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明治大学大学院教授 社会人財学舎塾長・野田稔氏
“ブラック”は逆効果! 従業員の健康を維持すれば企業経営は上向く
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160610-61090230-fukkou-ind
nikkei BPnet 6月10日(金)16時58分配信
東京国際フォーラム(東京・有楽町)で、6月8日からスタートした人事関連の専門イベント「ヒューマンキャピタル/ラーニングテクノロジー2016」。その2日目に、「健康経営でつくる生き生き組織 〜アサヒビール・TOTOに学ぶ」と題したセミナーが開催され、アサヒビール経営企画本部人事部長の杉中宏樹氏、TOTOの上席執行役員人財本部長の平野氏貞氏らが登壇した。
冒頭、同セッションのファシリテーターを務める明治大学大学院教授 社会人財学舎塾長の野田稔氏(写真1)は「健康経営という言葉を企業トップに知ってもらえるようになって、ようやく2、3年。昨年が“健康経営元年”だったのではないか」と、健康経営というキーワードについて解説した。「まだ十分に浸透しているとは言えない健康経営という言葉は、従業員のための人道主義的な福利厚生の一環として語られるところから、企業の今後の競争戦略の一つとして語られるように大きく変化してきた」(野田氏)。
なぜ、健康経営が企業戦略に重要だと認識が変化してきたのだろうか。「それは企業が置かれている競争環境の変化したからだ」と野田氏は断言する。従来の仕事のやり方、同じプロセスの事業だけではなく、利益を生むイノベーションが求めれるようになってきた。しかし、そのイノベーションを生み出す人材を育てる環境が、今までの職場にはなかった、という反省から動き始めているというのだ。
米Googleが社内部署の生産性を測定する、プロジェクト・アリストテレスという調査をしたことがある。そのとき、もっとも生産性が高いとされた部署の特性は、強力なリーダー、ダイバーシティ、一枚岩の組織などの要素ではなかった。「残ったのは、心理的安全という要素だった」と野田氏は話す。そのチームでは、本音を話せる、本当の自分を出しても揚げ足を取られない、力いっぱい仕事をしてもいじめられない、といった安全性を確保されたチームが、もっとも生産性が高かったというのだ。
企業活動の源泉である従業員の心や体の健康を維持していくための活動、健康経営がこの時代に求められている。「健康は放っておいても得られない。人道主義ではなく、競争戦略の源泉として従業員の健康をとらえるべきだ」と野田氏は力説する。
■不健康な企業風土を変革したアサヒビール
野田氏の講演を受け、健康経営のお手本として、経済産業省が定める「健康経営銘柄2016」に選ばれたアサヒビールとTOTOの2社が事例を発表した。最初に登壇したアサヒビールの杉中氏(写真2)は、「自分が入社した時代、アルコールに強いことはいいこと、体重10kg増えた、健康診断で数値が悪かった、ということを自慢する体育会系の古い体質だった」と打ち明ける。
時代が変化するに連れ、メンタルヘルスを悪化させる従業員が増えてきたという。それを知った経営トップが危機感を持ち、従業員がパフォーマンスを発揮できるように健康経営を推進する、という方向に変化してきたと、杉中氏は振り返る。経営側が企業風土を変えていくんだという意思表示をするために、福利厚生の考え方として「健康、ど真ん中経営」というメッセージを2007年に打ち出した。社宅売却の資金を健康診断強化に充てたり、福利厚生の原資を再配分するなどの改革に乗り出したのだ。
従業員の健康を守るために、1)アサヒビール単体ではなくグループ全体で取り組むこと、2)治療から予防へ、3)メンタルヘルスの改善といった基本方針を掲げた。こうした方針を掲げても、従業員にはなかなか浸透しないことは想像できた。そこで、毎月の社長朝礼で健康問題、長時間労働に関する問題を話してもらったり、社内ポータルのコラムにメッセージを掲載してもらったり、賞与を出すときに、家族を含めた健康について社長からのメッセージを添えてもらったりと、さまざまな方法で経営からの発信を入れてもらったという。
「実際のアクションで特に力を入れたのが予防」と杉中氏は話す。全国20カ所の事業所に専任の人員を配置し、予算を与える。全社一斉の施策を与えるのではなく、各地で予防への取り組みを任せているという。ハーフマラソン、動脈硬化測定、骨密度測定など自分たちで考えた予防策を実施した結果、病気によって半年を超える休職する従業員がそれまでの半分以下になったという。「予防策によって早期発見、早期治療ができるようになった効果ではないか」と杉中氏は話す。
■全国100事業所の健康状態を一気に把握、対策を打ったTOTO
次に登壇したTOTOの平野氏(写真3)も、年間に亡くなられる従業員数が減らないこと、メンタルヘルスの悪化による休職者数増などが、健康経営へ取り組みトリガーになったと話す。
これからの産業衛生のあり方を考えて、北九州にある産業医科大学の協力を得て、ヘルスケアセンターを設立。健康管理システムも一新し、全国100カ所ある事業所の健康診断情報を集約。事業所ごとにバラバラだったデータを同じテーブルに乗せることで、何らかの疑いがある「所見有り」の割合が事業所ごとに分かるようになったという。
例えば、九州の工場で、2014年、従業員の血圧が平均3.4ポイントもアップした。何らかの手を打たなければ、ということで、工場のヘルスケア担当者が血圧計を構内に何カ所か置いて、血圧に関する注意喚起を高めたり、運動を促進する活動を実施したという。
こうした現場での健康促進活動が、全国各地で行われる一方で、「所見あり」の従業員に再検査や精密検査を受診させる地道な掘り起し活動をヘルスケアセンターが行った。健康診断を受けるだけではなく、再検査を受ける率も100%を達成させるといった活動が奏功し、「所見あり」が付く従業員の割合は年々下がってきている。従業員の平均年齢が上がっているのにもかかわらず、だ。また年間の死亡する従業員の数も半減している。
こうした成果が出せたのは、経営トップからのコミットメントがあったことだと平野氏も口をそろえる。「女性が活躍できる環境を整備するなどのダイバシティ施策と合わせて、健康経営を実施できるはずみとなった」と平野氏は話す。
「一見、すぐに売り上げに直接つながらない活動を推進するためには、トップの理解、経営としてのコミットメントが必要。地道な啓蒙がこれからも必要になる」とファシリテーターの野田氏は締めくくった。
(文/渡辺一正)
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