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インバウンド 変わる風景(上)「爆買い」に急ブレーキ(中)「鳥取 コナン」で検索(下)訪日客消費 GDP1%の壁
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/191.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 6 月 22 日 02:07:11: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


インバウンド 変わる風景

(上)「爆買い」に急ブレーキ 1人当たり旅行消費額減

 5月の大型連休明け。家電量販店のヤマダ電機はJR新橋駅前(東京・港)の店舗をひっそりと閉めた。不採算60店を一斉閉店する一方、新たな「戦略店」として2015年春に開いた免税専門店だった。

1年で見切り

 「インバウンドは経営の核にならない」。山田昇会長は1年あまりで見切りをつけた。1台10万円近い炊飯器を何台もまとめ買いする中国人客。一本調子で増えてきたこんな「爆買い」にブレーキがかかった。

 中国は経済成長が鈍り、15年夏には上海株が急落。円高・人民元安が進み、この1年で日本の商品の“お得感”は2割近くも失われた。ただ、爆買いがしぼむ理由をこれだけで片付けることはできない。

 訪日観光ビザの4割を発給する上海の日本総領事館では1〜4月の発給件数が前年同期比15%増。日本への旅行熱が冷める気配はない。沿岸部中心に給与水準は上昇。2桁成長が続く中国の消費市場では依然、日本製の人気は高い。実際、16年1〜3月期に訪日中国人客の旅行消費額は客数の伸びが寄与し、前年同期を4割強上回った。ただ、1人当たりに換算すると、12%近くも減っている。

 「税制が変わってコストが合わない」。九州に住む中国人の主婦、高園園さん(29)が話す。ドラッグストアなどで買い付けた商品を本国の客に販売してきた代購(代理購入)。いわゆるブローカーだ。

 中国政府は4月、越境EC(電子商取引)に関する税制を変更した。事実上免税だった個人輸入扱いの荷物に一般貿易並みの税金が課される。税制の抜け道を使って荒稼ぎするブローカーを締め出し、正規の貿易業者の不公平感をなくすことが狙いとみられる。人海戦術で商品を調達してきた代講は関税引き上げと円高でうまみがなくなった。

 日本百貨店協会がまとめた4月の全国の百貨店のインバウンド向け売上高は3年3カ月ぶりに前年割れとなった。客数は7%以上増えたにもかかわらず、単価が16%近く落ち込んだ。三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長は「ブローカーが減った」とみる。


大きな振れ幅

 免税店大手のラオックスは5月まで全店売上高が4カ月連続で前年割れとなった。店舗数は増やしても単価下落が補えない。8月をめどに日本行きのクルーズ船が発着する上海港に展示場を設ける。家電や化粧品など1000点超をそろえて、訪日前に予約販売。日本の店舗で手渡す。クルーズ旅行の富裕層を店舗に呼び込む苦肉の策だ。

 免税販売は想定ほど伸びない。家電量販店のビックカメラは16年8月期の連結売上高を下方修正した。宮嶋宏幸社長は「インバウンドは1割程度が適切」と強調する。単体売上高に占める免税販売の比率は15年12月〜16年2月期ですでに11%程度となっている。

 15年には3兆4000億円に達し、百貨店や家電量販店を潤したインバウンド消費。振れ幅の大きさはリスク要因となりかねない。

 安倍政権が成長戦略の柱のひとつに掲げるインバウンド。右肩上がりの伸びが続く一方、流行語ともなった「爆買い」はすっかり影を潜めた。変わるインバウンド最前線の風景に迫る。

[日経新聞6月18日朝刊P.1]

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(中)「鳥取 コナン」で検索 クールな体験 地方で探す

 47都道府県のうち、宿泊客数が下から4番目の鳥取県。しかし、空港から車で40分も離れた「青山剛昌ふるさと館」(北栄町)では平日、中国語が飛び交う。


 お目当ては人気漫画「名探偵コナン」だ。作者の出身地に建てられた記念館に海外からファンが押し寄せる。2015年度の来館者は初めて10万人を突破。約1割をインバウンド(訪日外国人)客が占める。

 「鳥取とコナンを併せて検索している。漫画をきっかけに鳥取を訪れる傾向がうかがえる」。中国ネット検索最大手、百度(バイドゥ)日本法人の高橋大介国際事業室室長は中国人の動きをこう分析する。


増える個人旅行

 1〜4月の訪日観光ビザ発給件数が前年同期比15%増えた中国・上海総領事館。初めて訪日する「一見(いちげん)さん」が中心の団体旅行用が5%減る一方、リピーターが多い個人旅行用は40%増えた。爆買いがしぼむ背景には訪日客の関心の「モノ」から「コト」へのシフトもある。

 旅慣れた訪日客は日本でしかできないニッチな体験を求め、全国各地を歩き始めた。

 昔ながらの蔵造りの街並みから「小江戸」と呼ばれる埼玉県川越市では和装の訪日客が行き交う。台湾から訪れたツァン・スージュエンさんは初めて着た浴衣に「伝統的で美しい衣装にうっとりする」と話す。

 かつてすさんだ街として知られた横浜市黄金町。高架下のスタジオで開かれるアートイベントに中華系の訪日客が目立ち始めている。町の名前が中国で縁起が良いとされる金を連想させる。理由は単純だが、交流サイト(SNS)経由で拡散し、評判となった。訪日客が集まれば、そのための商売やイベントも増え、街は活気を生む。


農家や温泉魅力

 観光庁によると、地方の外国人の延べ宿泊者数は15年に前年比60%増えた。東京、京都、大阪など三大都市圏の42%増を上回り、訪日客が地方に足を延ばす傾向は強まっている。

 訪日人気の代表格がアニメなどの「クールジャパン」だ。だが、「クール」は人によって感じ方が違う。日本人が知らない魅力を訪日外国人が発見している。

 栃木県大田原市の第三セクター、大田原ツーリズムが手掛ける「農家民泊」。農家と一緒に野菜を収穫したり、郷土料理を作ったりして、日本に根付く田舎の暮らしを堪能できる。年6500人の体験者の約3割が訪日客だ。

 玉川温泉や乳頭温泉など日本を代表する名湯を抱える秋田県仙北市は、温泉と病院での健康診断を組み合わせた医療ツーリズムを推し進める。国家戦略特区を使い、外国人医師の受け入れ体制も整える。5月下旬には中国国家観光局の日本駐在幹部が訪れ、門脇光浩市長が出迎え熱心に売り込んだ。

 リピーターの増加で、訪日外国人の行き先に変化の兆しが出てきたのは間違いない。それでも、三大都市圏に宿泊する訪日客がまだ6割を超え、都市部のホテルは慢性的に予約を取りにくい状況が続いている。

 20年に訪日客4000万人をめざす日本。インバウンドの果実を日本全体に広げるためには、訪日客をさらに地方に分散させることができるかがカギとなる。日本人が忘れてしまった魅力を再発見してくれる訪日客が増えれば、新たな地域活性化にもつながる。

[日経新聞6月19日朝刊P.1]

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(下)訪日客消費 GDP1%の壁 おもてなし 工夫の余地

 家電量販店のビックカメラに台湾からの訪日客の「指名買い」を受ける店員がいる。新宿東口駅前店(東京・新宿)で働く台湾出身の永井恵美さんだ。「すごく親切だった」という交流サイト(SNS)への書き込みが拡散し、ちょっとした有名人になった。

 「日本に行くので商品を取っておいて」。SNSを通じ、こんなメッセージが頻繁に届く。買い物の後は店内で一緒に記念撮影。その写真がまた投稿される。


数はあるのに…

 「おもてなし日本」を海外に発信するSNS。しかし、買い物の様子をアップしようとしても、通信環境が整っていないとの不満が訪日客には根強い。観光庁の調査によると、旅行中に最も困ったことの1位は無料公衆無線LANの30.2%。2位の「言葉が通じない」(21.1%)を大きく引き離す。

 約100万カ所と推計される日本の公衆無線LANは海外と比べても遜色ないという。問題は使い勝手の悪さだ。各地の公衆無線LANは通信会社や自治体が整備し、訪日客は移動のたびに名前や国籍、性別などを登録する必要がある。総務省は一度の登録で異なる公衆無線LANを使えるようにする検討に入った。

 日本独特のルールへの戸惑いも多い。例えば、食券による前払いや現金対応のみという飲食店に訪日客はなじみがない。

 松屋フーズは2017年3月末までに全約1000店の食券販売機を外国語表示が可能な新型に切り替える。英語、中国語、韓国語に対応。外国人が好むメニューを分析し、新商品開発に生かす思惑もある。

 外国人が日本で使ったお金から日本人が海外で使ったお金を引く旅行収支は15年、53年ぶりに黒字に転換した。アジアを中心とする海外の成長が国内に流れ込む。その恩恵に浴するためには飲食店など典型的な内需産業もグローバル化が求められている。


規制緩和が不可欠

 政府は6月2日、20年に訪日客数を4000万人にする成長戦略を閣議決定した。ビザの緩和や円安を原動力に当初の「20年に年間2000万人」を前倒しで達成し、大幅に目標を引き上げた。このためもう一段の規制緩和が欠かせない。

 最大の課題は宿泊施設の整備だ。主要都市のホテルではすでに高水準の稼働が続く。新たな受け皿と期待される民泊のルールづくりはこれから具体化する。

 焦点の一つは営業日数の上限だ。180日以下が一般的な海外に対し、日本の旅館業界は30日以下を強硬に主張する。エアビーアンドビーの共同創設者、ジョー・ゲビア氏は「最終的には国や自治体が決めることだが、規制が多いほど、その経済効果は限られる」と懸念を示す。

 3兆4000億円に膨らんだ訪日客の消費額も対国内総生産(GDP)でみれば0.5%にすぎない。2%に届くイタリアやフランスとの差は大きく、米国やカナダの1%と比べても見劣りする。20年に政府が目標とする8兆円になれば、GDP600兆円経済でも1%の壁を突き破ることができる。そのためには官民で工夫しなければならない課題はまだまだ多い。

 新沼大、藤川衛、伊藤大輔、小高航、原島大介が担当しました。

[日経新聞6月21日朝刊P.1]


 

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コメント
 
1. 2016年6月22日 20:53:14 : 2FbCg9vijk : ylRMDBXhDG8[172]
爆買いが 減って崩れる 皮算用

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