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それでも廃棄食品横流しは蔓延している…「ブラックホール化」する食品廃棄の闇(Business Journal) 
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/780.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 7 月 14 日 02:43:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

それでも廃棄食品横流しは蔓延している…「ブラックホール化」する食品廃棄の闇
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15879.html
2016.07.14 文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト Business Journal


 1月半ばの壱番屋の廃棄カツ横流し事件から半年がすぎ、事件は早くも忘却の彼方へと葬り去られようとしている。しかし、事件を生む温床となったはずの産業構造の解明を進め、少しでもその改善を図ることなしには、類似事件の再発を防ぐことは難しい。“食の災害”もまた、忘れた頃にやってくる。今回は、食品偽装を生む産業構造の解明に迫る。

■産廃業界をめぐる点と線

 一見して無味乾燥とも思える官公庁データだが、時に思いがけない重要なヒントを得られることもある。

 例えば、「平成23年(2011年)度産業廃棄物処理業実態調査業務報告書」(加藤商事株式会社、平成24年3月)だ。その表紙の上部には小さく、「平成23年度環境省請負事業」と書かれており、環境省が加藤商事に委託して作成した報告書のようだ。環境省HP上の環境省報道発表資料「産業廃棄物処理業実態調査結果について(お知らせ)」(13年3月25日)には、こう書かれている。

「産業廃棄物処理業界全体の様相を把握することを目的に環境省として、初めて実施した『産業廃棄物処理業実態調査』の結果についてとりまとめた」

 加藤商事(本社・東京都東村山市、1960年設立)は、46年に個人経営の清掃業からスタートした、いわば業界の老舗であり、資本金4050万円は企業として中堅クラスだ。同社は東京都や神奈川、埼玉、千葉各県などで産業廃棄物収集運搬業許可や、東京都で産業廃棄物処分業(中間処理)の許可などを取得している。これまで、経済産業省「インフラ・システム輸出促進調査等委託」のほか、環境省「沖縄県のリサイクル市場振興に向けた在日米軍基地廃棄物処理状況調査業務」などの実績がある。

■片手間の中小・零細業者が多い

 肝心の報告書だが、調査対象(10年度)が約1万3400件(産業廃棄物処理業の許可件数。全許可件数約29万5100件のうちの約4.5%)で、うち有効回答数は約7600件。

 調査の結果、経営形態は全体の91.4%が会社組織だが、個人経営が6.1%もある。経営規模(資本金)では、租税特別措置法上、大企業とみなせる資本金1億円以上【編注1】の業者は全体の3.7%(資本金1〜10億円3.0%、同10億円0.7%)にすぎない。同1000〜5000万円が大半(60.3%)を占める上、同1000万円未満が28.3%(うち同500万円未満が16.3%)も存在する、中小・零細業界だ。

 それも、建設業や製造業などとの兼業が大半で、産廃処理業界の専業はわずか3.8%にすぎず、いわば片手間産業の様相を呈す。産廃処理業の売上高では、ゼロ回答(開店休業状態)が25.8%で最も多く、ついで1000〜5000万円未満20.6%、1〜10億円未満18.5%で、10億円以上はわずか2.7%だ。

■鉄道、百貨店より小さく、証券や放送百貨店より大きなマーケット

 これらのデータから産廃処理業界全体の市場規模は約5兆円と推定され、しかも全体の約4%の業者がその市場の50%を占める寡占状態にあるという。この約5兆円の市場規模は大きいのか、小さいのか。

 一般の産業が動脈産業だとすれば、リサイクルにも関係する産廃処理業界は、いわば静脈産業だ。そのイメージから、つい約5兆円というのは大した数字ではないと考えがちだが、実はそうではない。

 もちろん、その市場規模はトップクラスの自動車・同付属品製造(62.5兆円)や建設(51.3兆円)【編注2】の10分の1以下だが、鉄道(6.8兆円)や百貨店(6.2兆円)よりはやや少ない程度。自動車整備(5.5兆円)や印刷(5.4 兆円)、自販機(4.9 兆円)とほぼ同じサイズで、証券(4.2兆円)や放送(3.9兆円)よりは大きい。

 つまり、産廃処理業はこれだけの大きなマーケットを抱える堂々たる業界だというわけだ。

■違法業者の取り締まり強化

 今回の実態調査のために業者に配布された調査表の質問の中に、「産廃処理業の活性化に向けて国に取り組んでもらいたいこと」がある。その回答としての選択項目の最後の「その他(自由記入)」で最も多かった「リサイクルの促進に関する意見」(424件中45件)に次ぐ2番手が、「違法業者の指導、取り締まり強化」(同39件)だった。

 つまり、同業者が同業者の取り締まり強化を強く望んでいるという。だが、報告書にはそれ以上の説明はない。

 環境省が作成した「産業廃棄物処理業・処理施設許可取消処分情報」という資料がある。これは、都道府県市別に産業廃棄物処理業と処理施設の許可の取消しを受けた事業者の一覧表だ。

 その処分件数は11年5月から16年5月までの約5年間で1833件にもなる。ただ、うち産業廃棄物処理業許可取消処分件数が何件かは不明だ。最も気になる、その処分理由も記載されていない。そこで、東京都について調べたら、「産業廃棄物処理業者に対する行政処分について」というデータが見つかった。その16年度分では、4件のうち「廃棄物処理法違反により罰金刑確定」2件や「他県での同法違反」1件だが、残り1件は「同社の役員は、懲役刑が確定」とある。

 12年までさかのぼってみると、処分理由として役員や株主の廃棄物処理法違反や「裁判所から破産手続き開始の決定」「破産宣告」「特別清算開始の命令」「道路交通法違反の罪により、懲役刑が確定」「法人税法違反の罪により、懲役刑が確定」がある。つまり、なんらかのかたちで業務に関連したと思われる範囲内での違反行為だ。

 ところが、業務とは関係がなさそうな、「刑法の罪により、罰金刑や禁錮、懲役刑(執行猶予付など)が確定」や、「懲役刑の執行が終了してから5年を経過していないことが判明」との理由で処分される例が目立つ。それは12年3月から16年5月までの間に、全処分件数104件のうちの20件、2割近くを占めた。これは何を意味するのか。
 
■ココイチの廃カツは「動植物性残さ」

 その謎解きをする前に、まず基本知識を整理しておきたい。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)によれば、廃棄物には事業活動に伴って生じる「産業廃棄物」(廃棄物処理法で規定された燃え殻や汚泥など20種類)と、「一般廃棄物」(家庭廃棄物や、産業廃棄物以外の事業系一般廃棄物など)【編注3】の2つがある。今回、横流しされたココイチの廃カツは産業廃棄物の1つ、「動植物性残さ」(食料品など)に当たる。

 事業者は自己責任で産業廃棄物を処理しなければならないが、自ら処理できない場合、処理業者に委託できる。処理業者(産業廃棄物処理業)になるには許可が必要で、特に収集運搬業(産業廃棄物収集運搬業)の場合、産業廃棄物の積み込み・積み下ろし区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。また、同処分業(中間処分業と最終処分業の2つ)では区域管轄の都道府県知事、あるいは政令市(全国68)の場合には市長の許可が必要だ。

■反社会的勢力などの排除のための欠格要件

 産業廃棄物処理業の許可を得るには、まず2つの基準【編注4】をクリアしなければならない。例えば収集運搬業の場合、1つには「施設に係る基準」として、産業廃棄物が飛散、流出、悪臭漏れのおそれのない運搬車や運搬容器などがあるか。2つ目が「申請者の能力に係る基準」で、収集運搬を的確に行なうに足る知識・技能と共に、それを的確に継続できる経理的基礎(資金などの経営基盤)があるか。

 問題は次の「欠格要件」【編注5】だ。「欠格要件」とは、耳慣れない言葉だが、これは法に従った適正な業務の遂行を期待できない者をパターン化して排除するために、許可申請者の一般的な適性について必要な条件を定めたものなのだという。「欠格要件」に当たる場合、たとえ先の2つの基準を満たしていても、許可してはならないことになっている。具体的には、まず成年被後見人(精神障害で判断能力を欠き、家庭裁判所から指導・監督の後見開始の審判を受けた人)などや、破産者だ。

 さらに、以下のような禁錮以上の受刑者と、暴力団員等である。

(1)刑法第204条(人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)などや、「暴力行為等処罰ニ関スル法律」、例えば常習として刑法第222条「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金」などの罪を犯し、罰金の刑に処せられてから5年をすぎていない者など。

(2)暴力団員【編注6】、または暴力団員でなくなった日から5年をすぎていない者(暴力団員等)。

(3)暴力団員等によってその事業活動を支配される法人や個人。

 欠格要件は1997年以来、2000年、05年などの廃棄物処理法改正で強化されてきた。

■クリーンな産業廃棄物処理業界構築を

 2009年3月、環境省は「暴力団の不当要求等介入事例実態調査事業報告書」を発表した。これは06年7月、政府の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」【編注7】がまとめられ、犯罪対策閣僚会議で報告・了承された。これを機に、環境省も産業廃棄物処理業界への介入排除に努め、最終的には「クリーンな産業廃棄物処理業界の構築」を目的に、この実態調査が行われた。

 同報告書(有効回答業者数1850)によれば、全体の15%が暴力団などから不当要求を受けたと答え、不当要求者の身分は暴力団や暴力団関係者よりも、「エセ同和行為者」や「エセ右翼」が多いという。

 また、不当要求の内容としては「廃棄物処理施設の騒音、振動、悪臭などを名目にした要求」「処理費の減額・不払い要求」などのほか、「機関誌や書籍の購入要求」が最も多い。

■“有価物への偽装”も

 さらに廃棄物の不適正処理をしている業者の存在について、「聞いたことがある」が27.5%で、その不適正処理の内容として、不法投棄・焼却や無許可営業・変更許可違反などのほか、ココイチ事件のように、例えば無価値の廃棄カツを価値のある商品に見せかけるココイチ事件のような“有価物への偽装”も10.1%あった。この手の偽装も、今に始まったことではない。

 なお、不当要求されたとき、「全面的、または一部応じた」は23.6%で、「威圧感を感じた」「トラブル拡大を恐れた」「家族や従業員など危害を受ける危険性を考えた」がその理由だ。

 逆に「全面的に拒否した」のが67.3%で、そのなかの35.1%が嫌がらせを受けた。それも「物的・人的損害を加えられた」のは少なく、「要求内容や態度・姿勢を変えてきた」「迷惑電話」「業務に因縁をつけ、監督官庁などに連絡するなどと脅かしてきた」などが多かった。

■低位安定だが、道遠し

 環境省は、この「暴力団の不当要求等介入事例実態調査事業報告書」を発表後、09年度以降、業界団体の全国産業廃棄物連合会などの協力を得ながら毎年、全国的に「産業廃棄物処理業からの暴力団排除対策のための講習会」を開いてきた。

 また、11年施行の廃棄物処理法改正による、罰金1億円を3億円にするなど罰則強化【編注8】などもあって、かつてピーク時には年間1162件(11年度、ただし許可件数29万8801件)もあった許可取消など(事業の停止を含む)が12年以降は年間300件台【編注9】であり、いわば低位安定はしているが、クリーンな産業廃棄物処理業界構築の最終目的には、まだ道遠しの状況である。

 いずれにせよ、5兆円という大きな市場規模の産業廃棄物処理業界では、反社会的勢力などの存在が無視否定できないようだ。

 しかし、反社会的勢力などだけが問題を起こすわけではない。というよりも、これまでの多くの食の不祥事件は、少なくとも表面上は普通に見える企業が起こしている。次回は、廃棄物処理のコストの問題に触れながら、本家本元の食品業界の偽装の構造に迫ってみたい。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注1】租税特別措置法第42条の三の二、「中小企業者等の法人税率の特例」。『普通法人のうち当該各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの…。法人税法の規定中…税率(100分の19)は、…税率(100分の15)とする』。ここで大企業自体を定義しているわけではないが、資本金の額が1億円以下を中小企業者としている

【編注2】自動車・同付属品製造(62.5兆円、財務省)と建設(51.3兆円、国土交通省)は14年度売上高。鉄道(6.8兆円、国土交通省)は12年度、百貨店(6.2兆円、日本百貨店協会)は15年。自動車整備(5.5兆円、日本自動車整備振興会連合会)は15年度、印刷(5.4 兆円、経済産業省)は14年、自販機(4.9 兆円、日本自動販売機工業会)は15年。証券(4.2兆円、日本証券業協会)は14年、放送(3.9兆円、総務省)は13年

【編注3】「学ぼう産廃」日本産業廃棄物処理振興センターのHP

【編注4】廃棄物処理法施行規則第10条「産業廃棄物収集運搬業の許可の基準」

【編注5】各都道府県・政令市産業廃棄物行政主管部(局)長殿「産業廃棄物処理業…の許可事務等の取扱いについて(通知)」環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長、13年3月29日

【編注6】暴力団員による不当な行為の防止法等に関する法律「暴力団対策法」第2条「同第2号=暴力団/その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」「同第6号=暴力団員/暴力団の構成員」

【編注7】暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチーム「犯罪対策閣僚会議に設置」

【編注8】従業員等が不法投棄等を行なった場合、当該従業員等の事業主である法人に課される量刑を1億円以下の罰金から3億円以下の罰金に引き上げる。例えば、不法投棄・不法焼却・無確認輸出(未遂も含む)、無許可営業・無許可施設設置、許可の不正取得の場合、従業員に対する罰則は5年以下の懲役か1000万円以下の罰金、またはこれらの併科(両方)。また、この不法投棄などの場合、法人重課(従業員と法人その属する法人への両罰規定において、法人に対する罰金額の上限を違反した行為よりも高くする)の対象で、法人に対して3億円以下の罰金「廃棄物処理法の一部を改正する法律(施行期日11年4月1日)概要」環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄
物課

【編注9】14年度は許可20万1875件に対し、許可取消など352件。13年度は許可20万6936件に対し、許可取消など331件。12年度は許可21万1062件に対し、許可取消など334件
 

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