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2016参院選で改選過半数を獲得し、喜ぶ安倍晋三首相(写真:UPI/アフロ)
完勝の安倍首相、今こそ「お金バラマキ」政策を実行すべきである…財政悪化せず
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15860.html
2016.07.12 文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授 Business Journal
アベノミクスの是非が問われた参院選は、自民・公明の与党が勝った。獲得議席は自民56、公明14、民進32、共産6、おおさか維新7、共産はやや期待外れ。そして、改憲に賛成する4党の議席数が参議院の3分の2を超えた。
野党がダメなのは、アベノミクスの第一の矢である金融政策をわかっていないところに根本原因がある。金融政策として重要なのは雇用政策だというのは、世界標準である。欧州の左派政党が最も重視する政策であるが、日本の左派政党はここがわからない。理解できていない人ばかりが日本の左派政党の幹部になっている。
もちろん民進党のなかにも、金融政策が雇用政策であることをよくわかっている人もいる。金子洋一氏である。彼は元内閣府官僚であり、国際経験も豊かなエコノミストだ。左派政党に必要な希有な人材を、今回の選挙で失ってしまった。ますます民進党が復活する可能性は少なくなったにちがいない。
安倍晋三政権は早速動き出した。安倍首相は12日、参院選で訴えた経済対策の準備に入るよう石原伸晃経済再生担当相に指示した。財源を心配するマスコミ報道もあるが、実はヘリコプターマネーの手法を使うと、それほど心配することもない。欧州などでヘリコプターマネーをめぐる議論が浮上しているが、これは中央銀行がカネを刷ってヘリコプターから人々にばらまくようなものだ。
ただし、実際にこれを行うのは難しい。「いつどこにヘリコプターがお金を撒くのか教えてほしい」というジョークすらある。現在のように中央銀行と政府が役割分担している世界では、中央銀行が新発国債を直接引き受けることで財政赤字を賄うことを指す場合が多い。
このアイデアはかつてノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマン氏によって論じられ、2003年にベン・バーナンキ氏(当時FRB<米連邦準備制度理事会>理事、その後同議長)によって再び取り上げられたものである。
バーナンキ氏は名目金利ゼロに直面していた日本経済再生のためのアドバイスとして取り上げたのだが、具体的には国民への給付金支給や企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債の買い入れることを提案している。中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が給付金や減税を通じて国民や企業にばら撒かれることになる。その意味で、バーナンキ氏の日本経済に対する提案はヘリコプターマネーというわけだ。
●財政赤字悪化を伴わない
この方法は、実質的な政府の債務残高を増加させないし、家計・企業は減税に伴う将来の増税懸念がないというメリットがあるため消費が増加する。金融政策と財政政策は名目消費を押し上げ、それが一般物価を押し上げる。
もちろん、この政策は国債の貨幣化であり、過度に行えばインフレを招くだけであるが、デフレによって悩まされているのであれば、経済回復を促進することになる。しかも先進国ではインフレ目標という歯止めもあるので、インフレが過度に加熱しコントロールできなくなる恐れもない。
もっとも日本では、政府が国債発行によって補正予算をつくるとともに、日銀が国債買いオペによって量的緩和を行えばいい。今の国内GDPギャップが10兆円程度であることを考慮すれば、20兆円の国債発行による補正予算と同額の量的緩和であれば、今後の経済を活性化するはずだ。
しかも、ひどいインフレにもなりにくい。この財政政策と金融政策の合わせ技は、実質的な債務残高の増加にならず、財政赤字悪化にならない。日銀保有国債については、利払い費や償還負担が発生しないからだ。この方法は、インフレ率が低い時には弊害がないのがいい。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)
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