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[ビジネスTODAY]車の鉄離れ 化学に商機
日本の大手、欧州市場開拓 軽量化へ素材攻防 旭化成、独に拠点
自動車素材の主流は鉄――。こんな常識が欧州から崩れようとしている。旭化成は16日、ドイツで自動車に使う部材の開発提案から営業までを手掛ける拠点を開設。日本の化学大手が相次ぎ欧州で自動車向け市場の開拓に乗り出している。あくまで鉄にこだわる日本車と、鉄以外へのシフトに積極的な欧州車。軽量化を巡る素材の攻防は新たな展開を見せ始めた。
独デュッセルドルフで旭化成が開いた新拠点「旭化成ヨーロッパ」。開所式には現地の自動車・部品大手の関係者ら約200人が詰めかけた。BMWやフォルクスワーゲンに素材を提案し、共同開発に持ち込む。「ここを起点に独自動車メーカーに食い込みたい」と小林友二副社長は言う。
技術者ら約40人が常駐する。売り込むのは例えばナイロン系の「レオナ樹脂」。分子構造を工夫して高温、振動に強い性能を持たせ、エンジン周りの素材としての用途を開拓した。エンジンオイルを入れる「オイルパン」の素材は鉄をはじめ金属製が主流だが、樹脂にすれば6割軽くできる。
現在は日系向けが大半の自動車分野の売上高を、欧州向けの上積みで、2025年度までに15年度比約3倍の3000億円に引き上げる計画だ。
鉄以外の素材で、自動車向けに売り込むために欧州で拠点を設ける日本企業が目立つ。三菱ケミカルホールディングスは17年春にも欧州で開く計画だ。4月に開設した米国拠点と同様に、樹脂製の燃料タンクやガラス繊維を使ったボンネット部品の共同開発を顧客に提案する。石渡直明・自動車関連事業推進センター長は「今後の成長のけん引役は欧米自動車メーカーとの取引」と言う。
東レはイタリアで炭素繊維加工メーカーを買収。鉄からアルミへの代替が進む米国ではUACJがアルミ骨格材メーカーを買収した。現地の自動車大手への販路を開く。
欧米では厳しくなる燃費規制を鉄から新しい軽量素材への切り替えで乗り切ろうという自動車大手が多い。BMWは電気自動車(EV)で、炭素繊維を使った強化プラスチック(CFRP)を主要骨格に大量採用した。
素材の組み合わせ技術や高性能な触媒の開発が進み、鉄並みの強度がありながら軽く、コストも遜色ない製品が登場している。化学最大手の独BASFによると、シートの骨組みやオイルパン、エンジン周りといった、鉄製が当たり前の部品が欧州車では続々と樹脂製に切り替わっている。
「独自動車メーカーにはまず化学メーカーと話そうという文化がある」(BASF)。米国ではフォード・モーターやテスラ・モーターズがアルミを大量採用している。
一方の日本。化学大手は「鉄が強すぎる。自動車メーカーに代替素材を提案すると鉄鋼メーカーににらまれる」と明かす。新型車開発で密接に連携するトヨタ自動車と新日鉄住金の関係に代表されるように、自動車と鉄の結束は固い。日本車大手の技術者は「鉄を徹底的に使いこなす」と言う。日本の化学大手が世界シェアの大半を握る炭素繊維でさえ日本車への採用はわずか。鉄鋼大手の壁は厚く化学やアルミ大手は欧米に目を向けた。
1台あたり1トン程度が使われてきた自動車素材の王者、鉄。これまでは日本車大手と鉄鋼大手が協力し、世界の自動車軽量化を主導してきたと言っても過言ではない。だが素材技術は日々進歩している。日本車がいつまでも鉄の檻にとらわれていたら、世界の素材を巡る攻防のなかでガラパゴス化に陥る恐れもある。
(佐藤浩実、湯沢維久)
[日経新聞6月17日朝刊P.11]
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