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米連邦準備制度理事会(FRB)は、15日開催の会合で政策金利の据え置きを決定した(AP/アフロ)
速報!米国は景気・金利見通しを下方修正 今は英国国民投票の結果を待つしかない
http://toyokeizai.net/articles/-/122969
2016年06月16日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
15日の米国株は続落した。注目された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り、追加利上げは見送られた。しかし、声明の内容や連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の会見で利上げに慎重な姿勢が示されたことが、市場に不安感を与えている。
FOMCでは、政策金利(現行0.25〜0.5%)の据え置きが決定された。利上げ見送りは4会合連続。また年内利上げの想定は前回同様2回とした。ただし、FRB委員の中では、年内の利上げは1回との想定も増えており、雇用回復の急減速を受けて慎重な見方が強まっていることが示された。
決定には投票権のある10人全員が賛成し、声明では「米国経済は加速した」とし、「減速した」とした4月の前回声明から判断を上方修正。一方で雇用は「回復が鈍化した」と指摘。失業率は低下したものの「伸びが縮小した」とし、前回の「一段と改善した」から下方修正している。
■大きな誤算だった雇用情勢の悪化
一方、物価については「市場ベースの指標が低下したが、中期的には2%目標に達する」との予想を堅持。さらに「国際・金融情勢と併せて動向を緊密に監視する」とし、23日の英国のEU残留・離脱に関する国民投票の動向を考慮したことを認めている。イエレン議長の会見では、今後も緩やかに利上げを進める方針が改めて示されたものの、時期に関する具体的な手掛かりは示さなかった。同議長は「単月の雇用情勢に一喜一憂しない」としているが、雇用情勢の悪化は早期利上げをもくろんでいたFRBにとっては大きな誤算だったに違いない。
市場が驚いたのは、FRB関係者の景気・金利見通しである。16年末の政策金利見通しの中央値は0.875%で、3月時点と同様に年内2回の利上げが想定されたが、1回の予想が増えており、慎重な見方が強まっていることが明確になった。予想は2回の利上げが最多の9人(前回は9人)だったが、1回が6人(同1人)に増加し、4回は1人(同4人)、3回も1人(同3人)にそれぞれ減少している。
さらに17年末の金利見通し(中央値)も1.625%(前回1.875%)、17年中は3回(同4回)の利上げと下方修正されている。また18年末は2.375%(同3.0%)となった。また16年10〜12月期の実質GDP伸び率予想(中央値)は、前年同期比2.0%(前回2.2%)、17年は2.0%(同2.1%)に下方修正された。
景気・金利見通しの下方修正により、利上げが先送りされるとの観測が強まり、これがドル安につながる可能性がある。英国のEU離脱に関する国民投票の結果次第ではあるが、利上げが遠のけば、円高が強まり、円安を背景とした株価反発を期待する日本勢にとっては大きな痛手だ。
一方、日銀金融政策決定会合では、23日の英国のEU離脱に関する国民投票を控えていることもあり、FRB同様に追加的な政策は導入されない見通し。今回の結果を受けて、ドル円は一時、5月3日につけた安値を下回るなど、再び円高圧力がかかり始めている。今年のドル円の高値と安値の値幅はすでに16円であり、過去15年の平均をすでに達成している。そのため、現行水準から大幅な円高は、年内は考えにくいともいえるが、とにかく英国のEU離脱に関する国民投票の結果を待つしかないのが実情であろう。
■オプションプレミアムの急落には要注意
市場では、リスクを考慮した動きがみられる。国債への資金シフトもその一例だ。ドルやユーロの上値が重くなっている背景には、国債利回りの低下も大きく影響している。投資家のリスク回避姿勢や、世界的な金利低下による運用難もあり、少しでも高い利回りを求めて、投資家は安全資産である国債に資金を投じようとしている。もはや利回りがマイナスになっている国債のほうが多くなっているのだが、この結果、投資マネーの国債への流入がさらなる金利低下を促し、結果的にユーロやドルの下落につながっている。
日本については、マイナス金利の深掘りが難しいとの見方もあり、日本国債の大半がもはやマイナス金利にもかかわらず、円が買われやすくなる事態に陥っている。専門家の中には、「日本の金利が低いので円安になるべき」との見方もあるようだが、市場が見ているのは金利の絶対水準ではなく、方向性である。「デフレ通貨は買われる」という基本に立ち返れば、円高基調の継続は不可避と考えておくべきであろう。
23日の英国のEU離脱に関する国民投票まであと1週間。その結果を想定して、あらかじめポジションを取ることはできない。株式取引や為替取引についても、相場勘に基づいたトレードは、よほどの上級者か資金的に余裕がある投資家以外はできる限り抑制すべきであろう。または、十分なヘッジ策を講じてから行うようにしたい。
市場では、オプション取引が活発になり始めているという。上昇・下落の両方に備える動きもみられているもようだが、賢明な判断であろう。ただし、その場合には、23日を通過したあとのボラティリティの急低下に伴う、オプションプレミアムの急落に注意したい。
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