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たった2時間で14億円不正引き出し〜日本のコンビニATMのセキュリティはこんなにも甘かった!犯罪グループの全貌
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48832
2016年06月11日(土) 週刊現代 :現代ビジネス
■わずか2時間での犯行
「最初は、何が起きているかまったくわかりませんでした。把握できたのは、短時間で異常な額が引き出されているということだけ。慌ててカードの発行元と我々を結んでいるネットワーク会社に連絡し、そこから警察へと通報。そこでようやく、多額の現金を不正に引き出されたことが明らかになりました。
お客様の利便性を高めるために、国内でいち早く24時間ATMを利用できるようにし、海外の銀行のカードも使えるようにしていたがゆえに、我々の銀行が狙われたのかもしれません」(セブン銀行関係者)
全国17都府県のATMで、14億4000万円に及ぶ多額の現金が一斉に引き出されるという前代未聞の犯罪が明らかになった。
犯行に使用されたATMは1400台。使われた偽造キャッシュカードはおよそ1600枚とみられる。
犯行グループは少なくとも100人。犯行にかかった時間はわずか2時間あまり。セブン銀行のキャッシュカードによる引き出し上限額は1回10万円のため、単純計算で、この短時間で1万4000回の取引が行われていたことになる。
驚くほどの手際の良さ。いったい誰が、これほどの大規模な犯罪をやってのけたのか。
「捜査陣も正直、混乱しています。クレジットカード偽造集団の取り締まりを専門に行う、『組織犯罪対策特別捜査隊』が動いていますが、いまだ全貌はつかめていません。
ただ、犯行に使われたのは、南アフリカにあるスタンダードバンクという銀行のカード情報であること。そして、犯行現場となったATMに中国語が書かれた焼き肉屋のポイントカードが残されていたことはわかっています。中国人を中心とする犯罪組織が南アフリカの銀行からカード情報を盗み、その情報を焼き肉屋のカードに貼り付けて、日本で犯行に及んだと考えられます」(警察庁捜査関係者)
世界各地を股にかけた国際犯罪。具体的には、どういった手口なのか。
南アフリカの大手新聞社デイリー・ディスパッチ紙の記者、エステレ・エリス氏が言う。
「実は'11年に、同様の犯罪が南アフリカでも起きています。同年9月、マレーシア国籍のジェイソン・フイ・ウーイとリム・チョン・リ、中国国籍のフイ・ユーの3名が逮捕されました。いずれも、カードスキミングに長けたシンジケートのメンバーです。
彼らの手口は、ATMに特殊な装置を置き、利用者のカード情報を盗み取り、それを別のカードに書き写して使用するというもの。シンジケートは、南アフリカのショッピングセンターなどに置かれたスタンダードバンクのATMにこの装置を設置し、100万人以上のカード情報を盗み取っていました。押収できなかったものもあるはずですから、盗まれたカード情報はさらに膨大な数にのぼるでしょう。
手口から見て、今回、日本で起きた事件の『首謀者』が、このシンジケートであることは間違いありません。南アフリカにいる手下が、ATMから情報を抜き取り、中国本土に送り、その情報を書き込んだカードを日本で使用したんです」
■実行犯は半グレ詐欺軍団
では、今回、日本が狙われたのはなぜか。
セキュリティ問題に詳しい慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の土屋大洋氏が解説する。
「世界的にカード犯罪に関する対策はきつくなってきているなか、日本はその対応が遅れていた。そこで、『日本でやってみるか』と目をつけたんでしょう。一斉にカネを引き出す態勢さえとれていれば、日本のコンビニATMのセキュリティは甘いですからね」
とはいえ、日本の土地勘もなく、犯罪者集団として認識されている「スキミングシンジケート」が独自に動いたとは考えにくい。どうやら、日本国内に「共犯者」がいたようだ。
「日本の特殊詐欺グループと協力し、犯行に及んだと見られています。昨年1年間の特殊詐欺による被害額は約476億円と、最悪だった'14年から15%減少。取り締まりの強化により、国内の詐欺グループとしては『次の手』を考えていたところでしたからね。
まだ確証はありませんが、在日中国人を中心として構成された半グレ集団が、中国のシンジケートと連携したのかもしれません。彼らならば、100人以上とされる『出し子(ATMからカネを引き出す役)』を用意するノウハウがある。
各地に散らばった番頭格にメールの架空アカウントなどを使って送信履歴が残らないように連絡をとり、それぞれがまた出し子を招集すれば、ねずみ算式に実働部隊の数はどんどん増えていきます」(前出の捜査関係者)
実行犯グループの全貌の把握と、セキュリティ対策が急がれる。
「週刊現代」2016年6月11日号より
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