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日銀はマイナス金利のさらなる拡大に踏み切るのか
地銀の経営はアベノミクスのさらなる推進で危険水域に
http://diamond.jp/articles/-/96026
2016年7月20日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト] ダイヤモンド・オンライン
先の参院選の結果、自民党は単独過半数を占めた。安倍首相は「アベノミクスが信認を得た」として、アベノミクスのさらなる強化を進めようとしており、マイナス金利の拡大も検討されている。アベノミクスの金看板である金融政策は、マイナス金利にまで至り、もう限界に来ている。これは地銀をはじめ、銀行の経営の悪化をもたらすもので、大変危険な政策だ。
今後、7月28日〜29日に開催される次回の日銀金融政策決定会合において、さらなる金融緩和の導入が検討される。具体的にはマイナス金利の拡大(深堀り)、購入国債金額の拡大(量的緩和の強化)、ETF(上場投資信託)の購入金額の拡大などである。それぞれに問題があるが、特にマイナス金利の拡大は、銀行により深刻なダメージを与える。
■銀行、とくに地銀が危ない
深刻なマイナス金利の副作用
今年の1月29日に開催された金融政策決定会合で、日本銀行はマイナス金利政策の導入を5対4の賛成多数で決め、2月から実施した。アベノミクスにおける量的金融緩和政策をさらに進めた形である。マイナス金利の導入目的は、アベノミクスの基本方針と同じく、自国通貨安に誘導すること(それによって景気を良くし、またインフレにすること)、また銀行の日銀当座預金における余剰資金を使わせる、つまり、その資金を融資に回させる、あるいは国債等の証券に投資させることであった。
しかし、まず為替については米国など海外の要因の影響が大きいせいもあり、逆に円高に向かった。また銀行業界は、マイナス金利の副作用ともいうべき深刻な状況に陥っている。
現在、銀行では、預金のうち貸出に回る比率(預貸率)が約7割程度(メガバンクに限れば約6割程度)である。日本は景気が良くないので資金需要が低い。しかも、貸出競争の激化で預貸では「逆ザヤ」になっている銀行も多い。要は、最近、貸出では儲からないのである。
そのため銀行は近年、余剰資金でもっぱら20年物を中心とした長期国債を購入し、収益源としていた。つまり、銀行の収益のほとんどは長期国債の収益に頼っていたのである。特に地方銀行は、都市銀行(メガバンク)のように海外業務で収益を上げることもできず、主たる収益源が国債の利子だったわけだ。
2月に日銀当座預金の一部がマイナス金利になったが、同時に国債についても期間が短い物から徐々にマイナス金利になっていき、最近では20年物までがマイナス金利になった。これは日銀が、新発債が40兆円しかないにもかかわらず、80兆円も国債を買っていることも一因である(さらに今後の経済政策の財源として、政府は建設国債の追加発行を検討している。また、今回、検討されている国債購入額の増額は、その建設国債を吸収するものと考えられる)。
■英EU離脱で金利は低下
歴史的に見ても非常に厳しい状況
一方で6月23日の英EU離脱の国民投票を巡って、市場のリスクが高まり、リスク回避のために世界的に国債が買われ、金利はさらに下がっている。
具体的に主たる運用対象である20年物国債の金利(利回り)を見てみると、今年年初は約1.0%のレベルだったが、マイナス金利の導入後は約0.3%まで下がった。さらに、英EU離脱問題が発生し、ついにマイナス金利となった。これは由々しき事態で、銀行、とくに地銀が収益を出せなくなってきたのである。歴史的に見ても、かつてこれほど苦しい時期があっただろうか。
株式市場を見れば、世界的に英国関係銘柄と銀行株の下落が著しく、株価の下げを先導している。銀行の経営も世界中で基本的には同じ状況で、たとえばイタリアでは銀行の株価が暴落し、公的資金の注入もささやかれている。さらに、日本の銀行は株価下落の中、BISの自己資本規制に対応するため保有株を売却せざるを得なくなってきている。そうなれば、さらに株価全体が下落する。
マイナス金利の拡大は、銀行経営にとって大変危険な政策である。銀行だけではない。今年の導入前と比べて株価は2割落ち、為替(ドル円)は2割円高になった。マイナス金利は銀行経営以外でも効果を上げているようには見受けられない。いずれにせよ、マイナス金利が拡大されたら、地銀をはじめとした銀行の再編はもはや避けられない。
米国の中央銀行FRB(Federal Reserve Board)の金利政策は、日本とは逆に金利を上げる方向である。それを「正常化」と呼んでいる。日本とは逆方向の動きである。
【著者紹介】
しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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