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ソニー頼みの綱・半導体事業、地盤崩壊の危機…世界1位陥落か、また市場変化に乗り遅れ
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15324.html
2016.06.02 文=湯之上隆/微細加工研究所所長 Business Journal
■ソニーのCMOSセンサへの期待
現在、日本の半導体産業において世界とまともに戦うことができているのは、東芝のNANDフラッシュメモリと、ソニーのCMOSセンサの2つである。CMOSセンサとは、スマートフォン(スマホ)等のカメラなどに使われる画像センサの一種である。
東芝は昨年発覚した粉飾会計の影響で、2016年3月期の連結決算で7191億円の巨額赤字を計上するに至った。東芝の事業のなかでは収益源だった東芝メディカルシステムズを6655億円でキヤノンへ売却したにもかかわらず、この体たらくである。今後のNANDフラッシュメモリの生産に、赤信号が灯った。
一方、ソニーのCMOSセンサは、米アップルのiPhoneに採用されたこともあって、売上高シェアで世界一を独走中である。アナリストやジャーナリストのなかでは、売上高で「ソニーが東芝を抜くのではないか」と予測する人が出てくるほど期待が高まっている。
しかし、CMOSセンサの売上高シェアが世界一であっても、一抹の不安がある。ソニーはハイエンドには強いが、ローエンドではまったくシェアがないからだ。
その上、今後の展望を考えると、売上高世界シェア1位の座も安泰ではない。というのは、自動運転車やロボットの普及に伴って、CMOSセンサが見る主体が「ヒトからマシン」へパラダイムシフトしようとしているからだ。
本稿では、ソニーのCMOSセンサの現状とその展望を論じたい。
■2010年時点のソニー
筆者は、2010年にソニーの厚木研究所(神奈川県)で講演した。そのとき、ソニーのCMOSセンサの将来に不安を感じた。09年時点におけるソニーのCMOSセンサの売上高シェアは22%で世界一であったが、ユニット(個数)シェアはたったの4.7%しかなかったからである(図1)。これは、ソニーが単価の高いハイエンド製品しかつくっていなかったことを意味する。
筆者は講演で、日本の半導体メモリDRAMが「イノベーションのジレンマ」によって撤退に追い込まれたことを説明した。かつて、日本半導体メーカーはメインフレーム用に25年保証の高品質DRAMを製造して、DRAMの世界シェア80%を占めるに至った。ところが、コンピュータ業界にパラダイムシフトが起き、メインフレームに代わってPCが上位市場となった。
この時、韓国サムスン電子や米マイクロンは、25年保証などの高品質は必要ないPC用DRAMを破壊的な安価で大量生産した。一方、主要顧客がメインフレームメーカーであった日本の半導体メーカーは、相変わらず25年保証の高品質DRAMをつくり続けてしまった。その結果、コスト競争に敗れ、エルピーダメモリ1社を残して撤退に追い込まれてしまった。そのエルピーダも倒産し、米マイクロンに買収された。
すなわち、米ハーバード大学ビジネススクール教授クリステンセン氏が言うところの「イノベーションのジレンマ」が起きたのである。そして、筆者は「ソニーのCMOSセンサは、かつての日本のDRAMを髣髴とさせる」と述べた。300人ほどいた講演会場は凍りついてしまった。
■15年のソニー
ソニーでの講演から約5年がたった。09年から14年の5年間で、ソニーのCMOSセンサは売上高シェアが倍増の42%(世界1位、図2)、ユニットシェアが3倍以上の19%(世界2位、図3)になった。
ソニーは売上高シェアで断トツの世界1位だが、ユニットシェアは1〜4位までが混戦である。特に、中国ファブレス(開発・設計に特化し工場を持たない半導体メーカー)のギャラクシーコアは、設立から4年であっという間に世界1位になってしまった。中国がスマホの世界最大の市場(年間5億台)になったことが影響している。
相変わらずソニーはiPhoneなどハイエンド製品に圧倒的に強く、ミドルエンドにも進出するなど成長した点もある。しかし、ギャラクシー・コアの独壇場となっているローエンドには、まったくシェアがないと思われる。したがって、09年に感じた不安は払しょくできていない。
その上、もうひとつのソニーの弱点が見えてきた。監視カメラや車載など産業用CMOSセンサのシェアがほとんどないことである。
今後、世界はIoT(モノのインターネット)が普及し、20年には1兆個のセンサが世界を覆うといわれている。そのような産業用の、しかもローエンド分野にソニーは強くない。その上、自動運転車が普及しようとしているが、これに搭載されるCMOSセンサが、これまでの勢力図を一変させる可能性が見えてきた。
■CMOSセンサの競争のルールが変わる
従来、CMOSセンサは、主としてデジカメやスマホに搭載することを目的に開発されてきた。一言でいえば、「人が見えるモノをより美しく見せる」ための開発であった。したがって、波長は人が識別できる可視光のみを対象とした。精細度、感度、ダイナミックレンジも人が識別できる範囲までであり、人が識別できるフレームレートで、CMOSセンサは開発されていた。
しかし今後は、自動運転車や監視カメラなどを主用途にした開発が主流になる。つまり、見る主体が「ヒトからマシンへ」変更されることになる。したがって、人が見えない距離や温度も見ることになるし、可視光以外も見る対象になる。また、精細度、感度、ダイナミックレンジ、フレームレートも、マシンが「見ることができる」範囲に拡張されることになるだろう。
■ソニーはパラダイムシフトに対応できるか
スマホ用CMOSセンサ技術では、ソニーが他社より2〜3年先を走っていた。ところが画素ピッチが1μmになり、可視光の回折限界に達した。そのため、サムスン、オムニビジョン、オンセミなどの技術がソニーに追いつき始めた。ギャラクシー・コアなどファブレスの生産委託先のファンドリーTSMCの技術も格段に向上した。
さらに、スマホ用CMOSセンサの成長が鈍化し、自動運転車、監視用、ロボット用など産業用CMOSセンサが急成長し始めた。CMOSセンサが見る主体は、「ヒトからマシン」へ変わろうとしている。つまり、CMOSセンサ市場にパラダイムシフトが起きるのである。
スマホ用CMOSセンサの単価は2〜3ドルだが、車載用は10〜30ドルになるという。すると、市場規模は今後、産業用が民生用を上回るだろう。これまでソニーが築いてきた地盤が崩れる可能性が高い。その結果、CMOSセンサのプレーヤーの勢力図が、今後変化するかもしれない。
ソニーが生き延び、さらに成長するためには、このようなパラダイムシフトに適応できるか否かにかかっている。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
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