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伊勢志摩サミット、2日目は気候変動など討議(写真:代表撮影/ZUMA Press/アフロ)
世界各国、サミットで協調して中国排除を決定…中国による他国の特許侵害や雇用喪失を撲滅
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15418.html
2016.06.09 文=渡邉哲也/経済評論家 Business Journal
5月26、27日に三重県で行われた第42回主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)。世界経済に対する危機感の共有やアメリカのオバマ大統領の広島訪問などがクローズアップされたが、実質的には「中国包囲網サミット」であったともいえる。
それは、なぜか。伊勢志摩サミットの成果文書として出された「G7伊勢志摩首脳宣言(骨子)」を見ながら、解説していこう。
まず「1 前文」には、G7(先進7カ国)について「自由、民主主義、法の支配及び人権の尊重を含む共通の価値及び原則によって導かれるグループとして引き続き結束」とある。「自由」「民主主義」「法の支配」という「平和の三原則」ともいえる言葉が用いられると同時に、「人権の尊重を含む共通の価値」は安倍晋三政権が求め続けている考え方だ。
これは、直接的に名指しこそしていないが、中国に対して強い不満を示すものであり、中国包囲網のスタンスを明確にしたものであるといえる。以下、重要な部分について解説していきたい。
「3 世界経済」の「(1)世界経済」だが、世界経済の現状といえば、下振れ傾向が続き、新興国を中心に景気減速が見られる。そうした状況を認識した上で、対処に当たることを世界の首脳が合意したことを示している。
財政状況においては各国にかなり差があり、日本やアメリカは機動的な財政出動を強く求めたが、財政緊縮路線のドイツや、EU(欧州連合)離脱を問う国民投票を控えているイギリスは反対。世界的に合致した意見はなかったものの、「財政出動を行う」という方向性だけは一致したといえる。
また、「過剰な生産能力は、世界的な影響を有する構造的な課題」という文章がある。「過剰な生産能力」というのは、主に中国の鉄鋼や太陽光パネルなどを指すものだ。
中国は鉄鋼などの過剰生産が止まらず、ダンピング(不当廉売)によって輸出を進めてきた。これによって、先進国の鉄鋼市場は大きなダメージを受けており、アメリカやヨーロッパでは中国製品に対して反ダンピング関税を適用する動きが強まっている。
また、アメリカの鉄鋼業界は中国の製鉄がパテント違反、つまり特許権の侵害だとして輸入禁止を求めており、政府が調査に乗り出した。まるで仕込まれていたかのように、サミット終了の翌日に、そのような決定がなされているのだ。
■パナマ文書で顕在化したタックスヘイブン狩りも
次に、「(2)金融規制改革」を見てみよう。「G20金融セクター改革の課題の適時、完全かつ整合的な実施を支持」とある。
2008年のリーマン・ショック以降、世界中で巨大化した金融機関の存在が問題視されている。大きすぎて潰すことができないため、最終的に国が救済せざるを得なくなるからだ。今後は、金融規制を含めた新たな対応やリスク管理を行うことで、そういった金融機関をなくしていくというのが世界の合意である。
「(3)税と透明性」には「BEPSパッケージの着実な、一貫性のある足並みのそろった実施は極めて重要」とある。BEPSとは「税源浸食と利益移転」のことだ。つまり、これはいわゆるパナマ文書によって表面化した課税逃れへの対処を、国際社会全体で一層早めていくという意味である。
現在、タックスヘイブンと呼ばれる租税回避地を使って課税逃れをしている企業や個人の存在が明らかになりつつあるが、その対抗策も構築されつつある。詳しくは拙著『パナマ文書』(徳間書店)に譲るが、国際的なプラットフォームとして、17年からは国家間での自動情報交換システムが稼働することになっており、今後は課税逃れに対する規制が本格化するものと思われる。
テロ組織や暴力団などの反社会的勢力は、強化された金融規制のなかで実名での金融取引が禁じられ、オフショア(外国人や外国企業向けの非居住者向けサービス)での非実名取引や匿名口座に逃げ込んでいた。
タックスヘイブン、なかでも匿名口座の設立が認められているイギリス領バージン諸島などを使って、「黒からグレー、グレーから白に」というかたちで、国際的な規制の網をかいくぐるかのように資金のやり取りが行われている。
実際、13年には北朝鮮系企業の口座がバージン諸島にあるということが判明し、金融規制の対象となっているが、今後はこのようなニュースが相次ぐだろう。
「(4)貿易」には、「過剰生産能力が経済、貿易及び労働者に与える負の影響を認識」と、再び「過剰生産能力」という言葉が出てくる。
新興国で過剰生産が行われ、ダンピングによって不当に安い製品が先進国に入ってくる。それは先進国の雇用喪失につながるため、過剰生産によるダンピングを許している限り、先進国の失業率は悪化し、景気がよくなることはない。
そのため、輸入側が手を組んで、ダンピング製品が自国に入ってこないようする。つまり、入り口で止めてしまうわけだ。前述の反ダンピング関税によって高い税率をかけたり、パテント問題などによって実質的に輸入できないようにする。この合意についても、名指しこそしていないが、完全に中国をターゲットにしたものであろう。
■あらゆる面で進む“中国追い出し”
「(5)質の高いインフラ」。これは、附属文書として「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」があるが、簡単に言えば、最低限の品質を満たさないインフラに関しては、政府開発援助(ODA)や世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国際投資としての輸出を認めないというものだ。
水道でいえば、日本が求めている国際基準は「蛇口をひねり、そのまま飲める」というものだが、フランスの水企業が求めているのは「そのままでは飲めないが、煮沸すれば飲める」というものだ。
このどちらが国際基準になるかはまだわからないが、鉄道などでも同じことであり、すべてのインフラに対して最低限の品質を決めていく。そして、基準を満たないものについては、公共入札に参加させない。
例えば、アジア開発銀行(ADB)や世界銀行の投資案件は基本的に公共調達だが、その際の指名基準を厳格化していくということだ。そのため、これまでのように中国が大金を積んで受注を強奪するようなことはできなくなる。
また、国際的なインフラ開発において、現地雇用を中心としたプロジェクトでなくてはならない。中国のように、インフラ輸出の際に大量の中国人を現地に連れていき、現地の雇用にまったく貢献しないようなやり方は許されないわけだ。この合意に関しても、事実上の“中国追い出し”といえる。
次に、「(8)サイバー」だ。これも、「サイバーに関するG7の原則と行動」という附属文書があるが、中国をターゲットにしたものに違いない。すでに、ZTEやフーファイなど中国企業の通信端末は「安全保障上のリスクがある」として、アメリカでは事実上の使用禁止になっている。開発に中国の軍部が関与している疑いがあるため、セキュリティ上の問題に懸念があるからだ。今後は、そういったものの排除もより進んでいくだろう。
「(9)腐敗対策」だが、まず「G20ビジネスサミット(B20)」というものがある。これは、G20(20カ国・地域)のグローバル企業の幹部や民間団体で構成される組織で、反汚職活動などを推進する働きがある。
G20議長国の企業が主導するのが慣習だが、今年は中国が議長国になったことで、このB20の活動が停止してしまった。中国企業が参加を拒否したためといわれているが、「腐敗と戦うためのG7の行動」という附属文書があるように、「G20で腐敗対策をできないのなら、今後はG7で確実にやっていく」という意思の表れであり、中国の追放と同義である。
すでに、賄賂や詐欺行為を理由に中国のインフラ関連企業数社が世界銀行のブラックリスト入りしており、同行のプロジェクトへの入札が禁止されているが、今後も“中国排除”の動きはあらゆる面で進むだろう。次回も、引き続きサミット首脳宣言について見ていきたい。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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