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スズキ・鈴木修会長(つのだよしお/アフロ)
車の燃費、とんでもなく良くor悪くする運転方法…「本当の燃費」など存在しない
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15468.html
2016.06.14 文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表 Business Journal
■加速すると燃費はリッター3キロ
自動車の加速性能の指標として、スタートから時速100キロメートルに達するまでに要する時間を使うことがある。高速道路への流入のしやすさの目安にならないこともないが、性能の高さを自慢するアイテムだ。
4月以降、三菱自動車工業やスズキの燃費データ不正問題が世間を揺るがしているが、これほど燃費に関心が集まる時代に、加速した時の燃費となるとあまり話題にならないのは、なぜだろうか。もっとも燃費が悪化するのは加速の時だというのに。
排気量が3リッターでターボチャージャーが付いたGTで車重が1.6トンほどとなると、スタートから時速100キロメートル(ゼロ100加速)まで加速するのに必要な時間は、5秒ほどである。70メートルほど走ると、時速100キロメートルに達していることになる。ものすごく速い。
では、こうしたものすごい加速をした時の燃費はというと、およそリッター3キロメートルほどだ。あるいはクルマによってはもっと悪いかもしれない。加速を楽しむには、ガソリン代もかかるし、排出する二酸化炭素(CO2)も多く、地球温暖化も促進してしまうことを知ろう。
一方、時速50キロメートルで一定して走るときの燃費は、リッター130キロメートルほどだ。信じられないかもしれないが、一定のスピードでしかも市街地の法定速度で走ると、とんでもなく燃費は良いものである(いずれも簡単な計算で求めた数値なので、およその値)。
■高速道路では空気抵抗が燃費を左右する
このように自動車の燃費は加速の時と一定速で走る時で大きく変わるのだが、考えてみれば、車庫から目的地へ行き、帰るまで、自動車は発進、加速、一定速度で走行、減速、停止、発進、加速を何度も繰り返す。加速の頻度が高くなるほどに燃費は悪化する。つまり、幹線道路よりも信号の多い市街地のほうが、圧倒的に燃費は悪くなる。
では、信号のない高速道路での燃費は良いかというと、ボディの形が燃費を大きく左右する。空気抵抗という走行を妨げる抵抗力が速度の2乗で大きくなるからだ。たとえば時速100キロメートル時の空気抵抗は、時速50キロメートル時の2倍ではなく4倍になる。
一定の速度で走行する自動車には、それを押しとどめようと抵抗する力が働く。空気抵抗ところがり抵抗の2つである。ころがり抵抗は主にタイヤで発生する。ころがり抵抗が小さい省エネタイヤ、エコタイヤを履けば燃費を向上させられる。
ころがり抵抗は走行速度であまり変わらない。時速50キロメートルまでは、空気抵抗とほぼ同じで、空気抵抗は時速100キロメートルのときの4分の1 だ。したがって、市街地での燃費向上には省エネタイヤが効く。
一方、高速道路では空気抵抗が効く。といっても空気抵抗を少なくする省エネボディが売られているわけではない。空気抵抗はボディのデザインと車速の2乗で決まる。つまり、ユーザーには手の施しようがない。
ただひとつ空気抵抗をユーザーが下げられる方法は、交通の妨げにならない範囲でゆっくり走ることだ。たとえば時速100キロメートル時の空気抵抗は、時速80キロメートル時のそれの1.6倍、つまり60%増しとなる。この2つの速度で高速道路を走る際の感覚はそれほど違わないが、空気抵抗は大きく変わり、燃費もぐっと違ってくる。
■加速は大飯食い、アクセルはゆっくり踏もう
加速しているときには、抵抗としてさらに慣性力が加わる。これは自動車が加速したときに背中をシートに押し付ける力と、タイヤや変速機の歯車などの回転を高めるときに必要な力だ。体重が重く、急加速なほど、押し付ける力は大きくなる。
重いSUVを急加速すると、慣性力も大きい。上記のゼロ100加速が5秒というと、加速Gは0.56ほどだから、車重が1900キログラムもの大きなSUVでは、1トン近い力で後ろに引っ張られることになる。車重が3トンのクルマを引っ張って走るようなものだから、当然、燃費はひどく悪化する。
このように燃費を大きく左右するのは加速の仕方だ。ゼロ100加速を5秒で走るような急加速を繰り返していては燃費は最悪で、地球温暖化の原因となるCO2を大量に排出してしまう。加速の強さはアクセルの踏み加減で決まる。ゆっくり踏めば加速力も弱く、燃費の悪化も少ない。しかも、交通事故も減る。
■カタログ燃費は創造物である?
では、カタログの燃費はどのようにして測定しているのだろうか。
上記のように燃費には空気抵抗やらころがり抵抗やらが深く関係する。しかし、これらは気温、気圧、湿度、風向、風速、テストコースの平坦度、傾斜等で変わってしまう。同じ日の午前と午後で燃費は変わってしまうことも珍しくない。実際のところ、どれが「本当の」燃費なのか、わからない。
ということで、標準状態を設定し、いつ、どこで、誰が測定しても同じ値になるようにしている。しかも、上記の測定条件は自己申告である。ここに「偽装」が忍び込む。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)
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