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「65歳まで働きたい」という求職者が増えている(写真=PIXTA)
「65歳現役時代」到来で、激変する35歳からの転職市場
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160704-00010000-nikkeisty-bus_all
NIKKEI STYLE 7月4日(月)16時0分配信
「ミドル世代の転職の今後はどうなっていくのか?」――。
過去15年以上にわたり、ミドル世代〜シニア世代を専門に、6000人以上の転職希望者と面談し、実際に1000人以上の転職を実現してきたリクルートキャリアの柴田教夫さん(57歳)。「転職支援した最高齢は66歳の方」という記録も持つベテラン転職コンサルタントに、大きく変化する転職市場について聞きました。
■「65歳まで働きたい」という求職者が増えている
――15年もの間、ミドル世代の転職市場を見続けてきた柴田さんですが、以前と今とを比べ、転職市場はどのように変化していると感じますか?
求職者側の仕事に対する考え方、企業側の採用に対する考え方ともに、特にリーマン・ショック後のここ10年でガラリと変わりました。それにより、転職市場も大きく変化していると感じています。
まずは、求職者側。ほんの十数年前までは、「役職定年が50歳、定年退職が55歳」が主流でした。求職者の方々からの相談内容も「55歳までは働きたい」だとか「50代でリタイアして悠々自適に暮らしたい」などといったものが多かったんです。当時40歳そこそこだった私は、皆さんの話をうかがいながら「10年後は僕も隠居を考えなければならないのか」などと思っていました。
でも、今はそれが様変わりして、皆さん「最低でも65歳までは働きたい」とおっしゃるようになりました。過去10年間で、皆さんが働きたい期間も同じように10年伸びました。今私たちの目の前で、これまでになかった「働き方の変化」が起こっています。
――その変化が生まれた背景に何があるのでしょうか?
ひとことでいうと「60歳引退社会から65歳現役社会へ」の移行の影響です。年金の受給開始年齢は、平成に入ってから当初の55歳から段階的に引き上げられ、昭和36年4月1日以降に生まれた方は65歳からの支給になります(男性の場合)。つまり、現在40代の方は皆さん、65歳になるまで年金が支給されないということ。そのため、「年金が出る65歳までは働かざるを得ない」状況が生まれ、だからこそ50代でも当社の門を叩く方が増えています。
また、一方で年齢と体力、気力の水準の変化もあります。
「60歳だが、まだまだ元気だし、バリバリ仕事をしたい」
「65歳になっても、もっと世の中と関わりを持ち続けたい」
というようなアグレッシブな思いから、長く働ける環境を求めるミドル層も多いですね。自身の経験やスキルを生かし、新しいステージで活躍したいという意欲あふれる方が多く、お話をうかがっていて、こちらが元気をいただくことも多いです。シニア世代の頼もしさを非常に強く感じています。
■「35歳限界説」は過去の話。40代以上も積極採用する企業が増加
――働く側が元気でも受け入れ先がなければ活躍できないと思うのですが、35歳限界説は過去のものになり、「40代以上のベテランを採用したい」という採用ニーズは増えているのでしょうか?
その通りです。以前は、多くの大手企業において、30代中盤までに「どの社員を管理職や経営幹部に育てていくか」の選別ジャッジメントが行われていました。20代で現場の最前線を任せ、30歳手前でリーダーを経験させることで、後輩育成や組織マネジメントの基礎を学んでもらう。その働きぶりを見て「この人を課長以上に昇進させるかどうか」を判断していたのです。
その影響もあってか、「30代中盤以上の人材は、外部からの中途採用では受け入れにくい」という側面がありました。ようやく選別が終わったタイミングの同世代社員とのバランスが取りづらいし、そもそも採用時に「この人は管理職に適任かどうか」を予測する方法やツールも整備されていなかったこともあると思われます。
しかし、バブル崩壊後の極端な新卒採用の縮小により、企業内の人口構成ピラミッドがいびつになってしまったことが原因で、このセオリーが当てはめられなくなってしまいました。世代ごとの人口バランスがバラバラなので、20代のうちにリーダーを経験させることができなくなり、幹部候補の選別ジャッジがどんどん後ろ倒しになってきたことが最大の理由。
さらには企業の業績が右肩上がりを続けている状態ならよかったのですが、成長が鈍化する企業が多い中では、管理職のポスト数そのものが減少してさらに狭き門になったこともあり、ますます「誰を抜てきするべきか」のジャッジが難しくなっています。
また、逆に成長を続けている企業の場合は、ミドルマネジメント世代の数が足りなくなり、内部人材の選別どころか、外部からの中途採用で組織強化をすることが当たり前になっているという側面もあります。
■ベテランならではの豊富な経験・スキルに期待
――中途採用における「35歳の壁」が崩壊しつつある、ということですね。
昔から35歳以上でも転職して活躍する方はいらっしゃいましたが、いまは35歳はもちろん、40代以上であっても、経験・スキルが豊富で自社で活躍してくれそうな人は積極的に採用する――という考え方に、企業は確実に変化しています。そしてこの傾向は、ここ数年さらに顕著になっています。
中途採用の際、企業は候補者人材が過去の業界や職種で培ってきた専門知識・専門能力(その仕事でしか発揮できない力)の高さだけではなく、「人とのかかわり方(コミュニケーション力)」や「仕事の進め方(ダンドリ力)」なども併せて評価することが増えてきています。40代以上のミドル層には、これらの「業種や職種を超えて持ち運びが可能なポータブルスキル」を培ってこられた人が多く、実際に活躍する事例が増えたこともあって注目度が高まってきています。
もう少し具体的に言うと、「人とのかかわり方」には、たとえば利害交渉能力やコーチング能力、「仕事の進め方」には変革推進能力、問題解決能力などが含まれます。経験業界や職種を問わず、あるいは新卒からのプロパー人材重視主義が変化し、ポータブルスキルを持った人材を外部から招請して抜てきする傾向も年々強まっていると感じています。
次回はさらに掘り下げ、「40代以上でも希望の転職を実現できる人と、できない人」の傾向や特徴にフォーカスしていきます。
◇ ◇ ◇
黒田 真行(くろだ・まさゆき)
ルーセントドアーズ株式会社代表取締役
1965年、兵庫県生まれ。89年、関西大学法学部法律学科卒業、株式会社リクルート入社。2006年から13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。13年、リクルートドクターズキャリア取締役・リクルートエージェント企画グループGMを兼務した後、14年にルーセントドアーズ株式会社を設立。現在は、中途採用市場の積年の課題であった「ミドル世代の適正なマッチング」をメーンテーマと設定し、日本初となる35歳以上のミドルキャリア専門の転職支援サービスを運営している。
35歳以上の転職支援サービス「Career Release40」
http://lucentdoors.co.jp/cr40/
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