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北京に向け走行する中国の高速鉄道=2011年7月(ロイター)
【ビジネス解読】中国の「高速鉄道外交」が崩壊寸前 米国、ベネズエラなどプロジェクトが相次ぎ頓挫
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160704/frn1607041140003-n1.htm
2016.07.04 夕刊フジ
中国が国家戦略の柱に据える「高速鉄道外交」が崩壊寸前だ。中国企業が初めて建設を手がける米国でのプロジェクトが挫折し、中南米やアジアでも事業が頓挫するなど死屍累々。ずさんな計画や採算など“官製ビジネス”の陥穽が浮き彫りになった格好だ。米国では「超高速」交通の開発も進む中、各国のインフラに食い込み技術力をアピールしたい習近平指導部の願いもむなしく、「中国高速鉄道は完敗」との声も聞かれる。
■赤っ恥の習政権
「米中の協力関係を象徴する高速鉄道プロジェクトが、合意から1年もたたないうちに頓挫した」
無残な顛末をあきれたように報じたのは米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)だ。米西部ロサンゼルス−ラスベガス間を結ぶ高速鉄道事業を計画している米エクスプレスウエスト社は6月8日、中国の国有鉄道企業、中国鉄道公司との合弁を解消すると発表した。
エクスプレス社は、中国企業側の要因による計画の遅れで認可取得が難しいほか、車両の米国内での製造を求める米当局の規制が障害になったとしている。
一方、中国側はこれに“逆ギレ”。ロイター通信などによると、中国企業の幹部は「早計かつ無責任だ」と米側の対応を強い調子で非難している。
ただ、中国が怒り心頭なのも、ある意味無理もない。昨年9月の習近平国家主席の訪米直前に、米中が合弁で合意。中国企業が米国内で高速鉄道を建設する初のケースとして、関係者から「中国の鉄道輸出にとって大きな一歩になる」と注目を集める案件だった。それだけに、習指導部としては世界に赤っ恥をかかされた格好だからだ。
エクスプレス社は、提携などを含めて別のパートナーを今後探すという。このプロジェクトをめぐっては、新幹線を抱えるJR東海も当初受注を目指しており、今後が注目される。
■お粗末な事業
中国は、中南米でも相次いで高速鉄道プロジェクトが頓挫している。
2014年にはメキシコでの高速鉄道事業で、やはり中国企業が中心となるコンソーシアム(企業連合)がいったんは落札した。だが、不透明な入札手続きなどが暴露されて落札はキャンセル。さらに、閣僚も巻き込んだ贈賄疑惑など大スキャンダルに発展し、批判が殺到。追い込まれたメキシコ政府は、「原油安と財政難」を理由に、計画そのものを棚上げしてしまう。
ベネズエラでは、中国の鉄道建設大手、中国中鉄が手がける南米初の高速鉄道事業が進行中だったが、こちらも原油安による財政難などのために事業を推進する余裕がベネズエラ側になくなり、今年に入って事実上行き詰まった。
インドネシアでも、米国と同様に日本企業などのライバルをけ落として中国企業が昨年プロジェクトを受注した。だが、あろうことか中国側からの提出書類が、英語でもインドネシアの現地語でもない中国語で書かれ、「判読できない」(インドネシア当局関係者)といったお粗末な理由で、事業契約が調印できない事態に陥った。
中国は11年夏、浙江省温州で高速鉄道の大勢の乗客が死亡する事故を起こし、その拙速な事故処理もあって国際社会から厳しい目が注がれた。習政権はここ数年、海外への高速鉄道の輸出に力を入れるなど巻き返しに懸命だが、一度失った信用を取り戻すのは容易ではない。
■時速4000キロって?
ただでさえ苦境にある中国の高速鉄道だが、さらに「強敵」となる次世代の高速交通システムの開発が世界で進みつつある。
その先頭を走るとされているのが米国。電気自動車(EV)ベンチャーのテスラなどを率いるIT経営者、イーロン・マスク氏が提唱している高速列車構想「ハイパーループ」だ。減圧された真空に近いチューブ内を列車が猛スピードで駆け抜けるもので、理論上は飛行機も真っ青の時速1200キロ近いスピードが出せるという。コスト面などの課題はあるが、「実現すれば交通システムを一変させる可能性がある」(国土交通省関係者)とされる。
ネバダ州ラスベガス郊外で5月11日、プロトタイプによる初の実験走行が行われた。米ニュースサイトのギズモードによると、走行はわずか数秒間だったが、1秒で時速約160キロに到達し、「実験は成功に終わった」としている。
これに強い関心を示すのが中国だ。中国情報に強いニュースサイト、サーチナは、「ハイパーループはすごすぎる」「中国高速鉄道は完敗か」といった中国メディアの反応を報じ、ハイパーループが実用化に向けて成果を上げたことに警戒感を示したと伝えている。
ただ、中国でも、政府の支援を受けて大学などで真空チューブ列車の研究が進められている。中国メディアによると、10年以内にも実用化を目指しているとされ、なんと時速はハイパーループをもはるかに上回る時速4千キロ。国際列車が北京とワシントンを2時間で結ぶ計画なのだというから、にわかに信じがたいというほかない。
だが、安全保障でも微妙な関係を抱える中国と米国を結ぶチューブをいったいどう敷設するのかなど、容易に解決できそうもない課題は多そう。着々とステップを踏むハイパーループと比べ、どこまで実現性があるかは不明だ。(柿内公輔)
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