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外国人マネーが日本の不動産を手離し&売り始めている…不動産市場、後退局面入りか
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15863.html
2016.07.13 文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役 Business Journal
2016年6月23日、英国のEU離脱は「そんなことは起こるはずもない」と思っていた世界中の金融関係者を驚愕させ、絶望の淵に落とし込み、欧州の秩序が今後もEUを中心に保たれていけるのか、多くの不安を世界中にばらまくことになった。
英国はユーロ市場の中心としてその機能を果たしてきた。ロンドンのシティには世界中の金融機関が店舗を構え、シティの繁栄は英国がいまだに欧州で絶大な影響力を誇示する証でもあった。
さて、英国のEU離脱は、英国不動産マーケットや今のところ「対岸の火事」のように静観している日本の不動産マーケットにどのような影響を与えることになるであろうか。
EU離脱後の英国不動産関連のニュースは冴えない。1825年に創業、英国の大手生命保険会社であるスタンダード・ライフ・グループの資産運用会社、スタンダード・ライフ・インベストメンツの不動産ファンド(資産総額:29億ポンド、約3950億円)の取引が停止された。同ファンドは英国内の高級商業施設に投資するファンドで、運用利回りは3.86%程度。
この知らせに呼応するかのように7月5日、同じく英国大手生命保険会社アヴィヴァ傘下の、アヴィヴァ・インベスターズが運用するREIT(不動産投資信託:資産総額18億ポンド)の解約が停止となった。さらに英国大手生命保険会社プルーデンシャル傘下のM&Gインベストメンツが運用するプロパティ・ポートフォリオ(資産総額:約44億ポンド)が解約停止となった。
6日になってもこの流れは変わらず、ヘンダーソン・グローバル・インベスターズが運用する英国第2位の公募不動産ファンドの解約も停止。これで英国内の不動産ファンドの約半数が解約停止となる事態を招いている。
オープンエンド型のファンドでは、解約に備えた一定の資金をプールしておかなければならないが、英国のEU離脱によって、今後英国が欧州における金融の地位を大きく下げる可能性を嫌気して投資家が解約に走る結果、資金が不足して、物件を売却せざるを得なくなるのではないかという懸念が急速に膨らんでいる。
■英国の経済的地位が低下
英国は1980年代、サッチャー首相によって推し進められたサッチャリズムと呼ばれる経済政策のなかで、シティが牛耳っていた金融部門を、規制緩和によって広く外国資本に開放した。英国だけが儲かるのではなく、世界中のプレーヤーが一堂に集まることによって全体の水準を引き上げる「ウィンブルドン方式」として名を馳せ、シティは世界中の金融機関が集まる一大金融センターとしての地位を築き、その繁栄を謳歌してきた。
ウィンブルドン方式は、海外からいろいろな人種が集まることによって、それまで「英国病」と揶揄されてきた英国の地位を大きく引き上げ、さらにはEU加盟によって、この恩恵にあずかろうとする多くの移民が英国の地に足を踏み入れ、英国経済を支えてきた。そして今、英国はウィンブルドン方式から決別し、独自の道を歩もうとしている。
どう考えても英国不動産市場にとって、この事態は歓迎できるものではない。シティからは多くの金融機関が欧州の中心拠点を移転させることになるであろう。オフィス需要は急速に萎む。英国に見切りをつけた移民たちが、自国や他国に引っ越すことで、住宅需要は縮小し、商業施設の売り上げに影響が出るだろう。英国不動産に投資をしてきた多くの資本が傷つくであろうことは、容易に予想できる。
英国EU離脱は、英国の経済的地位を引き下げるであろうが、もともとEUに英国は「遅れてやってきた」国であり、通貨はポンドのまま。「昔に戻るだけさ」と楽観する向きもある。日本に対する影響も一時的かつ軽微とする論調もある。果たしてそうであろうか。
■減速の兆候
日本に対する直接的な影響として「表沙汰」になっている事象は、「円高」と「株安」である。英国内で不動産投資に回っていた資金は引き揚げられ、世界のなかでは政治的に安定している日本の不動産の「買い」に向かうであろうとのお気楽な予測も出始めた。
ここ数年、日本の不動産は外資系マネーによって買い支えられてきた。東京都心のキャップレートは4%前後にまで下がったが、世界的には東京は「安く」、安倍政権によるアベノミクスがもたらす「円安・株高」政策によって、外資系マネーが日本の不動産を買う環境が整えられてきた。
しかし、現状の日本の不動産マーケットには、気になる事象がいくつも現れ始めている。
昨年後半から首都圏のマンションの売れ行きはあきらかに「減速」してきた。下がり続けてきたオフィスの空室率は都心5区においては4%を底に上昇に転じた。アベノミクスも、第三の矢である成長戦略については、いまだに明確な成果を表すには至っていない。そんな日本の「成長」に期待する外資系マネーは存在するのだろうか。
外資系投資マネーの多くは、実は昨年後半以降は不動産売買マーケットにおいて、これまでの「買い手」の役回りを変えて「売り手」に転じている。日本の不動産価格の「値上がり」を享受できる状態になった投資家が多くなったからだ。中国人をはじめとする外国人投資家が買い漁った湾岸タワーマンションも、昨年後半から目立って「売り」物件が増えているという。
仮に東京五輪までの「上げ相場」を予測するマーケットであっても、理屈通りに東京五輪まで投資を続ける投資家はいない。「売り」は全員が「売り」と気づく前に「売り抜ける」のが投資の鉄則だ。需要が盛り上がらないのであれば、なおさらだ。
したがって、英国のEU離脱による「円高」は、彼らにとっては日本不動産の絶好の「売り場」となる可能性が高い。世界の潮流は、株式や不動産のようなリスク資産からの回避を探る展開になりそうだ。世界中で相次ぐテロ、災害、移民問題には宗教も絡んでくるのでやっかいだ。
イタリアの金融機関の不良債権問題は、英国EU離脱をきっかけに世界的な金融リスクを高めるのではないかという指摘も出始めた。金融の引き締めがリーマンショックの時のように全世界一斉に向かう可能性については否定的な見方が多いが、「対岸の火事」と片付けられるかは予断を許さない。
■「日本オープン」を開催できるか
こうした状況のなかで、投資マネーがリスクを回避するために日本の不動産に投資してくる可能性は、残念ながらあまり期待できない。
日本は移民の受け入れをずっと「回避」してきた。その結果、現在のEUのような深刻な問題は生じていない。しかしその一方で、移民を受け入れないことで、皮肉なことに人口は減少の速度を速め高齢者が溢れかえる、国としてあまり「成長を期待できない国」になりつつある。英国からこぼれてきた投資マネーが、行き場を失って日本の不動産にやってくるという理屈は、あまりにも自己都合の過剰な期待と言わざるを得ない。
日本が今、最もやるべきことは、他国の失策に頼るのではなく、投資マネーが魅力的と感じる、国としての「成長性」や「可能性」を感じる政策を掲げ、実行していく胆力を示すことである。
インバウンド(外国人訪日客)が増えたといってはしゃぐのではなく、外国人が国内で普通に生活し活動できる環境をつくることである。そのためには、今の日本には制約が多い。ウィンブルドン方式を捨てた英国にかわって日本は日本オープンを開催できるかどうか、今はその指針を示す時なのだ。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)
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