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「FCN HP」より
夕食が菓子パンの子供に「給食」宅配?無添加&健康促進の子供向け宅配弁当、広がる
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15994.html
2016.07.23 文=小野貴史/経済ジャーナリスト Business Journal
筆者はこれまで6000社近くの中堅・ベンチャー企業を取材してきたが、「この会社にはぜひ成功してほしい」と思う企業が少なからずある。子供向け仕出し弁当を提供するFCN(東京都中野区)も、その1社だ。
2015年3月、FCNは第1回インキュベーションプロジェクト「リアンプロジェクト」(主催・サザビーリーグ)で最優秀賞に選ばれた。このイベントはベンチャー企業などの創業期の事業プランを審査するもので、255社が応募し、予選を通過した8社がプレゼンテーションを行なった。その結果、最優秀賞に評価されたFCNは、学習塾と学童保育施設に対して夕食用の弁当や手づくりのおやつを配達している。
ありきたりの弁当ではない。メニューは健康増進と味覚の形成を意図して、旬の食材を使用した和食に徹し、無添加の手づくりである。主食に玄米や雑穀を混ぜて栄養価を高め、主菜には「鰆の西京焼き」「鯵の竜田揚げ人参ソース」など魚料理も取り入れ、副菜には海藻やきのこを使用している。タレやドレッシングも出汁取りから手づくりだ。
容器にも意図が込められている。保温性の高いステンレス製の容器を2つ用意し、主食と主菜・副菜に分けて入れているが、理由は2つある。
ひとつは、環境対策として使い捨て容器を採用しないこと。もうひとつは、容器を手に持って食べる習慣をつけさせることである。ひとつの容器に主食・主菜・副菜を盛り込むと、子供の場合、置いた容器に顔を近づけて食べる“犬食い”になりがちだ。この癖が身につかないように、容器を分けて手に取れるサイズにしたのである。
さらに、弁当にはメニューや食材を説明した手書きの「食育メモ」が添えられている。1食単価は小学校低学年向けが500円、小学校高学年向けが560円、中学生向けが620円。
注文は生徒から直接受け付け、入金もFCNに生徒から振り込まれる。学習塾も学童保育施設も場所を提供するだけで、売買には介在しない。現在は都内の「日能研」10教室に弁当を1日平均50食、学童保育施設10カ所にはおやつ、夏期休暇や冬期休暇には、日能研と学童保育施設に弁当を計250食配達する日もある。
「夜の給食ってないのかな?」
この事業は危機感から生み出された。市場性や収益性への期待からではない。FCNは代表である椎名伸江さんの危機感から設立されたのである。
椎名さんの足跡を振り返っておきたい。1985年東京都練馬区生まれ。日本大学生物資源科学部に進学したが、農場実習を契機に、日本の食を子供たちに伝える仕事を志して退学。山脇学園短期大学食物科に入学した。栄養士と栄養教諭資格を取得し、卒業後は栄養士として練馬区立の小学校に5年間勤務した。
この時期に給食のメニューを一新した。それまでは生徒の嗜好性に合わせて、ハンバーグやシチューなどファミリーレストランで出るような洋食が多かった。それを健康増進に向けて、ご飯、味噌汁、旬の魚や野菜料理など和食に切り替えたのだ。全校生徒に対して食材やメニューについて説明し、「和食を出す意味を刷り込みました」(椎名さん)という。いきなりの変更に、保護者や教員から異論は出なかったのだろうか。
「メニューを変えたことへの反論などは、1カ月で消えました。子供の健康に良い和食を出すことは絶対的な正義ですから。保護者からは『家で魚や野菜を食べるようになった』などの反応をいただくようになりました」(同)
その取り組みは、赴任4年目に勤務先の小学校が東京都から健康づくり功労賞で表彰されるほど成果を上げた。ところが、共働きの保護者からショッキングな現実を聞かされる。
「夜の給食ってないのかな?」
そう口にした保護者は、子供に学習塾の休み時間に食べる夕食の費用を渡しているのだが、食べているのはファストフードかコンビニ弁当か、あるいは菓子パンである。椎名さんに尋常ならざる危機感が芽生えた。
■「思い」だけで起業へ
「給食に和食を出して健康づくりに取り組んでいても、夕食がファストフードかコンビニ弁当か菓子パンではなんにもなりません。きちんとした食事を知らないまま大人になって、さらに親になったら大変なことになってしまいます。この現実を知ってしまった以上、子供を見捨てることはできません。子供の成長はあっという間なので、今すぐに動きださなければならないと居ても立ってもいられなくなって、思いだけで突っ走りました」(同)
学校を退職できる時期は、通常は3月だけである。起業の準備に一定の時間をかけるのなら、さらに退職を1年延ばさなければならないが、椎名さんには一刻の猶予もなかった。2013年3月、創業資金も営業先もなんのアテもないままに退職した。
学習塾で取る夕食を健全な食事に切り替えるには、学習塾の経営者にアプローチすることだ。大手学習塾の日能研に的を絞った椎名さんは、同社の高木幹夫社長に面会するルートを探し始めた。「日能研の社長、知らない?」。知人たちに尋ね回ったところ、4人目の知人が、高木氏のキャンプ仲間を知っていることがわかった。
高木氏との面会が実現したのは、退職して4カ月目の7月。弁当の試作品と「食育メモ」も持参し、思いとプランを説明したところ、椎名さんの真意は高木氏に届いた。凛とした佇まいと優れた説明能力も、好印象を与えたのではないか。
「生徒に役に立つことなら手間がかかってもなんでも実行すると言われ、受け入れていただきました。しかも、弁当の配達事業を長く続けてほしいので、売上を安定させるために日能研以外の学習塾に営業してもよいと言われました」(椎名さん)
1週間後、高木氏は冬期講習から弁当の注文を受け付けることを各教室に伝達してくれた。
■CSV経営の実践
小学校の栄養士時代に、給食メニューを和食に切り替えた「絶対的な正義」は、事業化へと向う。創業資金は自己資金200万円に日本政策金融公庫から500万円を借り入れ、700万円を用意した。8月には、JR中野駅から徒歩10分の一画にある居酒屋の居抜き物件を取得し、厨房設備を整えた。そして11月にFCNを設立し、日能研の3教室から配達をスタートさせたのだった。
FCNの事業には、小学校勤務時に取引していた練馬区の農家や鮮魚店、精肉店なども賛同してくれているという。食材原価率を25%と低めに抑えられているのも、仕入先の協力があるからだ。椎名さんは「“子供たちのためになるなら”という理由で、良い食材を安く提供してくださっています。和食離れを防ぐことも、賛同を得られている理由です」と声を弾ませる。
リアンプロジェクト最優秀賞の獲得によって、FCNは多くのメディアの目に留まり、テレビ、全国紙、専門誌などで紹介されるようになる。新規取引のアプローチも入った。学童保育向けおやつの企画販売会社から声がかかり、同社を経由して学童保育施設へ手づくりおやつを配達している。
この夏には自由が丘に2号店を開設し、配達先を拡大してゆく。日能研以外の大手学習塾にも営業をかけたが、「食事のできる休憩時間の確保はモッタイナイ」「食事に気を配るのは保護者の問題」などの理由で取引には至っていない。
当面の計画は都心に5店舗を開設すること。中野の厨房でつくれる弁当は、1日当たり最大300食である。かりに700食をつくれるような大型厨房を構えると設備投資で費用がかさむため、現在の規模での多店舗展開する方針だ。
こうして椎名さんは、小学校勤務時代もFCNを設立してからも、着実に志を形にしてきた。事業活動で社会課題の解決に向かう経営は「CSV(共通価値の創造)経営」としてクローズアップされるようになったが、FCNの取り組みはまさにCSV経営の実践である。
(文=小野貴史/経済ジャーナリスト)
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