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日本に経済成長の余地は残ってる……?
ゼロ成長でも労働力不足なら、経済成長は無理なのか? (塚崎公義 大学教授)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160724-00010000-scafe-bus_all
シェアーズカフェ・オンライン 7月24日(日)5時30分配信
日本経済は、概ねゼロ成長が続いていますが、労働力不足は深刻化しつつあります。景気が今ひとつ冴えないので、景気を加速させるために財政出動をしよう、といった議論も行なわれていますが、「財政出動をしても、労働力が足りないならば、景気は良くならず、成長率は上がらない」という人もいます。今回は、日本経済の成長可能性について考えてみましょう。
■作れなかったのではなく、作る必要がなかった長期低迷期
経済の成長率は、労働力の増加が寄与した分、設備機械等の増加が寄与した分、技術進歩等が寄与した分に分けられます。バブル崩壊後の長期低迷期、日本企業は雇用を増やさず、設備投資にも消極的でした。
そうなると、労働力も設備機械も増えず、技術も進歩しません。技術進歩は、発明発見という意味ではなく、使われている技術という意味なので、設備投資が行われないと折角の発明発見があっても使われる技術は進歩しないのです。その結果、経済が成長しなかったわけです。
これは、需要が乏しかったために、企業が生産を増やす必要が無かったことによるものです。作ろうと思えば作れたけれども、作る必要が無かったから作らなかったのです。
■最近では、作らなくても人手が不足する時代に
最近も、需要は決して好調とは言えないため、企業が大量の物を作る必要に追われているわけではありませんが、以前と同じ量の物を作る(経済成長率がゼロ)だけでも人手が足りなくなりつつあります。
それは、少子高齢化によって現役世代の労働者数が減っているからですが、製造業のように一人当たり生産額の大きい産業から医療・介護のように一人当たり生産量の小さい産業に労働力がシフトしていることも影響しているのです。
「労働力は雇おうと思えばいくらでも雇えるし、生産も増やそうと思えばいくらでも増やせる」と思っていたら、いきなり「もう雇えないから作れない」と言われたようなもので、面食らった人も多いかもしれません。
■労働力は増やせなくても設備は増やせる
労働力は、それほど増やせないでしょう。労働力不足が進むと「高い時給を払うから働いて欲しい」「1日4時間しか働けない高齢者や子育て中の主婦でも、是非働いて欲しい」という企業が増えるので、少しは増えるかも知れませんが、過大な期待は禁物です。
しかし、設備は増やせます。大量の物を作る必要は無いので、能力増強投資は行われないでしょうが、機械化で作業を効率化する投資は活発に行われるはずです。今までは、安い労働力が簡単に手に入ったので、機械化をして作業を効率化する必要が無かったのが、労働力不足になって必要が出てきたからです。
今まで、省力化投資が行なわれて来なかったという事は、「少しでも投資をすれば大幅に省力化できる余地」が至る所にあるということです。これらが実現していくとすれば、経済全体としては大いに省力化が進むでしょう。
設備機械が増えるという事は、最新式の機械が導入されるということなので、これまでの発明発見が実際に使われて経済成長に役に立つようになるという事です。つまり、設備の増加と技術の進歩の両方に寄与するわけです。
■需要増加こそが供給サイドを強化する
小泉構造改革の頃、日本経済を良くするには需要を増やすべきか供給側を改革すべきか、という議論が活発に行われていました。筆者は、需要を増やすべきだと考えていましたが、それは「日本経済に足りないのは需要であって、供給は余っているから供給サイドを改革しても意味はない」ということに加えて、「需要さえ増えれば供給サイドは自動的に強化される」という理由でした。
個別企業が省力化投資を行なうだけではありません。政府が景気対策として非効率な公共投資を行なう必要もなくなります。更に景気が拡大して労働力不足が深刻化すると賃金が上がり、「高い賃金が払えない生産性の低い企業」から「高い賃金が払える生産性の高い企業」に労働力が移っていきます。こうしたことも、日本経済の供給力を高めて行きます。
その先は、政治的な議論が必要でしょうが、改善の余地は大きいと思います。たとえば少数の高齢者だけが住んでいる離島があり、高齢者を病院に運ぶための船を運行しているとします。高齢者が陸地に移住してくれれば、船の運転手が不要になり、介護に従事する事が出来るようになるでしょう。高齢者に移住してもらうインセンティブとして年金を二倍支払う、といった歳出は必要でしょうが、それで労働力不足が緩和され、日本経済の供給サイドが効率化していくなら、将来的には避けて通れない議論になっていくのだろうと思っています。
■潜在成長率が低下したというのは、バックミラーを見て運転するが如し
潜在成長率というのは、フル生産を続けた時の成長率ということです。インフレにならない範囲内で最大何%まで成長出来るか、という目安なのですが、過去のデータからこれを計算して、「潜在成長率は、ほとんどゼロだから、日本経済はもう成長出来ない」という人がいます。
しかし、人が余っていて省力化投資をする必要がなかった時期のデータを用いて、今後の成長が可能か否かを論じるのは、バックミラーを見ながら運転するのと同じくらい危険なことです。今後は省力化投資が増えていくことを念頭に置いて、どこまでの成長が可能か、なかなか客観的な数字を出すのは難しいと思いますが、少なくとも過去のデータから計算された値を見て悲観する必要は全くないと言えるでしょう。
塚崎公義 久留米大学商学部教授
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