http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/353.html
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経済対策の事業規模28兆円超・財政措置13兆円:識者はこうみる
[東京 27日 ロイター] - 時事通信や共同通信などの国内メディアによると、安倍晋三首相は27日午後、福岡市内の講演の中で経済対策について「来週に取りまとめ、未来への投資を盛り込み、農政新時代への力強い一歩を踏み出したい」と述べ、事業規模は28兆円超、財政措置は13兆円になるとの見通しを示した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>
政府の経済対策の事業費28兆円超は、事前の観測報道を受けた市場の期待の上限に近い。財政出動の規模が大きくなったことは一時的に評価されるだろうが、効果が持続的なものになるかは未知数だ。
過去に政府が何度も財政出動しているものの、それが呼び水になって民間の経済活動が活発化することは少なかった。岩盤規制の緩和や環太平洋連携協定(TPP)の進展など、産業界や経済界が望むような対策を実行しなければ、今度の財政出動も短期的なカンフル剤で終わってしまう。市場が期待していたTPPも、トランプ氏が米大統領になれば漂流する可能性が強まる。今すぐ結論は出てこないので、いましばらく大胆な金融緩和に頼らなければならない。
日銀金融政策決定会合の結果発表の2日前というタイミングで政府が財政出動のカードを切ってきたのは、金融緩和決定に対する無言の圧力だという読みもあってドル/円は円安に振れているが、日銀の切れるカードはそれほど残されていない。実際に追加緩和を決定するかどうかは、ふたを開けてみないと分からない。
<藍沢証券投資顧問室ファンドマネージャー 三井郁男氏>
全てが市場の期待に沿っているとはいえないにしても、マーケットの反応を見る限りは、経済対策について期待されていた面があるのだろう。「真水」の部分がどの程度なのか、疑問に残る部分もあるが、財政措置13兆円、事業費28兆円超という数字については、そこそこの規模とみることもできる。即効性があるかどうかは別にして、景気の落ち込みを最小限にとどめるための波及効果があると評価することもできるのではないか。日銀の金融政策決定会合に期待をつなぐ形にもなっている。金融政策との相乗効果を出していけるかが、今後のポイントとなるだろう。
<SMBC日興証券 金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>
安倍晋三首相は27日、福岡市で講演し、政府の経済対策の事業費を28兆円超、財政措置は13兆円とすることを明らかにしたとの報道が出た。
財政措置13兆円が減税など今年度のものであれば、円債市場への影響はあるが、従来言われているような財政投融資を含めた金額で、複数年度になる可能性が高いので市場への影響は限られるだろう。
国債増発に関しては、翌年度の借り換え国債が高水準となっているのでカレンダーベースでの増発の規模はゼロか限定的な金額になるのではないか。
(Reporting By Michio Kohno)
http://jp.reuters.com/article/abe-eco-package-idJPKCN1070JL
経済対策の財政措置13兆円、事業規模28兆円超−安倍首相が表明
広川高史
2016年7月27日 12:51 JST 更新日時 2016年7月27日 15:49 JST
来週取りまとめ、8月2日に閣議決定へ−共同
安倍首相は福岡市の「一億総活躍・地方創生全国大会」で講演
安倍晋三首相は27日午後、福岡市での講演で、政府が取りまとめを進めている経済対策の事業規模を28兆円超とする意向を表明した。共同通信は8月2日に閣議決定すると伝えている。
安倍首相は講演で、経済対策について「財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策を来週取りまとめたい」と発言。「内需を下支えし、そして景気の回復軌道を一層、確かなものとするものにしなければなりません」とも語った。首相の発言場面はNHKが放映した。
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは経済対策について「事業規模は水増しされているのは確かだろう。ただ真水の部分はおそらく5兆−6兆ぐらいだと思う。しかも複数年にわたるだろう」と指摘。その上で、「あくまでトータルパッケージでこう言っているだけ。真水の部分はそんなに大きいわけではない。経済効果という意味では限定的だろう」と語った。
政府は26日、自民、公明両党に経済対策案を提示。熊本地震や東日本大震災の復旧・復興や防災強化のほか、大型クルーズ船受け入れのための港湾整備など観光インフラ整備を盛り込んだ。財政投融資の活用によるリニア中央新幹線の全線開業の8年間前倒しや整備新幹線の建設加速化も明記した。両党は28日もそれぞれ政務調査会の会議を開く予定。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-27/OAX06M6JIJUZ01
ヘリマネより「ヘリ商品券」の方が有効かも−OECD
Zoe Schneeweiss
2016年7月27日 13:00 JST
成長を刺激するのが「政治家、当局者としての責務」
チーフエコノミストのマン氏がブルームバーグTVで発言
空からの現金ばらまきは成長押し上げに効果がなく、むしろ商品券の方がうまくいくかもしれない。経済協力開発機構(OECD)のチーフエコノミスト、キャサリン・マン氏はこのような見方を披露した。
マン氏はブルームバーグテレビジョンの番組で、「ヘリコプターマネーそれ自体は、各国・地域の中央銀行が既に実施している政策に比べ、経済成長の実現に一段と効果があるとは言えない」と指摘。ヘリマネを受け取ったら、これまでの手持ち現金の場合と同様、たんす預金に回すだけだろうと話した。一方で今、配られるのが商品券なら、実際に消費せざるを得なくなると論じた。
ヘリ商品券なら消費につながるか(大阪)
ヘリ商品券なら消費につながるか(大阪) Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
マン氏は「名目ベースで見た国内総生産(GDP)の伸びをこのような低水準のまま放置しておくわけにはいかない」とコメント。「政策当局者や政治家として、われわれには複数の手段があることを認めなければならない」とした上で、若者に雇用やより良い将来、高齢者には年金資金を確保できるよう、一連の手段を使って成長を刺激するのが「政治家、当局者としての責務だ」と語った。
原題:Forget Helicopter Money, Helicopter Coupons May Work, OECD Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-27/OAYF4R6JTSES01
債券先物が最高値更新、緩和観測−50年債めぐる報道で超長期債は急落
船曳三郎
2016年7月27日 07:57 JST更新日時 2016年7月27日 15:42 JST
• マネタイゼーションの一環と受け止めの恐れ−三菱UFJ国際投信
• 検討はされているだろうということで超長期債の重し−メリル日本証
債券市場では先物相場が最高値を更新した。政府の景気対策に合わせた日本銀行の追加緩和観測が強まった上、国債買い入れオペの実施が需給を引き締めた。一方、政府が50年国債の発行を検討しているとの一部報道で先物が乱高下する場面も見られ、大きく買い進まれていた超長期債相場が急落した。
27日の長期国債先物市場で中心限月9月物は、前日比19銭高の153円71銭で取引を始め、午前は153円85銭と8日の最高値を更新した。午後は50年債発行検討の報道で153円60銭まで上昇幅を縮小したが、財務省が否定するとすぐに買い戻され、一時48銭高の154円00銭まで上昇。結局は154円00銭で高値引けした。
野村証券の中島武信クオンツ・アナリストは、「50年債発行はヘリコプターマネーを意識させる。極めて長い年限の国債を発行することは永久国債の連想がされやすい。午前の相場は強く始まったが、午後は重たい展開」と指摘。一方、「50年債発行は現実的ではない。財務省理財局から否定の報道が出ている。可能性は低いのではないか」との見方を示した。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i3bcLIyRmmgo/v2/-1x-1.png
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、政府が戦後最長年限となる50年債の発行を検討しており、早ければ今年度中の可能性もあると報じた。また、40年債の発行を増やすことや、50年債発行の余地を作るため今年度予定しているより年限の短い国債の一部について発行の減額も検討しているとしている。一方、財務省は50年債検討の報道を否定している。
中長期債が堅調・超長期債は軟調
現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債343回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より3.5ベーシスポイント(bp)低いマイナス0.295%と8日以来の低水準を付けた。新発2年物366回債利回りが3.5bp低いマイナス0.37%、新発5年物128回債利回りは3.5bp低いマイナス0.38%と、ともに過去最低水準を更新した。
一方、新発20年物157回債利回りは4bp低下の0.125%と15日以来の低水準を付けた後に0.185%まで上昇した。新発30年物51回債利回りは5.5bp低い0.205%から0.295%まで急上昇し、その後0.265%まで戻した。新発40年物9回債利回りは4.5bp低い0.275%から、一時0.34%まで売られている。
三菱UFJ国際投信債券運用部の小口正之チーフファンドマネジャーは、「ヘリコプターマネーやマネタイゼーションの流れの一環と受け止められる恐れがあるので怖い感じ」とした上で、「日銀の物価目標も公的債務が1000兆円規模に膨らむ中で、債務の実質価値を減らす狙いもあったと見られる。でも、物価は上がっていないので、今回報じられているような解決策に動く可能性もある。長いゾーンには売り材料になるかもしれない」と述べた。
また、メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「否定コメントが出たが、検討はされているだろうということで、20年超の超長期債の重しとなっている。超長期債の買い入れオペの結果で応札倍率が上がり、売り物が多く出たことも超長期セクターの金利低下縮小に寄与している」と指摘。一方、10年以下のゾーンについては「先物が50年債発行の否定を受けて上昇している。緩和期待もあって堅調」と分析した。
経済対策と追加緩和観測
日本経済新聞の電子版は27日、日銀内で追加金融緩和論が浮上し、複数の案を正副総裁らが検討作業に入ったと伝えた。主な選択肢はマイナス金利の引き下げと、年80兆円の国債購入額の増額、上場投資信託(ETF)など資産購入の拡大の3つだという。JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「ここから先の水準については日銀のパッケージを見ないと言えない。8月以降の超長期ゾーンの水準をイメージできている人は少ないのではないか」と話す。
一方、安倍晋三首相は27日午後、福岡市での講演で、政府が取りまとめを進めている経済対策の事業費を28兆円超とする意向を表明した、と共同通信が報じた。財政措置は13兆円で8月2日に閣議決定すると伝えている。
日銀が実施した今月10回目の長期国債の買い入れオペの結果によると、残存期間「5年超10年以下」と「25年超」の応札倍率が前回から低下した一方、「10年超25年」は上昇した。野村証の中島氏は「オペ結果は悪くなかった。25年超のゾーンも強い。40年債の需要強いことが確認された」とみていた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-26/OAWVN76JIJVI01
1万7000円拒む春の悪夢、日銀ゼロ回答に身構える投資家−日本株市場
赤間信行
2016年7月27日 13:45 JST
エコノミストのおよそ8割が追加金融緩和を予想する段階になっても、日経平均株価は心理的節目の1万7000円を抜け切れない。投資家の脳裏にあるのは、市場の期待に反し日本銀行が動かず、失望売りで急落した4月の悪夢再来だ。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、日銀は7月に追加緩和に動くと想定してきたが、株式や為替相場が英国国民投票前の水準に戻し、「何より日銀は政府の経済対策を見極めたい意向が強いはず。手段も限られる中、今回は緩和を見送るかもしれない」と予想する。ゼロ回答なら、日本株には「外国人投資家の資金が流入した反動や短期の仕掛け売りによって急落する可能性がある」と警戒感を示した。
明治安田アセットマネジメントの杉山修司チーフストラテジストも、日銀の金融政策に変更はないとみており、「日本の経済情勢はかなり改善した。この時点からの追加緩和は、日本経済に悪影響を及ぼす可能性が高い」と言う。
日銀の黒田総裁
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg *** Local Caption *** Haruhiko Kuroda
参院選での与党勝利を受けた経済刺激策への期待で、日経平均は7月2週(11ー15日)に急騰し、2009年12月以来の週間上昇率(9.2%)となった。国債の直接引き受けで財政支出を拡大するなどのいわゆる「ヘリコプターマネー政策」をめぐる思惑で、翌週も続伸。ただし、回復すれば6月1日以来、ほぼ2カ月ぶりとなる1万7000円には届いていない。
ブルームバーグがエコノミスト41人を対象に22日までに実施した調査によると、日銀が28、29日に開く金融政策決定会合で追加緩和を行うと予想したのは32人(78%)となった。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、「個人的には追加緩和を行ってほしいし、今回は実施すべきと考えるが、実際には政府の補正予算編成に合わせて秋まで見送りとなる可能性もある」と予想。株価は追加緩和をある程度織り込んでいるだけに、日銀が何もしなければ、為替は1ドル=100円に向けドル安・円高が進み、日本株の急落も不可避とみる。
エコノミストの6割が追加緩和を予想した4月28日の会合時には、日銀が金融政策を現状のまま据え置き、失望売りで日経平均は一時前日比3.7%安と急落。直前は日銀への期待で4月8日の1万5400円台から同25日の1万7600円台まで2000円以上上げた経緯がある。日銀失望後も日本株は上値を切り下げ、英国が欧州連合(EU)離脱の判断を下すショックも加わった6月24日に1万5000円を割り込んだ。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i7RGhDA4sE3o/v2/-1x-1.png
また、日銀が今回追加緩和に踏み切ったとしても、新味のある政策が打ち出されるとは投資家の間でみられておらず、株式市場が素直に好感しないリスクも懸念されている。エコノミストが予想する追加緩和の手段は、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ増額が最も多く、マイナス金利の拡大やマネタリーベースの増加ペースの引き上げ、長期国債や不動産投信(J−REIT)の買い入れ増加など。
三菱UFJ国際投信・戦略運用部の石金淳チーフストラテジストは、「日銀はマイナス金利の深堀り、ETFやJーREITの買い入れ増額くらいはやらざるを得ない」としながらも、「ETFなどは金額が小さく、株式市場へのインパクトは乏しい」と話している。
東海東京調査センターの長田清英シニアグローバルストラテジストは、「市場関係者の約8割が何らかの金融緩和を見込む中で、日銀が何もしないことは許されないという雰囲気がある」と指摘。一方で、追加緩和の実施有無にかかわらず、「打ち止め感が出るか、手詰まり感がさらに強まる可能性が高く、日銀にとっては非常に苦しい状況」との認識も示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-27/OAY5056TTDSE01
大槻 奈那「金融テーマ解説」
チーフ・アナリスト 大槻奈那が、毎回、旬な金融市場のトピックについて解説します。市場の流れをいち早く把握し、味方につけたいあなたに、金融の「今」をお伝えします。
プロフィール
2016年07月26日
日銀金融政策決定会合プレビュー:効果と副作用の整理
今週7/28-29の金融政策決定会合を控え、市場では経済対策と金融緩和策の全力投下への期待が高い。しかし我々は、今回の決定会合では、追加緩和は、資産購入対象の拡充とETF購入枠拡大等、やや規模の小さいものに留まるとみている(図表1)。
足元で消費者物価指数は、日銀の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」は鈍化し(図表2)、一橋大学の週次データ等即時性のあるデータでは既にマイナス基調となっている(図表3)。今回は財政政策も同時並行で進んでいるため、財政支出の副作用(理論的には円高)をオフセットする必要もある。これらのことから、今回の金融政策では"ゼロ回答"はないものの、手段の温存や、副作用の大きさから、ごく限定的な政策に留まるとみている。
特に、市場の期待も大きいマイナス金利の深掘りについては、後述の通り、まだ効果がみえず、副作用も大きいため可能性は低いとみる。そもそもこの手法が市場で期待されている大きな理由は、手段として取り得る"余地"が大きいことである。しかし、その効果が不透明なのに"やりやすいのでやる"、というのはやや無理筋にも思える。今後、米国の大統領選、欧州の金融リスク等海外市場の不透明要因に備え、数少ないカードを温存するという意味でも、マイナス金利の深掘りは次回以降に含みを持たせる程度となる可能性が高いと考える。
マイナス金利影響の現状と、その深掘りのリスク
今のところ、マイナス金利導入後、貸出ボリュームへのプラス効果等は殆どみられない。どころか、むしろ、マイナス金利導入後は伸びが鈍化している印象である(図表4、5)。これに呼応して、マネーストックの伸びも、マイナス金利導入後はやや伸びが鈍化している(図表6)。
また、センチメントに対してのマイナス影響も払拭できていない。弊社の金融政策決定会合に関する事前アンケート(7/22〜25実施、個人投資家298名が回答)でも、マイナス金利深掘りを予想する声は少なく(図表7)、また、もしマイナス金利が深掘りされた場合、投資意欲は「減退すると思う」という回答が前回6月調査から増加する一方、「高まると思う」という回答が大きく減少している(図表8)。
銀行への副作用:マイナス金利深掘りは、導入時を大きく超える打撃
更に日銀当座預金金利のマイナス幅が拡大した場合、銀行へのデメリットは、マイナス金利導入時よりはるかに大きい。今回金利が引き下げられても、もう前回のような預金金利の引き下げ余地は殆どない。従って、貸出利回りの低下は銀行の収益をもろにヒットする。
また、企業向け貸出の基準金利であるTiborだけでなく、これまでほぼ無傷だった短期プライムレートも引き下げられる可能性が高い。短期プライムレートは中小企業向け貸出や住宅ローンの基準金利になっており、地銀では、貸出全体の約半分の金利がプライムレート(大半が短期プライム)に連動している。
これらによって、大手行の場合、当期利益が更に5.9%程度低下する可能性がある(図表9)。問題は地銀であるが、仮に短期プライムレートを20bp引き下げざるを得なくなった場合、利益は2割も下落する可能性があるだろう。
こうした背景から、銀行収益への悪影響を緩和するため、日銀の資金供給枠の適用金利をマイナス金利に引き下げて恩恵を与えるという可能性がある。しかしそれでも、図表10の通り、マイナス影響は相殺しきれない。マイナスでの資金供給の銀行利益に対する効果はせいぜい1.5〜3ポイント程度となるだろう。しかもここには、マイナスで資金供給した場合に想定される副次的マイナス影響、例えば、企業が銀行に対する貸出金利の引き下げ要求を行うという懸念などは織り込まれていない。
このシナリオでは、銀行としても、いよいよ一般企業にまで預金口座管理手数料の導入を検討せざるを得ないだろう。そうなれば企業のセンチメントを更に冷やしかねない。
マイナス金利の唯一の顕著な効能としては、企業の調達の長期化が挙げられる。図表11の通り、マイナス金利導入後の5か月で、期間20年以上の超長期債の発行額は4,020億円と久々の勢いとなっている。しかしこうした長期資金も、優良企業における銀行の取引関係を長期に固定することになることから、新たなメイン行争いの場として金利競争に浸食される可能性が高いだろう。
とりうる選択肢:資産購入枠拡充:効果は大きくなくても、ゼロ回答よりはベター
量的緩和の拡充については、買入対象資産範囲の拡大(例えば、買入対象社債の年限を3年から10年に長期化、買入対象に例えば地方債、各種政府機関債を加えるなど)を行い、その分購入目標も若干拡大する(例えば現在の年80兆円増加から100兆円まで引き上げる)などの政策が考えられる。
一般に資産購入枠拡大は限界であるとする根拠として、国債の売り手が減少していることが挙げられる。実際、銀行の残高保有額は昨年末に13年ぶりに10%を切り、絶対額も100兆円を切っている(図表12)。ただ、比率ほどには絶対額は減少しておらず、更に、担保として使われるとされる外貨調達についても預金の増加や(図表13)、外債の発行も進んでいるため、まだ多少は国債売却の余地はあるだろう。
更に、買入対象を、欧州のような地銀や政府機関債等国債以外の債券に広げれば、(大きくはないものの) 十兆円余の買入枠拡大の余地は残されているだろう。
なお、超長期債や永久債の発行と日銀によるその直接引受け(いわゆるヘリコプター・マネー)が行われる可能性は極めて低いだろう。この政策は、国の信用力に関わる重大事である上、一度とったら極めて「不可逆的」である。一旦開始したら、市場がクラッシュするまで停止することは難しい。通常の量的緩和も後戻りしにくくはなっているが、政府の財政拡大意欲に抵抗しなければならないヘリマネほどの劇薬ではなく、まだ「可逆的」である。
ETF/JREIT購入枠拡大
ETF/J-REIT購入枠の拡大については、手段としての余地は残されており、市場のセンチメントを改善することなどから相応に可能性はあるだろう。しかし、そもそも株式は企業収益から導かれる理論価値があるにも関わらず、その価格を需給面で引き上げ続けることは、常に市場を「割高」に引き上げかねないため、無尽蔵に取れる施策ではないと考える。
財政政策との関係
このような金融政策の調整の市場に対する効果は限定的だろう。しかし、何もしない場合は、財政政策のマイナス効果(円高等)の懸念が生じるため、実行の意味はある。
そもそも現在報道されている経済対策は、事業規模こそ20〜30兆円と大きいものの、国費(真水)の追加額は2兆円程度(来年度以降分を含めて6兆円)に留まる。真水の金額としては、過去の規模から突出するものではない(図表14)。ゆえに、金融政策で補正しなければならないような為替リスク等もある程度限定されるだろう。
まとめ
これらの政策が取られた場合、市場の期待感が先行していることから、一段の上値を求めるのは厳しいだろう。特に、最近持ち直してきた銀行株については、政策がすぐにインフレ期待に働きかけるとは考えにくく、方策次第では収益への直接的な打撃が大きくなりうることから警戒が必要と考える。
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。
https://info.monex.co.jp/report/financial-market/index.html
英国テリーザ・メイ新首相の苦難の道のり(大前研一)
【英国】テリーザ・メイ新首相の苦難の道のり
イギリス保守党のテリーザ・メイ党首が13日、イギリスの新しい首相に就任しました。メイ氏は演説で、われわれは国家として大きな変化の時代に直面していると表明するとともに、EUを離脱するにあたり大胆かつ新しい前向きな役割を世界で作り上げていくと宣言しました。
この人はスコットランドに行き、独立を牽制しているわけですが、スタージョン第一首相は余計なお世話だと言って突き返しています。いかなるイギリスの首相と言えども、スコットランドの将来について口を挟むことはできないと言い、不快感を表しています。イギリスは離脱したらスコットランドのみならず、ウェールズも独立を目指すでしょうし、北アイルランドについてはシン・フェイン党がにわかに活発になっており、アイルランドと一緒になりEUに残ろうとしています。離脱についてはもう一度議会でよく揉まないと難しいというのが私の意見です。
このままボリス・ジョンソンなどを外務大臣にして離脱に向けてガンガン進むと言う勇気は、この新しい首相には無いだろうと思います。おそらくヨーロッパに行って、イギリスだけにいい条件はあげないと、こてんぱんにいじめられることになるでしょう。テリーザ・メイは就任早々、とにかくベストの条件を勝ち取ると言っていますが、かなり愚かなことだと思います。ツィプラスもギリシャで首相就任当初はヨーロッパの要求には屈しないと言っていました。しかし一度交渉したらがっくりときて、今では国民の敵のように思われていますが、まだ首相の座についています。これが実態なのです。彼女もこれからそういう経験をすることになるでしょう。
彼女はオックスフォード大学を卒業し、イングランド銀行にいました。イングランド銀行にいたときの経歴を若干美しく詐称していると言われています。下院議員を経て内務大臣を務め、移民やテロ対策をやっていた人です。今回は不戦勝で終わったわけですが、ほとんどすべての人がこの人の下に結束する方向になっているので、今後あまりおかしな動きをしなければ、しばらくイギリスの国内はまとまると思います。EU側はこてんぱんにするのを待ち構えていると思いますので、波瀾万丈になると思います。
EU残留に強い意思を示しているスコットランドですが、ロイターは6日、「スコットランドEU残留で奇策も浮上」と題する記事を掲載しています。これはイギリス北部スコットランドが、UK連合王国を解体せず、実質的にEUに残りたがっていると紹介しています。スコットランド行政府のスタージョン首相がEU委員や欧州議会の委員と行った会談では、デンマークとグリーンランドの例の逆に、UKの中で、スコットランドだけがEUに加盟する構想も浮上したとしています。
この話は嘘だと思います。スタージョン首相は既に、自分たちはEUに残ると言う意思を27カ国に対して伝えています。逆グリーンランドと言うのは、デンマークの一自治領であったグリーンランドがEUを離脱して、場所的に近いアメリカとくっつきたいと行ったものです。デンマークはEUに入ったままグリーンランドが抜けたわけですが、今度はその逆で、小さいほうのスコットランドが残り、イングランドが出ていくと言う話です。しかし私はそうではなく、順序としてはイギリスが議会で離脱しないことを決定するのがベストだと思っています。
しかし、イギリスが本当に離脱したら、スコットランドはすぐに独立投票をして、イギリスから離脱して、EUに加盟するでしょう。イギリスがEUを離脱していれば反対票を投じることができないので、スコットランドはEUに入ることが可能となります。そうなるとウェールズも同じようにするでしょう。United KingdomはUnunited Kingdomになってしまうと思います。
また、職を奪われたという発言も嘘なのです。イギリスに在住するEU加盟国市民の人口を見ると、どこから多く来ているかと言うとポーランドが圧倒的で85万人来ています。次は当然ですがアイルランド、そしてルーマニア、ポルトガル、イタリアと続きます。一方イギリスにおける外国人労働者の推移を見ると、非EU加盟国の出身者の数は全く増えていません。要するに、移民と難民が増えて自分たちの職を奪っていると言っていますが、実は自由に動けるEU加盟国からの流入が増えているのです。しかも、イギリスの失業率は5%以下です。イギリスが今日の大発展を遂げたのは、このようなポーランドなどからの労働者がいたからなのです。イギリスはそうして受け入れないと、すでに人がいないのです。レストランなども人が足りず拡大できないという状況なのです。離脱派の人たちは職を奪われたと叫んでいますが、実態としては雇用が多く生まれていて、難民の問題でもないのです。
また、EU加盟国の他国へ行っているイギリス人を見ると、多くはスペインやアイルランド、フランスなどへ行っていて、良い生活を求めてイギリス以外へ移住しています。こうした人たちは、離脱した場合、その国に滞在できなくなってしまいます。100万人を超える数の人たちがイギリスに戻ってくるか、滞在許可を取り直すことが必要になります。
このようなことがキャメロン氏によって正確に説明されていなかったため、今回のような結果になったと思います。難民などで雇用を奪われて大変なことになっていると言いますが、それは錯覚に過ぎず、逆に東ヨーロッパから多くの人たちが来ていたからこそ経済が拡大したのです。しかもかつて12%にもなっていた失業率は非常に低下したわけで、離脱などと、一体何を考えているのかということなのです。イギリス人はわずか20年30年前の自国の状況を覚えていないのでしょうか。日本人も含めどこの国でもそういうものかもしれません。ただ、私は日本企業のお手伝いをしてヨーロッパ戦略等を立てていましたので、当時のイギリスはやってられないような国だったことを覚えています。失業が多いということはつまり雇用ができるので、日本企業が進出したという具合でした。今のイギリスは人を採るのが非常に難しくなっています。ドイツでも人を雇うのは既に不可能です。イギリスはEUに入る前のミゼラブルな状況を忘れて錯覚しているので、ちょっと待って考えるように伝える必要があると思います。
ロイターが7日報じたところによると、直近の経済規模で、フランスがイギリスを抜き、世界5位に浮上したということです。通常、経済規模の比較では、平均為替レートを使用しますが、ロイターがポンド急落を受けた現在の相場水準で算出したところ、フランスがイギリスを逆転したということです。
イギリスはフランスより経済力では大きいのに、EUに対する応分の負担をしておらず、フランスは応分の負担をしていると指摘してきましたが、ただこれはひとえにポンドのおかげです。今回の急落によりポンドは15%以上下落したので、フランスの方がGDPが大きくなってしまったわけです。ポンドは基本的に2014年ごろから非常に調子が良かったのですが、ほぼ暴落となり、対ドルレートでは39年前のレベルに落ちてしまいました。イギリスの人たちはこれにより相当パニックになっていると思います。その一方、中国の人はイギリスに行けば買い物が安くできるということで殺到するという状況です。
ヨーロッパ主要国のGDPの比較では、イギリスはこれまでドイツに次いで堂々の二位でしたが、今回のレートの計算ではフランスが二位になったということです。フランスはユーロを使っているのでドイツと同じ基準であり、ドイツが頑張ってくれればフランスは頑張らなくて済むというわけです。
【米国】約1年2カ月ぶりに最高値更新 〜ダウ工業株平均〜
12日のアメリカ株式市場で、ダウ工業株30種平均が続伸し、終値は前の日に比べ120ドル74セント高い、1万8347ドル67セントとおよそ1年2ヶ月ぶりに過去最高値を更新しました。新規の買い材料は見当たらなかったものの、アメリカ景気への期待感と、長期金利が低水準で推移する投資環境が、引き続き好感されたとみられます。
安倍総理によると、リーマンクラスの不況にあるそうですが、アメリカ株は最高の水準に達しています。リーマンショックの後は8000ドル以下に落ちていたダウ平均ですが、今は史上最高値を連続で伸ばしている状況です。アメリカにも様々な悩みはありますが、企業の方は世界化やICT化などを果たしていて、アメリカの企業はここにきてやはり強いと感じます。
また、今動いているものがない上、ヨーロッパの動向は若干疑問視されているので、アメリカの株式市場にお金を持っていこうと、お金が世界中からアメリカに入ってきています。それに比べ、日本株は出遅れているということで、日本株にもこの余波が来ています。日本企業そのものの将来が期待されているわけではなく、この出遅れ感によって、ファーストリテイリングなど、本来もっと高くても良いのではないかと買われてきている状況です。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
7月10日、17日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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BREXIT前、既に大きく下落している経済指標(福永博之)
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160720-2/
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