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参院選の結果について会見する安倍晋三首相(写真:ロイター/アフロ)
消費増税に異常に執着する財務省・マスコミ連合体が、深刻な経済停滞を招いている
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15856.html
2016.07.11 文=田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授 Business Journal
10日に投開票された第24回参院選は大方の予想通り、自民・公明の与党が圧勝し改選議席の過半数を超え、「改憲勢力」と目される国会議員数が参院全体で3分の2に達した。野党では民進党が議席を大幅に減らし、共産党やおおさか維新は躍進した。国民はアベノミクスの継続に承認を与えたといえるだろう。
安倍晋三首相は大勢判明後のテレビ出演で「大胆で包括的な経済政策」を実行することを発言し、補正予算の策定を急ぎ、また「給付型奨学金」などの具体的な政策にも言及した。
参院選後の日本経済には大きく3つのリスクが立ちはだかっている。ひとつはイギリスのEU離脱や新興国経済(中国、ロシアなど)の減速、そしてアメリカ経済の先行き不透明など世界経済の失速リスクである。特にイギリスのEU離脱ショックは大きく、株価や為替レートを大きく不安定化させたままである。すでに昨年8月における中国経済の大幅失速を懸念したチャイナ・ショックから日経平均株価は約30%近く下落し、為替レートはドル円で120円台から100円を切りかねない水準にまで落ちてしまった。
ただし株価に関しては、参院選後明け11日の日経平均は大幅な上昇で始まっている。これはアベノミクス継続への期待が込められたものだろう。この勢いが続くかどうかは、今後の世界経済の失速リスクの大きさにかなり依存している。
特に米国経済は、雇用情勢がピークアウトしたといわれている。7月の雇用統計では、失業率は4.9%(前月比0.2%の悪化)、非農業部門の就業者数は市場予想を大幅に上回る28万7000人だった。先月の就業者数が低迷したのに比べれば改善しているようにみえるが、必ずしも安定はしていないというのが多くの識者の見方だ。
特に物価上昇率をみると、前年比1%を若干上回る水準である。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)のインフレ目標2%には、ここ2年近く到達していない。そのため賃金の伸びが抑制されたり、雇用創出の大きな制約になっていると指摘する経済学者もいる。FRBが現状の利上げスタンスをとり続けることは、米国経済の先行きの不透明感を増幅し、それが世界経済にも甚大な影響を及ぼすと懸念されている。
●消費税の負の効果
2つ目の日本経済が直面するリスクは、消費税の負の効果がいまだに継続していることだ。最新の家計調査(7月1日公表)でも2人以上世帯の実質消費は3カ月連続の前年比マイナスであり、昨年も一昨年も2%を超える前年比マイナスであることを勘案すると、民間消費は冷えに冷えまくって氷づけの様相である。
しかし、なぜか日本のマスコミやアベノミクスを批判する勢力からも、消費増税の負の効果が著しいことはめったに指摘されない。まるで消費税の悪影響はステルス型攻撃機のようである。公式統計を素朴に眺めるだけでも、2014年4月以降、実質消費が大幅に落ち込み、そのままL字型で低迷を続けていることは明白である。この2年あまりの間に継続した消費低迷が、日本経済のパフォーマンスをさえないものにしているのは明白な事実だ。
現状では雇用は堅調ではあるが、さらに改善の余地(失業率の2%台への低下、名目賃金の増加、ブラック企業の淘汰など)があるだろう。だが、実際にはこのまま消費低迷を放置しておけば、世界経済の失速リスクとともに日本経済を窮地に追い込むだろう。
最後のリスクは、政策失敗のリスクである。これには今回の参院選によって「改憲勢力」が3分の2に達したことも関係してくる。安倍首相は憲法調査会で改憲の具体的な論点を整理すると表明している。首相の念願が改憲であることを踏まえれば、当然の発言だろう。だが、各種世論調査や出口調査の結果をみれば、国民はアベノミクスの継続には承認を与える一方、改憲に関しては多数が否定的である。また「改憲勢力」といわれる与野党の足並みはバラバラであり、容易にひとつにまとまることはできないだろう。
以上より、安倍首相が改憲により性急に傾斜していくと、国会運営の難航や世論の強い風圧を受けて、政治的失脚の可能性さえある。それは経済政策の実行にとって大きな障害になる。
●質が問われる補正予算
また前述した「大胆で包括的な経済政策」だが、補正予算の規模は10兆円程度ではないかといわれている。これは前回14年の消費増税後の補正予算金額5兆円に比べれば、2倍である。だが、問題は金額の多寡よりもその質だ。なぜなら消費増税は恒常的なものであり、補正予算は一回限りのものである。それだけで質的に後者は劣る。さらに世界経済の失速リスクは悪影響の規模も時間の長さも容易に判断しがたい。補正予算の効果は規模だけを拡大しても、かなり制約されてしまうだろう。実際に前回14年の補正予算の効果は事実上、消費低迷に効果なしといってよかった。
筆者は消費増税ではなく、むしろ消費減税が最適だと考えている。ただし現実的には難しい環境だろう。もちろんその背景には、財務省や「増税主義=財政再建」に異常に傾斜した政治集団(政治家とマスコミの連合体)の力が存在する。選挙で勝利してもこの増税集団との権力争いでは、安倍首相でも容易に打ち勝つことはできないだろう。公共事業といった従来型のものが中心になるだろう。
となると残った手段は、日本銀行による金融緩和である。たとえば量的緩和を拡大して、年間10〜30兆円の幅で長期国債の買いオペを増やすことが、いわゆるリフレ派(デフレを脱却して低インフレ状態で経済を安定化させることを主張する論者)から提起されている。財投債や地方債、多様な証券の買いオペなど、質の面でも工夫が提案されている。筆者もこれらの政策には賛成である。
また、政府と共有する名目経済成長率の目標を現状よりも引き上げたり、日本銀行法を改正して日銀にインフレ目標と雇用の最大化を義務付けることなども、市場環境を大幅に改善することだろう。
だが、日銀の動きがどうも鈍い。一説には黒田東彦日銀総裁が財務省出身であり、安倍首相が消費税を引き上げないならば金融緩和に付き合う気持ちがない、といったあまりに国民を愚ろうした理由がしばしば指摘されている。
要約すれば3番目の政策失敗リスクとは、財務省がもたらす、国民生活を脅かす深刻な増税病である。選挙報道をみると、ジャーナリスト・池上彰氏が司会を務めたテレビ東京の選挙特番やフジテレビのそれなどで日本会議や創価学会が取り上げられ話題となっているが、本当に日本経済を不安定化させているこの「官僚組織=財務省」に言及した報道は見当たらなかった。
評論家の柄谷行人が『憲法の無意識』(岩波新書)という書籍を最近刊行したが、むしろ「財務省という無意識」のほうがよほど大きな問題である。本来は改憲か否かよりも、財務省の「財政再建=増税主義」に対する国民の審判が問われるべきだった。
(文=田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授)
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