほど、日本の財政全体の信用力が低下することになる。これは、実質的に政府債務の担保力を乏しくさせるからである。
さらに、政府が永久国債で調達した資金で、国民に減税するとなれば、それは将来の納税負債を現在の永久国債による資金で入れ替えていることになる。つまり、将来の納税負担は膨張し、政府債務の担保力を一段と低下させて、信用度を失わせる行為に拍車をかけているのと同じになる。この効果はさらに、円の信用度を落とすことになる。
もしもインフレが起こるとすれば、円安が進んで、継続的な輸入物価が上昇するときであろう。財政規律を失ってヘリコプターマネーが行われるときの円安を、私たちは歓迎することはできない。30万円をただでもらった代償は、将来の輸入物価の上昇で支払わされるシナリオである。
政策の中には、一度足を踏み入れると取り返しがつかない結果を招くものがある。ヘリコプターマネーは、まさしく危険な実験的政策の代表例である。
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