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産業を指導する「官僚たちの夏」は二度と来ない よみがえる「ターゲティング政策」の亡霊  目先の政策から離れ始めた株式市場
http://www.asyura2.com/16/hasan109/msg/189.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 28 日 00:01:39: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

産業を指導する「官僚たちの夏」は二度と来ない
よみがえる「ターゲティング政策」の亡霊
2016.5.27(金) 池田 信夫
東京・霞が関の経済産業省。通産省時代のターゲティング政策は失敗の連続だった(出所:Wikimedia Commons)
 かつて小泉改革で中心的な役割を果たしたのが、毎年6月ごろ出される「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」だった。これは夏の概算要求に先立って内閣が予算編成の骨格を示すもので、骨太の方針という愛称で呼ばれた。

 しかし5月18日に発表された今年の経済財政運営と改革の基本方針は「骨抜きの方針」だ。肝心の財政運営の骨格を示す第4章が白紙になっているからだ。これは「安倍内閣は財政再建を放棄した」と解釈されてもしょうがない。

「官僚たちの夏」は終わった

 今度の「成長戦略」では「名目GDP(国内総生産)を2020年度までに600兆円にする」という目標を掲げている。あと5年でGDPを100兆円も増やすには毎年4%の成長が必要だが、具体的な政策として並んでいるのは「第4次産業革命」やらIoTやら人工知能やら、ビジネスマンなら誰でも知っているバズワードだけだ。

 こういう特定の産業に役所が補助金を投入して育成するターゲティング政策は、城山三郎の小説『官僚たちの夏』の世界だが、成功したことがない。小説のモデルは1962年に通産省が立案した特振法(特定産業振興臨時措置法)だが、時代錯誤の統制経済だとして民間の反発をまねいて挫折した。

2009年にTBSがドラマ化した「官僚たちの夏」
拡大画像表示
 しかし特振法の精神は通産省の行政指導として残り、これを制度化したのが、大型プロジェクト(大型工業技術研究開発制度)と呼ばれる制度だった。その唯一の成功例は、1976年から始まった「超LSI技術研究組合」で、これは日本の半導体産業が世界を制覇する要因となった。

 この成功体験で「大プロ」には巨額の予算がつくようになり、中でも最大のプロジェクトが、1982年に発足した第5世代コンピュータだった。10年間で1000億円を投じて人工知能をつくろうというもので、全世界の注目を浴びた。

 しかし実際に着手すると人工知能は予想以上にむずかしく、日本語処理という目標は途中で放棄され、予算も570億円に減額された。その後も250億円を投じて何も生み出せなかったシグマ計画など、大プロは死屍累々で、90年代には通産省もやめた。

ターゲティング政策はなぜ失敗するのか

 なぜターゲティング政策は失敗を重ねたのだろうか。政府主導で技術開発を行うメリットがあるのは、高度成長期の製造業のように、技術進歩の方向が明確で主要な困難が設備投資のための資金調達の規模の問題だけである問題に限られる。

 ところがITの世界では、市場や技術革新の方向が急速に変わるので、ある時期の技術を前提にして巨額の設備投資を行うことはリスクが大きい。他方、資本コストは「ムーアの法則」(半導体の集積度が18カ月で2倍になるという経験則)で急速に下がるので、資金調達は主要な制約ではなくなる。

 その意味で、通産省型の産業政策の対極にあるのが、シリコンバレーのベンチャーキャピタルである。ベンチャーキャピタルは多くのベンチャー企業に薄く広く投資し、ラウンドごとに成果を見直して投資を継続するかどうかを決める。

 激しく変化するインターネットの世界では、何が成功するかは誰にも分からないので、10のプロジェクトに投資したうち1つ当たればもうけものと考えるしかない。グーグルもアップルも、こうした「ダーウィン的競争」で生き残った企業だ。

 官民のコンセンサスで運営する方式では、悪いプロジェクトを採用する擬陽性のリスクは減らすことができるが、情報産業で大事なのは、よいイノベーションを採用しない擬陰性のリスクである。

 大企業の役員会で合意されるようなビジネスが、革新的であるはずがない。役所の予算要求で認められるようになったときは、もうビジネスとしては終わっている(あるいは勝負はついている)というのがIT産業の経験則である。

 1980年代初頭は、コンピュータ産業の大きな分岐点だった。81年に登場したIBM-PCはコンピュータの主役を大型機からPCに変える破壊的イノベーションだったが、第5世代やシグマ計画は在来の大型機を高度化する持続的イノベーションに国内メーカーをミスリードしたのだ。

「総動員体制」の見直しが必要だ

 通産省内部でも、こうした失敗を重ねて、従来型の産業政策がうまくいかないという認識が少しずつ広がっていった。産業政策に固執するターゲティング派に対して、90年代後半には、官庁は競争政策などの枠組だけを決め、あとは市場の競争に委ねるフレームワーク派が主流を占めるようになった。

 私は2001年から3年間、経済産業研究所に上席研究員として勤務した。これは省庁再編の目玉として霞が関全体のシンクタンクとすべく、青木昌彦・スタンフォード大学教授を所長として、従来の通産研を大幅に改組して発足したもので、フレームワーク派の拠点になった。

 しかし他官庁から「わが省の政策に文句をつけるな」という苦情が寄せられ、経産省の北畑隆生官房長は研究員の発表する論文に検閲体制を敷いた。これでは自由な研究ができないので青木所長は辞任し、彼に招かれて研究員となった多くのスタッフ(私を含む)が研究所を去った。

 ところが忘れたころに、またターゲティング政策が出てくる。2006年に始まった「日の丸検索エンジン」の責任者は、記者会見で「第5世代コンピュータやシグマ計画の失敗をどう考えるか?」という質問に「それは何ですか?」と逆に質問した。プロジェクトの事後評価が行なわれないため、同じ失敗が繰り返されるのだ。

 戦時経済で日本は行政に権限と情報を集中する総動員体制をとり、戦後もその遺制が残っている。こうした集権的な統治機構は、“追いつき型”近代化の局面では一定の効果を上げたが、政治によるチェックがきかないため、大きな路線転換ができない。

 日本の官僚が優秀で清潔だというのは事実であり、『官僚たちの夏』に描かれたような高い志は今も変わらない。悲劇的なのは、そのエネルギーがいまだに時代錯誤のターゲティング政策に浪費されていることだ。これを清算して戦時経済以来の総動員体制を見直し、資本の論理で問題を解決することが日本の課題である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46959


 
目先の政策から離れ始めた株式市場
政治と市場の“正しい”見方
ベストシナリオは保育・介護支援のための消費税率引き上げ
2016年5月27日(金)
門司 総一郎
 年初から下落した日経平均は、2月中旬に下げ止まりました。ただし反発力は乏しく1万6000〜1万7000円を中心とした狭いレンジでの動きが続いています。
 そうした中、いつものように一部の市場関係者から政策の出動を求める声が高まっていますが、これまでに比べて広がりは今一つ。また政策に関連する材料への市場の反応も鈍いようです。日本の株式市場は政策離れを始めたのか? 今回はこの点について考えてみます。
(図表1)日経平均の推移(日次、円)

出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
政策発動に冷ややかな投資家たち
 前述のように、一部の市場参加者、特に証券会社のストラテジストの間で政府に政策発動を求める声が高まっています。そこで具体的に挙げられている政策の3本柱は、消費増税の延期(または凍結)、財政出動、追加緩和。これに円売り介入と衆参同日選を追加する向きもあります。
 しかし、これまでに比べると、こうした声の広がりは今一つ。政策関連の材料に対する株式市場の反応もいつもほどではありません。多くの投資家は政策発動を求める声や政府の動きを冷ややかに見つめているとの印象です。そうした雰囲気を示す例として、政策がらみの材料に市場が反応しなかったケースを紹介します。
 例えば5月14日に日本経済新聞が「首相、消費増税先送り」と題する記事を1面に掲載しました。私自身は消費増税の先送りに反対ですが、この記事を見た時は「これで消費増税延期は決まり、週明けの日本株は上昇」と思いました。
 しかし、週明け16日の株式市場の反応は違いました。日経平均は一時、前営業日比200円以上上昇したものの、引けにかけて上げ幅を縮小。最終的にはわずか54円の小幅高です。
 逆に、5月21〜22日の先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、「政策で株高」を想定している投資家には散々な結果でした。日本が意図したG7が協調しての財政出動は打ち出せず、米国のルー財務長官に為替介入を封じられた。おまけに、麻生太郎財務相から「消費増税については、米国に対し、予定通り(に行う)ということを説明した」との発言が飛び出しました。
 しかし、23日の日経平均は、一時300円以上下落する場面があったものの、終わってみれば前営業日比82円安の小幅安です。このように最近の市場は政策がらみのニュースに関して、好材料でも悪材料でも無反応。騒いでいるのは前述の一部のストラテジストやヘッジファンドなどの投機筋だけのように見えます。
政策への期待感はなぜ消えたのか?
 こうした動向を見て、金融緩和や消費増税延期などへの期待感は多くの投資家の間で既に消え去ったと考えています。これは投資家がこうした目先の景気・市場対策でしかない政策にはせいぜい一時的な効果しかないことを、身をもって体験したためです。
 例えば、もっとも市場で注目度が高い金融緩和が効いたのは2014年10月の追加緩和まで。今年1月には追加緩和(マイナス金利)を決定して円高・株安、4月は緩和を見送って円高・株安です。やってもダメ、やらなくてもダメでは期待がなくなって当然でしょう。
 消費増税の先送りもそうです。安倍晋三首相は既に1回税率引き上げを先送りしていますが、それで景気がよくなったという実感はありません。今回先送りしても、1〜2年後にはまた同じことになると思う人が多いでしょう。
 日本の金融市場で政策への期待感が高まったのは、黒田東彦日銀総裁の異次元緩和の印象が強かったためです。しかし、当時の円安・株高は金融緩和だけで生じたわけではありません。
 当時は民主党政権の決められない政治の下で経済だけでなく社会も停滞しており、日本株は売られ過ぎ、円高も行き過ぎという状況にありました。その後の円安・株高はその修正によるもので、異次元緩和はそのきっかけになっただけなのですが、あまりにも鮮やかに見えたため、市場参加者は金融政策が万能であるような錯覚に陥ってしまいました。
 しかし、株安も円高も既に修正された今、当時のような華々しい効果を期待できるはずがありません。逆に今年に入ってから金融政策は失敗続き、追加緩和への期待感は霧散してしまいました。
 増税先送りや財政出動、為替介入なども同じで、景気や金融市場にとって一時的な効果しか期待できません。こうした目先の景気や株安、円高対策などへの期待が剥落するのは当然のことで、むしろ遅すぎたぐらいといってよいでしょう。
ファンダメンタルズに回帰せよ
 今の日本株や為替レートを動かしているのは目先の政策に関する思惑でなく、世界的な金融市場を取り巻く環境です。例えば4月に日銀が追加緩和を見送った後、一時1ドル=105円台まで円高が進み、円売り介入を巡る憶測がマスコミを賑わしました。
 しかし、結果的には介入も追加緩和もないにもかかわらず、円はドルに対して緩やかながら下落しています。これは米国の経済指標が改善し、早期利上げ観測が再燃したことが理由です。
 米景気が悪化して米国の利上げがさらに遠のけば、政府・日銀が介入したとしても円高を食い止めることはできないでしょう。逆に足元のように米景気が改善して利上げ観測が強まれば、為替介入や金融緩和がなくても円高が進むことはありません。
 今まで、市場参加者は「まず政策ありき」の視点から考えることが多かったと思いますが、最近はファンダメンタルズに立脚した発想に戻りつつあると見ています。これが日本株が政策離れを始めた理由です。
求められるのは長期的な成長を促す政策
 もちろん、政策が不要というわけではありません。ただし、求められるのは、目先の景気や市場を意識した政策でなく、長期的な成長に貢献できる政策であることを認識する必要があります。その意味で注目されるのは最近話題の介護や保育関係の支援拡充策です。
 これらは経済に直接関係しないテーマであるため、普段、市場に影響を与えることはあまりありません。しかし、日本が抱える最大の構造問題である人口減少に対処する上で、どちらも放置することができないテーマです。
 世界の年金やソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)などの機関投資家は今、日本について「失われた20年は終わったが、次の20年はどうか」といった視点から注目しています。
 こうした視点に立てば、消費増税の先送りなどは、どうせ引き上げるのであれば、大した問題ではありません。しかし、今まで人口減を放置していた日本政府が本格的にこの問題に対処すべく動き出したとなれば、これは日本に投資すべきかどうか、真剣に検討する必要があるとなるでしょう。外国人材(移民)の問題についても同じことが言えます。
 これまで安倍首相はこうした問題に必ずしも前向きではありませんでした。これは今まで日本では、出生率目標や移民などの議論がタブー視されていたため、支持率などへの影響を考えて消極的にならざるを得なかったためと考えています。
 しかし、第2次安倍政権が発足して以来の政権運営を経て、結局これらの問題は避けて通れないと感じた。これが最近こうしたテーマに積極的に取り組んでいる理由でしょう。であれば遅かれ早かれこうしたテーマが株式市場でも取り上げられることになるのは間違いないと見ています。
ベストシナリオは育児・介護支援のための消費税率引き上げ
 26日から27日にかけてG7の伊勢・志摩サミットが予定されています。サミット後に安倍首相は消費増税の再延長を表明するというのが現在有力と見られているシナリオです。このシナリオであれば、市場はいったん円安・株高に反応すると思いますが、短期的なものに止まると見ています。既に述べたように、消費増税先送りは景気に対して一時的な効果しか持たないためです。
 株式市場にとって最も望ましいのは育児・介護支援のために必要な財源であることを安倍首相が説明した上で、予定通り消費税率引き上げを表明する。これがベストシナリオです。
 残念ながらこのシナリオが実現する可能性は高くありません。ただ、足元で、安倍首相が増税先送りに慎重になっていることを示唆する報道があります。
 例えば、萩生田光一官房副長官は5月24日、ロイターのインタビューで消費増税の時期について「特別な事態が起きない限り、予定通りやる方が国際社会の信頼を得られる」と述べました。
 また、柴山昌彦首相補佐官も同じ24日にロイターに対して「来年4月に予定されている消費税増税の是非は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論なども踏まえて判断すべき」「そのうえで予定通りに増税し、経済の不安定要因に的確な財政措置で対応するとの考えは十分に成り立つ」と述べています。前述のように麻生財務相もルー米財務長官に予定通りに税率を引き上げると説明しています。こうなると、税率引き上げの方がメインシナリオにも見えます。
 おそらく、安倍首相もまだ最終判断をしかねているものと思われます。ベストシナリオに沿った決断がなされるのであれば、その時の日本株は「買い」ということになると予想しています。


このコラムについて
政治と市場の“正しい”見方
 今、日本は新政権の誕生で「政治」と「金融市場」の関係がこれまで以上に強まり、複雑化しています。さらに欧州の債務危機や米国の財政の崖、中国の新執行部選出など、政治と市場を巡る動きは、海外でも大きな焦点となっています。
 しかし、市場関係者がこの両者の関係を論じる場合、「アベノミクスで日本は変わる」など物事を極めて単純化した主張になりがちで、十分な分析がなされているとは言えません。そこで、このコラムでは政治と市場の関係について深く考察し、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/243048/052600007 
 

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