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消費増税延期は断固正しい! そのメリットをどこよりも分かりやすく解説しよう GDP600兆円も財政再建も達成できる
http://www.asyura2.com/16/hasan109/msg/256.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 30 日 08:30:50: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


消費増税延期は断固正しい! そのメリットをどこよりも分かりやすく解説しよう GDP600兆円も財政再建も達成できる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48779
2016年05月30日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス


■安倍首相の結論は正しい


サミットが終わった5月28日、安倍首相が2017年4月からの消費増税を2年半延期すると報道された。その前に、サミットで安倍首相が提出した資料が話題になった。


サミットの席で安倍首相はその資料を見せながら「リーマン級の世界的危機が再来するリスクがある」と言ったのだが、民進党はその資料の作成元を問題視し、国際機関でもそうした予想はなく消費増税の口実だ、と批判している。国内メディアやFT(フィナンシャル・タイムズ)、ルモンドなどの海外メディアでも、まるで民進党と同じような批判を展開する記事が出ている。


前提として、民進党も消費増税を見送る意向は一致している。だから、彼らが何を批判したいのかさっぱりわからない。民進党はアベノミクスの失敗というが、しかし、民進党が批判する安倍政権の金融緩和は、雇用の改善という結果を出している。


GDPの低迷は、民主党時代に成立した消費増税法のためである(3党合意があったので、自公の責任も免れないが)。今回の消費増税の先送りは、以下に示すように、やる場合とやらない場合のメリット・デメリットを合理的に判断した結果である。


経済政策を策定するにあたっての手順は、@目標を確認した上で、A現状認識を行って、B処方箋という順になる。


まず@であるが、マクロ経済政策の目標としては、一つはGDPを拡大させること、もう一つは雇用を改善することだ。GDPは今の状況、雇用は遅行指標なので前の状況を反映している。財政政策と金融政策を駆使して、これらの目標を達成することが、もっとも重要になる。


財政政策も金融政策も、どちらもGDP、雇用に影響を与えることができるが、財政政策はGDPに、金融政策は雇用によく効く。


では、どの程度を目指すかといえば、GDPについては、人もモノも十分に能力を発揮できるような潜在GDP水準にできるだけ近いことが望ましい。実際のGDPと潜在GDPとの乖離を「GDPギャップ」というが、これを解消するのが望ましい。


筆者はGDPギャップを速やかに解消することが政府の責務だ、とする法制度があってもいいと思っている。この観点から見れば、一部の財政学者のいう財政健全化法は経済にとって害悪になる可能性もある。


■トンでもなく間違った説明


雇用については、「構造失業率」がポイントだ。構造失業率とは、どうしても雇用のミスマッチなどで、それ以下に下げられない「失業率の底」である。構造失業率以下に失業率を下げようとして、いくら金融緩和しても、インフレ率だけが高くなってしまう。


実際の失業率をできるだけ構造失業率まで下げるのが、政府の責務である。筆者は、日銀法を改正して、日銀がその責務を負うべきだと考えている。


次にA現状認識である。第一に、GDPで見ると、安倍政権になってから2014年3月までは目を見張る成長をしていたが、2014年4月以降停滞している(下図)。GDPギャップは10兆円程度だ。



直近の2016年1−3月期GDPを詳しく見よう。かろうじて2期ぶりのプラス成長となっている。


実質GDPは前期比0.4%増、年率換算1.7%増。その中身で注目されるのは消費と設備投資。民間最終家計消費をみると0.5%増、寄与度0.3%となっている。また、民間企業設備は1.4%減、寄与度マイナス0.2%だった。


これを見れば、「全体として弱含みだ。消費税(5%から8%への引き上げ)の影響がまだ残っている」(菅官房長官)ということだ。


ちなみに、1年前の対前年同期比では、うるう年効果にもかかわらず消費はほとんど横ばい。うるう年効果を除くとマイナスという見方も出てくる。


もともと消費増税の悪影響は2年程度あっても当然だ。財務省やエコノミストらは「消費増税の影響は軽微」と増税前に説明し、増税後実際に悪影響が出てもせいぜい3、4ヵ月と言っていたが、トンでもなく間違った説明をしていたことになる。


設備投資は、実質金利と将来の需要動向によって決まる。実質金利はマイナス金利の導入などによって下がったが、同時に今までの消費動向がさえないので、将来不安が増大して、設備投資がマイナスの伸びと芳しくなかった。


国内要因の消費、設備投資のほか、海外要因の輸出動向もカギを握る。アメリカ経済はいいが、中国経済などの新興国の動きは不透明だ。


■官僚が苦手な話


筆者は、中国経済については、隣国日本にとってリーマン・ショック級になっても不思議でないほど悪化していると考えている。


そのことは昨年8月24日の本コラム「衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている? データが語る「第二のリーマン・ショック」」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44888)で書いた。

中国を名指ししなくても、ロシア、ブラジルなどのBRICS諸国の経済成長のリスクを考えるのは、経済分析としてはイロハである。安倍首相はそういったことをサミットの場で率直に話したのだろう。リスクを認識するのは、現状分析で欠かせない。


日本の場合、内需が大きいので、消費動向のウェイトがもっとも高く、海外要因はそれほどでもない。なので、経済分析としては、海外のリスク要因は国内の消費に比べると大きくない。ただし、サミットの場で日本の国内問題を披露しても意味ないので、国際経済の状況やリスクを話すのは、当然であるし、やるべきことだ。


民進党のように、その資料を誰が作ったのかが分からない、官僚が作っていないから問題だ、というのは、幼稚な話だ。将来のリスクという不確かな話は官僚の苦手な分野なので、政治的な直感を活用して資料をつくってもいいだろう。


第二に雇用を見よう。雇用は安倍政権になってから、いい状況が続いている(下図)。



民主党政権では就業者数は30万程度減少したが、安倍政権になってから100万人以上増加している。ただし、雇用はGDPに比べて遅効指標であるから、このまま、GDPが伸びずに今のGDPギャップを放置すると、そのうち雇用も悪くなるだろう。


■増税しなければ、GDPは増大


金融政策については、日銀が構造失業率をどう考えているかが重要だ。


4月の金融政策決定会合時に公表された日銀の公表資料である「経済・物価情勢の展望」の中に、構造失業率に関する図があるが、それによれば、日銀は3%前半と見ている。


そういえば、3月16日、官邸で行われた国際金融経済分析会合で、日銀の黒田東彦総裁がジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授に「日本で賃上げのペースが遅いのはなぜか」と質問した。この現象は黒田総裁には不思議なことのようだ。


黒田総裁がこんな質問をしたのは、すでに今の失業率が構造失業率に達しているのに、なぜ賃金が上がらないのか、それが分からない、ということだ。つまり、日銀が構造失業率を3%前半と見ていることの証左だ。


これに答えるなら、構造失業率が3%前半という日銀が間違っている、と言える。きちんと推計すると、構造失業率は2.7%程度(下図)。だから、まだ賃上げは本格化せず、物価も上がりにくいというわけだ。



さて、こうした状況を放置しておくとどうなるだろうか。GDPギャップは開いたまま景気はよくならず、そのうち雇用も悪くなるだろう。


予定通り2017年4月から消費増税すれば、それこそ火に油を注ぐことになって、日本経済沈没である。消費増税をするかしないかで、名目GDPがどうなるかを示すと、下図になる。



青の実線は、今の内閣府の見通しだが、実はこの試算では2017年から消費増税するという前提になっている。しかし、内閣府は2014年消費増税の時に、財務省の意見に従って「増税しても景気は悪くならない」と断言したにもかかわらず、実際には景気が悪くなったという前科がある。


そのときの間違いの教訓を今でも生かせずに、今の試算でも「2017年に増税しても景気が悪くならない」という結果になっているのだ、


これに対して、筆者が「消費増税すれば2014年と同じ程度悪くなる」という前提で試算したのが、緑の点線だ。赤い点線は消費増税をスキップした場合だ。


こうした現状分析と予測から、消費増税をやらないことが現時点での正解になる。


■財政破綻の可能性、こんなに低い


ここで気になるのは、財政再建である。残念ながら、マスコミは財務省のプロパガンダによって、「日本の財政は悪化しているので、消費増税は避けられない」と思いこんでいる。


財政状況を見るには、政府だけではなく、中央銀行を含む政府の関連会社を含めた連結ベースのバランスシートを見なければならない。これは、2015年12月28日付けの本コラム「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした〜それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう!この国のバランスシートを徹底分析」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)で書いた。

日銀を含めて連結ベースのバランスシートを見ると、ネットの債務残高は170兆円程度である。


財務省は、単体政府のバランスシートのうち右側の負債のグロス数字だけを言って財政危機を煽るが、政府の関係会社を含めた連結ベースでネットの数字を言うべきである。この数字をGDP比で見ると4割以下であり、米英と比較しても小さい(下図)。



このような状況をきちんと見れば、現時点では財政破綻の可能性はきわめて小さく、国債金利がマイナスになるのも納得できるのだ。


■やっぱり「増税しない」が正解


フローの基礎的財政収支を見ても、心配ない。名目GDPが決まると、基礎的財政収支がどうなるかは機械的に計算できるので、それを計算してみた。


今の内閣府の見通しが青の実線、消費増税をした場合が緑の点線、しない場合が赤の点線になる(下図)。



消費増税をしなければ、2020年度には名目GDP600兆円という政府目標が達成でき、財政再建目標も達成できる。一方、消費増税したらどちらも達成できなくなる。


消費増税をするかしないかの考察は以上の通りである。よりいっそうの経済回復のためには、先週の本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48719)などで書いたように、消費増税スキップに加えて、埋蔵金20兆円・国債発行(財投債)10兆円の財政出動、追加金融緩和が必要である。


ある財務省関係者は、安倍首相が言うように、「リーマンショック前と似てきた」という理由で消費増税を先送りされたら、もう増税なんてできなくなると喚いていた。


もちろん海外リスクだけで判断しているはずはないのだが、仮にそうだとしても、増税しても景気は悪くならないと言って増税することと、リスクがあるから増税を先送りする、ということのどちらかがいいのか。前者で失敗した教訓からみれば、後者が合理的選択になるのは明らかだろう。


現状認識として、今の日本の財政状況は悪くない。財政再建は一般論として必要ではあっても、今の状況で優先順位は低い。仮に必要として、そのための増税は間違いで、再建のためにも経済成長が最適であることを強調しておこう。



 

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