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先月28日、タカタの株主総会で辞意表明をした高田重久会長兼社長(写真:ロイター/アフロ)
タカタ、今夏のXデー…潰すに潰せない自動車業界の厄介者、リコール費用請求地獄突入
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15878.html
2016.07.14 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
「会社がおかしくならないようにしてからバトンタッチするのが役目と考えている」――
エアバッグ問題で揺れるタカタの高田重久代表取締役会長兼社長は、6月28日に都内で開いた定時株主総会で進退を問われて、一連の問題が落ち着いた後に辞任する意向を示した。欠陥エアバッグの原因については一部で解明が進み、自動車メーカー各社はリコール費用の分担について交渉を本格化させる見通し。一方でタカタは経営再建に向けてスポンサー企業探しを本格化している。タカタは生き残りに向けて、今夏にも正念場を迎える。
株主総会で高田氏は、エアバッグ問題について株主に対して謝罪したものの、株主からは説明責任を果たしていないとして高田氏の経営責任を問う厳しい質問が相次いで投げかけられた。これに対して経営側は、自動車各社とのリコール費用の分担、経営責任やスポンサー探しについて外部の外部専門家委員会に委ねていることを説明するにとどまり、出席した株主らの不満は高まるばかりだった。
タカタ製欠陥エアバッグを原因とするリコール台数は、雪だるま式に膨らみ続けている。タカタは米国運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)と今年5月、乾燥剤の入っていない「硝酸アンモニウム」の火薬を使っているインフレーターのエアバッグをすべてリコールすることで合意したためだ。
衝突事故などでエアバッグが展開する際、インフレーターが異常破裂して金属片が飛散、乗員が死傷する。リコール問題が長引いているのは、その異常破裂の原因を特定できていないからだ。原因が特定されていないことから、自動車メーカー各社は予防的措置として、リスクの高いエアバッグを搭載している車両を対象に自主的にリコールしている。原因が特定された段階で、タカタにリコール費用の一部を求償する予定だ。
NHTSAは、タカタ製インフレーターの不具合の原因について、硝酸アンモニウムが高い湿度や温度変化にさらされると劣化し、火薬の爆発力が増すとの調査結果をまとめた。タカタ製エアバッグの採用率が高いホンダの調査でも、同様の調査結果になっているとされている。
一方、タカタは乾燥剤なしのインフレーターの追加リコールについて「社内外の試験でインフレーター容器の破損は確認されておらず、具体的な危険性をうかがわせるデータや技術的分析結果が外部研究機関などから示されているわけではない」としている。
■1億台・1兆円
タカタとNHTSAの合意を受けて、自動車各社は米国以外でも、日本を含めて世界中で乾燥剤の入っていない硝酸アンモニウムのインフレーターを搭載しているモデルのリコールを順次実施している。この結果、自動車メーカーが費用を肩代わりしているタカタ製エアバッグのリコール対象はグローバルで1億台を超え、リコール費用は総額1兆円を超える見通し。しかし、タカタの自己資本は3月末時点で1200億円余り。
今後、自動車メーカーとタカタのリコール費用の分担交渉が始まるが、これによってタカタの経営再建問題が浮上することから、スポンサー探しと同時並行で話が進む。リコール費用の問題やタカタの支援先選定では、2月に設置した第三者の弁護士などで構成する外部専門家委員会が実際の交渉に当たる。
タカタの支援先スポンサー企業には、複数の会社やファンドが興味を示しているとされる。米国投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)がすでに支援先として名乗りをあげているほか、中国系サプライヤーも興味を示しているとされる。
これに対して、タカタにリコール費用を求償する自動車メーカー側の心境は複雑だ。タカタの支援先が決定しなければリコール費用の交渉が難航するのは確実。しかも、タカタへの求償で経営破綻するような事態になれば、グローバルでエアバッグやシートベルトのシェア2割を握るだけに、自動車メーカーの部品調達に支障が及ぶ。自動車各社としては自分の首を絞めることになりかねない。だからといってスポンサー企業についても「タカタは安全関連部品のサプライヤーであり、金を出すならどこでもいいわけではない」(自動車メーカー・購買担当役員)のが本音だ。
■交錯する複雑な要因
さらに自動車メーカー側も一枚岩ではない。日系自動車メーカーは、タカタと今後も取引を継続することをベースに、リコール費用分担やスポンサーの選定について交渉する。これに対して米フォード・モーターや独フォルクスワーゲン(VW)、伊フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)などの海外自動車メーカーは、タカタがファンドに買収されようが経営破綻しようが、リコール費用回収が最優先との考えが強いとみられる。
そのうえ、創業家の意向も絡む。創業家である高田氏は、エアバッグ関連問題の責任をとって辞任したとしても、現状創業家がタカタの筆頭株主であることに変わりはない。創業家がスポンサー企業にタカタの支配権を引き渡すことに納得するのかという問題もある。三者三様の思惑をはらみながら、タカタは経営問題の着地点を見いだすことができるのか。不透明感は増している。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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