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金融から財政へ政策の軸を移すのは正しいが、考え方が硬直的なのは問題(写真=PIXTA)
金融から財政へ政策の軸を移すのは正しいが、考え方が硬直的なのは問題
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160726-00000003-zuuonline-bus_all
ZUU online 7月26日(火)10時50分配信
日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円程度増加させる、量的金融緩和策を実施している。その資金供給により、マーケットで間接的にネットの資金需要(企業貯蓄率と財政収支の合計)をマネタイズしていることになる。負債の直接引き受けではないため、マネタリーベースの増加額の半分程度の40兆円程度(GDP対比8%程度)のネットの資金需要を、マネタイズする力があるとも考えられる。
■デフレ期待の完全払拭には、早急な財政支出の増加が必要
日銀がマネタイズする体制を整えても、ネットの資金需要が存在しなければ、量的金融緩和の効果は限定的になってしまう。
2000年代はネットの資金需要が消滅してしまっていて、量的金融緩和の効果は小さかったと考えられる。一方、アベノミクス開始前後では、循環的な景気回復などによる企業貯蓄率の低下とともに、震災復興とアベノミクスの経済対策で財政政策が緩和された。それによって、ネットの資金需要が復活し、金融緩和の効果が強くなり、デフレ完全脱却へのモメンタムが生まれた。
しかし、その復活したネットの資金需要は15兆円程度(GDP対比3%程度)でしかなく、日銀のGDP対比8%程度のマネタイズする力と比較すると小さい。しかも、グローバルな景気・マーケットの不安定感を警戒した企業行動の慎重化(企業貯蓄率の短期的なリバウンド)と、消費税率引き上げと税収の大幅増加、そして歳出の抑制などにより財政が過度に緊縮気味となり、現在はネットの資金需要が消滅してしまっている。
確かに、デフレ完全脱却への日銀のコミットメントへの信任を維持するため、期待に働きかける金融緩和は重要であろう。しかし金融緩和には、更なる円高やデフレ期待の再燃を阻止するという、ダウンサイドを抑制する効果しか、もはや期待できないだろう。
実際に金融緩和の効果を強くし、デフレ完全脱却へのモメンタムも強くするというアップサイドのために必要なのは、更なる金融緩和よりも、財政拡大などによるネットの資金需要の拡大であると考えられる。
国民不安を解消し、前を向いて進みだせる環境を整え、デフレ期待を完全に払拭するために、市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止を目的とした財政支出を早急に増加させる必要があろう。
■公約から消えた金融政策への注文
2014年の衆議院選挙の自民党政権公約では、「物価安定目標2%の早期達成に向け、大胆な金融政策を引き続き推進する」とし、日銀に対する大きな政治的圧力が存在した。
しかし、今回の参議院選挙の政権公約では、金融政策に対する注文、そして2%という具体的な物価目標も無くなっている。2014年の公約の第一項目が「経済再生・財政再建」だった。対する今回は「経済再生」となり財政再建の文字が消え、財政再建より経済再生を重視するスタンスに明確に転換されている。2010年のG20では、リーマンショック後の財政拡大の反動で強い財政再建の方向性で合意し、金融緩和中心の景気対策が推進された。
しかし、2016年のG20、そして安倍首相がリーダーシップを発揮した日本でのG7では、金融政策への過度な依存への反動で、財政拡大を含めた政策を総動員することで合意した。このグローバルな政策の方向性の変化が、自民党政権公約にも表れている。金融政策から財政政策に、デフレ完全脱却への軸足を移すことは、正しい方向性だと考える。
裏を返せば、政府の経済対策が小規模で効果が小さなものとなれば、マーケットの大きな失望となろう。また、アベノミクスのデフレ完全脱却へのモメンタムが、完全に失われるリスクも大きくなる。
消滅してしまったネットの資金需要を元に戻す、15兆円程度の財政による需要が必要である。言い換えれば、ネットの資金需要を元に戻すだけであれば、マクロ経済としてのその財政ファイナンスの実質的な負担は、赤字国債を発行したとしても、ほとんどないことになる。
市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止を目的とした財政支出を増加させる必要があろう。それらのプロジェクトを成長戦略と呼んでもよいだろう。成長戦略は財政支出をともなって、はじめて強い効果を発揮するため、経済対策と成長戦略の実施は相互補完的であろう。
■7月の日銀会合では、全次元の大規模緩和に踏み切る?
いまだに財政の議論の多くは、会計のミクロ経済学の方法論の数字合わせや景気対策と成長戦略の対立的な見方で硬直化し、マクロ経済学としての柔軟性が欠けているのは問題である。金融政策より財政政策の役割の方が大きいことは明白であるが、財政政策は金利上昇と為替高をもたらすために効果がない。デフレは貨幣的現象であり、需給ギャップも金融緩和のみで解消できると、いたずらに金融緩和だけを拡大していった、日銀の行動はクライマックスに来ている。
マイナス金利政策を含め、日銀の追加金融緩和の直接的な効果は限定的であろうが、不十分な政策ロジックの中で、デフレ完全脱却へのコミットメントの信任を維持する必要がある。7月の金融政策決定会合では、戻るに戻れぬ状況に追い込まれた追加金融緩和の結果となろう。
追加緩和の手段としては、マーケットの限界論を払拭するため「量」・「質」・「金利」の三次元すべての手段を使う必要だ。マイナス金利の−0.1%から−0.2%への拡大、及びマネタリーベースの年間約80兆円の増加から約85兆円(ETFの2兆円程度の増額を含む)へ引き上げが考えられる。
各次元の緩和は小幅でも、すべての次元を使うことにより、範囲として大規模緩和であるというアピールを日銀はするであろう。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
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