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EU離脱なら超円高は本当か(英国日立工場でEU残留をアピールするオズボーン財務相(左)/ロイター/アフロ)
英国EU離脱で「リーマン並み超円高」は本当か 23日の国民投票が徐々に近づいてきた
http://toyokeizai.net/articles/-/123320
2016年06月18日 田代 昌之 :マーケットアナリスト 東洋経済
やはり、というべきか、金融市場の動揺はまだ収まってはいない。6月17日の日経平均株価は前日比165円高の1万5599円で取引を終えた。だが英国のEU(欧州連合)離脱問題(Brexit、Britain(英国)とExit(出口)が組み合わされた造語)への懸念が意識され、午後はむしろ下落した。
16日に「EU残留」を支持する英国の野党議員が襲撃を受けて亡くなったことから、23日の国民投票に対するセンチメントが変化したとの見方はあるが、引き続き予断を許さない状況だ。
■もし英国が本当にEUを離脱したら?
英国の「EU離脱」の是非を問う国民投票は、5月あたりまで市場ではほとんど意識されていなかった。「EU残留(世界経済にポジティブ)」が市場コンセンサス(予想)となっており、ほとんど誰も「EU離脱(世界経済にネガティブ)」を想定していなかったわけだ。
だが楽観ムードが漂っていたなか、突如英世論調査で「EU離脱」が優勢と伝わったことから、市場は強烈な冷や水を浴びる格好となった。人間同様、市場も想定外の出来事には弱い。
「世論調査はあまり当てにならない」との指摘もなお少なくない。また、英国のブックメーカーでは「EU離脱」のオッズが低下(可能性が高まっているから)していたが、ユーロ2016(欧州で1カ月間開催されるサッカーの一大イベント)開催を受けて、ブックメーカーはEU離脱問題にあまり力を入れていないとの声も聞かれる。
筆者は、はやくも7月辺りになると「あの警戒ムードはなんだったの?」といった状況になるのではと、密かに考えている。だが、英国が実際に「EU離脱」となればどうなるのか、いろいろと想定してみた。
英国が「EU離脱」となれば、どうなるだろうか。為替市場ではまず、ポンドとユーロが対円で下落するだろう。そして、世界的なリスク回避の流れが強まり、安全資産として見られている円は、対ドルで大幅に上昇すると見られる。つまり円高が加速するということだ。
■100円まで円高が進めば、トヨタの利益は2000億円減
日本企業の多くは、為替が円高に振れると業績のマイナス要因となる。内需企業は円高推移で恩恵を受ける可能性はあるが、リスク回避の流れは株売りが含まれるので、そういった内需企業も根こそぎ売られる可能性がある。
日本を代表する企業であるトヨタ自動車は、2017年3月期業績見通しの想定為替レートを「1ドル105円」と設定している。同社は1円円高に進むと、年間で営業利益が400億円減少すると見られている。
仮に、ドル円が100円まで円高が加速すると、1ドル105円の時から比べれば、同社の営業利益は2000億円もはく落する。つまり、金融市場の混乱がトヨタのような輸出企業の業績を下押しする可能性が発生するわけだ。
もちろん、すでに日本のメーカーの生産基地は多様化しており、従来よりは円高の影響を受けにくくなっている。また、例えばトヨタなどの場合も、円高進行が一時的に留まり、年度末にかけて105円の水準まで戻れば問題は少なくて済む。
だが、果たして、英国という大国がEUという巨大な経済圏を離脱する影響が、瞬間的な影響にとどまるのだろうか?もし「EU離脱」となれば、移民政策が大きく転換される可能性があるほか、「官僚的なEU間の貿易は弊害も大きいので、離脱で今よりも自由な貿易が可能になる」との見方もある。だが、各国との交渉がスムーズにいくかどうかはわからず、正直なところ具体的な絵は見えてこない。
英国のオズボーン財務相(残留派)は、「EU離脱」が実現した際、英国の貿易・投資が減少し、300億ポンド(約4兆5000億の歳入の欠損が生じるため、増税などで埋める必要があると指摘している。また、1年間の景気後退に加え、ポンドは12-15%下落するともコメントしている。
つまり、現在のポンド・円の水準は1ポンド150円前後なので、今よりも20円ほど円高に進むとの見通しだ。
■リーマンショック並みの為替水準になる?
2008年のリーマンショックや、2012年の欧州債務危機(ギリシャの債務返済問題)でのポンドの水準は120-130円くらいだった。要は、それ以来の水準までポンドが下落する可能性があると、英国当局は警告しているわけだ。英国が1年間の景気後退となれば、輸出入で密接な関係がある欧州はともかく、日本にとってもかなりのマイナスになると言えよう。
「英国の主な日本企業」ということになると、日立製作所が鉄道車両を製造しているほか、富士通はIT事業の中核拠点を置いている。また、欧州市場での売り上げが高いマツダ、キヤノン、ニコン、ダイキン工業といった企業は、欧州景気鈍化の影響をダイレクトに受ける可能性がある。
また、英国が世界に誇る金融街シティが景気鈍化に伴い力を失うことにでもなれば、バークレイズ、HSBCといった英系銀行だけではなく、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、三菱UFJ銀行、野村證券など日米金融機関もマイナスの影響を受けるはずだ。
為替の円高推移で企業業績が減益基調となるほか、実体経済の低迷の影響を受けるとなると、株式市場にもかなりきつい状況となろう。ただこうした「恐怖のシナリオ」が本当に実現するかどうかは、不確定だ。市場がもっとも嫌うのは、不確定な状態が続くことだ。
23日の英国の国民投票の出口調査は実施されないとのことだ。国民投票は日本時間の24日(金)の午前6時に締め切られ、順次開票作業がスタートする。ロンドンなど大都市の発表は遅くなる見込みで、まずは地方都市から結果が伝わる。今のところ日本時間24日の12時頃には大勢が判明する見通しだ。
さまざまな思惑が先行することで、24日は朝からてんやわんやの大騒ぎとなるかもしれない。売買が細っている東京市場だが、さすがに24日は大商いとなりそうだ。
原稿執筆時点での筆者の個人的見解だが、英国の「EU残留」決定に伴い、買い戻しが加速し、日本株は大幅上昇となる展開を想定する。
外国人投資家がアベノミクスへの関心を失っているなか、仮に「EU離脱」となれば、安倍政権がどれだけ目を見張る経済対策を打ち出しても、焼け石に水となってしまう可能性もある。それは避けたいところだが、どうなるだろうか。
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