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コラム:英離脱に過剰反応、ドル90円台定着は来年=佐々木融
佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 25日] - 23日に英国で行われた欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票は、51.9%対48.1%で離脱派が勝利した。投票率は72.2%と比較的高く、英国民は43年間続いた欧州における共同体メンバーというステータスを捨てることを決断した。この結果を受け、キャメロン首相は10月までに辞任する意向を示した。
歴史的な出来事を目の当たりにして、24日の市場は大荒れとなった。
為替市場における最も大きな動きは、離脱派勝利の可能性が急速に高まった日本時間のお昼前後に発生し、その後の欧米市場では比較的穏やかな動きにとどまった。主要通貨(エマージング通貨含む)では、英ポンドが独歩安、円が独歩高となった。
ポンドドル相場は一時、1985年以来約30年ぶりとなる1.32ドル台まで急落。ポンド円相場の下落率は当初15%を上回り、2012年12月以来約3年半ぶりとなる133円台までポンド安円高が進んだが、その後やや値を戻し、24日一日を通じた下落率は11%となった。ユーロ円相場も同様に、12年12月以来となる109円台まで、いったんユーロ安円高方向に急激に動いた後、小反発した。
円の次に強い通貨は米ドルだったが、ドル円相場の下落率も一時7%に達し(13年11月以来約2年半ぶりとなる99円ちょうどまでドル安円高が進行)、一日を通じても3.7%の下落となった。
株式市場では日経平均株価が7.9%急落、年初来安値を更新した(一時14年10月以来の安値を記録)。ハンセン(2.9%下落)や上海総合(1.3%下落)に比べて弱さが目立ち、当事国である英国のFTSE100(3.2%下落)や、独DAX(6.8%下落)よりも下落幅が大きくなっている。
もっとも、欧州主要国の株価の中では、週末に総選挙を控えていたスペインのIBEX35指数(12.4%下落)とイタリアのFTSE・MIB指数(12.5%下落)の弱さが目立っている。ちなみに、米S&P500指数は3.6%の下落にとどまった。
主要各国の長期金利も大きく低下した。日本の30年国債利回りは過去最低となる0.13%まで一時低下。英国とドイツの10年国債利回りもそれぞれ過去最低となる1.01%とマイナス0.16%まで一時大きく低下した。周辺国国債の対独スプレッドは拡大し、特にドイツとスペインの10年国債利回り差は167ベーシスポイント(bp)と14年5月以来約2年ぶりの水準まで拡大している。
米10年国債利回りは一時12年7月以来約4年ぶりとなる1.40%近辺まで急落。金曜日のニューヨーク(NY)引けベースで見ても1.56%と、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第三弾(QE3)を開始する直前の12年8月以来の水準まで低下している。これで、フェデラルファンド(FF)金利先物がFRBによる1回の利上げを100%織り込んでいるのは18年7月となってしまった。
<目先の取引レンジは1ドル100円から105円か>
当社は、英国のEU残留を予測していたが、仮に離脱派が勝利した場合、ドル円は101円程度まで下落すると予想していた。したがって、99円ちょうどまでの下落は予想を上回るものだった。
しかし、過去1カ月ほど相関を強めている日米金利差から見ると、2年金利差、10年金利差のいずれとも整合的なドル円の水準は102―103円程度である。100円を割り込んだ後、すぐに103円台に戻し、結局102円台前半でNYの取引を終えたのは順当な動きだったことを示唆している。
また、今後2年間利上げを織り込んでいないことに鑑みると、米金利の低下も過剰反応の感があり、この点からも、ドル円が短期的にさらに下げ足を強める可能性は低そうに見える。
今回の結果は、経済的にも政治的にも、英国および他の欧州諸国に多大なショックを与えることになるだろう。ただ、このショックは基本的に欧州に限定されたものであり、世界全体を巻き込むことはないと見ている。
もちろん、長期的には欧州域外に対する影響も無視できないかもしれないが、今後1年間の日本や米国経済に対する影響は極めて限定的と言えそうだ。08年のリーマンショックのように、これをきっかけに金融危機に至るような性質のものでもないと考えられる。
筆者は、来年に向けてドル円は90円台へ下落していくと予想しているが、現段階では99円への円高は過剰反応であり、さらなる円高進行の可能性は高くないと見ている。ただ、英国経済・政治に関する不透明感が払しょくされるまでは投資家のリスク回避姿勢が強まりやすく、また米国の早期利上げが難しくなったと見られることから、105円を超えて上昇するのも難しいだろう。したがって、目先数カ月程度は100円から105円のレンジ内で推移する可能性が高いだろう。
また、日経平均株価の急落も、ドル円の急落に対する過剰反応だと捉えている。年初からのドル円と日経平均株価の相関関係は必ずしも高くはないが、それでも1ドル=103円台と整合的な日経平均株価は1万5500円前後となる。欧州へのエクスポージャーが大きい企業の収益に対する懸念が高まることは否めないが、日本企業の収益全体に大きな影響を与えるといった結果にはならないだろう。
当社は、ポンドドル相場はEU離脱の際には1.32ドルまで下落すると予想していた。したがって、ポンドはすでにターゲットに達している。しかし、英国のEU離脱シナリオが現実化したことに伴う大規模なヘッジのポンド売りを招来する可能性があることから、短期的にポンドが一段と下落する可能性は排除できない。
目先、ポンドの動きに影響を及ぼす可能性がある要因としては、1)新政権の動向、2)他のEU諸国の反応、3)スコットランド要因、すなわち独立を問う住民投票再実施の可能性、4)英中銀の反応、5)ポンド買い介入の有無、などが挙げられる。
ちなみに、当社は、EU離脱を受けて英中銀は7月と8月に25bpずつの利下げを実施すると予想を変更した。また、英中銀は通貨安の金融緩和効果をむしろ歓迎すると見ており、ポンド買い介入の可能性は低いと考えている。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN0ZB06W?sp=true
イギリス国民を「EU離脱」に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得
矢口新
2016年6月24日ニュース
BBCによると、国民投票に登録した有権者数は4649万9537人と過去最高だった。結果は、約52%の人々がEU離脱を支持した。
英政府やメディア、国際機関、欧州各国政府、企業などによる「景気減速、失業、給与下落、資産価値減少、格下げなど、EU離脱は英国のためにならない」という大合唱にも関わらず、どうして英国民は国を二分するほどにEU(欧州連合)政府に対して懐疑的になったのだろうか?
私は、これまでにEU政府やECB(欧州中央銀行)が行ってきたことに大きな原因があると見ている。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
多くのエコノミストが押し黙る「イギリスEU離脱」の本質
英国人がEU離脱を望んだ3つの理由
EU離脱を望む英国人が抱く懸念を、主に英文で書かれた情報をもとに、私が勝手に推測すると、
1. EU政府が官僚的で、必ずしも英国の国益に沿った政策を行わない
2. 欧州の統合はもはや現実的ではなくなった
3. 移民、難民問題
の順になる。
英国人にとっては、これらの懸念が、「景気減速、失業、給与下落、資産価値減少、格下げ」などといった、明日からの生活を脅かすような懸念をも上回ったことになる。順に解説しよう。
(1)EUは英国の国益に沿った政策を行わない
この(1)の懸念は正しい。EU政府が官僚的で、EU各国に適切な政策を採らないのは、米国発のサブプライムショックのときに顕著となった。
当時、米FRBは住宅価格バブル崩壊翌月に利下げを行い、英BOEはその翌月に利下げを行った。FRBの利下げペースは下図に見られるように急速なもので、同中央銀行の危機感を如実に反映している。その危機感は、1年余り後のリーマンショックを防げなかったことからも、それでも足りないほどに適切なものだったと言える。
主要中銀の政策金利の推移
リーマンショックが起きた時には、FRBはすでに政策金利を3.25%ポイント引き下げており、BOEでも0.75%引き下げていた。BOJは横ばい。ところが、ECBは何と利上げしていたのだ。
欧州にも住宅バブルの崩壊があった。英国やアイルランド、スペインなどだ。それで、英国は利下げしたが、ユーロ圏のアイルランドやスペインは逆に利上げされたのだ。このことの帰結の一例として、ユーロ圏主要国の失業率の推移を挙げよう。独仏と、後にPIIGSと揶揄されるようになった、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの7カ国だ。
ユーロ圏主要国の失業率の推移
ご覧のように、2007年まではアイルランドの失業率だけが5%以下と最も低かった。当時のアイルランドは他の経済指標も良く、ユーロ圏随一の経済優等生の1つだった。ところが、サブプライム、リーマンショック後には、一時14.7%にまで急上昇する。
利上げとは、経済引き締めの一手段だ。景気悪化時に引き締めると、景気はさらに悪化することになるという、今さらながらの生きた証明となった。では、ECBは経済音痴なのだろうか?
私はそうは思わない。政治や政策は優先順位だ。何かを優先すれば、どこかが後回しになる。あるいは、ある集団や部門を優先し、他に逆効果になることを行えば、そこが犠牲にもなる。
はっきりと述べよう。ECBはドイツを優先し、ドイツのインフレ懸念のために利上げしたのだ。
Next: 英国人にEU離脱を決意させた、ECBの恥知らずな「ドイツびいき」
英国人にEU離脱を決意させた、ECBの恥知らずな「ドイツびいき」
ECBはドイツの事情を最優先した金融政策を行っている。その効果で、2007年以前には最も失業率の高かったドイツが、2009年以降は最も低くなった。
2005年時点で失業率が2桁台だったのはドイツだけだったが、10年後にはドイツだけが5%以下となった。逆効果となった残りの諸国はほとんどが2桁台。ギリシャやスペインは今も20%を超えている。
金融政策は、財政政策と並ぶ、経済政策の2本柱だ。景気後退時に、机上ではなく、実際に利上げするとどうなるか?ECBの実験は、私などには大いに勉強になったが、エコノミストでもこの事実に触れない人が多いのは驚きだ。
英国では約半数の人々がそのことを学び、EU政府に懐疑的となり、離脱を決めたのだ。
サブプライムショック後の金融引き締めと、リーマンショックで、ドイツ圏以外の欧州諸国の多くは危機に至った。この失業率の高さは、金融危機を超えた社会的危機だとも言える。
メルケル独首相だけが「生き残った」のは偶然にあらず
EU政府の優先順位がドイツだとすれば、下位政府にあたる各国政府は何をしていたか?何もしなかった訳ではない。多くは、経済政策のもう1つの手段、財政政策を行った。景気後退期には税収が減り、財政が悪化するのが常だが、その時に財政出動すれば、さらに財政は悪化する。
ユーロ圏主要国の財政収支
このグラフは、先の失業率のグラフ以上に、驚きではないだろうか?両ショック以前に黒字なのは2カ国だけ、アイルランドとスペインだ。PIIGSを「醜い子」と意訳するとすれば、その昔、両国は「白鳥」だったのだ。今は誰かに汚されて、醜く見えるだけなのだ。
一番大きく振れているアイルランドに注目して頂きたい。財政黒字国だったアイルランドが、一時はGDP比で32.3%の財政赤字となる。大幅な財政出動をして、景気対策を行ったからだ。
ちなみに、ユーロ政府は将来の統合に向けて、財政赤字の許容範囲をGDP比3%以内と定めている。アイルランド政府は随分と思い切った手を打ったものだ。結果的に、カウエン首相は解任され、後任のケニー首相がEU政府主導の緊縮財政を受け入れた。
同じように財政出動を行ったスペインはサパテロ首相からブレイ首相に、イタリアはプロディ首相からベルルスコーニ首相に、ポルトガルはソクラテス首相からコエーリョ首相に、ギリシャはパパンドレウ首相からパパデモス首相に交代、最後に残ったフランスのサルコジ大統領はオランド大統領に変わり、いずれも緊縮財政を受け入れた。
もっとも前任者も後任も、各国の国民自身が選んだのだが、今回のブレグジットのような、大々的なEU政府寄りのキャンペーンが行われた結果のことだ。当時から首長のままでいるのは、ドイツのメルケル首相だけなのは偶然ではない。
Next: 景気後退+緊縮という壮大な実験/英国のEU離脱決断は極めて健全
「景気後退+緊縮」という壮大な実験の帰結
景気後退時に、税収が減ったことを理由に緊縮財政を行うことは、例えれば、震災で税収が減ったところに、復興予算を組む代わりに、予算を取り上げ、公務員を削減するようなものだ。
こういった驚くべきことがユーロ圏では実際に行われ、挙句にPIIGS諸国はドイツのお荷物だと揶揄された。このことは、ユーロ圏各国には、それぞれの国情を反映する通貨・金融政策がないばかりか、財政政策も事実上ないことを意味する。つまり、経済政策がない故の経済危機、高失業率だと言えるだ。
では、サブプライムショック、リーマンショックのお膝元の米国、ユーロ圏よりも大きな影響を受けた英国はどうしたか?政策金利(金融緩和)のグラフは先に紹介した。下のものは財政収支のグラフだ。
日米英の財政収支
どこもGDP比4%を超える財政赤字で、最悪期には米英共に10%を超えた。仮に英国がユーロ圏に加盟していたなら制裁の対象となり、首相が解任、後任者が緊縮財政を受け入れていたことは、想像に難くない。
英国のEU離脱決断は極めて健全
幸いにして、英国には経済政策がある。景気後退時には、適切な時期に金融緩和を行い、財政出動も行える。その効果が明らかなのが、この3カ国の失業率のグラフだ。ユーロ圏の失業率のグラフと比較して頂きたい。景気後退期における、金融緩和と財政出動は明らかな効果があることが分かる。当たり前のことだ。だから、英国民の過半数は離脱を支持した。
日米英の失業率
こういった事実を鑑みれば、「景気減速、失業、給与下落、資産価値減少、格下げ」などを持ち出されて、EU離脱は英国自身のためにならないと、ほぼ全世界から脅されても、自国の政治、政策の独立を守りたい人がいて不思議ではない。約半数がそう判断できる英国人は極めて健全だと言える。
Next: 欧州統一国家は夢物語/痛みを承知でEUを「損切り」した英国人
欧州統一国家は夢物語
次に、冒頭で挙げた(2)の「欧州の統合はもはや現実的ではなくなった」ことを解説するために、先の同じグラフをもう一度引用する。
ユーロ圏主要国の財政収支
欧州連合は、将来的に1つの国に統合することを目的として設立された。当初の鉄鋼、石炭生産の統合から始まり、シェンゲン協定による国境検査なしの自由な往来、ユーロによる通貨・金融政策の統一と発展してきた。
そして、残るは財政と社会保障費などの統一となった。そのための財政赤字幅がGDP比3%以内という規制なのだ。
ところが、サブプライムショック、リーマンショックに起因するPIIGS危機以降、強硬に反対する国が出てきた。言うまでもなく、ドイツだ。それは財政収支のグラフを見せれば、すべての人を納得させられる。失業率のグラフでもいい。
過去は過去、今となっては、ドイツに統合のメリットはない。
それでも、ここ2、3年は、ドイツを除く諸国にも、多少の立ち直りが見られている。何故か?ECBがデフレ脱却のためには何でもするという規模の金融緩和政策を採っているからだ。ここまですると、機能しても不思議ではない。
ここでの問題は、どの国に対して最も機能するかだ。ドイツでないことを願いたい。ドイツが先に立ち直り、インフレ懸念が出てくると、他国の経済状態に関わらず、ECBの金融緩和は終了しかねない。
欧州が今後も統一に向けて進むには、フランスが赤字なら、ドイツにも赤字になってもらわないと困るのだ。しかし、ドイツがECBを、あるいはEU政府を、事実上コントロールしている状態では、政治、政策の優先順位は常にドイツ寄りとなる。
もはや、2007年以前の状態に戻ると想定するのは現実的だとは言えない。
痛みを承知でEUを「損切り」した英国人
また、(3)の移民・難民問題は、英国の問題というより、欧州大陸の問題で、英国は巻き込まれたくないというのが率直なところだ。一般的に解説されている様に、英国人にとって移民が職を奪うというのが大問題なのなら、「景気減速、失業、給与下落、資産価値減少」などという脅しに屈していたはずだ。
離脱を決めた英国人が持つ、「当面の景気減速、失業、給与下落、資産価値減少」などは受け入れるしかない、という覚悟はどこからくるのか?独立した政治、政策に加え、生活の不安よりも、身の安全を重視したと考える方が自然だ。
また、欧州大陸では難民の急増や相次ぐテロ以降、シェンゲン協定が形骸化し、移動の自由も脅かされている。つまり、欧州統合はどこから見ても、現実的ではなくなった。英国人は痛みを承知で、損切りしたのだ。
Next: 欧州統合なしで、統一通貨ユーロは存続できるのか?
欧州統合なしで、統一通貨ユーロは存続できるのか?
ここまで「EU離脱を望む英国人が抱く3つの懸念」を読んでいただいて、お気づきだろうか?各種グラフをご覧いただいて、お気づきだろうか?いずれも、英国の問題というよりEUが抱える大きな問題だ。
ブレグジットはEUが抱える矛盾を浮き彫りにしたに過ぎない。そう捉えられないで、英国人の気質などに答えを求める人には、ことの本質は何も見えてこない。英国の離脱、残留を問わず、他のEU諸国も同様の問題に直面しているのだ。
このことは、ユーロ存続が抱える問題でもある。
6月26日には、スペインが総選挙を控えている。イタリアでは憲法改正をめぐる国民投票が10月に行われる。先のローマ市長選挙では、EU懐疑派である「五つ星運動」のビルジニア・ラッジ氏が初の女性ローマ市長に当選した。またフランスやギリシャなどは、英国以上にEU懐疑派だ。欧州が夢物語を追い続ける限り、今後も不安定な状態は避けられない。
また、欧州の銀行株は2007年以来、8割値下がりしており、ECBのマイナス金利政策下では、収益回復の目処さえ立たっていない。
欧州銀行株指数
一方で、離脱後の実務的な展開は読み難い。懸念の多くは漠然としたもので、大きなダメージとするものから、ほとんど変わらないとするものまである。問題は、そういったことの不透明感だ。主要国の国債や、円、スイスなどがさらに買われる可能性がある。
また、リスク回避が進むと、対GDP比での政府債務の大きな国、コロンビア、南アフリカ、ペルー、トルコなどが売られるという見方も出ている。
※Why a Brexit could hurt emerging markets-and beyond – CNBC
EU残留を支持し、英国独自の政治、政策を望む国民に背を向けたことで、キャメロン英首相への信任も揺らぐかもしれない。自国民の叡知や自尊心を見下し、全世界と共に「脅し」をかけ続けたからだ。
今後の展開として、ほぼ間違いないのは「不透明感と混乱」だと言えるだろう。
【関連】英国ついにEU離脱決定。これから何が起こるか?必読の記事5選
【関連】私がスイス・ユニオン銀行で目の当たりにした「為替介入」の現場=矢口新
【関連】岡嶋大介 プロだけが知るFX裏のウラ
http://www.mag2.com/p/money/15957/5?l=tnz04c614d
英国ついにEU離脱決定。これから何が起こるか?必読の記事5選
2016年6月24日ニュース
BBCなどが報じたところによると、日本時間24日午後、EU離脱の是非を問う英国民投票は離脱派の勝利が確実な情勢となりました。イギリスがEUから離脱することで、欧州情勢や世界経済、金融市場では今後どのような影響が考えられるでしょうか。必読の記事5つをご紹介します。
【NEW!】イギリス国民を「EU離脱」に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得=矢口新
英国民投票でEU離脱派が勝利。世界経済や金融市場への影響は
(1)離脱ショックはEU加盟各国に波及する
英国民投票という終わりの始まり〜離脱でも残留でも元には戻らないEU=真殿達 より
イギリス以外の国でも脱退を気軽に議論するようになるであろうし、国民投票に訴えようとする傾向は一段と強まる。EUの官僚機構には国民投票で立ち向かうのが一番なのだ、との学習効果は絶大だ。EUは国民国家の意向を最大限満たしながら合理的解決を図る能力があるのかどうか、常に問われ続けるシステムに変わる。
少なくとも、どの国も従来以上にEU内で非妥協的となり、財政規律など基本政策を巡る加盟国間の対立は先鋭化する。EUという仕組みの正当性やあり方が一段と厳しく問われ、一歩間違えると崩壊に至る可能性を抱えたシステムとなる。
→この記事を詳しく読む
(2)EU離脱でも「時給400円のワープア」は解消できない?
日本の未来を映す英国民投票〜なぜイギリスの実質賃金は下がり続けたか=三橋貴明 より
イギリスといえば、英国立経済社会研究所によると、実質賃金が2008年から0213年にかけ、8%下がっています。失業率は5%台と低いですが、最低賃金(時給400円程度)で働くワーキングプアが数十万人(実習生、と呼ばれているそうですが)いるなど、雇用環境は良くありません。
日本も人のこと言えませんが、イギリスでこれほど長期間、実質賃金が下がり続けるのは、1964年以降で初めてとのことです。
実質賃金の下落=生産性の低下です。イギリス企業もまた、生産性向上のための投資ではなく、「安い労働者を雇う」方向に走っているわけです。すなわち、外国移民です。
キャメロン政権は外国移民を年間10万人に抑える、との公約を謳っていたのですが、昨年は30万人がイギリスに入りました。結果的に、EU離脱派は「雇用を奪われている」「賃金切り下げ競争が生じている」と、移民政策に反対しているわけでございます。
→この記事を詳しく読む
(3)再び二分される欧州、動き出すロシア・プーチン
英国EU離脱「本当のリスク」〜欧州に手を伸ばすプーチンと米ネオコンの狙い=斎藤満 より
最大の問題は、EUがノーベル平和賞を返上しなければならなくなる懸念です。
EUがノーベル賞をもらったのは、欧州の戦乱の歴史を、欧州の政治統合によって、二度と戦争に導かないような政治枠組みを作ったため、という趣旨でした。
イギリス、ドイツ、フランスが一つの組織になることで、いがみ合いを避けることができ、実際戦後70年の平和を実現しました。
そればかりか、欧州が1つになったことで、ロシアの欧州進出も難しくなり、むしろロシアの「緩衝地帯」と見られた周辺国が、次々と西欧になびいてしまい、ロシアが政治的に重要な「緩衝地帯」を失い、孤立化に向かったほどで、「1つの大きな欧州」は着実に成果を上げてきました。
ところが、ここで英国がEUから離脱すると、本来の平和を志向した「1つの欧州」の構図が崩れてしまいます。再びアングロサクソン(英国)とゲルマン帝国(ドイツ)の対立が生じてもおかしくない図式となり、この両国にどの国が付くかで、欧州がまた二分されるリスクがあります。
→この記事を詳しく読む
(4)「自由な行き来」というメリットはもうない
EU離脱まったなし。米シンクタンク調査にみる英国民投票の「理想と現実」=矢口新 より
例えばG7、あるいは国連やIMFが政府となり、日本の政治をつかさどるようになったとしよう。その際、これで各国の利害はなくなると考えるのが「理想」であり、逆に誰が実際にその政府を動かすのだろうかと考えるのが「現実」からの視点だ。EUはまさに、その理想と現実の狭間にいる。
このところ急激にEU支持が減っているのは、移民、難民問題の影響だ。欧州各国は国境検査を再開したり、分離壁を設けたりし始め、域内を国境検査なしで通過することを認めたシェンゲン協定は形骸化している。つまり、EUに留まっていても、自由な行き来というメリットは、少なくとも一部の人にはもうない。
→この記事を詳しく読む
(5)EU内で「一人勝ち」ドイツへの不満が高まる
英国離脱ならユーロは「最安値」に向かう〜困るのはむしろEU=矢口新 より
欧州諸国が群れることのメリットは、発足時の理念に最もよく表れている。米ソ2大国に挟まれた欧州が、2大国に対して発言力を持つために、サイズを大きくする必要があったのだ。米国は合衆国という名の州政府の集合体、ソ連は各ソビエト共和国の連邦国で、通貨は1つ、合衆国内の州間や、連邦内の共和国間の行き来は、「基本的には」自由だった。これは、欧州ではユーロやシェンゲン協定で実現されている。
一方、ユーロ導入後のEU主要国で、失業率を劇的に低下させ、貿易黒字幅を拡大したのはドイツだけで、フランス、イタリア、スペインなどは高失業率、ユーロ不参加の英国も貿易赤字に甘んじている。英国の場合は、EUに参加しながら、ユーロ政府とは距離があるので、発言力も限定的だ。
また、サブプライムショックに至るまでのアイルランドは、欧州のどの国よりも経済的な優等生だった。ところが、サブプライムショック後1年以上も利上げされ、その間にどん底にまで転落、お荷物扱いされることとなった。同時期の英国が利下げで何とか乗り切ったのと好対照だった。
つまり、国家が群れると、大事なことはすべてボス大国の言いなりにならねばならないのだ。イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの苦悩も、基本的には同根だ。
→この記事を詳しく読む
【NEW!】離脱決定後の最新分析
イギリス国民を「EU離脱」に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得=矢口新 より
EU離脱を望む英国人が抱く懸念を、主に英文で書かれた情報をもとに、私が勝手に推測すると、
・EU政府が官僚的で、必ずしも英国の国益に沿った政策を行わない
・欧州の統合はもはや現実的ではなくなった
・移民、難民問題
の順になる。
英国人にとっては、これらの懸念が、「景気減速、失業、給与下落、資産価値減少、格下げ」などといった、明日からの生活を脅かすような懸念をも上回ったことになる。順に解説しよう。
→この記事を詳しく読む
【関連】すんなり上がるわけがない。英国民投票で最初に試される東京市場=E氏
http://www.mag2.com/p/money/15918?l=tnz04c614d
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