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「マイナス金利で住宅着工急増」実は日本経済は、着実に回復に向かっている?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49112
2016年07月06日(水) 磯山 友幸「経済ニュースの裏側」 現代ビジネス
■住宅着工数は、景気をみる重要な数値
新しく住宅を建て始める「新設住宅着工」の戸数が、ここへ来て増加傾向が鮮明になってきた。国土交通省が6月30日に発表した5月の新設住宅着工戸数は7万8728戸と、1年前の5月に比べて9.8%増えた。前年同月を上回るのは今年1月以降5ヵ月連続である。
分譲マンションの着工は微減(0.8%減)だったが、持ち家、貸家、分譲住宅ともに増えた。中でも分譲の一戸建て住宅は7ヵ月連続で増加しており、5月は18%増と高い伸びになった。
なぜ住宅着工が増えているのか?
日本銀行が今年2月に導入した「マイナス金利」の効果がジワジワと効き始めているのは間違いなさそうだ。住宅ローン金利が史上最低水準に下がったことで、住宅を買う動きが広がり始めた模様だ。
ひとつの焦点は、消費増税前の駆け込み需要が膨らんだ2013年の水準を上回れるかどうか。今年1月までは2013年を大きく下回っていたものの、2月、3月、4月と3ヵ月連続で上回った。5月の結果が注目されたが、2013年5月の7万9751戸を1000戸余り下回った。
それでも2月以降、前年同期でみれば2月7.8%増→3月8.4%増→4月9.0%増→5月9.8%増と月を追うごとに増加率が大きくなっている。
次の焦点は6月。昨年6月に8万8118戸と、ここ8年間での月間の最高を記録していた。これを上回ることができるかどうかが注目点だ。6月以降、秋にかけて住宅着工の繁忙期を迎えるが、増加傾向が続くかどうか。
住宅着工の伸びによる景気浮揚効果は大きい。当然、住宅メーカーや住宅資材メーカーは潤うことになる。さらに数ヵ月後には家が完成するため、家具などの耐久消費財が売れることになる。さらに自動車の買い替えなど消費に火がつく可能性が強まる。
住宅着工の動向は、景気全体を大きく左右するのだ。
■都心で続くマンションブーム
6月、7月に住宅着工が失速するようなことがなければ、今年に入ってからの住宅の伸びがこの秋以降の消費に結びついてくる可能性が出てきたと言っていいだろう。国内消費は、2014年4月の消費税率引き上げ以降、悪化傾向が続いている。
円安による外国人観光客の「爆買い」などが底上げしていたが、これにも陰りが出始めた。だが、住宅着工が増えれば、もしかすると悪化し続けてきた国内消費に歯止めがかかるかもしれない。そうなれば、日本経済にとって大きな転換点だ。
不動産価格も上昇傾向にある。東証REIT指数は2015年1月に1990の高値を付けた後、秋には1550前後まで下がっていたが、今年に入って再び上昇、4月には1970を付けた。その後、英国のEU離脱問題などもあり一時下落したが、強含みだ。
都心では分譲マンションがブームの様相を示しており、販売価格も上昇傾向にある。中古マンションの価格上昇も加わり、買い替え需要などが生まれているという。実際に住むための「実需」だけでなく、将来の価格上昇を見込んだ「投資」も増えているとされる。一部には「バブル」を懸念する声も出始めている。
今後も住宅着工の伸びが続くかどうかは、価格が上昇傾向で推移するかどうかがひとつのポイントになる。
さらに住宅ローン金利がさらに下がるのかどうかも焦点だろう。日本銀行が本気でマイナス金利政策を進めた場合、住宅への実需がさらに喚起される可能性があるうえ、貯蓄から投資への動きが加速することになりそうだ。
日本銀行が導入している現在のマイナス金利政策は、市中銀行が日本銀行に預けている当座預金のごく一部にマイナス金利を適用しているに過ぎない。それでも国債金利がマイナスになるなど、市中金利にはそれなりの影響を与えている。
■住宅に「火が着く」期待
現在、250兆円あまりある当座預金のうち、210兆円程度には今でもプラス0.1%の金利が付いている。市中銀行は当座預金の金利ゼロで集めた資金を日銀に持っていくだけで0.1%のサヤを抜けるのだ。仮に日銀が本気になれば、この210兆円部分の一部にゼロ金利やマイナス金利を適用することが可能だ。
そうなれば、預金に預けている資金が投資に回る可能性もある。特に将来分譲する住宅用地を取得する不動産会社にとっては、マイナス金利は絶好の投資タイミングだ。
すでにマイナス金利を導入しているスイスやドイツなどでは、不動産を購入する人たちが増え、不動産価格も大幅に上昇している。それこそ日本人の目にはバブルに映るが、明らかにマイナス金利の「効果」だ。
日本銀行はマイナス金利の効果を見極めたいとして金融政策を据え置くスタンスを続けているが、さらにもう一歩マイナス金利政策を前に進めることになれば、住宅に火が付くのは間違いないだろう。
現状のマイナス金利政策でも、住宅着工に十分な効果があるのか、それとも住宅着工の伸びが頭打ちとなり、さらなるマイナス金利政策を日銀に求めるムードが広がるのか。7月末に発表される新設住宅着工件数の数字から目が離せない。
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