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「なぜ働かない?」怒りで割ったヘルメット 減速中国で勝つ! 「極楽湯」中国攻略の極意(その2)  
http://www.asyura2.com/16/hasan109/msg/869.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 6 月 17 日 13:57:15: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「なぜ働かない?」怒りで割ったヘルメット

減速中国で勝つ!

「極楽湯」中国攻略の極意(その2)
2016年6月17日(金)
岩村 宏水

中国・上海の極楽湯1号店
(前回から読む)

 上海女性に大人気の日本式スーパー銭湯「極楽湯」。その1号店を立ち上げるため現地に乗り込んだ日本人スタッフのなかには、中国語を話せる者も中国ビジネスの経験者もいなかった。そのうえ、本社からは「コンサルタントに頼らず、何事も自分たちで解決しろ」と命じられ…。

 言葉も文化も異なる中国で次々に降りかかる難題に、彼らはどう立ち向かったのか。極楽湯インタビューの「現場編」では3人のキーパーソンのお話をうかがった。今回は店舗建設および営業の責任者を務めた、極楽湯執行役員海外事業部長(開発担当)の椎名晴信さんです。

(※ 本連載のインタビューは昨年12月〜今年2月に行いました。筆者の事情により掲載が遅れたことをお詫びします。肩書きは当時のものです)

*  *  *

極楽湯の上海進出にあたり、椎名さんは店舗建設の施工管理と営業体制づくりを任されたそうですね。現地に赴任する前は、日本でも店舗開発の仕事をしていたんですか。


極楽湯執行役員海外事業部長(開発担当)の椎名晴信さん
椎名:いや、実を言うと日本では新店舗の立ち上げに携わったことがないんです。当社には2005年に転職で中途入社し、複数のお店で店長を経験した後、地域の店舗を統括するスーパーバイザーになりました。

 僕が上海に赴任したのは2011年6月ですが、その直前は8つの直営店を統括していました。店長時代もスーパーバイザーの時もすべて既存店だったので、特に建設関係については知識も経験もない。いわばずぶの素人ですから、着任当初は「こういう店を作りたい」という理想よりも、「とにかく最後までやり切るしかない」という使命感の方が強かったです。

不安や抵抗感はありませんでしたか。

椎名:それはなかったですね。と言うのも、僕はもともと海外事業の立ち上げを経験してみたいと思っていたからです。国内事業は安定している半面、どうしてもルーチン的な仕事が多くなります。それは悪いことではありませんが、僕の性格は同じ仕事が3年続くと飽きてしまう(笑)。もっと「血湧き肉躍る」経験がしたくて、もしかしたら海外にあるんじゃないかと。

 実際に中国に赴任したら、もちろん最初は右も左もわからず、日本ではまず経験しないであろう嫌な思いや歯がゆい思いをたくさんしました。でも、いま振り返ってもそれは自分にとってマイナスではなかった。むしろ、中国に来られてよかったと思っています。

進まない工事に、ヘルメットを2個割った

とはいえ、事業をゼロから立ち上げるプレッシャーは相当だったでしょう。どんな経験をされたか、苦労したかを聞かせていただけませんか。

椎名:上海に赴任した時、すでに1号店の場所は決まっていました。もともと工場として使われて建物を借りて、店舗に改築する計画です。実際に工事をするのは中国の建設会社ですが、僕の任務はその進捗を監督し、予定通りにお店をオープンさせることでした。

 ところが、もう最初からトラブルの連続です。始めのうち一番困ったのは、とにかく工事が前に進まないこと。

 というと。

椎名:僕が現場に行くと、まず作業員の人数がそろっていない。毎朝のようにそうです。それでも作業に取りかかりますが、どんなに遅れていても昼時になればみんな手を止めて食事をするし、夕方は定時で帰ってしまう。「工期を守る」ことについて、誰ひとり責任感がなかったんです。

施工主が急かしても聞く耳を持たない?

椎名:全然です(苦笑)。工程表を作って「この通りにやってくれ」と頼んでも、現場監督だって定時に帰りますからね。僕はずっとイライラし通しで、工事が終わるまでの間に怒りのあまりヘルメットを床に叩きつけて2個割りました。机も2回はひっくり返しましたよ。

 だいたい朝礼もしないから、今日はどこでどんな作業をするのか、情報がまったく共有されていません。だから、例えば浴場の床にコンクリートを流し、その上にタイルを貼ろうとしていると、まだ固まっていないコンクリートの上をずかずか歩いていく作業員がいる。で、僕がそいつを怒っている横を、別のやつがまたずかずかと歩いていく。

なぜそんなことになるんでしょうか。

椎名:要するに、作業員たちは各自の持ち場で勝手に工事しているだけなんです。どの作業をどういう手順でやれば全体として効率的かという「段取り」の発想がないから、工事の進捗が遅れるのは当然でした。

でも放置はできませんよね。どうやって乗り切ったんですか。

椎名:それはもう、言うことを聞いてくれるまで繰り返し言い続けるしかありません。ただ、中国語のできない僕がいちいち現場の作業員を注意して回っても伝わらないし、きりがない。だから現場監督をつかまえて、机を叩いて説得し、彼から作業員に「こういうふうにやれ」と言わせる以外に方法はありませんでした。

 そこで、僕は自分の机を現場監督の目の前に移動させて、一日中張り付くことにしました。毎朝、彼よりも早く現場事務所に行き、「今日は何をどこまでやるの」と聞く。彼が現場を回る時は、僕も一緒についていく。終業時には「今日はどこまでできたの」と確認して、彼よりも後に帰る。向こうもムキになって言うことを聞かないから、僕も同じことをやってやろうと。

「違う人間だ」と思い込むと壁は破れない

根比べですね。

椎名:もちろん意地悪でやったわけじゃありません。現場監督だって、段取りがまずいのは悪気ではない。

 中国人は何か問題が起きたり失敗した時、自分の責任を絶対に認めたがらないと言われますが。

椎名:そう言われますね。しかし、心の中では反省している人も多いんです。そこは同じ人間ですから、「この人たちには良心がないんだ」と、相手を完全に否定したら一緒にやっていけません。

 だから、僕はいつも文句ばかり言っているけれど、同時に「心の中では君を信頼しているよ」、「ちゃんとやってくれれば怒らないんだよ」という気持ちを伝えるよう心がけました。そのために彼を食事に誘ったり、差し入れをしたり。何も特別なことではありませんが、これを毎日どれだけしつこく続けられるか。並みの駐在員なら途中で諦めたかもしれないですね。

椎名さんはなぜ続けられたんですか。

椎名:それは日本で店長をしていた経験が大きいと思います。店長は文字通り店舗の長として日々の運営に全権を持つとともに、全責任を背負っています。本社からいつも見張られているわけではなく、ある程度の裁量権を与えられている半面、不意のトラブルにも即断で対応する必要があるんです。

椎名:スーパー銭湯には年間延べ数十万人のお客様が来ますから、やはりトラブルやクレームは避けられません。浴場で転んで怪我したとか、ロッカーに財布を忘れたとか。飲食部門もあるので、注文を間違えたとか料理の提供が遅いとか。感情的になっているお客様にも冷静に向き合い、その場その場で解決しなければならない。毎日やっていたら、やっぱり強くなりますよ。

苦労したぶん、ノウハウも得られましたか。

椎名:そうですね。1号店の工事には1年半かかりましたが、2号店ではそれまでの経験を活かして9カ月で終えることができました。建設会社の専門家に聞いたところ、これは中国では特別早いペースだそうです。

 1号店の時は自分が焦っていたこともあって、最初のうちは「何も理解しなくていいから、こちらの言う通りにやってくれ」という考えでした。でも試行錯誤を重ねるうちに気付いたんです。相手に聞く耳を持ってもらう秘訣は、彼らに納得してもらうことだと。そこで、2号店の工事では「こういうことをしたいんだ」「こうすれば早くできるはずでしょう」と、現場監督に事前に説明して理解してもらうようにしました。

例えばどんなことですか。

椎名:中国の内装工事は、いわゆる「現場合わせ」がとても多いんです。例えば店の受付のカウンターなんかは、現場に材料を運び入れて「こっちがちょっと長いぞ」、「そっちは短いな」などと調整しながら作っている。これでは時間がかかって仕方ありません。

 そこで、2号店では現場合わせを極力やめました。カウンターなどは最初からきっちり寸法を測って他の場所で組み立て、現場では据え付けるだけにする。「こうした方が早い」と理解すれば、彼らも素直に従ってくれます。

 また、中国の施工業者のレベルが感覚的にわかるようになったので、その実力に合わせた段取りを組むようにしました。

3年後の予想を1年で達成

どういうことですか?

椎名:彼らは悪気でなく、実力を超えた工程表を持ってきたりするんですよ。そんな時は、「この人数で、これだけの時間でやるのは無理でしょ」と率直に指摘します。実際にできることとできないことをはっきりさせ、そのうえで、できないことは別途協議して対策を考える。そういった割り切りも大切なんです。

もうひとつのミッションである営業体制作りはどうでしたか。やはり苦労が絶えなかった?

椎名:営業面の使命は、上海で極楽湯の知名度を高め、ターゲットの顧客層にいかにご来店いただくかでした。もちろん様々な試行錯誤をしましたが、結果として見ると“追い風”に恵まれたと思います。

 本社の松本(俊二専務、第一回はこちら)も話したと思いますが、我々が進出する前から中国にも温浴施設はありました。そんななかで極楽湯が成功したのは、最初から女性をターゲットにした店づくりをしたことが大きいんです。要するに狙った顧客層がどんぴしゃだった。

 とはいえ、知名度を高めてお客様がたくさん来てくれるようになるまで、僕は3年はかかるだろうと予想していた。でも、実際に開業したら1年目からいっぱいになりました。

どうしてですか。

椎名:1号店のコンセプトは「ビューティー・アンド・ヘルス」。つまり女性の美と健康の追究です。我々は競合の温浴施設にはない、女性にとって魅力のある店作りをしたことで、高い評価をいただきました。

 加えて幸運だったのが、開業時期が「ウィーチャット」(微信=中国版LINE)などのSNSの大流行に火がつくタイミングに重なったことです。上海の若い女性たちは美容や健康への関心だけでなく、情報への感度も非常に高い。気に入った商品やサービスを見つけると、SNSで情報発信する人がとても多いんです。お客様が短期間にわっと増えたのは、それが理由だと思います。

SNSを通じたクチコミ効果が大きかったと。

椎名:はい。訪日中国人観光客による粉ミルクや化粧品の“爆買い”が典型例ですが、中国の女性たちの間には、「日本のものは安全で、美容や健康に良い」というイメージが強くあります。そして、実際に日本の商品やサービスの良さを知った人は、もっといろいろ試したいと思っている。そんな彼女たちが、SNSを通じて絶えず情報を発信しているわけです。

 ただし、日本のものなら何でもいいわけではありません。爆買いにしても、SNSで話題になった特定の商品に人気が集中する傾向があり、類似品は期待したほど売れないそうです。逆に言うと、彼女たちの指名買いに選ばれればものすごい追い風が吹く。「極楽湯に行ってみたよ」、「また来たいな」などと発信されるたびに、新しいお客さんがどんどんやってきます。

お湯の違いは、設備とメンテナンスの違い

上海の女性たちには、極楽湯のどこが一番の魅力なんでしょう。

椎名:突き詰めて言えば、安心してゆったり過ごせる快適さと清潔さに尽きます。そもそも中国の温浴施設とはお湯がまったく違いますからね。上海の水道水の硬度は180くらいですが、極楽湯では専用の装置を使って日本の温浴施設と同水準の30〜60まで落としています。ここまで硬度を下げると、シャンプーの泡立ちの違いがはっきりわかる。また、お湯に少しぬめりがあって、肌に潤いを感じるんです。

(注:水の硬度は1リットル中に溶けているカルシウム・マグネシウムの量で表わされる。単位はmg/l。一般的には硬度100未満を軟水と呼ぶことが多い)


冬になると1号店には、受付から店の外まで続く大行列ができる。
 我々はさらに、このお湯を30分以内に1回の速度で循環させています。つまり湯船のなかが、30分毎に濾過されたきれいなお湯に全部入れ替わっているわけです。一方、中国の温浴施設の循環速度は設計上で2時間に1回くらいが普通です。実際にはお湯があふれて減った分だけ足す、というレベルの施設も少なくない。

 お湯を軟水化したうえ、衛生管理をここまで徹底している温浴施設は極楽湯のほかにありません。そこは我々も売り物としてアピールしています。おかげで設備のメンテナンスは大変ですけどね(苦笑)。

メンテナンスに関して、中国独特の苦労やノウハウはありますか。

椎名:日本のお店と同じ基準でメンテナンスしているので、その意味では特別なことはしていません。でも、日本と違うのは設備のトラブルの頻度です。中国製の設備は、ボイラーもポンプも本当によく壊れます。

 例えば、1号店のお湯を循環させるポンプは最初は中国製を採用したんですが、オープンから1週間で1台目が故障しました。1カ月後には全部ダメになり、結局、すべて日本メーカーのポンプに入れ替えました。

 お店では、お湯の温度や残留塩素濃度などの水質を1時間に1回必ずチェックしています。これは衛生管理であると同時に、実は故障対策でもあるんです。もし2時間に1回だったら、その間にトラブルが起きてお湯の温度が下がってしまうリスクがあるので…。

全部日本製にしてはどうでしょう。

椎名:コストや修理のしやすさを考えると、それは現実的ではないんです。電気の制御盤や配管の電磁バルブなど、壊れた時のダメージが大きいものに関しては、日本製や日本メーカーの現地生産品を入れています。でも、それでも壊れたことがあります。電力会社が供給する電気が不安定なことが原因でした。

 設備が全部中国製だったら、もっともっと大変なはずです。そのせいか中国の温浴施設では、複数ある浴槽のなかにお湯が抜かれたまま放置されているものをよく見かけます。故障は当たり前だし、修理にはコストがかかる。だからお客様が使えなくても仕方ないという発想なのでしょう。

 しかし、我々はお客様から同じ入館料をいただいている以上、いつでも同じサービスを提供することにこだわっています。浴槽にお湯がないなんてあり得ません。一時的にでも不具合があれば、正直にお客様に知らせています。

有事即応に、現場の裁量権は必須です

こだわりは中国のお客さんに伝わっていますか。

椎名:絶対に伝わっていると思います。例えとしてはちょっと不謹慎かもしれませんが、極楽湯では長湯しすぎでフラフラになってしまうお客様がけっこういて、それも女性が多いんです。中国人は湯船に慣れていない人が少なくないので、加減がわからずにのぼせてしまう。逆に言えばそのくらい快適で、ついつい長湯してしまうのだと思います。

苦労しただけの成果はあったと。

椎名:ゼロから立ち上げた中国事業がお客様に評価され、1店舗目から黒字化できたのは、やはり自らの手でたくさんの失敗と修正を積み重ねてきたことが大きいと思います。中国はトラブルも多い半面、失敗を糧にできるというか、失敗してもすぐ方向を修正できる雰囲気がある。そこが中国の良いところです。

 その意味では、本社が最初から現地スタッフにある程度の裁量を持たせてくれたのがよかったと思います。何でもかんでも本社にお伺いを立てていたら時間がかかるうえ、物事がなかなか前に進みませんからね。

(次回に続く)


このコラムについて

減速中国で勝つ!
 機会があれば、北京、上海、深センなどの中国の大都市を訪れてみてほしい。週末のレストランやショッピングモールは、一部の高級店を除けばお客さんでいっぱい。朝夕の幹線道路は大渋滞だし、都市間を結ぶ高速鉄道や飛行機もほぼ満席だ。道ゆく人々の表情もおしなべて明るい。経済指標とは裏腹に、景気が悪そうには見えない。
 ギャップの背景には、中国経済の減速と同時進行で起きている大きな構造変化がある、というのが筆者の見立て。製造業からサービス業への、成長エンジンの主役交代が加速しているのだ。所有欲を満たす「モノ」だけでなく、価値ある体験を重視する「コト」へ。こうした変化をつかみ、魅力のあるサービスや商品を提供できる企業にとっては、GDP成長率が高かった数年前よりも、むしろ今の方がチャンスが大きい、と言っても過言ではないのだ。
 経済減速下の中国で業績を伸ばしている日本企業に注目し、現地事情に詳しいキーパーソンへのインタビューをお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/061300009/061500002  

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