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アベノミクスによる追加的安定財源 ミクロでは1.7兆円でもマクロでは15兆(写真=PIXTA)
アベノミクスによる追加的安定財源 ミクロでは1.7兆円でもマクロでは15兆
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160725-00000004-zuuonline-bus_all
ZUU online 7月25日(月)10時50分配信
安倍政権が注力している「一億総活躍社会」の関連予算の財源として、アベノミクスにともなう経済成長で底上げされた税収を当てることができるのか、議論が進んでいるようだ。
■ネットの資金需要は財政政策でコントロールできる政策変数
2015年度の決算の税収の当初見通しから、上振れ幅(1.8兆円程度)から特殊要因を除き、1.7兆円程度が念頭にあるようだ。一方で、この1.7兆円は円安や好調な景気・マーケット環境を前提にしている。そのため、安定財源としては認められないという反論もあるようだ。
いまだに財政の議論の多くは、会計のミクロ経済学の方法論で硬直化し、マクロ経済学としての柔軟性が欠けているようだ。マクロ経済学での財政議論では、アベノミクスによるリフレへの政策哲学のシフトにより、どれほどの安定財源が生まれたと考えられるのであろうか?
日本の内需低迷・デフレの長期化の原因はいくつか挙げられる。企業貯蓄率と財政収支の合計であるネットの資金需要がゼロと、国内の資金需要・総需要を生み出す力、資金が循環し貨幣経済が拡大する力が喪失していたことだ。言い換えれば、企業貯蓄率と財政収支の合計であるネットの資金需要の水準が、企業の貯蓄率を前提として、どれだけ財政政策が景気刺激的なのかを示す政策変数であると言える。
実際に、2000年代は企業貯蓄率が大きく変動していても、ネットの資金需要はゼロ%近くに張り付き、恒常的なプラスとなっている企業貯蓄率(デレバレッジ)をマイナス(赤字)である財政収支が相殺している程度であり、成長を強く追及せず、安定だけを目指す財政政策であったと言える。ネットの資金需要の動きを見ると、バブル期にはGDP対比−10%程度、平均では−5%程度、デフレ期は0%程度、そして+5%程度になると信用収縮をともなうデフレスパイラルになると考えられる。
ネットの資金需要は受動的な変数であるように見えるが、財政政策によってある程度コントロールできる政策変数と見なしてもよいと考えられる。企業貯蓄率が高く、景気が悪い時には財政赤字を増やし、企業貯蓄率が低く、景気が良い時には財政赤字を減らす。
■アベノミクスによって生まれた企業貯蓄はおよそ15兆円
どの水準で、企業貯蓄率と財政収支をバランスさせるのか。すなわちその合計であるネットの資金需要の水準をどの位置にするのかは、財政政策の強さの度合いに依存すると考える。
管理通貨制度では金の準備高に拘束されず、通貨当局の信用の裏づけによって、通貨の発行量を調整することができる。そして通貨(マネーサプライ)は、マクロのネットの資金需要が拡大、即ち十分なマイナスであることによって、経済の信用創造が強くなり、十分な量の供給が可能となる。そのネットの資金需要がマイナス方向に拡大し、通貨供給が十分であることにより、経済は若干の物価上昇は抱えるものの完全雇用を容易に達成でき、経済厚生上「適正」になると考えられる。
均衡財政を希求する既存の金本位制度のような政策哲学によるネットの資金需要の0%の消滅状態から、リフレを希求するアベノミクスへ転換したことによりネットの資金需要は−3%程度まで拡大・維持され、マネーの循環と貨幣経済の拡大が、デフレ完全脱却の推進力となってきた。
企業貯蓄率もアベノミクス開始前の6%から3%まで縮小し、国内の資金需要・総需要を生み出す力、資金が循環し貨幣経済が拡大する力が復活してきた。この3%程度の変化が、アベノミクスによるリフレへの政策哲学のシフトによって生まれた安定財源であり、その額は15兆円程度となる。
■財政支出が成長戦略の強い効果を引き出す
財政政策の強さの度合い、または財政赤字の許容範囲が15兆円程度拡大した分である。
更に、現在は、消費税率引き上げ、社会保障負担の増加、そして歳出キャップという緊縮財政などによりネットの資金需要が消滅。それを間接的にマネタイズすることによって、はじめて効果を発揮する量的金融緩和も無効となり、デフレ完全脱却に向かうアベノミクスの推進力が消滅してしまっている。
年始からのグローバルな景気・マーケットの不安定感、そして企業と消費者心理が萎縮してしまっている中では、財政を拡大し、ネットの資金需要を復活させ、それを間接的にマネタイズする金融緩和の効果を強くすることが急務である。
市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止を目的とした財政支出を増加させる必要があろう。
それらのプロジェクトを成長戦略と呼んでもよいだろうし、成長戦略は財政支出をともなってはじめて強い効果を発揮する。
この15兆円程度の安定財源を成長戦略と呼べるような財政プロジェクトに積極的に使えば、デフレ完全脱却のモメンタムを復活させるとともに、経済厚生も大きく向上させ、国民も景気回復と日本経済の復活を実感することができるだろう。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
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