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うつと貧困──。この二つには、密接な関係がある…(※イメージ)
年収100万円未満は15%以上がうつ。体を売ることを考えた30代シングルマザーの不安〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160614-00000155-sasahi-soci
AERA 2016年6月20日号
うつと貧困──。この二つには、密接な関係がある。所得が低いほど、うつになりやすいのはなぜか。
体を売ろう。関東地方に住むシングルマザーのAさん(37)は、専業主婦だったため貯金もなく、離婚直後、そんなことが頭をよぎった。
「このような余裕のない考えも病気のせいだと思います。でもその時はずっと、体を売るしかないと思っていました」
Aさんは、苦しい胸の内を明かす。
夫の浮気が原因で5年ほど前に離婚。その前後からうつを発症した。虚脱感に襲われ、何も考えられない時間が多くなった。現在小学1年生の息子は、アトピーや発達障害を抱えている。そうした状況で自分にできるお金を稼ぐ手段は、体を売ることくらいしかないと考えるようになったという。
実際、Aさんは風俗店に面接に行った。しかし軒並み断られた。採用となった店もあったが、給料が低かったので諦めた。
何よりもつらかったのは、子どものアトピーの薬も買えなかったことだ。かゆみ止めの薬は2800円。高くて手が出なかった。家で子どもと2人で抱き合って泣いて過ごし、「かゆいかゆい」と泣き叫ぶ子どもに、「ごめんねごめんね」と謝り続けた。
Aさんは、今も病気のため仕事に就けていない。親の死後にできたお金で何とか暮らしているが、将来の不安は尽きない。子どもの進学、病気……。自身は外にも出かけられずに孤独な状態。いつ、お金が底を突くのか。考えるだけで怖くなる。
●男性で6.9倍の格差
うつと貧困。この二つに密接な関係があることを調査したのは、千葉大学の近藤克則教授(予防医学)だ。
2003年、近藤教授は介護保険の計画を立てる市町村との共同研究プロジェクトとして、当時勤務していた日本福祉大学がある愛知県を中心に3県15自治体、65歳以上の約6万人を対象に、郵送で「高齢者の日常生活に関するアンケート」を実施。3万2891人から回答があり、必要な項目に回答していた2万3612人を分析した。
うつの程度を調べる15項目の質問中、10項目以上でうつ傾向を示した人を抑うつ状態とみなした。その結果、1人あたりの所得が400万円以上の人の抑うつ率は男性2.3%、女性3.7%だったのに対し、100万円未満では男性15.8%、女性15%。男性で6.9倍、女性でも4.1倍の格差があった。
近藤教授はこう話す。
「所得による格差はある程度予想していましたが、これほど大きな格差を示す数字が出てきたのは驚きでした」
データ入手の容易性から、調査は65歳以上が対象となったが、海外での調査などと併せて考えると、この傾向は、すべての年齢層に見ることができると考えているという。
所得の低さがうつに影響するのは一体なぜか。近藤教授は言う。
「低所得の人ほど、趣味がなく家に閉じこもりやすい。歩行時間が少なく、“ストレス対処能力”が低いことなどもわかっている。これらはいずれも、うつの危険因子です」
シングルマザーを支援するNPO法人「リトルワンズ」(東京都杉並区)の代表、小山訓久さん(39)によると、相談に来るシングルマザーで精神的不安を訴える人は7割近くいるという。
「収入、子育て、住居、将来のことなど、どうしていいかわからない漠然とした不安です」
●急に死にたいと思う
厚生労働省の全国母子世帯等調査(11年)によれば、母子家庭の母の平均年収は223万円(10年)で、父子家庭の父の380万円(同)を大きく下回る。この収入の低さが、母親を精神的に追い詰めていく。
「急に死にたいと思うことがあります」
5歳の息子と7歳の娘、2人の幼い子どもを抱え、うつに苦しむシングルマザーのBさん(38)は心情を吐露する。
夫のDV(家庭内暴力)が原因で5年ほど前に離婚。睡眠障害、強迫神経症、心的外傷後ストレス障害などと診断され服薬を続けてきたが、最近になってうつと診断された。
実家の家業を手伝っているが、年収は200万円程度。食事は実家住まいなので困ることはないが、生活は苦しい。
子どもたちを外食に連れて行けず、玩具や洋服、勉強道具すら満足に買ってやれない。子どもが色鉛筆を持っていなくて、鉛筆で母親の似顔絵を描いてきたこともあった。
●自分の娘がわからない
死ぬことや現実から逃げることを考えていると、子どもたちに伝わるのか、娘が食事を作ってくれたり、息子がマッサージをしてきたりとBさんを案じてくれる。我に返って死を考えたことを恥じるが、死にたいと思う気持ちがまた突然襲ってくるという。
「もっと働けば暮らしが楽になると思うのですが、その方法がわかりません。治療が先と言われても、治ったところで自分に何ができて、稼げるのかもわからないです」(Bさん)
先の小山さんは、所得が低いと生きるための選択肢が限られるのが問題と指摘する。
「例えば、30万円持っている人の1万円と、17万円持っている人の1万円は、同じ1万円でも価値が違います。収入が増えれば、学校や住まいなどの選択肢は増え、気持ちにゆとりが生まれる傾向があります。一方、収入が低いと、限られた選択肢しかありません」
都内で娘(5)と暮らすシングルマザーのCさん(30)は、その日暮らしの不安を漏らす。
「子どもの教育や将来に、何の準備もできないのがつらいです」
4年前に夫のDVや浮気などが原因で離婚し、うつを発症。
症状がひどい時にゾッとしたのは、娘がわからなかったことだ。どうして自分に娘がいるのか、どうして一緒に住んでいるのか曖昧になったことがあった。
今も薬を飲みながら治療し、障がい者施設で配膳と食事作りの仕事をしている。だが、パートなので年収は180万円程度。生活をギリギリまで切りつめているが余裕はない。
●国は社会保障の強化を
お金がない時は、食事は値段が安いパスタばかり。病気のため季節が変わったことに気づかなかったこともあり、娘の服を買えなかったこともあった。娘は特に何も言わなかったが、それがかえってつらかった。
「親の病気のせいで子どもに迷惑をかけ、情けない気持ちでいっぱいになります」(Cさん)
小山さんは、限られた中で選択肢を増やすには、まず行政など相談窓口に行き、次にアクションを起こすため支援先を知ることが重要と説く。リトルワンズは、シングルマザーたちにとって、頼れる選択の一つとなっている。スタッフが相談に乗り、生活のサポートを行いながら、場合によっては、心理カウンセラーや弁護士など専門家につないでいく。
「日本では、うつ病をはじめとした精神的問題は自己責任とされることが多い。その結果、孤立し、さらに自分を追い詰めることになります」(小山さん)
前出の近藤教授は、うつを減らすには、話を聞いたり支えたりする周りの人々によるサポートが大切だと話す。
「国にしかできないのは、社会保障を強化し、所得の再分配を強め格差を小さくすることです。北欧など所得格差の小さい国ほど国際競争力や経済成長率も高い。経済成長のためにも、貧困と格差の問題を改善していくべきです」(近藤教授)
病気、リストラ、離婚、介護。低所得の背景にある非正規労働も拡大している。リスクはどこにでも潜む。所得が減ると、今はそうでない人も、うつになりうる。さらなる対策を講じる時期にある。(編集部・野村昌二)
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